インボイス制度が確定申告や事業者に与える影響は?求められる対応をご紹介

創業手帳

事業者が知っておくべき消費税の確定申告やインボイス制度の影響


事業者の課税売上高が一定の水準を超えた場合、消費税の申告や納税の義務が生じる課税事業者に分類されます。
課税事業者は、通常の確定申告だけではなく、消費税の確定申告もしなければいけません。
また、2023年10月から始まるインボイス制度についても把握しておく必要があります。

今回は、消費税の納税・確定申告やインボイス制度が与える影響、インボイス制度に向けてやるべきことについて解説していきます。
さらにインボイス制度の6年間の経過措置についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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課税事業者は消費税の納税・確定申告の義務が生じる


課税事業者になると、消費税の納税と確定申告をしなければいけません。まずは、課税事業者と免税事業者の条件、消費税の確定申告について解説します。

課税事業者の条件

課税事業者になるのは、基準期間もしくは特定期間の課税売上高などが1,000万円を超えた場合です。
個人事業主は、基準期間が前々年の1月1日~12月31日まで、特定期間が前年の1月1日~12月31日までとなっています。
法人は、基準期間が前々年の事業年度、特定期間が前年の事業年度開始日から6カ月です。

このような違いがあるのは、法人だと事業年度を自由に決められるためです。
基本的には、2年前の課税売上高が1,000万円を超えたタイミングで消費税の確定申告を行うと覚えておけば問題ありません。
免税事業者であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出すると課税事業者になれます。

免税事業者の条件

基準期間もしくは特定期間のいずれかで課税売上高が1,000万円を超えなかった場合、消費税の確定申告をしなくても問題ない免税事業者とみなされます。
特定期間の給与支払いなどが1,000万円を超える場合も対象です。
開業1年目の個人事業主や設立して1年目の法人だと、前々年もしくは前年の売上が存在しないので、免税事業者となります。

しかし、資本金が1,000万円以上の会社を設立した、特定新規設立法人に該当するといった場合は、売上高に関係なく設立した年も課税事業者とみなされます。
そのため、資本金の額も踏まえて考えなければいけません。

消費税の確定申告について

消費税の確定申告は、所得税の確定申告と比べると一般的ではありません。事業を行っている方でなければすることがないためです。
続いては、消費税の確定申告について詳しく解説します。

課税事業者は消費税の確定申告や中間申告が求められる

インボイス制度が導入されると個人事業主などに影響を与える可能性があります。制度導入後に課税事業者になると、消費税を納めなければいけません。
そのためには、消費税の確定申告が必要になります。
所得税の確定申告よりも手間がかかってしまうので、自分でやろうとすると負担が大きくなります。税理士などの専門家に依頼することも検討しておいてください。

また、中間申告があることも忘れてはいけません。安定した税収を確保し、国が突発的な資金需要に対応できるようにすることが目的です。
納税する側も1回あたりの金額を抑えられるため、メリットはあります。

消費税の確定申告に必要な書類

消費税の確定申告に必要な書類は以下のとおりです。

  • 申告書第一表 消費税及び地方消費税の申告書
  • 申告書第二表 課税標準額等の内訳書
  • 付表1-3 税率別消費税額計算表 兼 地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
  • 付表2-3 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表

簡易原則課税方式で確定申告をする際は、以下の書類を用意してください。

  • 申告書第一表 消費税及び地方消費税の申告書
  • 申告書第二表 課税標準額等の内訳書
  • 付表4-3 税率別消費税額計算表 兼 地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
  • 付表5-3 控除対象仕入税額等の計算表

確定申告書などは、国税庁のホームページ内にある「消費税及び地方消費税の確定申告の手引き・様式等」から印刷できます。

消費税額の計算方法

消費税の計算方法は、原則課税方式と簡易課税方式で異なります。どのような計算方法で算出されるのかご紹介します。

原則課税方式で算出する

原則課税方式で算出する場合の計算式は以下のとおりです。

(1年間の税抜売上金額×消費税率10%)-(1年間の仕入れや経費で支払った金額(税抜) 消費税率10%)

