スポーツ選手がセカンドキャリアで成功する秘訣を解説!実際の選択肢も紹介。
スポーツ選手は誰もが直面するセカンドキャリアの現状とは?
スポーツ選手が引退後に歩む道がセカンドキャリアです。
スポーツ選手として競技に打ち込み、華々しい活躍をできる時間には限りがあります。プレーできる期間は競技によって異なりますが、30代で引退を迎える選手は多いです。
20代から30代にかけての若い時期に転機が訪れるため、スポーツ選手のセカンドキャリアは社会的な課題の一つでもあります。
この記事では、スポーツ選手がセカンドキャリアで成功するための秘訣や、実際の成功事例を紹介します。
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この記事の目次
スポーツ選手が引退前にセカンドキャリアを考えておくべき理由とは
スポーツ選手は誰でもいつかは引退する時がやってきます。予期せぬ怪我で突然、選手生命を絶たれてしまうケースもあります。
引退後の人生をより充実したものにするためにも、競技を続けている間からセカンドキャリアについて考えておきたいです。
スポーツ選手引退後のセカンドキャリアとは
スポーツ選手のセカンドキャリアとは、一般的に選手が引退した後の人生を広く意味します。
スポーツ選手の中にも競技に専念してチームと年俸契約を結ぶか、スポンサー収入を得て活動するプロ選手と、企業に所属して仕事もこなしながらプレーする選手がいます。どちらの場合も引退後は選手ではなくなるので、セカンドキャリアは「第2の職業」と言い換えることもできます。
一般的な社会人でも転職や定年退職後の人生をセカンドキャリアと言うことがありますが、スポーツ選手の場合はその分岐点が20代から30代の比較的若い時期にあるのが特徴です。
スポーツ選手が引退する平均年齢は29.9歳
セカンドキャリアを考えるうえで、何歳くらいまで競技を続けられるか、スポーツ選手としてどのくらいの収入を得られるかというのは、その後の人生にも影響します。
笹川スポーツ財団の調査(※1)では、オリンピックに出場経験がある選手が引退した平均年齢は29.9歳というデータがあります。引退理由については、夏季オリンピックに出場経験がある選手の45.5%が「年齢による体力的な問題」を挙げ、複数回答で「仕事を優先するため」と答えた選手も46%と半数近くを占めました。
(※1)オリンピアンのキャリアに関する実態調査
スポーツ選手としての生涯年収について
体力的な問題や、生活を考えて仕事を優先する選手が多い傾向にあります。
また、スポーツ選手としての生涯年収をプロ野球を例に見てみます。1軍で活躍する選手は年俸1億円を超える選手もいますが、逆に年俸が1000万円に満たない選手も数多くいます。
日本プロ野球選手会が発表した資料では、2023年度の全球団の選手の年俸の平均は4468万円でした。ただ、中央値は1600万円となっています。一部飛び抜けて年俸が高い選手がいることで平均は高くなっていますが、真ん中はこの金額です。
仮に年俸1600万円で一般的なサラリーマンの生涯年収といわれている2〜3億円を稼ぐ場合は、少なくとも13年以上はプレーし続けなければなりません。
スポーツ選手で高額な収入を得られるのは一握りです。戦力外通告や怪我で競技を辞めざるを得なくなった時に、そこから何をしたら良いか悩む選手は少なくありません。
そのため、現役の間からセカンドキャリアについて考えることが大切になります。
スポーツ選手のセカンドキャリアの選択肢
スポーツ選手が引退後に歩むセカンドキャリアの選択肢はどのようなものがあるでしょうか。以下で具体例をいくつかご紹介します。
選手経験を生かした指導者
選手としての経験を生かして指導者になるというのが一つの道です。
個人競技のコーチや、チームスポーツの監督など、選手の目線を持ちながら教える立場として競技に携わることができます。結果を出すのが目標だった選手時代とは異なり、選手を支えたり、チームが目指す方向へ導いたりするコミュニケーション能力やリーダーシップが必要になります。
トップレベルから子どもたちへの指導まで、年齢層にも幅があります。競技経験を生かしやすいという点では、比較的スムーズに次のキャリアに進むことができます。
チームスタッフや解説者などのスポーツ関連業
チームスタッフや解説者などでスポーツに関わり続けることも選択肢となります。
選手を引退した後にチームの広報や営業に転身するケースもあります。解説者としてメディアの立場で競技の魅力を発信することも可能です。
引退後も競技の現場に近いところで仕事ができますし、選手経験を生かせる分野と言えます。
企業に就職
スポーツ選手から一般企業に就職することも選択肢です。
積極的にスポーツ選手を中途採用している会社もあり、一つの物事に打ち込んできた姿勢や、チームワークを評価する企業は多いです。
新しい世界での挑戦は苦労する部分もありますが、選手経験とは全く別の分野で活躍している人もいます。
学校でに学び直し
引退後に大学や大学院に入って学び直すという方法もあります。
学び直して知識を身につけたうえで、就職したり、起業したりしてキャリアを築いていきます。大学で選手としてプレーした競技を、より学術的に研究するという人もいます。
資格を取得
就職や起業を目指して資格を取得するという選択肢もあります。
