クオーレ 竹本 泰志|不用品回収から不動産事業まで。お客様の声から事業を拡げ業界No.1になった道のり

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年05月に行われた取材時点のものです。

業界で最初に上場し「遺品整理業界のスタンダード」を作りたい

今年で14期目を迎える株式会社クオーレは、「整理事業」「リユース事業」「不動産事業」の3つを軸に、ライフサポートサービスを提供しています。

不用品回収からスタートした同社が、遺品整理を中心にここまでサービスの幅を拡げたのは、お客様の困りごとをすべて解決したいという思いがあったから。

今回は代表の竹本さんに、「遺品整理・生前整理サービス施行件数業界No.1」となったクオーレの歩みや、業界の課題、上場を目指す理由などをお伺いしました。

竹本 泰志(たけもと やすし)
株式会社クオーレ 代表取締役
複数の職を経て、2011年、25歳の頃に仲間と共に(株)クオーレを設立。
不用品回収業としてスタートし、遺品整理を中心に手掛けるように。 現在は愛知の他、神奈川・埼玉・千葉・栃木・東京・静岡・岐阜にも支店や支社を構え、 精力的に事業を拡大している。

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16歳から働きはじめ、不用品回収に出会うまで

ー竹本さんはどのような幼少期を過ごされたのでしょうか?

竹本:僕の両親は居酒屋の経営をしていたので、学校から帰ると姉2人と過ごしていましたね。親の監視や門限もなく、自由に生きていた幼少期だったと思います。

ーでは、小さい頃から自立した考え方をお持ちでしたか?

竹本:そうですね。中学生になった頃から、「早く仕事がしたい」という気持ちが芽生えて、実際に16歳で働く道に進みました。そういう意味では、早くから自立した考えを持っていたのかもしれません。

ー16歳から働く道を選ばれたのですね。

竹本:実家の自営業は経営がうまくいっておらず、親がお金に苦労している姿を見ながら育ったんです。だから「早く自分が稼ぎたい」という思いが強くありました。

勉強が得意ではなかったことも、理由ですけどね。

ー具体的には、どのようなお仕事を経験されたのでしょうか?

竹本:最初は建築系の現場仕事からスタートしました。地元が漁師町だったので漁師もやりましたし、車が好きだったので中古車屋さんでも働きました。

ー起業のきっかけになったお仕事はありますか?

竹本経営者になろうと思ったきっかけは、中古車屋さんの仕事です。

そこに来店するお客様には、誰もが憧れるような良い車に乗っている人がたくさんいたんです。

車が好きでしたし、ちょうど免許を取ろうかと思った年齢だったこともありまして、「あんな車に乗るにはどうしたらいいんだろう」と考えました。そして、「この中古車屋に来る人は自営業の経営者ばかりだ」と気づいたんです。

でも、当時の僕は安い給料で働いていました。このままではダメだと思ったのが経営者を目指したきっかけでしたね。

ー経営者を目指すことを決意されてから、すぐに行動されましたか?

竹本:はい、すぐに自営業を始めました。でも、今の事業からスタートしたわけではなく、車関係の仕事をしてみたり、親の飲食店を継いでみたりと最初は事業を転々としていました。

そんな時期に、不用品回収という仕事に出会ったんです。それがクオーレの原点になりました。

集まった仲間を食べさせるため「クオーレ」を立ち上げた

ー不用品回収との出会いから、起業までの経緯をお伺いできますか?

竹本:不用品回収と出会ったころは、自営業をいろいろ試してみたものの、どのような道に進めばいいのか迷っていた時期だったんですね。

そんなとき、地元名古屋の先輩のお手伝いでやってみた不用品回収の仕事がすごく楽しくて。「本気でやってみよう」と、小さな個人事業主として不用品回収の仕事をスタートしました。

最初は農機具の買い取りから始めたのですが、だんだんと取り扱う品物の範囲が広がり、同時に仕事を手伝ってくれる後輩や友達も増えていきました。

そして、メンバーが自分を含めて5人になった段階で、「全員をちゃんと食べさせるために法人化しよう」と決心して立ち上げたのがクオーレです。

ー不用品回収を「楽しい」「本気でやろう」と感じた理由を教えてください。

竹本:理由は大きく2つあります。1つ目はお客様にとても感謝されることですね。心からの「ありがとう」を言ってもらえる仕事なので、気持ちよく汗をかけるんです。

2つ目は、伺う家々で毎回違うものが出てくること。「今日はどんなものが出てくるかな」という楽しみがありますから、まったく飽きません。そこにハマってしまいましたね。

お客様の「これに困っている」という声から事業を展開

ークオーレを立ち上げた後、不用品回収から遺品整理へと事業をシフトされていかれたのでしょうか?