1年間の売上げが600万円、仕入れや経費の合計金額が250万円だった場合を例に消費税額を計算してみます。

600万円×10%-250万円×10%=35万円

計算はそこまで面倒ではありません。しかし、取引きの中に非課税取引がある場合は、除外しなければいけないので面倒だと感じてしまう可能性が高いです。
細かい取引きがあると、事業者が抱える負担は必然的に大きくなってしまいます。

簡易課税方式で算出する

簡易課税方式は、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる計算方法となっています。使用する計算式は以下のとおりです。

(1年間の売上金額(税抜×10%-(1年間の売上金額(税抜)×10%)×みなし仕入れ率

仕入れをする時にかかった消費税は計算する必要がありません。あらかじめ業種ごとに決められたみなし仕入れ率を使って計算をします。
みなし仕入れ率は、卸売業が90%、小売業が80%、農業・漁業が70%、不動産業が40%などです。

卸売業を営んでいる事業者の売上が700万円だった場合を例に計算してみます。

700万円×10%-700万円×10%×90%=7万円

簡易課税方式なら非課税取引を分ける必要もないので、手間をかけずに済みます。
しかし、どのような場合でもみなし仕入れ率がかかるので、納税額が高くなってしまう可能性もないとは言い切れません。

インボイス制度が与える課税事業者・免税事業者への影響


2023年10月から始まるインボイス制度は、課税事業者にも免税事業者にも影響を与えるといわれています。
続いては、インボイス制度の概要や課税事業者・免税事業者への影響についてご紹介します。

インボイス制度とは?

インボイス制度は、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除方式です。
一定の条件を満たしている適格請求書を売り手が発行し、双方が保存しておくと消費税の仕入税額控除が行われるという仕組みになっています。

インボイス制度の導入により、仕入税額控除の適用要件や請求書の様式が変わります。
最初のうちは戸惑うことも多いかもしれないので、早めに準備を進めておくのがおすすめです。

仕入税額控除は、売り手となる取引先から発行された適格請求書を保存している場合に適用されます。
売上げ時に受け取った消費税額から仕入れの時に支払った消費税額を差し引いた上で納税します。

課税事業者は適格請求書の発行事業者になれる

適格請求書の発行ができるのは、適格請求書発行事業者だけです。
適格請求書発行事業者になるには、2023年9月30日までに登録申請を行わなければいけないので忘れないようにしてください。

登録できるのは、消費税の課税事業者だけという点にも注意が必要です。
免税事業者が適格請求書発行事業者になろうとした場合、課税売上げが1,000万円以下でも消費税の課税事業者にならなければいけません。
課税事業者になると税負担が増えてしまうので注意してください。

免税事業者は取引先との関係に注意

インボイス制度が導入された後も免税事業者のままだと、取引価格や取引量が少なくなる可能性がある、課税事業者と新規契約を結びにくくなるといったデメリットが生まれます。
仕入税額控除を受けるメリットが大きいため、取引先との関係が変わる可能性が高いです。

インボイス制度を機に課税事業者になり、適格請求書発行事業者になって仕入税額控除を受けるという選択肢も間違いではありません。
簡易課税制度なら事務処理の負担を軽減できます。

しかし、免税事業者のままだと消費税の納税義務が生じない、インボイス制度の関する煩雑な手続きをせずに済む、といったメリットもあります。
そのため、一概に課税事業者にならなければいけないとは言い切れません。納税義務が生じなければ、消費税の確定申告も不要です。

インボイス制度に向けて課税事業者・免税事業者がやるべきこと


インボイス制度がスタートするにあたり、課税事業者と免税事業者にはそれぞれやるべきことがあります。どのように対応していくべきか解説します。

課税事業者に求められる対応

課税事業者に求められる対応は、適格請求書発行事業者の登録をすること、適格請求書の発行・保存ができる体制を整えることです。
ここでは、それぞれの対応について解説します。