現役中から少しずつ勉強を重ね、難関の資格を取得する人もいます。競技経験を生かすという面では、柔道整復師や理学療法士といったスポーツトレーナーに関わる資格も候補となるでしょう。
起業してビジネスに取り組む
スポーツ選手が引退後に起業してビジネスに挑戦するというケースも多いです。
笹川スポーツ財団がオリンピック出場経験がある選手を対象にした調査(※2)では、引退後に生計を立てている職業について、11.5%が起業などの個人事業主を含む自営業と回答しています。
起業は自分自身でやりたいことができるので、スポーツ選手の経験を生かすこともできますし、新たな分野にチャレンジすることもできます。目標を立てて達成していくという部分で、スポーツとビジネスには共通点もあり、力を発揮する元選手の経営者はたくさんいます。
起業して成功すれば選手時代より多くの収入を得られる可能性もあります。
引退は選手としての区切りでもあり、競技の第一線から離れなければならない寂しさもありますが、起業をして新たな目標ができれば、選手時代と同じような情熱を自身の事業に注ぐことができるでしょう。
(※2)オリンピアンのキャリアに関する実態調査
兼業やデュアルキャリアも検討する
スポーツ選手の現役中から少しずつセカンドキャリアを進めることも可能です。兼業やデュアルキャリアという方法です。
競技をしながら会社員としても勤務し、引退後はその会社での勤務時間を増やすという選択肢や、競技と並行して他の事業や仕事にも取り組むことが挙げられます。
選手を続けながら学校に通ったり、通信課程で学んだりすることもデュアルキャリアの一つです。
現役中から起業する選手もいますし、YouTubeで情報発信することで引退後のキャリアに繋がった選手もいます。長期的な視点で自身のキャリアを考え、選手のうちからセカンドキャリアの助走をとるイメージです。
スポーツ選手のセカンドキャリアの成功の秘訣
では、スポーツ選手がセカンドキャリアで成功するための秘訣はどのような点があるのでしょうか。4つのポイントについて説明します。
自分自身の強みが何かを分析する
まずはスポーツ選手として培ってきた経験を振り返り、自分自身の強みが何かをしっかり分析することが大切です。
地味な練習もコツコツ積み重ねられる粘り強さや、仲間との連係を高める協調性、チームをまとめるリーダーシップなど、生かせる部分があるはずです。
そこから自分が向いていること、やりたいことを整理してセカンドキャリアにつなげていきましょう。
スキルアップに力を入れる
学習やスキルアップに力を入れることも重要です。
スポーツに打ち込むあまり、他のことに時間をかけてこなかったという選手は少なくありません。企業に就職する場合はパソコンなどのスキルを求められることもありますし、取引先とのコミュニケーションに社会的マナーも必要です。
不足してしまっていると感じるスキルは、本などで学んだり講習に通ったりして身につけていくことが大切です。
人的ネットワークを最大限生かす
スポーツ選手として広げてきた人的ネットワークは最大限生かしましょう。
人との縁で自分が思ってもいなかったところへ道が開けることもあります。現役中の仲間や指導者の紹介でセカンドキャリアが決まるケースもあるでしょう。
スポーツを通して関わってきた、たくさんの人たちの力を借りることも大切です。
視野を広げ自分自身の世界も広げる
スポーツの世界にこだわらず、自身の視野や世界を広げていくことも必要です。
スポーツ一筋だったのでその世界しか知らないという思いがあると、得意ではない分野に足を踏み出しにくいこともあるかもしれません。それでも、スポーツ以外に目を向けたり、選手の頃とは違う分野の人たちと関わったりすることで見える道もあります。
新たな人脈がセカンドキャリアで成功するきっかけになることもあります。
スポーツ選手のセカンドキャリアの支援制度
上記で、スポーツ選手のセカンドキャリアの成功の秘訣についてご説明しましたが、そちらに加えて、おすすめなのがスポーツ選手に特化したセカンドキャリアの支援です。
選手のセカンドキャリアがスポーツ界の課題となる中で、セカンドキャリアの支援制度も実施されています。いくつか代表的なものをご紹介します。
スポーツ庁「スポーツキャリアサポート支援事業」
スポーツ庁が行なっている「スポーツキャリアサポート支援事業」では、選手のデュアルキャリア形成などを目指して、各競技団体と連携して事業に取り組んでいます。
選手のキャリアをサポートするアスリートキャリアコーディネーターの育成や、選手がキャリアを考える機会を設けるプログラムがあり、実際にサッカーや卓球のプロチームでキャリア研修会が開かれました。
今後は選手のインターンシップなどの活動も目指しています。
日本オリンピック委員会(JOC)「アスナビ」
日本オリンピック委員会(JOC)が行なっている「アスナビ」では、現役選手と企業のマッチングを支援しています。2024年3月時点で約230社に400人近くの選手が採用されたといいます。
「現役アスリートの就職支援」が特徴の制度で、選手の採用は正社員または契約社員、勤務体制は競技を優先するといった条件があり、選手のデュアルキャリアを促進する面もあります。
選手が所属することで、採用した会社は選手を応援する一体感が生まれるといったメリットもあり、様々な競技の選手がこの制度を利用して就職につなげています。
転職サイト・エージェント「スポーツ選手のセカンドキャリア支援」
