店舗を持たない「ゴーストレストラン」を開業するための手法
ゴーストレストランの開業は実店舗の開業よりも簡単!
ゴーストレストランは、実店舗は不要で家賃などの初期費用を抑えて開業できる方法です。
ゴーストレストランとして成功しているお店の多くは、ひとつのメニューで専門性を高めたり、お客様の利便性が高い注文方法を採用したりと他社との差別化を図っています。
開業するだけでなく、同じようなゴーストレストランと戦えるようにお店の魅力やコンセプトについてしっかり考えておきましょう。
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ゴーストレストランってなに?
飲食店は「お店でお客様が飲食する場所」と考えるのは、時代遅れかもしれません。
ニューヨークで誕生したゴーストレストランは、新しい飲食店の営業スタイルとして日本でも普及し始めています。
ゴーストレストランは、実店舗を持たないデリバリー専門のレストラン。
アプリなどで注文を受けて、デリバリーサービスでお客様に商品を届ける営業方法です。
そのため、お店に必要なのは調理に携わる最低限のスタッフと調理スペースだけです。
最低限の準備で、費用や時間を抑えてスタートできます。
ゴーストレストランを開業する手順
ゴーストレストランは、一般的なレストランと比較して圧倒的に少ない時間と費用で開業することが可能です。
ゴーストレストランを開業するまで、具体的にどのような手順が必要なのか紹介します。
1.食品衛生責任者資格を取得する
ゴーストレストランを開業する場合であっても、一般的な飲食店と同じように食品衛生責任者資格は必要です。
食品衛生責任者資格は、食品の衛生管理が必要な事業をおこなうために求められる資格です。
食品を扱う店舗を営業する場合には、施設ごとに食品衛生責任者を置かなければいけません。
通常、食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。
講習の内容は、公衆衛生学と衛生法規、食品衛生学です。
講習会は1日で終了で、修了試験もありますが、講義を聞いていれば問題なく回答できる内容となっています。
講習の申し込み方法は地域によって違うので、該当エリアの食品衛生協会ホームページなどで確認してください。
ただし、栄養士や調理師、食品衛生管理者の資格を用いる場合は、新たに食品衛生責任者の資格取得は不要です。
2.飲食店営業許可を取得する
ゴーストレストランであっても、飲食店営業許可は必要です。
飲食店営業許可を取得するには、調理場となる店舗に食品衛生責任者を1名以上配置し、該当エリアの保健所で申請してください。
申請書類を提出して、施設の設備などが要件を満たしているか検査を受けます。
問題がなく、基準を満たしていれば飲食店営業許可が下ります。
ただし、すでに営業許可が下りている店舗のキッチンであれば、新しく飲食店営業許可を取得しなくても良い場合もあるようです。
レストランの店休日に調理場を借りてゴーストレストランを開業する、シェアキッチンを利用するといった場合には不要な場合もあるので、保健所に相談してみてください。
3.宅配代行サービスに登録する
調理場所が確保できたら、どのようにしてお客様に商品を届けるかを考えましょう。
一般的に利用されているのが、デリバリー代行サービスです。
特にUber Eatsの登場によって、デリバリー代行サービスの認知度は高まりました。
デリバリー代行サービスは登録すればすぐに利用できます。
ただし、審査があり、必ず登録できるわけではないので注意が必要です。
また、Uber Eats以外にもたくさんのデリバリー代行サービスが生まれているので、サービスを比較してどこにするか選んでください。
デリバリー代行サービスは登録時に手数料がかかり、利用するときには配達手数料がかかります。
デリバリー代行サービスごとのシステムや料金体系を確認して、自社にとって有利なサービスを選びましょう。
ゴーストレストランを選ぶメリット
店舗を持たない開業、ゴーストレストランをスタートすることを選ぶ事業者は増えています。
店舗を持たないことにどのようなメリットがあるのでしょう。
ゴーストレストランを選ぶメリットを紹介します。
ゴーストレストランのメリット① 初期費用を抑えられる
