小規模企業共済はiDeCoと併用できる?2つの違いと併用するメリットをご紹介!

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小規模企業共済とiDeCoは併用可能!節税対策&老後資金の確保につなげよう


結論からいえば、小規模企業共済とiDeCoを併用することは可能です。
個人事業主の場合は会社役員の場合などによって上限は異なるものの、節税対策や老後資金の確保に役立つため、併用するメリットは大きいといえます。

今回は、積立可能金額や小規模企業共済と個人型確定拠出年金(iDeCo)の概要などについて解説していきます。
また、小規模企業共済とiDeCoのどちらが良いかについても解説するので、加入を迷っている方はぜひ参考にしてみてください。

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小規模企業共済とiDeCoを併用すると年間最大165.6万円まで加入可能


小規模企業共済とiDeCoを併用した場合、最大で165.6万円まで加入できます。しかし、それぞれの状況で金額も異なるので、把握しておく必要があります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、小規模企業共済が月額7万円、iDeCoが月額6.8万円まで掛けられます。したがって、1年間の掛金の合計額は165.6万円です。

減税額は、課税所得金額が100万円なら所得税減税額は490,979円、住民税減税額が165,600円です。合計で656,579円の減税となります。
課税所得税額が200万円の場合は、所得税減税額が676,311円、住民税減税額が165,600円となり、合計841,911円です。

なお、所得税には復興特別所得税を含み、住民税は10%で計算しています。

会社役員の場合

会社役員の場合は、小規模企業共済が月額7万円、iDeCoが月額2.3万円まで掛けられます。1年間の掛金の合計額は111.6万円です。

減税額は、課税所得金額が100万円なら所得税減税額が214,288円、住民税減税額が111,600円です。合計で325,888円の減税となります。
課税所得税額が200万円の場合は、所得税減税額が455,775円、住民税減税額が111,600円、合計が567,357円です。

こちらも所得税には復興特別所得税を含み、住民税は10%で計算しています。

その他の場合

個人事業主が営んでいる事業経営に携わっている共同経営者も、個人事業主1人につき2人までは小規模企業共済に加入可能です。
そのため、iDeCoとの併用も問題なく行えます。
家族経営の会社で専従者となっている場合(共同経営の要件を満たしていないケース)は、加入できないので注意が必要です。

小規模企業共済とは?


小規模企業共済は、国の機関のひとつである中小機構が運営しています。小規模企業の経営者や役員、個人事業主などが積立できる退職金制度です。
掛金は全額所得控除の対象となるので、節税効果の高さにも注目されています。

加入後に掛金を増減できたり、受け取方法を選べたりするなどのメリットもあります。ここからは、小規模企業共済の特徴についてさらに詳しく解説していきましょう。

掛金は全額所得控除になる

掛金は税法においてすべて控除できます。小規模企業共済掛金控除という名目で課税対象となる所得から控除可能です。
1年以内の前納付掛金に関しても、通常の掛金と同じように控除できます。掛金は1万〜7万円の間で選択可能です。

課税所得額が200万円(所得税は104,600円、住民税が205,000円)の場合だと、月額掛金が1万円なら20,700円、3万円なら56,900円、5万円なら93,200円、7万円なら129,400円の節税ができます。

共済金の受け取りは一括と分割から選択できる

共済金の受け取りを一括と分割から選べることも小規模企業共済の特徴です。満期や満額といった仕組みはありません。
一括受け取りの場合は退職所得扱い、分割受け取りの場合は雑所得扱いになります。

6カ月以上積み立てを行っていると、廃業した場合に共済金が受け取れるので退職金の代わりになります。
12カ月以上積み立てている場合は、解約手当金の受け取りも可能です。

共済金を受け取る際は、以下の書類が必要です。

  • 個人事業の廃業届や印鑑登録証明書の原本(発行されてから3カ月以内)
  • マイナンバーの確認書類
  • 共済金等請求書
  • 退職所得申告書
  • 預金口座振替解約申出書兼委託団体払解約申出書 など

必要な書類をしっかりと確認し、抜かりなく用意することがスムーズな手続きにつながります。

貸付制度が低金利で利用できる

小規模企業共済の貸付制度は低金利で利用可能となっています。
事業を行っていると、売上げが減少してしまったり、資金繰りがひっ迫してしまったりといった事態に陥ってしまう可能性があります。
そのような状況を打破するために役立つのが小規模企業共済の貸付制度です。

