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2022年8月24日株式会社ビードットメディカル 古川卓司|超小型陽子線がん治療装置の開発事業で注目の企業
超小型陽子線がん治療装置の開発事業で注目されているのが、古川卓司さんが2017年3月に設立した株式会社ビードットメディカルです。
日本国民の3大疾病の一つに数えられる「がん」。厚生労働省「人口動態統計」によると、2021年にがんで亡くなられた方は38万1497人で全体の26.5%に当たるそうです。つまり、4人に1人はがんが原因で亡くなるというくらいに、身近で他人ごとではない病気となっています。
40代後半以降からの罹患者割合が増える傾向にあり、特に50代~60代にかけては一気に右肩上がりの状態となっています。女性に関しては30代~40代にかけて、女性特有のがん罹患率が最も高く、まさに働き盛り、子育て真っただ中という、社会を支えている中心世代を襲う病でもあるのです。
幸いなことに、現代ではがん検診の普及や最新の治療薬や治療法が次々と開発され、早期発見・早期治療により治癒したり生存率を上げることができるようになってもきています。従来のように手術で患部を切除して長期入院を余儀なくされたり、激しい副作用のある抗がん剤治療だけではない、より体への負担が少なく、通院でできる治療形式も一般的になってきました。「陽子線がん治療」もその一つです。
陽子線がん治療は、患者さんの身体的な負担や副作用のリスクが少なく、通院期間も短くて済むので、社会生活への影響も最小限に抑えられ、患者さんのQOL(生活の質)を維持できるという画期的な治療法として注目されています。
しかし、残念なことに、患者さんの多くがこの治療法を手軽に受けられる状況には至っていません。
そこで今、患者さんの心身・金銭の負担を減らし、普段の生活を送りながらがんの治癒が可能となる社会を実現し、国民病「がん」を一日も早く撲滅しようと奮闘する、新しい陽子線がん治療装置の開発事業に、大きな期待と注目が集まっています。
株式会社ビードットメディカルの古川卓司さんに、事業の特徴や今後の課題などについてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
私たちが開発しているのは、世界最小クラスの超小型陽子線がん治療装置です。陽子線治療とは放射線治療の一種で、腫瘍にピンポイントに照射が可能なため副作用が少なく、身体に優しい治療法と言われています。
しかしながら、この陽子線治療を提供する病院は全国に19箇所しかなく、ごく一部の患者さましか受けられていないのが現状です。それは治療装置が高さ約10m、重さ約200tと巨大で、かつテニスコートほどのスペースが必要であること、そして費用として50億円以上が必要となるため、病院が導入するにはハードルが高い医療機器であることが大きな原因です。
▼従来の治療装置
そこで弊社は従来比で高さ1/3、重さ1/2に小型化し、X線治療装置と同程度のサイズを実現しました。この装置の圧倒的な小型化により病院の導入コストを大幅に下げることで、陽子線治療施設数を増やし、より多くの患者さまに陽子線治療を届けることができます。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
陽子線治療は一般的に普及しているX線治療に比べ副作用を抑えることができると、多くの放射線治療の先生方がご存じですが、スペースやコストが原因で断念するケースが多いのが現状です。これまで陽子線治療の導入を検討したものの、これらの原因で断念した病院にこそ、弊社の超小型陽子線がん治療装置を検討していただきたいです。
陽子線治療は副作用が少ないという特徴から、高齢者など身体に負担の少ない治療が望ましい方や予後が長い小児やAYA世代の方、従来の日常を維持しつつ働きながらがん治療を受けたい方に、特に期待される治療法です。施設数を増やし、多くの患者さまに陽子線治療を届けていきたいと思います。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
現代は2人に1人ががんになる時代と言われていますが、医療の技術が進歩するにつれて、患者さまが「がん治療」に求めるものも変化してきています。がん治療に「治す+α」が求められるようになり、それは患者さまの生活を豊かにする「QOL(生活の質)の向上」であると、私たちは考えています。
陽子線治療は、その特性から正常組織へのダメージが少なく、副作用が少ないことに加え、通院で治療ができる魅力的な治療法です。「革新的な技術で小型・低価格な陽子線がん治療システムを実現し、世界中誰もが高度な陽子線がん治療を受けられる時代を創る。」それこそが私たちの使命だと考えています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
ビードットメディカルは、国立研究所である放射線医学総合研究所(以下、放医研)発スタートアップで、長く粒子線治療の装置開発から製造、病院での臨床運用まで一緒に手掛けてきた、信頼できるメンバーたちと共に設立しました。当初は放医研で大手メーカーに対して提供してきた技術コンサルティングを事業としていましたので、設立時は順調に物事が進んでいました。しかし、陽子線治療装置を自分達で製造すると大きく舵を切ってからは、スタートアップのものづくりがいかに大変かを実感しました。アイデアも技術もある、しかしそれを形にするための協力会社がなかなか見つからず、装置のコア部分は自分たちで製造することにしたのですが、一から作り上げていくのは大変でした。メーカー出身者を集めてなんとか作り上げ、初号機に組み込めた時は感動もひとしおでした。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
私たち創業メンバーは、放医研で装置開発から臨床運用まで一連の流れを経験してきた中で、病院が本当にメーカーに求めていることと、メーカー側の対応とのギャップを目の当たりにしてきました。私たちはその両方を知っているからこそ、ニーズをいち早く的確に捉え、それを製品に反映させ、病院、さらには患者さまにスピード感をもって届けていくメーカーでありたいと思っています。
・今の課題は何ですか?
現在、装置は無事に原理実証に成功し、薬機承認取得に向けて申請中という状況です。製品販売開始後は、早々に海外展開も検討しています。かなりのスピードで事業を進めていますので、そのためには製造にも、営業にも、PR活動にももっと人材が必要です。事業成長に合わせたスピード感のある人員増強に取り組んでいきます。
・読者にメッセージをお願いします。
陽子線治療は身体に優しい治療法ですが、初めて知る方も多いのではないでしょうか。年間100万人ががんにかかり、働き世代の患者数も増えてきている現代において、日常生活を大きく変えることなく通院で治療できる陽子線治療は、患者さまにとって魅力的な選択肢です。まずは一人でも多くの方に、陽子線治療について知っていただくところからです。多くの方に私たちの取り組みを知っていただくことで、世界中のがん患者さまが陽子線治療を受けられる社会の実現に、大きく近づくと信じています。
会社名 | 株式会社ビードットメディカル |
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代表者名 | 古川卓司 |
創業年 | 2017年3月 |
社員数 | 約45名 |
資本金 | 1,405百万円(資本準備金等含む) |
所在地 | 〒134‐0003 東京都江戸川区春江町5丁目10-10 |
サービス名 | 超小型陽子線がん治療装置 |
代表者プロフィール | 2004年に千葉大学大学院 博士(理学)を飛び級で取得し、同年放射線医学総合研究所に入所。2011年に放医研で重粒子線治療装置開発のグループリーダーに着任。2017年に放医研発のスタートアップとして、ビードットメディカルを設立。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | がん治療 ビードットメディカル 医療 医療スタートアップ 古川卓司 放射線治療 陽子線治療 |
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