ゴーストレストランとして開業する最大のメリットが、開業時にかかる初期費用を少なくできる点です。
実店舗を用意するには、多くの資金が必要です。
例えば、物件を借りる場合を考えてください。
まず、店舗を借りることで家賃が発生します。
通常は、契約時に契約月と翌月の2カ月分を支払います。
次に保証金と敷金です。
保証金と敷金は、退去するときに補修費用などを差し引いて戻ってくる費用。
地方によって相場は違いますが、6カ月から12カ月分の家賃が一般的です。
さらに、返還されない費用として大家さんに支払う礼金と、不動産業者に支払う仲介手数料がかかります。
礼金は2カ月分が相場、仲介手数料は1カ月分です。
家賃だけ見れば安い店舗の物件でも、保証金や敷金礼金によって大きな金額になってしまいます。
上記の例で家賃が10万円と考えると、100万円以上は用意しなければ店舗を借りるのは困難です。
さらに、必要に応じて内装や調理器具を用意しなければいけません。
厨房機器や看板、家具や食器を用意するにも数百万は考えなければいけないでしょう。
ゴーストレストランであれば、調理場所さえ確保できればこれらの費用は不要です。
シェアキッチンや店休日の飲食店を借りるといった方法であれば、少ない初期費用で開業できます。
飲食店を開業するときに、まずハードルとして立ちはだかるのが初期費用の準備の問題です。
ゴーストレストランはまとまった費用を準備できない人にもおすすめの形態です。
ゴーストレストランのメリット② 掛け持ちで業態やメニューを変えられる
店舗を用意することは、ある程度提供できるメニューや業態が店舗によって左右されることを意味しています。
例えば、一度イタリアンのお店を構えてしまうと、中華料理や和食は店の雰囲気、客層に合わないかもしれません。
ゴーストレストランは業態やメニューの縛りを受けにくい飲食店です。
店舗を持たないので、同じキッチンでイタリアンでも和食でも同時に展開することができます。
また、飲食業界は流行が移り変わりやすいため、流行った食品を他の飲食店より先に提供できるフットワークが軽いお店は有利です。
ゴーストレストランであれば、トレンドに合わせてメニューを変更しながら営業するといった戦略も可能です。
アイデアやトレンドに合わせてすぐに商品化ができるスピード感はゴーストレストランだからできることだといえます。
ゴーストレストランのメリット③ 席数や回転率に売上げを左右されない
ゴーストレストランは、お客様に合わせて席やテーブルを用意する必要がありません。
実店舗であれば、客数が満席になってしまえばそれ以上の注文は受けられないため、どれだけの席数を用意しておくか、回転数をどうやって上げるかが課題です。
一方で、ゴーストレストランは席数や回転率は売上げに影響しません。
キッチンの業務効率さえ考えれば、注文数に合わせて売上げは伸びていきます。
デリバリー代行サービスを利用すれば、スタッフの仕事は調理のみです。
売上げが増えてきたらスタッフを増やしたり、逆に閑散期にはスタッフを減らせます。
実店舗よりも効率的に、多くのお客様の注文に応えられます。
ゴーストレストランのメリット④ 天候の影響が少ない
ゴーストレストランは、天候の影響を受けにくい点もメリットです。
一般的に飲食店やキッチンカーは、天候によって売上げが大きく変わります。
天気が悪くて人通りが少ない日は売上げが下がってしまうことも多く、家賃や人件費を考えると赤字になってしまう可能性があります。
ゴーストレストランは、お客様に直接商品を届けるので、天候には左右されません。
場合によっては、外出したくないと考える人の影響で売上げアップも期待できます。
ゴーストレストランを始めるときの注意点
多くのメリットがあるゴーストレストランですが、注意点もあります。
開業に当たって気をつけたいポイントについてまとめました。
食材管理は徹底する
食材の管理はゴーストレストランで考えなければならない課題です。
実店舗が少ないと冷蔵庫、冷凍庫の設備が乏しくなって容量が足りなかったり、管理が行き届かなかったりする場合があります。
シェアキッチンの場合にはどの食材がどれだけ在庫があるのか、小まめにチェックしてください。
特に共有で冷蔵庫や冷凍庫を使う場合には、どの食材が自分のお店のものかわかるようにしておきましょう。
自宅をそのまま調理場にするのは困難