貸付制度には、以下のようなものがあります。

  • 一般貸付(事業資金)や緊急経営安定貸付
  • 傷病災害時貸付
  • 福祉対応貸付
  • 創業転業時・新規授業展開等貸付
  • 事業承継貸付
  • 廃業準備貸付 など

事業資金を迅速に借入れしたい場合は一般貸付を利用します。
貸付制度を利用するためには、発行から3カ月以内の印鑑登録証明書(原本)や本人確認書類(運転免許証や健康保険証)など必要な書類もあるので、確認して申し込んでください。

小規模企業共済の加入条件

小規模企業共済に加入するためには、以下のいずれかに該当していなければいけません。

  • 常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主もしくは会社などの役員(建設業・製造業・運輸業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)・不動産業・農業)
  • 常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主もしくは会社などの役員(商業(卸売業・小売業)・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く))
  • 事業に従事している組合員数が20人以下の企業組合の役員または常時使用している従業員数が20人以下の協業組合の役員
  • 常時使用する従業員数が20人以下で、農業の経営をメインとして行っている農事組合法人の役員
  • 常時使用する従業員数が5人以下の弁護士法人または税理士法人などの士業法人の社員
  • 1つ目と2つ目に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わっている共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)iDeCoとは?


個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。加入は任意となっています。
iDeCoに加入したいと考える人が自分自身で申し込み、掛金を拠出し、運用方法を選択するという仕組みです。

掛金や運用益、給付を受け取る時には税制上の優遇措置があるので、節税対策としても注目されている制度です。
原則として60歳になるまで資産の引き出しはできませんが、老齢給付金を受け取れます。
ただし、老齢基礎年金の受け取り後は、掛金は拠出できません。

税制上の優遇を受けられる

iDeCoを運用すると、税制上の優遇を受けられます。掛金は全額控除、運用益は非課税になります。
さらに、受け取りの際は公的年金等控除や退職所得控除が受けられるため、利用するメリットは大きいです。
通常の投資信託などで出た利益や定期預金の利息には、20.315%の税金が課せられますが、iDeCoの場合は税金がかからずに済みます。

公的年金等控除や退職所得控除は、受け取りの方法によってどちらの対象になるか変わるので、あらかじめ確認しておくのがおすすめです。
5年以上20年以下の期間で分割して受け取る年金方式だと公的年金控除、一括で受け取る一時金方式は退職所得控除の対象になります。

手続きをすれば資産を移換することも可能

iDeCoの年金資産は、転職や離職時に手続きを行うと持ち運び(ポータビリティ)が可能です。
条件を満たしていれば、確定給付企業年金や企業型確定拠出型年金などから資産を引き継げる場合もあります。
移管手続きに関する詳細は、運営管理機関の窓口に相談してみてください。

移管ができることから、ライフスタイルの変化にも柔軟な対応ができます。ただし、転職先の職業によっては、掛金の上限額などが変わる場合もあるので要注意です。

iDeCoの加入条件

iDeCoの加入条件は以下のとおりです。

・国民年金の第1号被保険者
20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生などです。農業年金の被保険者と国民年金の保険料納付を免除されている方は対象となりません。

・国民年金の第2号被保険者
厚生年金の被保険者となっている会社員や公務員などです。65歳以上の厚生年金被保険者で加入期間が120カ月以上ある場合は対象外となります。
また、勤務先で加入している企業型確定拠出年金の事業主掛金が高く、拠出限度額の範囲内で各月拠出になっていない方や、マッチング拠出を導入している企業型確定拠出年金の加入者で、企業型DCのマッチング拠出を選んだ方も対象外です。

国民年金の第3号保険者と任意加入被保険者が加入対象となっています。

小規模企業共済とiDeCoは何が違う?


小規模企業共済とiDeCoには、いくつか違いがあります。続いては、この2つの制度にどのような違いがあるのか解説していきます。

1.加入対象者

まず、加入対象者としての資格が異なります。

小規模企業共済は名称のとおり、規模が小さめの企業や個人事業主が対象となります。
小規模かどうか判断する基準は業種や従業員数によって異なるため、加入前に確認しておいてください。
建設業・製造業・運輸業・宿泊業・娯楽業・不動産業・農業・企業組合・競合組合・農業組合法人は20人以下、卸売業・小売業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)・詩行法人は5人以下と定められています。

iDeCoは、20歳以上60歳未満なら基本的に誰でも加入できます。2022年からは国民年金の被保険者なら65歳まで加入可能となりました。

2.掛金の上限額

掛金の金額は、小規模企業共済だと加入者間で差がありません。1万~7万円の中で設定できます。
無理のない金額を設定できるという点がメリットです。

一方iDeCoは、タイプによって上限額が異なります。

  • 自営業と個人事業主…月額6.8万円
  • 会社に企業年金がない会社員…月額2.3万円
  • 企業型DCに加入している会社員…月額2万円
  • 確定給付企業年金(DB)として企業型DCに加入している会社員とDBのみに加入している会社員は…いずれも月額1.2万円