適格請求書発行事業者の登録をする

課税事業者は、2023年9月30日までに申請を行う必要があります。
申請しても通知が10月1日に間に合わないと、取引先に遡って対応してもらう必要があるため注意してください。
当初は2023年3月31日が申請期限となっていました。しかし、令和5年度の税制改正大綱で期限が延ばされています。
まだ申請していない方は、早急に準備を進めて期限に間に合うようにしてください。

適格請求書の発行・保存できる体制を整える

適格請求書の発行・保存ができる体制を整えることも重要なポイントになります。電子取引で受け取った請求書は、データの保存が必要不可欠です。
そのため、紙の請求書も保存するのであれば事務処理の手間を削減するためにも、一元管理できる方法の検討が求められます。

消費税法では紙での保存が認められていますが、改正電帳簿保存法では電子取引で受け取った書類を紙で保存してはいけないとされています。
事務処理を煩雑化させないためにも、一元管理の方法を考えておくことは重要です。

免税事業者は課税事業者になるか慎重に考える

現在免税事業者の場合は、課税事業者になるかどうかを決めることになります。
続いては、課税事業者になったほうが良いケースと、免税事業者のままでも問題ないケースについてみていきます。

課税事業者になったほうが良いケース

課税事業者になったほうが良いケースは、取引先に課税事業者が多い場合です。
また、今後の事業拡大を前向きに考えている場合も、課税事業者になって取引先の幅を広げることが重要になります。
課税事業者になると、取引先の仕入税額控除の対象となり、安定した取引きも実現しやすくなるといった点もメリットです。
このような理由からも、取引先に課税事業者が多いのであれば免税事業者から課税事業者になることを前向きに検討すべきだといえます。

課税事業者に登録したら、適格請求書発行事業者の登録や発行・保存ができる体制を整えてください。早めに準備を進めておくと間近になってから慌てずに済みます。

免税事業者のままでも問題ないケース

免税事業者のままでも問題ないケースは、取引先が一般の消費者・免税事業者・簡易納税の事業者の場合、取引先から了承が得られている場合です。
このようなケースでは、インボイス制度の影響をほとんど受けないため、取引きで不利益が生じる可能性も低いでしょう。
取引先が少ないと了承を得られる可能性も高いので、交渉してみる価値はあります。

課税事業者は仕入税額控除を受けるために、課税事業者のみと取引きしたいと考えるケースが多いです。
しかし、唯一無二のスキルや才能がある免税事業者であれば、そのまま契約したほうが得だと考えるケースもあります。
したがって、ほかと大きく差別化できるスキルの持ち主は、免税事業者のままでも問題ないといえます。

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インボイス制度の6年間の経過措置について


インボイス制度には6年間の経過措置が設定されています。最後に、この措置がどのようなものか解説していきます。

インボイス制度の導入により懸念されている影響は、業務が煩雑になってしまったり、金銭的な負担が大きくなったりする、などです。
そのため、インボイス制度には6年間の経過措置が設けられ、事業者の負担軽減をしようと考えられています。

適格請求書発行事業者以外から課税仕入れがあった場合、2023年10月1日から3年間は80%、2026年10月1日から3年間は50%の仕入控除ができます。
経過措置の適用を受けるためには、区分記載請求書と同じ事項の記載がある請求書などの保存、経過措置の適用を受けることを記載した帳簿の保存が必要不可欠です。

まとめ

2023年10月1日からスタートするインボイス制度は、申請期限が9月30日までとなっています。
まだどうしようか迷っている事業者もいるかもしれませんが、早めの申請が重要です。
しかし、課税事業者に必ずならなければいけないわけではありません。自社の状況を鑑み、免税事業者のままでも問題ないのか考えてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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