SXSW(サウスバイサウスウエスト)2023を伊藤羊一&起業学部の大学生が現地レポート

創業手帳

世界最大のアート・テックイベントSXSWに参加した大学生と伊藤羊一は何を感じたのか?


3月11日~20日に米国テキサス州オースティンで世界最大級の複合フェスティバルSXSW(サウスバイサウスウエスト)が行われました。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部はヤフーの伊藤羊一氏が学部長を努めており、起業マインドを持った学生を育成しています。今回のSXSWには、伊藤さんと武蔵野大学アントレプレナーシップ学部2年生6名が参加しました。

今回のイベントで、世界の視点から今の日本の起業志向の若者達は何を感じたのでしょうか。

伊藤さんと、同行した武蔵野大学の学生達にSXSWに参加して現地で感じたことを伺いました。

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武蔵野大学アントレプレナーシップ学部2年生6名
佐藤健太さん、佐々木華彩さん、阿部拳太さん
清水涼太さん、白石絢さん、佐藤菜緒子さん

伊藤羊一(いとう・よういち)
ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部長/Voicyパーソナリティ/株式会社フィラメントCIF(チーフ・イシュー・ファインダー)/株式会社ウェイウェイ 代表取締役/グロービス経営大学院 客員教授
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月よりヤフー。現在Yahoo!アカデミア学長として次世代リーダー開発を行うほか社外でもリーダー開発を行う。2021年4月武蔵野大学アントレプレナーシップ学部を開設、学部長就任。代表著作「1分で話せ」。

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武蔵野大学アントレプレナーシップ学部とは

ーどんなメンバーでアメリカに行ったんでしょう?

武蔵野大学・学生:今回は伊藤さんと、学生の中から英語のピッチをして選抜されたメンバーで行きました。テキサス州オースティンのSXSWとアメリカの起業系の大学(バブソン大学など)を訪問しました。

SXSWでは今世界ではどんなことがトレンドで、それはどんな規模感で行われているのかをみるツアーでもありました。

ー武蔵野大学アントレプレナーシップ学部とはどのような学部ですか?大学でどんな事を学んでいるのか教えてください。

武蔵野大学・学生:武蔵野大学ではヤフーの伊藤羊一さんを学部長に招き、アントレプレナーシップ学部が創設されました。

日本では珍しいアントレプレナーシップ教育をメインとしており、自分の行動で社会に価値提供を行い、形にすることを目指しています。

テーマはそれぞれ自由で、自分の興味のある分野や授業やインターンなどを通して発見していく人も多いです。多くの学生は起業を目指しており、授業プログラムもスキル系、マインド系、実践系の3つの分野で構成されています。

AIアートや環境問題などの最先端の考え方や技術に触れるSXSW

ー今回参加したSXSW(サウスバイサウスウエスト)はどのようなイベントですか?

武蔵野大学・学生:米国テキサス州オースティンで開催される世界最大級の複合フェスティバルがSXSW(サウスバイサウスウエスト)で、最先端の考え方や技術に触れられます

今回のSXSWには、学長の伊藤さんと学生6人で参加しました。

テクノロジーや農産業、ゲーム産業、IT産業など幅広い分野の最先端なものが集結するイベントで、テキサスのオースティンの街全体がイベント会場の大規模なイベントになるような規模で、全米、全世界から参加者や著名な登壇者が集まります。ブースの出店者以外にも街中で広報活動をする人や音楽イベントを開催している人も多いです。

テック系というとオタク、プログラマーのイメージがありますが、SXSWは「アート」という切り口で世界観が構築されているのも特徴です。

ー学びになったセッションやコンテンツはありましたか?

武蔵野大学・学生:全体として社会問題に対しての興味や関心、そしてその問題に対して自分だったら何ができるかの精神があり、そこが日本と違うところの一つだと思います。

アートとAIの未来についてというテーマが多かったです。ジェンダー平等や女性の社会進出と政治参加のようなテーマや、日本から来ている企業のブースもありました。

AIの発達によりAIアートが人気になってきています。そこで人間のアーティストはどうなっていくのかについての議論が行われました。

現時点でAIは完璧な状態ではないが面白いものを生み出す力はある。対して、人間もユーモアがあるものを生み出すことが出来るので共存することが可能なはずだという結論になっていました。

また環境問題が盛り上がっていました。代替できる持続可能な製品というのが大きなテーマだったと思います。

特にPatagonia CEO Ryan Gallertのセッションが印象的でした。環境に配慮しているのでパタゴニアは有名ですが、例えば、環境に対してマイナス事は極力やらない。洋服が破れたら自社で直して顧客に繰り返し使ってもらえる仕組みを提供していたりします。他にも、農業における労働の問題にも取り組んでおり視野が本当に広いと感じました。 

SXSWで学んだ世界と日本の違い

ー日本からの出展はありましたか?

