現金に代わる小切手とは?仕組みや書き方・換金方法を解説
現金の取引に便利な小切手!手形との違い、書き方や換金方法をわかりやすくご紹介!
小切手は現金に変わってお金をやり取りができます。多額の支払いが発生する取引でよく用いられますが、仕組みや発行方法などがよくわからないという方もいるでしょう。
また、小切手と似たものには手形があり、混同している方も少なくありません。
そこで今回は、小切手の特徴や手形との違い、発行・換金方法について詳しく解説します。小切手の使い方に理解を深めたい方は、参考にしてください。
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この記事の目次
小切手とは何?
小切手は銀行から発行される有価証券で、記載された額面の金額を預金口座から引き出すために使われます。
まずは小切手とはどのような証券なのか、紹介しましょう。
小切手の特徴と仕組み
小切手は当座預金の口座を保有する銀行から発行されます。
発行する人は「振出人」、小切手を受け取る側の人を「持参人」、小切手に必要事項を記載し、相手に小切手を渡す(振り出す)日を「振出日」と呼びます。
振出人は当座預金のある銀行に申請すると、有料で小切手を1枚または複数枚連なった状態(小切手帳)で発行してもらうことが可能です。
そこに必要事項を記載して振出日に持参人へ小切手を渡します。
後は持参人が銀行で換金・預金の手続きを行うと、振出人の当座預金口座から現金が引き出される仕組みとなっています。
小切手は3種類ある
小切手には、持参人払小切手・線引小切手・先日付小切手の3種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
・持参人小切手
銀行に小切手を持参した人であれば、誰でも換金が可能です。
・線引小切手
証券上部に2本線が引かれているのが特徴的な小切手です。こちらは現金での受け取りではなく、持参人の銀行口座へ直接入金されるようになっています。
そのため、どこに振込まれたのか明確で、盗難被害のリスクを抑えることが可能です。
・先日付小切手
将来の日付で振出日が設定されている小切手です。振出人の資金繰りの関係で現状資金がなく、振出日までに資金の確保が見込める時などに使われています。
しかし、設定された日付に法的な効力はないため、振出日前に持参人が銀行へ換金に来ても、銀行側は拒否することはできません。
手形とは何が違う?
同じく現金化できる証券には手形があります。手形は小切手と混同する方も多いので、続いては手形の特徴や小切手との違いについて解説しましょう。
手形の特徴
手形は、指定された期日・場所で記載された金額分を支払うことを約束する証券です。企業間で商品の代金や掛代金の決済方法としてよく用いられています。
手形には約束手形と為替手形の2種類が存在します。
・約束手形
振出人が証券の受取人に対して、一定期日に現金を支払うことを約束する手形を示します。
約束手形の振出人は渡した後日に手形代金の支払い義務が発生し、逆に手形を受け取った相手は後日に代金を受け取り権利が発生します。
勘定科目では振出人は「支払手形」、受取人は「受取手形」で処理しましょう。
・為替手形
為替手形の場合、手形の受取人にお金を支払うのは振出人ではなく、第三者の支払人となります。
振出人が支払人に支払いを依頼する形なので、三者間取引で用いられるタイプです。
振出人は売掛金と買掛金を同時に相殺できるため、債券回収や債務の支払いプロセスを省略できるメリットがあります。
しかし、このタイプの手形はほとんど使われておらず、手形というと約束手形が主流です。
小切手と手形の違い
小切手との大きな違いは現金化のスピードです。手形は証券に金額以外に日付や場所を記載しているため、設定された日付を迎えないと現金化できません。
一方、小切手は受け取ってからすぐに銀行に向かえば、即座に現金化することができます。
小切手も先日付により将来の日付で振出日を設定できますが、法的な効力を持たないことがデメリットです。
手形は支払期日をかなり先の日付で記載できるため、資金繰りの都合で十分な資金がない時には最適です。
