5つの返済不要の資金調達方法!それぞれの特徴やメリット・デメリットとは?
起業や経営に必要な資金調達を返済不要で実現するには?
起業するにも経営を維持するにも、資金が必要です。不足する分を自己資金で補填するのは現実的ではないため、資金不足の問題解消には資金調達が有効です。
創業から間もない会社や事業が軌道に乗っていない会社であれば、返済不要の資金調達を活用するのをおすすめします。
この記事では、返済なしで利用できる資金調達方法をご紹介します。
各方法のメリット・デメリットも解説しているので、資金調達にお悩みの方は参考にしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
返済不要の資金調達とは
返済不要の資金調達は、その名のとおり返済義務が発生しない資金調達の手法です。資金調達というと金融機関からの融資が一般的です。
まだ事業が安定していない会社の場合、融資だと返済が負担になることも多く、リスキーに感じるかもしれません。
しかし、返済不要であれば、安心して資金調達が行えます。
返済不要の資金調達には、5つの方法があります。
それは、クラウドファンディング・ファクタリング・エンジェル投資家からの出資・ベンチャーキャピタルからの出資・補助金や助成金です。
それぞれ特徴からメリット・デメリットまで違うため、手法を理解して選ぶことが大事です。
①クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通して起案された事業やプロジェクトを応援してくれるユーザーから資金を出資してもらう方法です。
自社やプロジェクトに賛同してくれる人からの出資なので、事業やプロジェクトの内容を明確に伝え、魅力をアピールして出資を募ることが大事です。
クラウドファンディングには様々な種類があり、中には返済が必要なタイプもあります。返済不要のクラウドファンディングは次の4つです。
種類 | 特徴 |
---|---|
購入型 | ・商品やサービスのリターンを前提に支援者を募る手法 ・支援者は商品やサービスを購入する感覚で気軽に支援できる |
寄付型 | ・起案プロジェクトにお金を寄付してくれる支援者を募る手法 ・購入型と違って商品・サービスのリターンはない ・社会貢献性の強いプロジェクトとの親和性が高い |
株式投資型 | ・非上場株式を発行し、不特定多数の人から少額ずつ資金を募る手法 ・株式を保有する出資者は企業の業績に応じて配当金を受け取れる |
ファンド型 | ・ファンド業者を通じて事業・プロジェクトへの出資を募る手法 ・売上げの成果と出資額に基づいて、支援者は配当金やサービスを受けられる |
クラウドファンディングのメリット
少額ずつ出資を募ることが可能で、支援者も比較的支援しやすいという特徴があります。
クラウドファンディングの種類によっては、商品・サービス、配当金といったリターンがあり、魅力的な事業・プロジェクトであれば資金調達は成功しやすいでしょう。
クラウドファンディング業者を通じて募集をかけるので、自社や商品・サービスを広くアピールできます。
商品やサービスが出回る前の段階なので、ユーザーの反応を確認できるのもメリットです。
クラウドファンディングのデメリット
目標金額に到達しなかった場合、集まった資金は返金されます。そのため、資金調達の成功には、確実に達成できる目標金額に設定するのが重要です。
目標金額に到達しなくても資金を受け取れる方式もあります。
ただし、手数料の支払いやリターンの提供が必要となるので、資金調達どころか赤字になる場合もあります。
いずれの方式も事前にプロジェクトの成功率やどれだけの支援が見込めるのか、調査や分析をしておくことが大事です。
②ファクタリング
ファクタリングは、売掛債権を現金化する資金調達方法です。売掛債権とは、取引き先に対して売った商品代金を将来回収する権利のことです。
その権利をファクタリング会社に売却することで、手数料が差し引かれた分の金額を受け取れます。
ファクタリングは買取型が一般的ですが、保証型と呼ばれるものもあります。
保証型の場合は、商品・サービスを提供した取引先(売掛先)が倒産した場合、保証会社が売掛金を支払ってくれるので、貸倒れのリスクを防ぐことが可能です。
早期の資金調達には不向きですが、いざという時に安心です。
