会社経営には欠かせない知識!社会保険料控除を知っておこう
社会保険料控除の知識を得て、働く人により良い労働環境を提供しよう
労働者個人を守るためにあらゆる最低限の保障を詰め込んだのが社会保険です。
社会保険は社会保険料として毎月労働者から引かれるようになっていますが、ある方法で課税対象金額を減らせることを知っている方は少ないかもしれません。
後々社会保険料として納めた金額のすべてが、所得控除として税金の計算に反映させるようになっており、節税効果が得られようになっているのです。
ここでは社会保険控除の対象や控除の受ける方法などを解説していきます。
経営者として知っておくべき内容をまとめているので、起業予定である人や起業直前であるという方はぜひ最後までご覧ください。
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この記事の目次
社会保険料控除とは?
社会保険料控除は所得控除の一部になっており、社会保険料控除を受けることで所得税や住民税が安くなるメリットを得ることができます。
そもそも所得控除とは何かというと、ある経済状況があてはまる方に、申告者の所得合計金額から一定の金額差し引いて税金の計算を行えるようになる制度です。
節税ができる制度となっており、収入を得ている人のみならず、人を雇う企業にとっても覚えておきたい知識になっています。
所得税は所得金額が多ければ多いほどかかります。つまり、稼げば稼ぐほど税金がかかるということです。
しかし、納税者は皆個人的事情があります。
扶養家族がいたり高い医療費を払っていたりすれば、同じ収入で同じ納税額を払うとしても、家庭の事情や環境によって負担する納税金額が大きいと感じてしまうでしょう。
そんな不公平な問題を解消するために所得控除がります。そして社会保険料控除は所得控除のひとつであり、社会保険料を支払った人物が受けられる制度となっています。
1年間分の社会保険料すべてを控除できる制度
社会保険料控除では、1年間に払った社会保険料全額が控除の対象になります。所得控除の対象となる所得税や住民税は、所得金額の一部が控除の対象です。
社会保険料控除になると全額控除が適用され、他の控除と比べるとその節税効果は大きくなり、重要な控除のひとつだと言えるでしょう。
うっかり忘れてしまうと税金が高くなるので気を付けてください。
家族分も対象になる
社会保険料控除は自分の社会保険料だけが対象になると思っている方が多いかもしれません。
しかし社会保険料控除は、生計を同じくする配偶者や子どもが負担する社会保険料を自分で払っていた場合にも控除が適用されます。
上記の場合の控除金額は自身の控除と同じく全額です。
通常20歳になると働いているかどうかに限らず国民年金の加入義務が生じます。まだ大学生であればその保険料を親が払っているケースが多いはずです。
大学生が自分で支払うべき保険料を親が払っているならば、親は社会保険料控除を受けられます。
こうして余分に払っていた控除額も節税できるのが、所得控除のひとつである社会保険料控除の魅力です。
対象に入る社会保険料
社会保険は健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つの保険をまとめたものです。
会社に勤めている方は上記のうち健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険が毎月給料から引かれるようになっています。
労働保険に関しては企業が全額支払うので、労働者側の負担は一切ありません。
社会保険に入らない会社勤めの方は、労災保険と雇用保険とまとめられた労働保険に入る必要があります。
このように、社会保険には様々な保険が集まってできているため、非常にややこしく感じるかもしれません。
しかし、社会保険料控除ではこれらすべてを控除できるという制度になっているので、一つひとつ詳しく説明していきましょう。
国民年金保険料
社会保険に加入している方は国民年金保険料を払っていることはありませんが、もし20歳以上で一定以上の収入を得ていない扶養家族がいれば、その方の国民年金保険料を払う必要があります。
上記の場合で国民年金保険料を払っていれば日本年金機構から控除証明書が送られてきます。
控除証明書を添付して確定申告を行えば、国民年金保険料の控除を受けることができるので、忘れないようにしましょう。
厚生年金保険料
厚生年金を払っている方は、年末調整で納めるべき税金の計算を行うため労働者自身が何かをしなければいけないことはありません。
しかし、年の途中で退職した会社の厚生年金保険料については、退職した会社で源泉徴収票を発行してもらい、税務署に提出して確定申告をしなければなりません。
経営者は退職者にも源泉徴収票があることを忘れてしまいがちなので、しっかりと退職者本人にも源泉徴収票があることを伝えなくてはならないでしょう。
国民健康保険料
国民健康保険料は、企業側から出せる控除証明書がありません。
年末調整できなかった場合で社会保険料控除を受けるには、自治体から送られてくる納付額通知書が必要になってきます。
納付額通知書には国民健康保険料の支払金額が記載されています。この納付額通知書を確定申告書の欄に記入することで、控除金額が決定します。
介護保険料
40歳以上65歳未満の方で国民健康保険に加入していると、国民健康保険料の中に介護保険料も含まれています。
そのため、40歳以上65歳未満の方の国民健康保険料を控除すれば介護保険料も控除できるというわけです。
65歳以上の方になると介護保険料は年金から天引きされるようになりますが、この場合でも社会保険料控除を受けられることを覚えておきましょう。
介護保険料も控除証明書はないので、送られてきた納付額通知書の数字を基に金額を確定申告書類に記入してください。
労働保険料
労働保険料は本来ならば会社が全額負担しているものではありますが、一部の方のみ労災保険料の控除が可能になります。
それは、労災保険に特別加入している一人親方や中小企業の役員といった、自身で労災保険料を負担している人です。
年度の途中で退職した方の労働保険料は、源泉徴収票の社会保険料などの金額に含まれているので、退職者本人にはよく確認し、申告してもらう必要があるでしょう。
国民年金基金の掛金
国民年金基金に加入して掛金を払っている場合も、控除が受けられます。この場合、国民年金基金連合会から控除証明書が送られてくるので覚えておいてください。
確定申告時に添付すれば社会保険料控除として適用されます。
厚生年金基金の掛金
厚生年金基金の掛金も社会保険料控除の対象になっています。会社が厚生年金基金に加入している場合、厚生年金基金の掛金を負担しているでしょう。
年度の途中で退職した方には、源泉徴収票を添付して確定申告をするようにしましょう。
社会保険料控除はどこで行うのか?