現金の持ち運びに便利な小切手の発行方法(事前手続き)・書き方
小切手は書き方が決まっており、些細な書き漏れでも無効となってしまいます。
発行にはコストがかかるため、無効により無駄になってしまわないためにも正しい書き方を覚えましょう。
ここからは小切手の事前手続きと書き方を解説していきます。
当座預金口座の開設と委託契約を締結しておく
小切手の支払いは当座預金口座から行われるので、まずは銀行で口座を開設します。
銀行に開設を申し込み、金融機関所定の審査を通過すると開設となるので、支払金を入金しましょう。
ただ資金を預けた状態では小切手は使えないため、開設と同時に金融機関と委託契約を締結します。
本来、銀行側が顧客の口座からお金を動かすことはできません。
そこで委託契約をすることで、自分の当座預金口座から小切手を決済する際の作業を銀行側に託せるようになります。
小切手は口座に入金した金額分振り出すことが可能なので、使用前に必ず支払う金額以上の資金を預けておいてください。
資金が不足した状態だと決済ができず、最悪銀行との取引も停止となる恐れがあります。
当座預金口座の開設と委託契約が完了すると、有料で小切手帳が発行されるので必要事項を記載しましょう。
支払金額は手書きかチェックライターで記載する
支払金額の項目は手書きもしくはチェックライターで印字します。
手書きで記載する際は頭に「金」を付けて漢数字で金額を記入し、末尾に「円也」と記載してください。
円也は振出人以外の人が金額を書き換えて変更してしまう不正を防ぐために記載します。
チェックライターを使う時は金額の前に「¥」を入れて、算用数字で金額を記入します。手書き同様に末尾には「※」もしくは「☆」を忘れずに記入しましょう。
金額を間違えて書いてしまった時は、訂正はせずに新しい証券に書き直してください。書き損じた小切手は無効となるので、間違って使ってしまわないよう注意が必要となります。
破棄する際は各項目にバツ印を入れて、シュレッダーで断裁すると良いです。
振出日は発行日が一般的
振出日は空白でも持参人は銀行で換金できます。空白にしておくと不正利用の対策になりますが、いつから受け取れるのかわかりづらいので、基本的には日付を入れます。
一般的には発行日を記載しますが、必要に応じて未来の日付を書いても構いません。
銀行に届け出ている名義で振出人を署名する
署名する際は、必ず銀行に届け出ている名前と印鑑を使ってください。個人で小切手を振り出す場合は、個人名を記載して捺印します。
企業として小切手を出す場合は、会社の住所や社名、役職と一緒に氏名を記載しないと、個人が発行したものと扱われるので注意してください。
企業で署名する場合は、ゴム印を使っても問題ありません。
小切手帳のミシン目部に割り印する
小切手の左側にはミミと呼ばれる控え部分がつながっています。本体とミミをつなぐミシン目部に、署名に使った印鑑で割り印をしてください。
割り印は押していなくても決済に影響はありませんが、偽装や不正利用対策になります。
銀行渡りの記載で受取人の特定が可能
小切手の表の右肩などに「銀行渡り」と記載しておくと、不正利用の防止になります。銀行渡りの表示があると、持参人の通帳に入金しないと現金化できません。
つまり、誰の口座にお金が支払われたのか把握できるため、万が一に小切手が他の人に渡り換金されても特定することが可能です。
裏書で譲渡相手の指定が可能
小切手は、「裏面禁止」や「譲渡禁止」という記載がない限り、小切手を受け取った相手が別の人物に譲渡することもできます。
譲渡する際は、裏書で最終的に誰にお金を支払うのか譲渡相手の指定が必要です。
裏面の空いているスペースに、譲渡する日付と譲渡側の住所・氏名・捺印、譲り受ける相手の名前を記入してください。
また、「〇〇にお支払いください」などの文言も入れておきましょう。
裏書で小切手を譲渡には注意点があります。
支払期日を経過しても決済されず不渡りが発生した場合は、振出人と譲渡した裏書人に責任が発生するので、慎重に取引を行ってください。
小切手を換金する方法と注意点
