商標登録のメリットとは?しない場合の問題点やデメリット、必要ないケースも紹介

創業手帳

自分で考えた屋号やロゴを守るために商標登録を検討しましょう!していないとさまざまなリスクがあります


自社で展開する商品・サービスのネーミングやマークに思い入れのある経営者の方も多いのではないでしょうか。そうしたネーミングやマークについては、商標登録で権利を独占するのがおすすめです。

今回は商標登録のメリットを解説します。商標登録をしない場合の問題点や必要ないケースなどに関してもお伝えするので、経営者・起業家の方はぜひ参考にしてください。

商標登録とは


商標登録は、事業者が自己の商品・サービスをほかと区別するために使用するネーミングやマークを登録することです。商標登録をすれば商標権を取得でき、登録したネーミングやマークを自分の商標として使い続けられます。

例えば、「創業手帳」も2014年9月19日に商標登録が完了しています。そのため、商標「創業手帳」を自由に使えるのは、基本的には権利者である創業手帳株式会社だけです。

商標登録のメリット


商標登録のメリットは、商品・サービスの保護や発展、その他の利益につながることです。具体的には以下のような利点が挙げられます。

登録したネーミングやマークを独占できる

商標登録をすると、商標権者として登録した商標をビジネスで独占的に使用できるようになります。先ほどの例で言うと、「創業手帳」という商標を使って出版物やWebメディアの事業をすることは、商標権者の創業手帳株式会社が独占的に認められています。

また商標登録をすると、他者が勝手に商標を使った際に差止請求をする権利も発生します。商標の侵害行為で損害が出た場合は、損害賠償請求も可能です。

似たような商標に対しても「使うな!」と言える

商標登録をすれば、自分の登録商標だけでなく、それに似たような商標に対しても使用差止や損害賠償請求を求められます。類似の商標も排除することで、考えたマークやネーミングの使用権を広い範囲で守れる。これも商標登録のメリットです。

ちなみに過去の判例では、清涼飲料水の登録商標「コカコーラ」に類似するとして「コラ コーラ(ColaCola)」なる商品の製造者が罰金3万円に処されました。

更新し続ければずっと商標を守れる

商標権の存続期間は、登録日から10年と決まっています。しかし、10年間の存続期間は更新によっていくらでも伸ばせます

つまり商標登録を一度すれば、更新登録を申請し続けることで、恒久的にネーミングやマークを保護できるということです。

商標の譲渡やライセンス契約で利益を得られる

商標権者は登録商標を独占できるため、もし他者が商標を使いたいとなった場合には、譲渡ないしライセンス契約によって対価も得られます。

例えば、2018年6月は「東京ガールズコレクション」の商標権が、プロデュース会社の株式会社 W TOKYOに譲渡されました。商標権者だった株式会社ディー・エル・イーは、この譲渡によって3億円強の売却益を得ています。

また商標権のライセンス契約では、ヤマザキビスケットの元・看板商品である「リッツ」「オレオ」が有名です。同社は商標権者の米ナビスコ社とライセンス契約を締結し、2016年8月末まで2商品を製造・販売していました。しかし、ライセンス契約が終了すると同時に、商号を「ヤマザキ・ナビスコ」から「ヤマザキビスケット」に変更し、「リッツ」「オレオ」についても販売が終了となりました。

信用度の向上およびブランディングにもつながる

商標登録を済ませると、Registered(登録済み)を意味する「®︎(Rマーク)」をつけられます。Rマークの表示は任意ですが、つけることで社会的信用の向上やブランディングにつながります。

またプレスリリースやSNSなどで商標登録が完了したことを周知することも、商品・サービスの知名度および信用度アップに有効でしょう。

商標登録をしないと生じる問題


​​思い入れのある商品・サービスの名前やログについては、商標登録をするのがおすすめです。商標登録をしなければ以下のような問題が生じる恐れがあります。

なお、商標登録をしなくて起業家が失敗した事例は、以下の記事にも詳しくまとめています。興味のある人はぜひこちらもご覧ください。

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商標登録なんて必要ないと思ってた…後悔してもしきれない事例3つ

差止請求・損害賠償請求をされる恐れがある

経済産業省も注意喚起していますが、商品やサービスを展開前に、商標調査をして他者の侵害をしていないか確認することは重要です。もし他者の商標権を侵害してしまうと、差止請求や損害賠償請求により、大きな損失が出る恐れがあります。

ポイントは、自分が考えた名前やロゴであっても、他人が商標登録を行なっていた場合は使えないということです。そのため、商標調査をして権利の侵害がないかチェックしたうえで、商標登録を済ませるのが望ましいといえます。

参考:経済産業省 中国経済産業局「商標登録していなかった落とし穴」

商標を使用するのにお金がかかる

登録商標を権利者以外が使用する場合は、譲渡やライセンス契約が必要です。そうでないと商標が使えないため、自分で考えた屋号やロゴで商品・サービスを展開することもできません。

