IVA 相原 嘉夫|スニーカーの真贋鑑定サービスから始まった「フェイクバスターズ」の道筋

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年06月に行われた取材時点のものです。

国内シェアNo.1の真贋鑑定サービスで「本物だけが消費者の手に届く世界」を目指す


あらゆる「フェイク(偽物)」が横行する今の時代、真贋鑑定サービスは需要が高まり続けています。

二次流通市場でも安心してショッピングを楽しめるのが、IVA株式会社が提供する真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ」です。

スニーカーの鑑定を皮切りに、現在はアパレル、アクセサリーブランドなど約90ブランドを鑑定できるまで事業を拡大中。今後も順次ブランドを追加する予定です。

また、同社は国内シェアNo.1を誇る真贋鑑定サービスを、日本だけでなく全世界に展開することを目指しています。

今回は代表取締役を務める相原さんの起業までの経緯や、事業にかける熱い思いを、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

相原 嘉夫(あいはら よしお)IVA株式会社 代表取締役社長
1995年生まれ。学生時代に起業し事業譲渡を経験。リユース業界が抱える「偽物販売」に着目し、2019年にスニーカーを対象としたAIと鑑定士を掛け合わせることで高い精度を実現した真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ」を立ち上げ、IVA株式会社を設立。日本語・中国語のバイリンガル。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大学時代に起業した1社目で学んだ「在庫リスクとキャッシュフローの大切さ」


大久保:相原さんは珍しく学生時代に起業された方とお伺いしているのですが、どのように学生起業されたのかお聞かせ願えますか。

相原:IVA株式会社は、学生時代ではなく、学生時代に別の会社を起業したときの優秀なメンバーと一緒に作った2社目になります。

1社目は、そこで培った経験や体験して学んだことなどを活かし、さらに大きなことをやろう!という形で譲渡し、2社目に繋がりました。

大学卒業後、1年経った頃に1社目で出会った優秀なメンバーとともにIVA株式会社を作り、5年間走り続けてきました。

大久保:なるほど、1社目の経験があってこそ今の2社目があるんですね。1社目で学ばれたこと、うまくいったところ、うまくいかなかったところなどをお聞かせ願えますか。

相原:1社目のときは大学生だったので、これといった強みもアセットもなかったのですが、自身の身近にあったリユースに目をつけ、まずはここから挑戦してみようと考え、リユース事業を始めました。

そのとき一番学んだのが、「在庫リスクとキャッシュフローの大切さ」です。多くの在庫を抱え続けてしまったためにキャッシュの回転率が悪くなり、結果として利益率が落ち込み、手元にお金が残らなくなりました。当時は「いかにキャッシュを回すか」ばかり考えていました。

身を持って経験したのは、在庫リスクがあり利益率もそこまで高くないビジネスモデルの恐ろしさでした。

海外を視野に入れた事業展開

大久保:1社目は店舗を持たれていたのですか?それともECなどといった無店舗形態をとられていましたか?

相原:リアル店舗は持っていなくて、国内から集めたいろいろなものを海外の大きなショップや会社に輸出していくスタイルでした。

大久保:なるほど、海外に向けて販売しているんですね。オークションサイトとかそういったところですか?

相原:中国やアメリカ、台湾、韓国の大きなお店などでした。

大久保:想像以上にレベルが高いですね。

相原:実は私自身が中国語を話せることもありまして、中国をはじめとする海外の市場でビジネスを展開するにあたっても非常にスムーズに進められました。フェイクバスターズのCOOをしているメンバーも中国人です。

比較的最初から大きめの仕事ができたのには、中国語という言語を壁に感じなかったのがひとつの理由だと思います。

大久保:在庫を抱え、かつ海外に向けて展開していくのは2倍大変どころか2乗で大変だと感じられますが、やはり海外展開に可能性を感じていたから進められたのですか?