小規模企業共済は自由度が高く、iDeCoは掛金の上限が決まっているので自由度はそこまで高くないという点が大きな違いです。

3.将来受け取れる金額の確実性

将来的に受け取れる金額の確実性にも違いがあります。

小規模企業共済の場合は、3年以上納めていれば退職する時などに必ず掛金の総額よりも多い共済金を受け取れます。
6カ月以上納めている方なら掛金の合計額と同じだけ受け取れるので、半年間続ければ元が取れるという制度です。ただし6カ月未満だと掛け捨てになってしまいます。

iDeCoは、元本確保型なら問題ありません。しかし、投資信託を選択すると、大きなリターンが得られる可能性もありますが、元本割れや手数料が生じるリスクもあります。

4.運用手数料

iDeCoだと運用手数料がかかってしまいますが、小規模企業共済は掛金のみ支払うという形になっています。

iDeCoを運用する場合、加入する時や企業型確定拠出年金から移管する時に2,829円、掛金を納付する度に105円、口座を保有しているだけで毎月66円の手数料が発生します。
金融機関によっては、運営管理手数料がさらにかかる場合もあるので、それを加味して利用しなければいけません。
給付を受ける際にも、1回の振込みごとに440円の事務手数料が差し引かれます。

小規模企業共済はこのような手数料が発生しないので、運用しやすいと感じる方も多いかもしれません。

5.途中解約の有無

小規模企業共済は途中解約可能です。途中解約をした場合でも、12カ月以上加入していれば解約手当金の受け取りが可能です。

解約手当金は、12カ月以上84カ月未満は掛金の80%、84カ月以上240カ月未満は6カ月単位で支給率が段階的に増加します。
240カ月以上246カ月未満は掛金の100%、246カ月以上になると最高で掛金総額の120%まで上がります。

iDeCoは加入者が亡くなった場合や障害状態になった場合などの例外はあるものの、基本的に途中解約はできません。

6.貸付制度の有無

小規模企業共済には収めた掛金の範囲内(7~9割)で2,000万円以内なら、事業関連の資金を借入れできる制度があります。
貸付には担保や保証人が不要となっていて、金利も低めに設定されています。
手続きも簡単で、最短だと申し込んだ日に借入れ可能です。

iDeCoには、残念ながら貸付制度はありません。
事業を行っている中で、まとまった金額を用意しなければいけない場面に遭遇する可能性もないとは言い切れないため、iDeCoより小規模企業共済が安心だと感じる方もいるでしょう。

小規模企業共済とiDeCoはどちらがいい?


小規模企業共済とiDeCoはどちらも異なる特徴を持つ制度なので、迷ってしまう方もいるかもしれません。そこで最後に、どちらを選べばよいか解説していきます。

資金的に併用が難しければ小規模企業共済を優先

小規模企業共済とiDeCoは併用するのが望ましいです。しかし、資金的に難しい場合もあります。
そのような時は、小規模企業共済を優先するのがおすすめです。

小規模企業共済はiDeCoよりも元本割れなどのリスクがないため、安全な運用が可能です。
また、途中解約も可能であり貸付制度もあるので、小規模企業共済のほうが柔軟に運用できます。
このような理由から、どちらかを優先したい場合は小規模企業共済を選んでください。

節税効果を高めるために小規模企業共済とiDeCoを併用しよう

資金的に余裕があるなら、どちらか一方を選ぶのではなく、併用するのがおすすめです。併用することで節税効果が高まります。
iDeCoの投資信託であれば小規模企業共済よりもお金を増やせる可能性があるので、将来的により大きな額を手にしたいならiDeCoが適しているかもしれません。

また、この2つにお金を分散させればリスクと安全性のバランスをとることもできるため、双方のメリットを享受できます。

まとめ

小規模企業共済とiDeCoは、併用することでより大きなメリットが得られる制度です。節税対策や老後資金の確保につなげたい場合にも、併用は有効な方法です。
しかし、この2つの制度には加入条件などがあるため、あらかじめ加入できるか把握しておくと良いでしょう。

創業手帳(冊子版)」では、小規模企業共済やiDeCoに関する情報などもお届けしています。節税対策などについて知りたいと考えている方も、ぜひご利用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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