個人事業主の年金はどうなる?老後資金は早めに準備しておこう
個人事業主は自分で年金を使って老後に備えよう
個人事業主は、事業に直接かかわらないようなバックオフィスの仕事や老後の資産設計まで自分で行わなければいけません。
ついつい事業の後回しにしてしまいがちですが、事業の規模や法人化するかどうかによっても社会保険が変わります。
会社の方向性とともに、自分のライフプランについて考えましょう。中でも老後資金は早めに準備を始めておくようにしてください。
個人事業主が利用できる年金制度を活用して、老後資金を用意することをおすすめします。
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個人事業主になったら年金を切り替えよう
会社員から独立して個人事業主になると、社会保険が変わる点は広く知られています。
会社員と個人事業主は適用となる社会保険が違うため、受けられる保障にも違いがあります。
ライフプランを考える時には、年金の違いや保険制度の違いは重要です。
個人事業主になった時の年金についてまとめました。
個人事業主になると国民年金に加入する
会社員から個人事業主になると、厚生年金から国民年金に加入します。
国民年金は、20歳以上の全ての国民が加入する年金です。原則60歳まで保険料を支払い、65歳から年金を受け取ります。
会社員が加入している厚生年金は、国民年金にプラスされて支払われる年金となります。
そのため、国民年金の個人事業主や自営業者は、厚生年金に加入している会社員よりも年金額が少なくなってしまいます。
個人事業主がゆとりをもって老後生活の準備ができるような仕組みもあるので、検討してください。
扶養家族の年金はどうなる?
厚生年金のメリットのひとつが、扶養している家族の年金です。
扶養に入っている配偶者は、第三号被保険者として扱われて保険料を支払う必要がありません。
しかし、個人事業主の配偶者にはこのような特例はなく、配偶者も国民年金保険料を支払います。
そのため、配偶者がいる会社員が個人事業主になる場合には、国民年金保険料の負担も倍になります。
厚生年金から国民年金への切り替え手続き
会社員から個人事業主になる時には、年金に関する手続きも行います。
一般的には勤務先の企業が厚生年金の脱退手続きを行うので、退職を証明する書類を持参して国民年金への加入手続きを行ってください。
厚生年金から国民年金への切り替えは、最寄りの市町村役場の国民年金窓口で行います。
退職を証明できる書類は、離職票や健康保険喪失証明書、退職証明書などがあります。
加えて身分証明書として運転免許証やパスポート、年金手帳と印鑑を持参してください。
原則として退職から14日以内に行いましょう。
個人事業主になったら年金は減る?
個人事業主になったら、社会保険が変わることは知っていても今まで受けていた保障からどのように変わるのか具体的には意識しないかもしれません。
個人事業主になることで、年金額にはどの程度の違いがあるのでしょうか。
日本の年金制度は三階建て構造
日本の年金制度は三階建ての構造になっています。国民年金は、法律で日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する年金となり、一階部分となります。
会社員が加入する厚生年金は、二階建て部分です。会社員の保険料は給料から天引きされます。
厚生年金保険料には国民年金の保険料が含まれており、半額は会社が負担する仕組みです。
会社によっては、三階建て部分にあたる企業年金や企業型確定拠出型年金を利用します。
個人事業主の場合、年金の二階部分と三階部分は任意加入です。国民年金基金やiDeCoのどちらか、もしくは両方に加入します。
加入する場合、保険料は自分で納付することになります。
会社員と個人事業主は受給する年金金額も変わる
個人事業主が任意で加入してない場合には、年金制度の二階建て部分がないため会社員よりも受け取る年金支給額が低くなります。
日本年金機構では、最新の年金額を公表しています。
それによると、満額まで支払った時の国民年金の額は令和4年度で月額64,816円でした。
一方で、厚生年金は夫婦2人分の国民年金を含んだ標準的な年金額は令和4年度で219,593円です。
これは、平均的な収入で40年間就業した場合に受け取り始める年金として、老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金で満額の給付水準となります。
厚生年金の保険料は月ごとの給料に対して低率で計算されるため、実際は人によって額は違います。
しかし、会社員か個人事業主かによって年金額に差が出ることで、老後のライフプランは大きく変わる点は留意しておきましょう。
個人事業主は退職金もない
老後の生活で考えなければならないのは、年金の支給額だけではありません。
60歳に仕事を辞めたとして年金の支給年齢が65歳の場合、無収入の期間をどのように生活するかを考えておく必要があります。