竹本:遺品整理へシフトしたのではなく、遺品整理まで事業を拡げたんです。
その理由は、不用品回収をしているなかで、突然ご家族を亡くされて「遺品整理」にお困りの方が多いことに気づいたからです。クオーレを立ち上げて3年たったころでしたね。

引き取ったものを他の方へ繋ぐリユース事業や、相続された物件の各種手続きまでサポートする不動産事業も、お客様の「これに困っている」という声から始めました。

ー“誰かの「むずかしい」を解決する会社”というビジョンにも、お客様の声から事業を拡げてこられたクオーレの思いが反映されていますね。

竹本:そうですね。例えば突然親御さんを亡くされた方が困っているのは、「家の片付け」だけではないことも多いんですよね。

遺品整理に関わるお客様のお困りごとを、すべて僕たちで解決したいという思いを言語化したのが、このビジョンです。

ー創業当初からこのビジョンだったのですか?

竹本:このビジョンは去年から掲げています。

創業当時から軸としてきたのは、「人を大切にしよう」という考え方です。

僕たちの仕事は、人と密接に関わります。「お客様や従業員、関わる周りの人たちを大切に」というカルチャーを作ってきたつもりですし、その軸は今も変わっていません。

ニーズの増加とともに業界課題も発生

ー遺品整理の業界は、創業から現在までに変化はありましたか?

竹本:僕らがクオーレを立ち上げたのは、業界の黎明期でした。それから徐々に二―ズが顕在化して、現在新しい業者が急激に増加しています。

しかし残念ながら、悪徳業者と言われる業者も増えていて、作業当日の追加料金請求や、金品の窃盗、不法投棄などのトラブルが業界の課題になっていますね。

そういった状況を改善したいという思いもあり、業界で先駆けて事業を始めた僕たちが上場して、「業界のスタンダード」を作っていきたいと考えています。

ーお客様とトラブルが起きないように、どのような対策をされているのでしょうか?

竹本:いろいろな対策を取っていますが、お客様の家に上がらせていただくのは、新卒を中心とした「正社員」に限っている点が特徴です。つまり、クオーレでは採用から教育までかなり力を入れた人材にしか、接客を任せていないんです。

業界で新卒を採用しているところは僕たち以外に聞いたことがありませんから、クオーレならではの取り組みだと思います。

経営者は「夢」を持ち続けられるのが良いところ

ー業界に先駆けてクオーレを立ち上げられ、今年14期目に突入されました。これまでを振り返ってみて、起業して良かったのはどのようなことでしょうか?

竹本:起業する前に考えていた、「お金を稼ぎたい」という夢を実現できたことですね。

そして、僕は40歳になりましたが、起業当時から変わらず夢や目標を持ち続けることができています。なぜなら経営者は、自分で設定した「やりたいこと」を実現していけるからです。それは本当に楽しいですね。

ー起業当初の夢と今の夢は違いますか?

竹本:「まだ実現できてないステージに行きたい」という意味で言えば、起業したころも今も同じ夢を持っていると思います。ただ、その夢の大きさや解像度は変わりました。

ー夢の解像度がどんどん上がっているのでしょうか?

竹本:そうですね。起業してからは、自分よりもはるか先に行っている人たちと知り合いました。

そういった方々から、自分にとって参考になる事例や成功パターンを見聞きして、「これが自分にとって楽しそうだな」「自分もこうしよう」と取り入れることができますので、解像度が高くなっていますね。

というのも、僕の場合は起業当初それができなかったんです。地元の田舎でスタートして、誰からもアドバイスをもらえない環境でしたから。

ー今は、どういった事例を参考にされているのでしょうか?