また、ファクタリングには2社間と3社間の2種類があります。2社間は債権者とファクタリング会社だけで取引きを行うので、取引先に知られず現金化が可能です。
3社間は売掛先も取引きに参加することになります。
債権者は売掛債権の売却によりファクタリング会社から資金を受け取り、取引先はファクタリング会社に直接売掛金を支払う仕組みです。
ファクタリングのメリット
ファクタリングは業績に関係なく実施されます。事前に審査が行われますが、基本的に売掛金を支払う企業の業績や信用が重視されます。
そのため、取引先に問題がない限り、自社の業績に関係なく、また、比較的早く資金調達を行うことが可能です。
本来の回収期限より前に現金化できるので、キャッシュフローの改善が素早くできます。
また、万が一に取引先が倒産してしまった場合、貸倒れのリスクを軽減できるのもメリットです。
ファクタリングのデメリット
手数料の金額が金融機関の融資などと比べると高い傾向にあります。特に、2社間は3社間と比べて手数料が高く設定されているので注意が必要です。
2社間の場合、取引先から売掛債権が支払われた後、ファクタリング会社にその分を支払わなければなりません。
そのため、実質的には返済が必要です。3社間であれば取引先がファクタリング会社に売掛金を支払う形になるので、債権者側が後から支払う必要はありません。
ただし、3社間ファクタリングの場合、取引先に「資金繰りが悪いのでは」と疑われる恐れがあります。
印象を悪くしたことで、今後の取引きに影響が出うることにも注意が必要です。
③エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家は、起業したばかりのベンチャー企業やスタートアップ企業に投資する個人投資家のことです。
エンジェル投資家には、元実業家や経営者が多いといわれています。
融資ではなく、個人投資家からの出資となるので、返済不要な資金調達方法です。
一方、エンジェル投資家は企業が株式上場後、発行された株式を売買して出資額以上のリターンを得ています。
エンジェル投資家が投資する額は数百万円から数千万円と比較的小規模で、経営には深く関わらない傾向にあります。
最終的にリターンを得ることを目的にしていますが、それ以上に企業や事業、若手起業家の支援に重視している投資家も多いようです。
エンジェル投資家からの出資のメリット
エンジェル投資家は個人で出資をするかしないか判断するため、ほかの資金調達よりも決断のスピードが早いのが特徴です。
そのため、必要な資金を素早く確保できる可能性があります。
また、実業家や経営者などが多いので、自身の成功談をもとに経営のアドバイスをもらえることがあるのも嬉しいメリットです。
起業したばかりの時点ではいろいろな悩みもあるので、エンジェル投資家は良きアドバイザーとなってくれることもあります。
エンジェル投資家は会社の将来性を見込んで投資しているので、成功のために自分が持つ人脈を活用してくれるケースも多いでしょう。
普段なら、出会えない業界人とのつながりを持てる可能性もあります。
エンジェル投資家からの出資のデメリット
エンジェル投資家は自己資金で投資するため、数億円以上と高額な出資にはあまり期待できません。
多くの資金を得るためには、エンジェル投資家を複数人見つけて、出資してもらう必要があります。しかし、それでも必ず目標金額に達するとは限りません。
人脈が少ない場合、エンジェル投資家となかなか出会う機会がないのもデメリットといえます。
マッチングサイトへの登録や交流会・イベントへの参加、友人や知人から紹介してもらうなど、エンジェル投資家と出会える機会を得るために積極的に行動をする必要があります。
出会えたとしても起業前のシードラウンドでは出資してもらえる可能性は高くはありません。
また、事業や商品・サービスに魅力や将来性を感じられないと出資は望めません。
経営に深く関わらない投資家もいますが、中には必要以上に干渉してくるケースもあります。
ほかにもエンジェル投資家を偽って接近し、詐欺を働く手口もあるので注意が必要です。
④ベンチャーキャピタルから出資
ベンチャーキャピタルは、成長に期待できる未上場企業に投資する会社です。
こちらも投資になるため返済は不要です。ベンチャーキャピタル側は投資した企業が上場・成長した際に株式や事業を売却し、リターンを得ています。
また、経営のアドバイスや役員の派遣など、企業価値を向上させるために様々なサポートをしてくれるでしょう。