例えば、かつて中国では某パソコンメーカーが「iPad」の商標権を持っていたため、Appleは同国でiPadを販売できませんでした。Appleは中国でiPadを発売するため、6,000万ドルを権利者に支払って商標権を確保しました。

上記は極端な例ですが、商標の使用に余計なコストをかけないためにも、早めに商標登録を済ませておくのがおすすめです。

他人に登録されてトラブルになることも

商標登録なしで商品・サービスを展開していると、他人が勝手に商標登録をしてトラブルに発展する恐れもあります。例えば、2002年2月には阪神タイガースと無関係な千葉県の男性が「阪神優勝」を商標登録し、阪神球団と紛争に発展しました。

同商標には無効の審決が出ましたが、もし商標が有効であれば阪神球団は「阪神優勝」のグッズを販売できなかったかもしれません。このような余計なトラブルに発展しないためにも、展開予定の商品・サービスについては商標登録で権利を保護するのが理想的です。

ちなみに阪神球団は2022年12月、過去の反省を踏まえて同年から監督に就任した岡田彰布氏の口癖「そらそうよ」を商標登録申請しています。

また近年では「ゆっくり茶番劇商標登録問題」が世間を賑わせていました。

このように他人に登録をされていてトラブルになるケースは度々見受けられます。

商標登録のデメリット・注意点


商標登録にはいくつかのデメリットや注意点があります。登録申請をする前に、以下の内容を頭に入れておきましょう。

数万から数十万円の費用がかかる

商標登録には最低限、下記の出願料と登録料が必要です。

■出願料

項目 金額
商標登録出願 3,400円+(区分数×8,600円
防護標章登録出願又は
防護標章登録に基づく権利の
存続期間更新登録出願
6,800円+(区分数×17,200円)

■登録料

項目 金額
商標登録料 区分数×32,900円       
分納額(前期・後期支払分) 区分数×17,200円
更新登録申請 区分数×43,600円
分納額(前期・後期支払分) 区分数×22,800円
商標権の分割申請 30,000円
防護標章登録料 区分数×32,900円
防護標章更新登録料 区分数×37,500円

出典:特許庁「産業財産権関係料金一覧」

上記の通り、商標登録の費用は後述する区分数によって決まるため、申請する区分が増えると金額も大きくなります。区分数が1つの場合、商標登録にかかる費用は出願料と登録料を合わせて44,900円です。

また登録申請を弁理士事務所に依頼する場合、弁理士への報酬も必要です。弁理士へ支払う費用は10万円前後が相場と言われています。

登録した区分の商標権のみ保護される

商標登録は、商品・サービスに関わる45種類の区分ごとに行います。区分の異なる商品・サービスについては、基本的に商標権が保護されない(他人でも申請できる)ので注意しましょう。

そのため、展開する事業の範囲が、複数の区分にまたがる場合は、複数の区分で申請するのが望ましいといえます。ちなみに「創業手帳」は、16類(紙製品等)、35類(広告サービス等)、42類(ソフトウェアの開発等)で登録されています。

使用しないと取り消される可能性がある

商標の使用は、商標登録の要件の一つです。商標を長きにわたって(継続して3年が目安)使用しないと、不使用取消審判が請求されて登録商標が無効になる恐れがあります。

よって、例えば、自らは使用しない商標をたくさん取得して、譲渡やライセンス契約で収益を得るといったことは不可能です。そのようなビジネスモデルは商標法にも抵触する恐れがあります。

なお、病気や災害で事業が滞ったなど、正当な理由があれば不使用にはなりません。基本的に商標登録は使用する前提でするはずなので、不使用についてはあまり心配する必要はないでしょう。

商標登録が必要ないケース


商標登録が「必要ない」と断言できるケースはありません。基本的に商標登録はしておくに越したことがない行為です。

しかし、屋号やロゴなどを積極的に公開しないのであれば、それについては商標登録が必要ないかもしれません。例えば、「株式会社山田商事」が「山田バーガー」という飲食店をするなら、会社名「山田商事」の登録は必須ではないでしょう。しかし、「山田バーガー」については商標登録するのが望ましいので、どのみち申請は必要です。

商標登録を申請する際の流れ


商標登録申請の基本的な流れは以下の通りです。大まかには「調査→出願→審査→登録」の順に進みます

商標登録申請の流れ

1. 先行商標調査:他人が同一ないし類似の商標を登録していないか調べる
2. 商標登録出願:インターネット出願を行う(もしくは商標登録願を特許庁へ郵送)
3. 商標審査:方式審査と実体審査の2段階で行われる
4. 登録料納付:登録査定が出れば、32,900円×区分数を納付する
5. 設定登録:商標権が発生する


なお、出願から2、3週間ほど経過すれば、出願内容が特許庁のホームページ等で一般公開されます。

まとめ

商標登録は、大切な自社の商品・サービスを守るための重要な行為です。商標権を得なければ、考えたネーミングやロゴが使用できなくなるばかりか、損害賠償請求をされる恐れもあります。

事業を円滑に推進したいとお考えの経営者・起業家の方は、これを機会にぜひ商標登録をご検討ください

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(編集:創業手帳編集部)

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