竹本:既に上場を経験した方からの「上場して後悔している」という話や、逆に「すごく良くなったから絶対上場した方がいいよ」という話です。

さらに「会社を売って人生がつまらなくなった」といった、はたからは成功しているように見える失敗談も、とても参考になりますね。そのような話を聞くと、大変な時期でも自分を客観視することができますから。

悩みのほとんどが「人」の問題

ー大変な時期もあったのですね。起業してからここまで会社を成長させるなかで、どのようなことが大変でしたか?

竹本:大変だったのは、人が辞めてしまったり、人と意見が食い違ってしまったりといった「人」の問題ですね。僕がネガティブに悩むことのほとんどが、人がらみかもしれません。

ー意見の食い違いは、何が原因で起こってしまうのでしょうか?

竹本:経営者が見ているのは、社内ではなく市場です。「このマーケットの中で、会社をどう成長させていくのか」を考えなければなりませんから。

ですからマーケットの変化に伴って、僕が数年前に言っていたことと今言うことは変わります。「やろう」と話していたことを、「やっぱりやめよう」と伝える場面もありますから、当然納得できない人もいますよね。

ー会社を成長させるために、経営者として考えが変わる瞬間が出てくるのですね。

竹本会社を成長させたいなら、経営者もどんどん成長しなければなりません。すると、数年に一度は考えも変える必要がでてきます。

それ自体は仕方ないことだと思いますが、そのために起こってしまう衝突への対処はつらい部分もありますね。

ー事業を拡げていくときに大変だったことはありますか?

竹本不動産事業をスタートさせたときは、資金繰りで苦労しましたね。

実は不動産未経験で始めたので、僕の中に「資金繰り」という概念がなかったんです。だから、お客様から要望いただいた分を現金でバンバン買ってしまっていて。その結果、資金がショートしかけてしまったことが何度かありました。

そのときは、外部の専門の方も入れながら銀行から上手に調達する方法を学んで、なんとか解決できましたが。

会社の変化でいうと、今が一番大変な時期かもしれません。

ー今が「会社の変化」の時期なのですか?

竹本:上場するという目標に向かって、自分の手の届く範囲だった「商店」から、パブリックな「企業」へと、まさに今体質を変えていっているところなんです。

ー「商店」から「企業」にしていく過程で、経営者として大変なのはどのようなことですか?

竹本:経営者としての考え方から経営の仕方まで、全部変えていかなければならないのが大変です。

当たり前ですが、お金も好きには使えません。僕よりもずっと小さな会社の経営者の方が、自由に使えるお金は多いのではないでしょうか。

ー会社が大きくなればなるほど、経営者の手元に残るお金も大きくなるイメージがありました。

竹本:上場を目指していなかったら、そういう面もあるかもしれません。でも、僕は上場を目標にしていますから、節税よりも利益を出すための業績管理を徹底しています。

そういう段階の会社は、経営者の個人的なお金は多くありませんね。

業界初の上場を目指す理由

ーそのようなご苦労をされながらも、上場を目指している理由を教えてください。

竹本:僕たちの業界には、まだ上場企業がありません。そして今、業界で一番大きな規模なのが僕たちです。

そのようなタイミングに出くわすことって、滅多にないですよね。「業界で一番に上場するチャンス」があるのなら、やらない手はないなと。

さらに、僕たちが上場することによって業界をもっと良くしたいという思いもありますので、今は「絶対やるしかない」と頑張っているところですね。

もしも、すでにたくさんの企業が上場しているような業界だったら、ここまでして上場しようとは考えなかったかもしれません。

ー上場するという目標のために、今一番力を入れているのはどのようなことですか?

竹本:もちろん全部に力を入れていますが、一番は「管理体制の強化」です。

これまでは「事業を伸ばす」という攻めの動きが中心でした。上場するには管理体制を整えることも同じくらい大切ですから、今はそちらに力を入れている段階ですね。

ー最後に、起業を考えている方や起業したばかりの方へ、一言アドバイスをいただけますか?

竹本:ある程度の業績を作るためには、人の何倍も仕事に「没頭」するといいのではないでしょうか。

周りを見ていると、頑張っている人は大抵結果を出しています。反対に、あまり上手くいかなかった人は、頑張っているように見えても行動量が足りなかったりします。

何事も「没頭する」ほど頑張れば、自然と結果もついてくると思いますね。

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(取材協力: 株式会社クオーレ 代表取締役 竹本 泰志
(編集: 創業手帳編集部)



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