年末調整や確定申告はどちらも収入を得た人が本当に支払うべき税金の計算をするものです。
よく耳にする言葉ではありますが、実際どこで行えるものなのか知らない人もいるかもしれません。そこで、社会保険料控除がどこで行うものなのかも解説していきます。
社会保険加入者は年末調整で可能
社会保険に加入している方は年末調整にて計算が行われるので、基本的には何も手続きをする必要はありません。年末調整は社内で行います。
ただし、その際に社会保険料控除の計算のみならず、生命保険料控除や地震保険料控除も計算されます。
加入している方は事前に保険料控除証明書が送られてくるので、会社に提出したり、証明書の金額を見ながら記入したりして、記入漏れのない年末調整にしなくてはなりません。
パート・アルバイトや年の途中で転職・就職した人は確定申告で
社会保険に加入せず、扶養内で働くパート・アルバイトの方は確定申告が必要です。
ただし正規社員でなくても、一部の企業は年末調整をパート・アルバイトでも可能にしている場合があります。
経営者の方は年末調整の対象が正規社員だけなのか、それとも全員なのかその範囲に気を付けなくてはなりません。
ちなみに確定申告は全国の税務署や市町村の税務課などで申告可能です。また、フリーランスや個人事業主の方も年末調整ではなく確定申告を利用していきます。
年末調整で取り扱える社会保険料とは?
社会保険料控除に関することで経営者が一番覚えておくべきことは、年末調整です。
年末調整についてよく知らずに年末調整用紙を記入している社員は多くいるので、経営者の知識不足でミスが生じないようにしっかりと知識を蓄えておいてください。
給与から控除される社会保険料
給与から控除される社会保険料は給与がいつのものであるかに限らず、その年中に実際に控除された金額が社会保険料控除の対象となってきます。
給与から控除した社会保険料
健康保険・厚生年金・雇用保険といったように通常給与から控除されることになっているものが、給与の支払いがなかったとして徴収できない場合もあります。
この場合は直接本人から徴収したり、退職手当から控除したりするようになり、社会保険料に含まれることになるので注意してください。
未払いにあたる社会保険料
給与支払がなく本人から直接徴収したり、退職金がなくて徴収できなかったりすれば、未払いの社会保険料が生まれることになります。
このように未払いになってしまった社会保険料は、納付期日以降に払った場合でも未払いとみなされ、その年内に支払った社会保険料の扱いにはなりません。
割引が適用された社会保険料
国民年金の保険もしくは掛金を前納している方は、保険料や掛金に割引が適用されます。
この場合、年末調整にて対象となるのは割引後の金額です。つまり、実際に納付した保険料や掛金となることを覚えておきましょう。
前納した社会保険料
前納した社会保険料に関しては、以下の計算式によって算出された金額がその年内中に支払った保険料の額となります。
前納した社会保険料の総額(割引がある場合は割引後の額)×前納した社会保険料に係る納付期日の総回数÷前納した社会保険料に係るその年中に到来する納付期日の回数=支払った保険料の金額
かなりややこしくなりますが、経営者ならば理解しなければならないことと言えます。
ただし、一括で前納した期間が1年以内分だと変わってきます。
この場合本人が申告することで、前納した金額すべて税金の計算で扱う、年内に支払った保険料の金額として控除の対象にできるようになっています。
確定申告対象者に伝えたいポイント
社内で年末調整を行わないのであれば、確定申告が必要な方に知識を提供したほうが不備も少なく済むでしょう。確定申告対象者には以下のポイントをぜひお伝えしてください。
必要書類が揃っているかどうか
確定申告は、納めた税金を知っているだけでは申告を完了できません。申告する内容に応じて必要な書類の用意が求められます。
所得税ならば源泉徴収票、国民年金保険料の控除なら国民年金保険料控除証明書を添付するなど、人によって異なるので、何が必要な書類なのかも改めて把握しておくことが大切です。
インターネットを活用しよう!
確定申告は現在、税務署に行かずともインターネットを活用して申告を済ませることができます。確定申告の期間は2月15日~3月15日の1カ月間です。
上記期間で予定を調整しなければいけませんし、会場は大変混み合い時間もかかってしまうため、インターネットの利用がおすすめです。
まとめ
社会保険料控除により所得税や住民税が安くなり、税金の負担を軽くすることができます。
社員がきちんと理解して控除を受けられるように、控除のメリットを知っておくほか、経営者は年末調整の準備からしっかり行うことが求められます。
また、フリーランスや個人事業主も確定申告で控除が受けられるので、申告漏れをしてペナルティを受けないよう忘れずに申告することが大切です。
近年はインターネットからでも申告できるようになっているので、税務署まで直接行く時間がない方もインターネットから申告しましょう。
(編集:創業手帳編集部)