相原:そうですね、中国は消費スピードも量もすごいんですけど、純粋に中国からの需要が高まっているところがあります。

「あの人に頼めば日本の商品の販路をガンガン開いてくれるよ」というように、自然と評判が広がっていきました。

中国の方と取引をすることに対して抵抗がある方もまだ多いと思うのですが、それが私にはあまりなかったので、なるようにしてなった、という感覚です。

1社目の経験があってこそ実現した2社目のスムーズな立ち上げ


大久保:IVAを立ち上げたときは、1社目で会社を経営して得た善し悪しや経験が糧になり、立ち上げからとてもスムーズに進められたのですか?

相原:おっしゃる通りで、「会社ってどうやって作るんだっけ?」「バックオフィスは何をするんだっけ?」などをすべて理解している状態でスタートダッシュをきめることができたので、会社設立は最短距離で進むことができ、ビジネス自体にしっかりと集中することができました。

そして事業を継続していく上でかかるであろうコストを最大限圧縮することを考えました。IVAは、従業員を少数精鋭にするなど、固定費を増やさないように工夫しています。従業員数が事業の規模に対して少ないことに驚かれることもあります。

大久保:やはりとてもいい流れで進めることができたのですね。そして今に繋がっていくことになると思いますが、IVAについてお聞かせ願えますか。

相原:現在はスニーカーを中心とした真贋鑑定、本物と偽物を見極めるサービス「フェイクバスターズ」を提供しています

1社目で学び、強く感じた部分を活かし、在庫を抱えず、利益率の高いビジネスモデルにしました。

1社目ではスニーカーなども扱っていたのですが、中国に向けて販売するとなると「信頼」が非常に重要なウエイトを占めることになります。規模が拡大するにつれて、僕たちが仕入れをしているときも偽物を掴まされるリスクが常について回ってきていたんです。

その対策としていわゆる鑑定士と呼ばれる人たちを探してコンタクトを取ったところ、まずは写真を撮って送ってほしいということになりました。

ここがまず1つ目の問題点で、何百足という数のスニーカーを写真に撮って送らなければならなかったので結構な仕事量が発生します。

そうして進めていくうちに2つ目の問題点として、この鑑定士は本当に信用に値するのか?という話が出てきます。

この問題に関しては鑑定を複数人にお願いして鑑定結果をまとめればいいということになりますが、複数の鑑定士に何百足分もの写真を送って、帰ってきた結果を一つひとつ紐づけして…という情報の整理をしていくことが途方もなく大変だったのです。

当時のメンバーたちと、「これはすごく不便だよね」と話しているうちに、「同じ問題抱えている人って、世界中にいるよね」という着想に至りました。

現に当時からスニーカーを取り扱うリユース企業は多かったのですが、偽物が店頭に並んでしまう問題は、今でも解決できていません。

実際大きな企業の店舗でも偽物が並んでいるところがありました。それならニーズはありそうですし、BtoBでもBtoCでも事業展開できるのではと感じました。また、1社目で抱えていた在庫リスクや利益率の悪さの問題もないのではないかと。

このようにメンバーと話し合い、「フェイクバスターズ」を始めたのが2019年、23歳のときでした。

消費者の目線から考える事業スキーム


大久保:聞いていて、すごいと思う点は、日本だけでなく海外からの顧客も取ることができる事業形態にできそうだという点です。対顧客の大変さなどは往々にしてあるとは思いますが。

相原:はい、そのとおりです。皆さんがイメージする鑑定って、やっぱり商品を手に取って細かく見ていく形だと思うのですが、弊社の何が特別かというと、画像だけで鑑定を行えるところです。

それによって、海外の方も利用できる点が従来の鑑定サービスとの大きな違いだと思います。

また以前は海外のお客様も日本円で決済を行っていただいていたのですが、お客様自身で通貨の変換をしなければいけなかったんです。これって全くお客様に優しくないのでは?と感じました。

グローバルに展開することを視野に入れるのであれば、それぞれの国の通貨で決済をしてもらうべきだということに気づき、今では9つの通貨に対応できるようにしています。言語も日本語、英語、中国語2種、韓国語の5言語に対応しています。

海外進出に成功した企業に共通するものとは

大久保:海外展開される際によく聞く話ですが、日本でのビジネスモデルや価値観をそのまま海外に持っていくことはしなかったのですか?

