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2022年1月21日株式会社AZOO 横田裕子|中小ホテル向けのシステム開発で注目の企業
観光・宿泊業のDX推進に役立つホテルシステムの開発で注目なのが、横田裕子さんが2020年1月に創業した株式会社AZOOです。
独自性豊かな文化や美しい自然など、さまざまな観光資源をもとに国内外から多くの観光客を集めてきた日本。
特に地方では観光業が主要産業となっているところも多く、宿泊施設には中小ホテル・旅館も多数存在しています。
素敵な体験や思い出作りを求めてやってくる方々に、気持ちよく過ごしてもらい、また来たいと思ってもらえるようなおもてなしをするために、宿泊施設の関係者は心を砕いてさまざまな配慮をし、目に見えないサポートやサービスも提供しています。
しかし、近年は宿泊業界、特に中小規模の宿泊施設における人手不足が深刻化しています。特にコロナ禍においては、観光業が大きな打撃を受けて働き手を減らしました。いずれ来るアフターコロナの社会で観光業が復活すれば、宿泊施設はこれまで以上に人手不足に悩まされることが懸念されます。また、コロナ禍を経て、観光へのニーズも大きく変化し、「体験」を重視したプランへのニーズも高くなりました。宿泊業界はこれまでのように宿泊サービスを提供するだけでなく、新しい取り組みにも力を入れていかなければなりません。
お客様に心地よいサービスを提供し続け、良い思い出をお持ち帰りいただき、またその地域に帰ってきてもらえるためにも、今後より一層の運営・経営の効率化が肝要です。
こうした課題を解決すべく、従来から宿泊施設向けのデジタルツールやシステムが開発されてきましたが、その多くは開発に多額の費用が掛かったり、導入や使いこなすまでに時間や労力を要したりと、なかなか中小規模の旅館・ホテルでは取り入れることが難しいという現状がありました。
そのような背景を受け、中小規模の宿泊施設に必要な機能をひとまとめにし、手軽に導入・使いこなせるデジタルツールの開発を行う起業家に、今注目が集まっています。
株式会社AZOOが開発するホテルシステムの特徴は、多くの中小ホテルがそれぞれ異なるツールでバラバラに管理してきたデータを一つのシステムで完結でき、ホテル業務の多くの部分をデジタル化・自動化できるという点にあります。
さらにコロナ禍だからこそ、今まであまり意識してこなかった「宿泊者との関係構築を行う」マーケティング施策にも注目する宿泊施設が増加しており、同社のシステムはこうした現在の需要にもフィットする総合的なシステムとしても注目されています。
株式会社AZOOの横田裕子さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
弊社は中小ホテル・旅館をメインターゲットとし、宿泊予約・管理からマーケティング、売上管理など、ホテル業務に必要な機能を一元化したホテルシステム『WASIMIL(ワシミル)』を開発しています。
WASIMILの特徴は下記の通りです。
【データ活用で、アフターコロナの宿泊業復活に貢献するWASIMILの特徴】
・これまでバラバラだった、予約・宿泊管理・料金管理・収益管理・集客マーケティング施策を一気通貫で実施できる日本初のホテルシステム
・宿泊客データを活用したホテル特化型のCRM機能を搭載
・宿泊傾向のデータ分析や顧客属性ごとのセグメントを元にしたホテル特化型のマーケティング機能
・AI・機械学習による顧客データのエンリッチメント機能
・レベニューマネージメントにリードタイムやADR、RevPAR、客室別、OTA別、マーケットセグメント別での売上げデータを自動で算出
WASIMILを利用すれば、ホテル業務の多くの部分をデジタル化・自動化できるため、現場の業務を圧倒的に効率化することができます。そのため、コロナ禍で引き起こされた人員削減による人手不足という課題の解決に貢献することが可能です。
また、データは自動で集計を行えるようになるため、リソースの少ない中小ホテルであっても、データをフル活用できるようになります。特に優位性を持つマーケティング機能では、ホテルに集約されるデータを活用し、顧客属性ごとに新たな宿泊プランを企画するなど、現在の観光業界のトレンドも踏まえた取り組みの実践が可能です。
WASIMILは現在、開発途中段階にあります。β版の導入を現在進めており、初期顧客の事業サクセスをした上で、本リリースは今春を予定しています。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
メインターゲットは、DXを推進していきたい日本の中小ホテル・旅館です。特に人手不足からくる業務効率化の問題でお悩みのホテル・旅館や、ホテルのブランド力をアップさせて直販やマーケティング活動をしたいと思っている中小ホテル・旅館様の課題解決に寄与できます。
いずれは世界の観光業への貢献も目指しています。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
弊社が解決したいのは、アナログな仕事のやり方が根強く残り、データを活かして最適な施策が行えていない観光業の現状です。弊社はデータサイエンティストである外国人共同創業者と、日本の企業や製品を海外に向けて広げていくためのマーケティングや事業開発を経験してきた代表・横田が創業した会社です。2人の創業者がそれぞれの知見を活かしながら、プロダクト開発と事業推進を行っています。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
創業期に大変だったことは3つあります。
①仲間を見つけること
私自身は初めての起業だったため、会社の立ち上げから経営の知識がほとんどない中で、手探りで事業を進めてきました。創業間もないころは、スタートアップとしてどうやって事業をつくり、成長させていけば良いのかを学ぶために、スタートアップの支援を行う企業や商工会議所等の団体、KOINという京都府の起業支援機関に問い合わせて、ゼロから起業家のネットワークづくりを行いました。