ゴーストレストランの調理場であれば、自宅のキッチンでもまかなえると考える人もいるかもしれません。
しかし、実店舗の飲食店であってもゴーストレストランであっても、同じように飲食店営業許可は必要です。
飲食店営業許可を受けるには、施設の図面や施設検査も求められます。
残念ながら、自宅のキッチンをそのまま使っても飲食店営業許可は下りない可能性のほうが高いと考えられます。
どうしても自宅のキッチンで営業許可を得るのであれば、大規模なリフォームも検討しましょう。
ただし、自宅のキッチンを使おうとすればリフォームで多大な費用がかかってしまうので、他のすでに飲食店営業許可を得た調理場を借りたほうがリーズナブルかもしれません。
備品や設備、金銭のトラブルに注意する
調理場を借りたり、シェアキッチンを使ったりすると、人と調理場を共有することになります。
複数人で調理スペースを使うとスペースや備品の置き場所、調理器具の使い方といった内容でトラブルが起きることがあります。
トラブルを避けるためにも、備品や設備、使用料金などのルールは初めに決めておきましょう。
ルールの中には、備品や設備の故障が起きた時にどのように対処するかについても決めておくようにしてください。
デリバリー可能範囲を把握する
ゴーストレストランは、デリバリー代行サービスを使うため、どこまで配達できるかを考えておかなければいけません。
デリバリー代行サービスを使う以上、そのサービスに依存するリスクがあります。
例えば、一社のデリバリー代行サービスを選んだとしても配達手数料や、料金体系が変更になってしまったり、サービス自体が撤退になったりする可能性もあります。
一社のデリバリーサービスしか使えない、依存するような形態は避けてください。
ゴーストレストラン自体は、配達員が取りに来られないような場所でなければ、裏路地でも目立たない地下でも問題ありません。
しかし、Uber Eatsのように配達員がエリアや勤務時間を選べる形式の場合は、辺鄙な場所やわかりにくい場所は敬遠されてしまう可能性があります。
そもそも不便な場所は、注文してくれるお客様も少なくなってしまうのでおすすめできません。
調理する場所とそこからデリバリー対応できるエリアについては、開業前に考えておくようにしましょう。
デリバリーや容器にかける費用を計算しておく
ゴーストレストランは初期費用は安くなりますが、実店舗ではかからない費用が発生します。
例えば、デリバリー代行サービスを利用した時の配送手数料もその一つです。
さらに、調理した料理を盛り付ける包装容器や箸の費用も発生します。
メニューを考えるときに、いくらで提供するかは重要なポイントです。
うっかり食材の値段や人件費だけで価格を計算してしまうと思いもよらない費用で苦しむことになります。
必ず、デリバリーや容器の費用も加味してからメニュー価格を決めるようにしてください。
顧客とコミュニケーションを取る方法考えておく
ゴーストレストランは、店舗がないのでお客様とコミュニケーションをとる手段が少なくなってしまいます。
店舗を構えれば、通りがかりのお客様を呼び込むこともできますが、ゴーストレストランの場合はお店の存在をアピールするために別の手段を考えなければいけません。
例えばSNSを使って商品やお店の魅力をアピールしたり、デリバリー代行サービスで上位表示になるように努力したり集客の方法については考えておく必要があります。
ゴーストレストランでは、お客様から商品の感想を直接もらうことも難しく、商品開発や改善に困ってしまうこともあります。
お客様の評価無しに、お店を運営するのは不安も大きいでしょう。
ホームページやSNSといったツールも使って、お客様と直接コミュニケーションを取れるようにしておいてください。
まとめ
飲食店の新しい形態であるゴーストレストランが生まれ、デリバリー代行サービスが普及したことによって事業者の選択肢は広がっています。
しかし、残念ではありますがゴーストレストランにチャレンジしたもののうまくいかずに撤退する例も珍しくありません。
初期費用が安いといったメリットだけに着目するのではなく、ゴーストレストランであることを活かしたビジネスを考えるようにしてください。
参入するだけでなく、長くビジネスを継続させるために自分が提供したいメニューや付加価値に合ったゴーストレストランの活用方法を考えましょう。
(編集:創業手帳編集部)