会社員の場合には退職金があるので、それを老後の資金とすることが可能です。一方で、個人事業主は会社からの退職金はありません。
会社員と同様の資金計画を立てていると、資金が足りずに困窮してしまう可能性があります。
しかし、個人事業主は会社員のように定年はありません。生涯現役として働いて収入を得ることも可能です。
ただし、いつまでも元気で働き続けられるとは限らないため、保険に加入するなどケガや疾病に備えるとともに、老後資金については早めに準備しておくことをおすすめします。
個人事業主が使える老後資金を増やす方法
個人事業主が、老後の資金が不安定であるようなイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、それは現役時代に支払っている保険料が少ないからです。
自分の手で準備をしておくことによって、十分な老後資金を用意することもできます。
個人事業主が老後資金を増やすために、どのような制度を使うことができるのかまとめました。
付加年金
付加年金は、国民年金に追加して年金保険料を納付することで将来の年金を増やせる制度です。
付加年金の付加保険料の月額は400円です。
付加年金額(年額)は「200円×付加保険料納付月数」で計算します。
例えば、20歳から60歳までの40年間付加保険料を納めていた場合には、200円×480カ月で96,000円が付加年金額として年金に上乗せされます。
2年以上受け取れば、支払った付加保険料以上の年金受取額になる計算です。
ただし、下記で紹介する国民年金基金に加入する場合には、付加保険料を納付できません。
国民年金基金
国民年金基金は、国民年金に上乗せして積み立てる制度です。
国民年金だけの個人事業主と厚生年金に加入している会社員では、将来の年金額に大きな差ができてしまいます。
年金額の差を解消するための上乗せ年金制度が欲しいと言った声に応える形で、平成3年5月に国民年金基金制度が創設されました。
国民年金基金は、全国国民年金基金と職能型国民年金基金の2種類があります。
全国国民年金基金は、国民年金の第一号被保険者であればだ業種や地域を問わずに加入できます。
職能型国民年金基金が加入できるのは、各基金ごとに定められた事業や業務に従事している第一号被保険者です。
二種類にわかれているもののそれぞれの基金の事業内容は同じで、どちらかにしか加入できません。
国民年金基金の掛け金は、加入時の年齢や選択した給付の型などによって違います。掛け金の上限は月額6万8000円となっており、給付は老齢年金と遺族一時金の2つです。
加入は口数制になっていて、給付の型を選ぶことができます。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、国民年金、厚生年金にプラスして加入できる年金制度です。
基本的に20歳以上60歳未満の人全てが加入できます。
自分で掛け金を積み立てて運用する形が取られており、60歳以降に受け取れるのは元本とその運用益です。
受け取れる年金額は運用成績によって変わるため、損失が出ていれば年金額も少なくなることがあります。
掛金の拠出限度額は、個人事業主の場合には月額68,000円です。これは、国民年金基金や付加保険料との合算で計算します。
小規模企業共済
小規模共済は、事業主が退職した場合に退職金変わりになるものとして積み立てができる制度です。
廃業や退職時の生活資金に備えて積みたてが可能で、掛金は1,000円から70,000円までの範囲内(500円単位)で自由に設定できます。
共済金の受取りは一括・分割、一括と分割の併用の3つから選択可能です。
契約すると、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できる点も大きなメリットです。
個人年金保険
個人年金保険は、保険会社が提供する保険商品です。
保険料を支払って積み立てておくことで、契約時に決めた年齢から年金として給付が受けられる仕組みです。
個人年金保険の中には、給付される年金額を契約時に決定する定額個人年金や保険会社の運用実績で変動する変額個人年金保険など多くの種類があるので、ニーズに合わせて選ぶことができます。
年金受取期間の長さや契約者死亡時の保障など商品によって違いがあるので、複数の商品を比較して選ぶようにしましょう。
自分に合った方法で老後資金を貯えよう
個人事業主も国民年金にプラスしてほかの年金制度などを利用することによって、将来受け取れる年金額を増やすことができます。
もちろん、老後資金を準備するだけなら単純に貯金する方法もあります。しかし、計画的に貯金できない、ついつい使ってしまう人も多いかもしれません。
また、自分で貯蓄するよりもプロに運用してほしいと考える人もいるでしょう。人によって、用意できる資金や対応できるリスクは違います。
自分におかれた環境やライフプランに適した資産設計を、自分で用意しておくようにしてください。
個人事業主は厚生年金に加入できる?