また、会社を経営するには社労士や税理士など、士業の先生にも力を貸していただく必要があります。士業の知人はいなかったため、頼れる先を探すのにも苦労しました。起業家のネットワークなどを活用しながら、信頼できる顧問の先生にお願いすることができました。
②顧客獲得や資金調達
会社を立ち上げてすぐの頃は、当たり前ですがプロダクトもなく、デザインや企画書のみの状態でした。とはいえ、資金がなければプロダクト開発はできないため、事業の実態がない中で金融機関の担当者に会っていただき、融資をしていただく必要があります。また、弊社のWASIMIL開発にあたっては、ホテルや旅館にヒアリングをする必要もあったため、紙の資料ベースでいかに会っていただけるか、お話を聞いていただけるかという点はとても難しさを感じた点でした。
ただ、会ってお話を聞いていただけた金融機関やホテル・旅館の方々からは、構想自体に強い共感をいただいたため、私たちの事業の意義と強みに確信を持って前に進むことができました。
③フルリモートで働くこと
弊社は新型コロナウイルスが流行する以前から、フルリモートで働く組織を目指して創業しました。リモートでプロジェクト管理を行える仕組みやツールをそろえながら、メンバーのモチベーションを管理するための社内イベントやバーチャルオフィスをつくったり、リモートでは実感しづらい「チーム感」を醸成するための工夫は、さまざまなことを考え、トライしながら現在の組織をつくりあげました。
会社も常に成長しているため、現在の状態が正解だとは考えていません。これからもメンバー数の増加などに合わせて、その時に最適な方法を見つけ出し、メンバーが働きやすく、事業も止まることなく成長していく組織作りができたらと考えています。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
まずは開発中のクラウド型ホテルシステム『WASIMIL』で、日本の中小ホテル・旅館のあらゆる業務を一括で管理できるような環境を作り、慢性的に業務過多と人手不足を抱える宿泊業のDXと業務効率化をサポートしていきたいと考えています。
ホテルや旅館の従業員の業務が最適化されれば、顧客へのサービス向上につながり、ユーザー体験も向上します。「またあのホテルに行きたい」という体験が次の宿泊行動を想起し、日本の各地に観光客が集まり、ひいては地方創生につながっていく。そのような流れを作れたらという理想の元、サービスを開発中です。
システムを全国各地の宿泊施設に利用してもらうことで、多くの宿泊データが集まります。いずれはそのビッグデータを活用して、地方自治体での地方創生事業や東南アジアをはじめとした世界の観光業の発展への寄与も目指していきたいと考えています。
・今の課題はなんですか?
いよいよ、2022年の春までにはWASIMILの完成版ローンチを行います。今後はセールスなど、ビジネス部門の体制を強化していかなければなりません。現在、そしてこれからの課題としては、ビジネス部門の体制強化とそのための人手不足という点が挙げられると思います。ビジネス部門も含め、弊社でサービスの成長フェーズにおいてチャレンジをしていきたい方を募集しています。
・読者にメッセージをお願いします。
私は日本各地を旅する中で「観光・宿泊業のDX」という課題を見つけ、起業という方法で解決に挑戦することを決めました。
もともと「起業は難しく、怖いもの」というイメージを抱えてきましたが、いざ自分で起業してみると、日本の起業家支援の仕組みは年々強化され、頼れる先が沢山あることが分かりました。また、1人で会社を運営するわけではなく、エンジニアやマーケターなど、チームで会社とプロダクトを大きく育てていきます。だからこそ、チーム全体で思い描く未来の社会に一歩ずつでも近づけていることは、起業をして感じられる一番の醍醐味だと思います。
AZOOのミッションは「宿泊業をアップデートする」「データで世界の体験価値を高め、私たちの人生を豊かにする」です。日々事業が成長していくため、さまざまなポジションで急速な成長フェーズにある私たちの会社を支えてくださる方を募集しています。ミッションに共感し、いずれは世界への進出も目指すスタートアップでビジネスの経験をさらに積んでみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお問い合わせいただけたら幸いです。
会社名 | 株式会社AZOO |
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代表者名 | 横田裕子 |
創業年 | 2020年01月31日 |
事業内容 | ホテルシステム事業 |
サービス名 | WASIMIL(ワシミル) |
所在地 | 〒600-8413 京都府京都市下京区烏丸通仏光寺下ル大政所町680-1 |
代表者プロフィール | 兵庫県出身、京都大学工学部卒業。 新卒で毎日放送に勤務した後、インドネシア政府奨学金に選定され、現地の大学に留学。帰国後は環境省やJETRO、JICAで日本の中小企業の海外展開支援などに従事。イラン、クウェート、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、インド、オーストラリア政府および国連環境計画(年次総会)との渉外経験やWebマーケティング・コンサルティングなどの経験を積む。日本の観光業が抱えるDXとデータ活用への課題を解決すべく、2020年1月に共同創業者と株式会社AZOOを設立。第9回京都女性起業家賞(アントレプレナー賞) 京都府知事賞最優秀賞 受賞。大阪市主催『OIHシードアクセラレーションプログラム』などさまざまなアクセラレータープログラムへの採択も決定している。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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