相原:これは一番重要なことだと思います。最近は消費者にサービスを提供する会社も続々と進出をしています。

もちろん、うまくいく会社もあれば、うまくいかない会社もあると思いますが、現地の日本企業の方などに話を聞くと、日本のビジネスモデルをそのまま台湾に持ってくる会社はほぼ失敗しているようです。

実際に弊社は今、台湾進出を進めていて、サービスも人もローカライズしていかないと本当の意味で愛されるサービスは作れないと考えています。現地の人にとって、どういうサービスだったら使いたいと思うかを意識して海外戦略の策定を行っています。

真贋鑑定はかなり難しい


大久保:次に真贋鑑定についてお伺いします。プロならここを見て判断しますよ、ですとか、本物と偽物って見る人が見ればすぐわかるものだよ、などといったことはありますか?話せる範囲で話していただけたらと思います。

相原:まず前提として、真贋鑑定はかなり難しいです。

本物と偽物の画像をそれぞれ送ってもらい、ここに違いあるよと教えられても、全然分からないものです。見る人が見れば分かるのですが、分からない人からしたら教えてもらっても違いを見分けることができないぐらい難しいです。

ただ明確にここを見れば特徴が出るという点を鑑定士は把握しているので、そこをしっかりと見て鑑定を行います。

たまに匂いを嗅いだりする鑑定士などもいると思うのですが、弊社はまず画像だけで鑑定を行います。そのため、実物が手元になくともしっかりと安定した鑑定ができるのが、本当の意味での鑑定だと考えています。

大久保:なんでも鑑定団という番組で、鑑定の仕方は2種類あると以前話していました。時代背景を起因としてこの組み合わせは何か違うといった見方と、全体の風格と言いますか見る人が見ればわかる経験の蓄積みたいな見方ですね。

相原:そうですね、スニーカーに関して言えば後者の方で、商品自体の細部を過去のデータと豊富な経験値をもとに鑑定していく形です。

組み合わせ(仕様)が違うなどで判断することもありますが、どちらかといえばそういう品物は、論外で非正規品という位置づけです。

大久保:この経験とデータをもとに判断をしていくのは、AI化しやすい領域になりそうですね。

相原:おっしゃる通りです。弊社は始めのうちは人だけで鑑定を行っていたのですが、効率化と精度の向上のためにAIの開発をしました

過去のデータを全て蓄積し、それをAIに読み込ませるというディープラーニングに加え、弊社の鑑定士の言語化されてこなかった経験値を、言語化し機械学習させていきました。結果として、世界最高峰の精度を誇る素晴らしいAIが出来上がり、今でもアップデートし続けています。

大久保:偽物についてですが、本物の工場で偽物の材料使って作っていたりなど、本物と偽物の境が難しいと思うのですがいかがでしょうか。

相原:そうですね、実際本物の工場で偽物を作るという事例は最近あまりなくて、近しい事例ですと、本物の工場から横流しされた素材を使って、まったく関係のない別の工場で作られる。などといったことはあるようです。

弊社ではこれをクローン品と呼んでいるのですが、本物と偽物の見分けをつけるのがとても難しいものが生まれている状況です。

大久保:スニーカー業界の一旦を垣間見ることができました、ありがとうございます。

世界を見据えた今後の展開


大久保:今後どのような展開を望まれているか、お聞かせ願えますか。

相原:残念なことに、世の中にはまだまだたくさんの偽物が出回っています。偽物を買いたくないと思っている人が、偽物を手に取ってしまわないようにしていきたいです。

そのためには大きく2つやらなければならないことがあると思っています。

1つ目は各企業との提携です。大きな企業であっても偽物を取り扱ってしまっている事例がまだまだあるのが現状です。

しかし弊社と提携した企業であれば偽物は取り扱っていない、という世界観を作っていきたいと考えています。

さすがに全ての企業と提携をさせていただくのは現実的ではないですが、弊社と提携をする企業を1つでも増やすことで、エンドユーザーたちに「この会社はフェイクバスターズと提携していない会社だから、1回真贋鑑定に出しておこう」という意識が自然に芽生えるような、鑑定が身近にある社会になれば、偽物を手に取ってしまうリスク自体も減らしていけるのではないかと思います。