こうしたスポーツ団体の支援の他にも、転職サイトや転職エージェントの中にはスポーツ選手の就職活動に力を入れている企業もあるので、セカンドキャリアのために利用するのも選択肢となります。
スポーツ選手がセカンドキャリアで注意したい失敗する原因
スポーツ選手がセカンドキャリアで失敗してしまうケースには原因があります。いくつか注意したい点を紹介します。
元プロのプライドが邪魔をする
スポーツ選手として輝かしい成績を残したり、プロとして活躍したりすると、セカンドキャリアでそのプライドが邪魔をしてしまうことがあります。
選手時代の活躍が素晴らしいものでも、傲慢な態度やマナーが悪いとマイナスになります。金銭面でも高額な年俸を得ていた頃のような感覚で使っていると、すぐに貯金が底をついてしまうこともあるので気をつけたい部分です。
一般社会の常識を知らない
スポーツ選手は小さい頃からその競技に打ち込み、その世界しか知らないという人が少なくありません。
そのような場合にセカンドキャリアで起こり得るのが、一般的な社会の常識を知らないことがあるケースです。勉強にあまり時間をかけられなかったという選手もいるでしょう。
セカンドキャリアのための学び直しなどで改善できるので、気をつけたい点です。
知識が不足しているビジネスに手を出す
スポーツ選手がセカンドキャリアで失敗するもう一つの原因が、知識が不足しているビジネスに手を出してしまうことです。
自分の店を開きたいという希望があって、飲食店やファッション関連の店を立ち上げることもあるでしょう。店を開くことは良いのですが、問題は準備不足で店の経営に必要なことを勉強しないままオープンしてしまうことです。特に飲食業は競争も激しく、廃業率も高い業界です。
スポーツ選手で高額な収入を得ていると、共同出資のような形で事業を持ちかけてくる人が寄ってくることもあります。そのような甘い誘いには乗らず、起業する際はしっかりと知識を身につけて準備をした方が良いです。
スポーツ選手のセカンドキャリアの成功例
スポーツ選手の中には指導者などでスポーツ界で活躍する人もいますし、別の業界でキャリアを築いている人もいます。セカンドキャリアの成功例を3人紹介したいと思います。
JリーガーからIT企業に就職・内村圭宏さん
元プロサッカー選手で、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌などで活躍した内村圭宏さんは、ITエンジニアとしてセカンドキャリアを歩んでいます。
17年間、プロとしてプレーし、2020年に引退。選手生活の終盤からIT業界に興味を持ち、勉強を始めていたといいます。サッカー選手の経歴が評価されて2020年4月から札幌のIT企業に就職。エンジニアの経験を積んで2022年には名古屋の企業に転職しました。
2022年にはサッカースクールも立ち上げ、「JリーガーからITエンジニア」という異色の経歴を持ちながら、サッカースクールの代表も務める複数のキャリアで活躍しています。
阪神投手から公認会計士に転身・奥村武博さん
プロ野球の阪神で投手としてプレーした奥村武博さんは公認会計士を務めています。
岐阜県立土岐商業高校から1998年に阪神に入団しましたが、ひじや肩の怪我に悩まされ、1軍での登板機会がないまま2001年に現役を引退しました。
その後は飲食関連の仕事をしていましたが、一冊の資格ガイドをきっかけに公認会計士を目指すことを決めたといいます。ただ、公認会計士は医師や弁護士などの法曹資格と並ぶ高難度の三大国家資格。それでも、そこから9年間を勉強に費やし、2013年に公認会計士試験に合格したのです。
現在は公認会計士として働きながら、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構の代表理事を務め、自身の経験からスポーツ選手のセカンドキャリアを支援しています。
柔道五輪金メダリストからアイスクリーム店員に・松本薫さん
柔道のロンドンオリンピック金メダリストの松本薫さんは、柔道家からアイスクリーム店員へと転身しました。
「野獣」の異名を持ち、2012年のロンドンで金メダル、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは銅メダルを獲得した松本さん。結婚と出産を経て、2019年に現役を引退した後、「ダシーズファクトリー」というアイスクリーム店で働き始めました。
松本さんが柔道の選手として所属していた会社の社長との縁でアイスクリーム事業に携わるようになったそうです。
店舗での販売や製品開発に関わり、「誰でも安心して食べられるアイスクリーム」をコンセプトにしたグルテンフリーのアイスや、オーガニックコーヒーを開発し、柔道とは別の世界で活躍しています。
まとめ・スポーツ選手のセカンドキャリアは、就職や起業、兼業を視野に入れよう
スポーツ選手のセカンドキャリアは現役の間から考えることで、その後の人生を充実したものにつなげていくことができます。
指導者として選手の経験を生かすこともできますし、就職に加えて、選手時代から兼業するデュアルキャリアも今後さらに広まっていくでしょう。
選手時代のように自分の可能性を信じて、起業するのもまた新たなチャレンジとして魅力的です。
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(編集:創業手帳編集部)
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