武蔵野大学・学生:電通や日テレ、TBSなどの日本企業のブースもありました。日本のテレビ企業が文字入力を自動化できるシステムを自社開発しておりテレビ局も、進化しているのだと実感しました。

特にTBSのテレビ番組の「サスケ」をテレビだけではなくVR世界でも体験できる仕組みはとても画期的だと思いました。

最新技術のVRを導入することによって、その場の臨場感や空気感を体験できることで、ゲームとは違った体験ができるのではないかと思います。

また、体験することだけが目的なのではなく、先にセットをバーチャルで作り上げることで、不具合を早めに知ることが出来るというメリットもあるということが新しい気づきでした。セットを組む前から問題を知れるので作業の効率化を図れるということです。

2次元の見るだけだったゲームの世界にWeb3を活用し、自分自身がゲームの世界に入り込むことが可能となったことを実感できました。

全体的に海外のブースはラフでオープンな感じですが、日本企業のブースはコンテンツは面白いものがありましたが、かしこまっていて硬い感じがしたので会場の雰囲気に溶け込んでいない感じが惜しい感じでした。

ーSXSW全体で学んだことはなんですか?

武蔵野大学・学生まずテクノロジーのスキルを身につけないといけないと思いました。今後特にエンジニアの需要が高まっていくと肌で感じました。

また環境問題などは本当に真剣に取り組まれているテーマで、日本に住んでいる学生の狭い視野では分からない部分が意識できました。

海外を見ると競争や変化が激しく、新しいものがどんどん生まれています。今までの日本のわりと穏やかな環境だけを考えては戦っていけないと感じました。

(以上、武蔵野大学2年の佐藤健太さん、佐々木華彩さん、阿部拳太さん、清水涼太さん、白石絢さん、佐藤菜緒子さん)

伊藤羊一が感じた、SXSWを通して日本の起業家や学生に伝えたいこと

ーSXSW参加しての感想や日本の起業家や学生に伝えたい事をお願いします!

伊藤:今回、9年ぶりにSXSWに参加しました。私は初日だけの参加で、まだ展示も行われておらず、「これからお祭りが始まるぞ!」という雰囲気だけしか味わうことができませんでしたが、それでも、大きな刺激を得ました。日本と米国の違い、という観点でいくつか気づきがありました。

まず、「町全体が、SXSWを盛り上げる空気に満ちていること」です。

日本では、こうしたイベントが行われる時、イベントはイベント、街は白けている、ということが起きがちです。日本でも、仙台で行われている定禅寺ストリートジャズフェスティバルが近いかもしれないですが、とにかく、街とイベントが一体化している。それもインターネット系のイベントで。この「街をあげてのポジティブさ」はすごいなと思いました。

そして、「とってもダイバーシティ&インクルージョンでフラットであること」

人種、国籍、ジェンダー、年齢など、もう本当に、様々な人が参加し、それをみんなが当然のように受け入れている雰囲気。オーディエンスがどんな人であっても、誰も何も気にしないで参加している。米国では当たり前の光景ですが、SXSWはその最前線にあるように感じました。

日本では、このイベントはビジネスパーソン向け、あのフェスは若者向け、というように参加者の属性が分断されがちですよね。強いて言えば、「サザンオールスターズのコンサート」は、親子孫三代、性別かかわらず楽しめるコンサートだと思いますが、そんな場所が日本では少ないように感じます。

さらに、「参加している皆さん、思い思いに楽しんでいること」です。

このエネルギーがまさに米国ですね。皆さんほんと、楽しそうに参加し、楽しそうに歩き、楽しそうに飲み食いしているのです。ワールドカップでの渋谷ハチ公前交差点のようにバカ騒ぎして楽しむ、ということではなく、その場の空気、そのセッション、その時間をじっくり味わいながら楽しんでいるように感じられました

一言で言えば、SXSWは僕が目指している”Free Flat Fun”な場所でした。そして、それは、マインドフルネス、「今ここを集中して楽しむ」という共通理解が浸透しているからこそ生まれているのかな、と感じました。展示が始まる前だったので全体的な雰囲気をお伝えしましたが、これこそが世界の潮流を生み出してきた米国のアントレプレナーシップの源であるように感じています

大久保写真大久保の視点

SXSWを伊藤さんと学生にレポートしていただきました。
まず面白いのが起業家教育をする学部が日本にもできたこと。そして伊藤さんのような最前線の人が教育に還流して学生をスタートアップやイノベーションの最前線に触れさせる、という動きが好ましい循環だと思いました。停滞感のある日本ですが、イノベーションと教育は突破口になると思いますし、まだまだ希望を捨ててはいけないと思います。こうした意義のある動きが広がっていって貰えればと思います。
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(取材協力: 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部2年生
(編集: 創業手帳編集部)

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