2つ目は、先ほどなんでも鑑定団の話が出ていましたが、例えばこの番組に出演している鑑定士を全員弊社から出せるような状況にしていきたいと考えています。

どんな領域の商品であっても、フェイクバスターズの全鑑定士が徹底的に鑑定できるぐらいのレベル感にしていきたいです。

大久保:スニーカーから始まり、アクセサリー、バック、骨董品、あらゆるものを世界の誰しも鑑定できるネットワークを作り上げていくんですね。

鑑定業界の闇


大久保:真贋鑑定の業界について、思うところがあればお伺いしたいです。

相原:業界として大きな問題がありまして、まず1つ目が偽物を販売してしまっても仕方がないと思っている企業がいるという問題です。100%正規品を取り扱うのは難しい、誤って偽物を販売してしまってもそれはよくある話だからと目を瞑ってしまう企業が、残念ながら多いように感じます。

2つ目の問題は、少しブレークダウンした問題となりますが、偽物を売ってはいけないと思って正しく頑張っている企業もたくさんあります。ただそういう会社が大きくなって全国に多店舗展開していくことになったときに、各店舗において営業時間中に鑑定ができるスタッフを常駐させるのは難しいと思っています。

業界全体にあるこの問題に対処できるのがまさに弊社だと思っていて、リモートでタイムリーに鑑定ができるので、例えば全国に500店舗あるとしても、全店舗を遠隔で繋げて、店頭にいるアルバイトの方に写真を撮って送ってもらうだけであとはフェイクバスターズが鑑定する、という形にできるんです。

話は戻るのですが、2つ目の問題を弊社で解決に導けたとしても、企業ごとに事業方針や優先順位が異なるため、課題として認識されていてもすぐ解決に向かうわけではなく、一筋縄ではいかない点が業界全体のペインでもあると考えています。

大久保:消費者にとってもよくないし、業界自体の風通しがよくならないといい人材が集められなくなり業界全体が下火になってしまいそうですね。

相原:本当にその通りで、今この業界は世界の中でも日本が一番発達していて、ほかの国はまだリユースの文化が薄いんですよね。今後世界でリユースはどんどん需要が高まると思っています。SDGsの観点からも大切ですよね。中国本土もそうですが、海外に行くとリユースが大好きな方が多いですよ。海外の方はお得感が大好きなので、今後さらに注目される業界だと思います。

受け取った刺激は全てエネルギーへ変換する

大久保:今の事業で大変だったところや乗り越えてきたところがあれば教えていただけますか。

相原:ビジネスをすることが好きなので、大変だったと思うところがあまりないのですが、僕は他人と自分を比較するタイプでして、成功されている方など、そのビジネスを結構研究します。これが身近な人であればあるほど刺激を受け、早く帰って仕事しよう、もっとやってやろう。というエネルギーに変換されていきます。

もっとうまくできる、もっと大きくできると思っているけど、なかなか進まないときもある、でもやるしかない。やるしかないと思ってもやれるとは限らない。そういう時は、俗にいうつらい時間なのかもしれないですが、その全てがエネルギーになって頑張っていくことができます

大久保:やる気にすべて変換されていくんですね。最後にこれから起業される方や起業したばかりの方へ何かアドバイスがあればいただきたいです。

相原:一番大事なのは突破力だと考えます。どんな状況になっても、前向きに突破していく力があることが一番重要なのではないでしょうか

無駄な小細工はいらないから、ひたむきにやるしかない。「あの人ができている」というのは「自分にもできる」と同じなんです。

「全ては、やるかやらないか。今やれることを必死にやっていきましょう」

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