個人事業主として独立はしたものの、厚生年金に加入したいと考える人もいるかもしれません。
個人事業主になってから、厚生年金に加入する方法はあるのでしょうか。
法人化することで厚生年金に加入できる
個人事業主が厚生年金に加入するには、法人化を検討してみましょう。
法人化した場合には、その事業主も従業員も厚生年金への加入が義務付けられます。
個人事業主で第一号被保険者として国民年金に加入していた事業主が、厚生年金保険の被保険者として第二号被保険者となります。
これは、事業主ひとりだけの法人の場合でも違いはありません。
ただし、一定基準を満たさないパートタイマーやアルバイトのように従業員が厚生年金の被保険者にならないケースもあります。
保険料の負担も計算しておこう
厚生年金の場合には、労使折半で保険料を支払います。それは、法人化して事業主が厚生年金の被保険者になっても変わりません。
厚生年金の保険料のうち半分は自分で支払って、残り半分は法人が負担する仕組みです。
これだけだと半分を法人として負担してもひとりで全額支払っていても、変わらないように感じるかもしれません。
しかし、税制面では大きな違いがあります。
法人が負担した保険料は損金として処理できるため、利益を圧縮して税負担を押さえることができます。
また、国民年金から厚生年金になることで厚生年金の分だけ保険料負担が大きくなると不安になる人もいるでしょう。
しかし、厚生年金も国民年金と同様に社会保険料控除の対象となるため、税負担を減らす効果があります。
さらに、厚生年金となることによって将来受け取る年金を増やす効果も期待可能です。
厚生年金の場合には一定の要件を満たせば配偶者を扶養に入れられるケースもあります。
収入など一定の要件を満たした配偶者であれば、第三号被保険者として保険料の支払いが不要です。
つまり、目先の支払うお金が増えたとしても、税負担を押さえて事業主と配偶者の老後資金を増やせることを意味します。
メリットデメリットを考えて、どちらが有利かを判断しましょう。
個人事業のまま規模が大きくなった場合は?
個人事業から法人化した場合を前の見出しでは紹介しました。
しかし、個人事業のまま法人化することなくどんどん規模が大きくなっていくケースもあります。
こういった場合は、事業所が厚生年金保険の適用事業所となった場合でも個人事業主は厚生年金に加入することはありません。
つまり、個人事業主は国民年金のまま、従業員が厚生年金に加入します。
厚生年金の適用事業所であっても、法人化しなければ個人事業主は厚生年金にならないので勘違いしないようにしてください。
個人事業主にとって、法人化するかどうかは大きな分岐点です。
自分の年金だけでなく、従業員の社会保険料の負担や税負担など多くの点から判断しなければいけません。
迷った場合には、会計士や税理士といった専門家の力を借りることも検討しましょう。
まとめ
個人事業主が老後資金を用意する方法はいろいろあります。
例えば、国民年金基金やiDeCoを利用して用意するほか、民間の個人年金に加入することも可能です。
また、個人事業の規模が大きくなって法人化すれば、厚生年金に加入する可能性もあります。
将来の資金設計に年金の額は大きくかかわっています。
どのようにすれば、自分が思い描くライフプランになるのかプランを立ててみましょう。
(編集:創業手帳編集部)