ベンチャーキャピタルにはいろいろな種類があり、日本国内では銀行や証券会社など金融機関が運営主体となっている会社が多くあります。
また、政府系機関や事業会社などが運営主体となっている会社、親会社を持たずに投資を行う会社もあります。
運営主体が異なれば特徴や投資戦略、活動内容も違ってくるため、自社にはどのようなサポートが必要なのか把握した上で出資を受けたいベンチャーキャピタルを選んでください。
ベンチャーキャピタルのメリット
ベンチャーキャピタルでは、億単位の出資も可能です。
エンジェル投資家よりも出資額の規模が大きく、それを返済不要で調達できるのは大きなメリットです。個人保証や担保も必要ありません。
高額な出資を受ければ、財務状況の改善につながり、金融機関から融資を受けられやすくなる可能性も高まります。
また、有名なベンチャーキャピタルからの出資であれば、「事業やビジネスモデルが評価されている」という印象を社会に与えられるので、今後事業を拡大する際に追加出資に期待できるかもしれません。
ベンチャーキャピタルではシナジー効果を狙い、積極的に事業提携先の紹介も行っています。
事業提携を行えば、企業はさらなる成長を目指せるでしょう。
ほかにも、経営に関する知識やノウハウを提供してもらえるので、経営に関する知識や経験が浅い人も事業の軌道修正などが可能になります。
ベンチャーキャピタルのデメリット
ベンチャーキャピタルは支援できる金額が大きい分、審査が厳しい傾向にあります。
新規性や発展が見込まれるビジネスプランでないと、支援が受けられないことがあります。
ベンチャーキャピタルは、将来を期待できる企業に投資してリターンを得ることが目的です。
もしも、業績悪化や予想どおりの経営にならないと、投下資本の回収のために株式買取を請求されることもあるかもしれません。
また、経営のノウハウを提供してもらえるのはメリットですが、同時に経営に関する干渉を受けるリスクもあります。
ベンチャーキャピタルの影響を受け、自社の経営陣が描いていたものとは異なる経営方針になってしまう場合もあります。
⑤補助金・助成金
補助金・助成金は国や地方自治体が実施する支援制度です。事業に実施にかかる経費の一部を支援する制度であり、基本的には返済不要です。
受給には審査がありますが、一定の要件を満たせば受給対象になります。
補助金は募集期間や金額、採択件数が決まっているケースが多くみられます。一方、助成金は随時受け付けているケースが多いようです。
申請は創業前でも、後からでも可能です。ただし、応募期間中に指定のエリアで起業・開業することが条件となっている場合もあるので注意してください。
補助金・助成金のメリット
補助金は助成金と比べて支援される金額が大きい傾向にあります。
また、受給が決定した際には、自社の技術力やビジネスプランが評価されたことになるので、自信につながるメリットがあります。
助成金は、基本的に要件を満たせば誰でも受給が可能です。
随時申請を受け付けていることが多いので、資金調達が必要になった時に申請しやすいこともメリットです。手続きも比較的簡単なものとなっています。
補助金・助成金のデメリット
補助金と助成金は受給までに数カ月待たされることがあります。そのため、早く資金調達したい時には不向きです。
補助金に関しては公募期間が設定されていて、期間も短いので、申請のし忘れにも注意が必要です。
また、補助金と助成金では目的や対象が細かく決まっているので、条件に合わない場合は申請ができません。
特に、助成金は新規雇用や雇用維持など支援対象が偏っている傾向にあります。申請可能であっても、審査が通らないことも少なくありません。
補助金は事業計画など提出書類の内容が特に重要なポイントになります。
さらに、受給には雇用や労働環境の改善など一定の取組みが必要です。
それに関する経費は全額自己負担になるので、事前にある程度の資金を用意しておかなければなりません。
まとめ
資金調達は基本的には返済が必要な融資ですが、返済不要で支援を受けられる方法もあります。
返済不要の資金調達は、資金繰りに悩みやすい創業前や創業期の起業家・経営者にとって心強い存在になってくれるでしょう。
様々な資金調達方法があり、方法によって特徴や難易度は異なるので、自社にとって活用しやすいものを選んでください。
(編集:創業手帳編集部)