取引の中で小切手を受け取った場合、銀行で現金化してもらう必要があります。換金には注意したいこともあるので、ここからは小切手を換金する流れを紹介します。
換金前に金額や振出日などに間違いがないか確認
銀行に小切手を持参する前に記載内容が正しいか確認してください。まず金額は請求通りの金額であるかチェックしましょう。そして、以下の項目も確認してください。
-
- チェックライターで印字されており、金額の頭に「¥」、末尾に「※」や「☆」マークがついている
- 漢数字で金額が手書きされており、金額の頭に「金」、末尾に「円也」と記載されている
書き漏れがある場合は振出人に伝え、手書きであれば書き加えてもらってください。チェックライターは手書きで書き加えても無効なので、新しく小切手を振り出してもらいましょう。
振出日は空白でも問題ありませんが、いつから支払いを受けられるのかはっきりさせるためにも記載されているほうが良いです。
空白の時は振出人に伝え、書き加えてもらうと安心です。振出日に間違いがあれば訂正もしくは新しく振り出してもらってください。
この他にも振出人の項目や捺印、小切手を譲り受けた人は裏書の内容も間違いがないか確認します。
裏書内容では、最初に小切手を受け取った裏書人の住所・氏名・捺印、そして譲受人の自分の名前が正しく書かれているかチェックしてください。
振出日から10日間以内に換金
小切手には呈示期間と呼ばれる、換金できる期間があります。その呈示期間は、振出日の翌日10日間までです。
小切手自体の有効期限は6カ月ですが、10日経過すると振出人は決済の取り消しを銀行側に請求できます。
決済が取り消されると換金できなくなってしまうので、受け取ったら早めに手続きしましてください。
記載された銀行に小切手を持っていく
小切手には支払地という項目があり、振出人の当座預金口座がある銀行名と住所が記載されています。持参人は記載されている銀行に小切手を持っていきましょう。
銀行に持っていくと現金に換金するか、自分の預金口座に預け入れることが可能です。
預金する時はどの銀行の口座でも構いません。ただし、線引小切手により銀行が指定されている場合は、その銀行の口座にしか預け入れられないので注意してください。
銀行で換金する時は印鑑も持参します。また、金額が10万円以上の場合は本人確認書類も必要となるので、あらかじめ用意しておきましょう。
他銀行では換金時に手数料が発生する
小切手の換金は小切手に書かれた銀行・支店以外でも可能です。しかし、他銀行や同銀行の別支店で手続きをすると取立手数料が発生します。
そのため、できるだけ小切手と同じ銀行支店で換金することをおすすめします。
小切手の紛失・盗難被害に遭った時の対応
振出人も持参人も小切手の紛失・盗難被害に遭わないために、管理や取り扱いには注意しましょう。
万が一、小切手をなくした場合は振出人の当座預金がある銀行に「事故届」を出し、さらに警察へ遺失届か紛失届を出す必要があります。
持参人が小切手をなくした場合は、すぐに振出人に連絡して事故届を出してもらうように伝えてください。
事故届の手続きでは小切手と同額分のお金を銀行に預託する必要があります。預託しないと振出人は取引停止処分を受けるので注意が必要です。
なお、委託したお金は手形交換所の一定手続きが済むと、後で返還されます。
手形の場合は、裁判所に公示催告を申し立てて手形を無効化する除権決定が必要です。
しかし、小切手の場合は呈示期間が経過すると、振出人に支払い義務がなくなり取引銀行に支払いの取り消しを請求できる特徴があります。
そのため、裁判所に申し立てて小切手を無効にしてもらう必要はありません。
まとめ
小切手は多額の現金で取引する際に便利な有価証券です。
企業間の取引で活用する機会が多くありますが、1つでも記載ミスがあると無となってしまうので、正しい書き方を覚えることが大事です。
また、小切手には換金できる期間があるので、受け取ったら速やかに銀行に持参しましょう。
小切手の不正利用を防ぐためにも、紛失・盗難の被害に遭わないように管理も徹底してください。
(編集:創業手帳編集部)