「ものづくり補助金」6次締切分の概要まとめ 電子申請に注意、新型コロナの加点措置も
ものづくり補助金6次締切分のポイントをまとめて解説します
ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)の6次締切分の申請受付期間が近づいてきました。
中小企業向けに、経営革新のための設備投資等に使える補助金です。新型コロナの影響で、新たな資金繰り策を考えている事業主にとっても、チェックしておきたいところ。概要と、今年から導入された電子申請の注意点など、まとめて解説します。
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この記事の目次
ものづくり補助金の役割
事業を行っていると、制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応しなければならない局面が出てきます。
ものづくり補助金は、制度変更などに対応するため、サービスや事業内容の改善など、経営革新に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する補助金です。
経営革新の内容としては、「新商品(試作品)開発」、「新たな生産方式の導入」、「新役務(サービス)開発」、「新たな提供方式の導入」という4つの類型があります。
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金6次締切分の概要は以下の通りです。
- 補助率:中小企業→該当する経費※の1/2、小規模事業者2/3
- 補償上限:最大1000万円
- 申請受付期間:2021年4月15日(木)17時 ~ 5月13日(木)17時(6次締切)
- 採択の通知:2021年6月末を予定
※1~5次締切で不採択だった方は、6次締切に再度ご応募いただくことが可能です。
※単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要です。
注意!2020年より、電子申請のみの受付に
ものづくり補助金の申請は、2020年から、電子申請システムのみの受け付けとなりました。そして、電子申請のためには、「gBizID」の登録が必要となります。
gBizIDは、補助金の申請や、社会保険の手続きなど、様々な行政サービスに1つのID・パスワードでログインできるサービスのです。一つのアカウントで複数の行政手続きを行うことができるので、業務負担の軽減や、情報の管理が容易になるメリットがあります。
gBizIDは、オンラインで即日作成可能な「エントリー」、法人代表者もしくは個人事業主向けの「プライム」、プライム の利用者が、従業員向けに作成する「メンバー」の3種類あります。
今回、補助金の申請に必要なのは、gBizIDプライムアカウント。特に注意しなければならないのが、gBizIDプライムアカウントの取得には、印鑑証明書(個人事業主は印鑑登録証明書)と登録印鑑で押印した申請書の審査を受ける必要があるため、最大2週間程度の時間がかかることです。
現時点でまだgBizIDプライムアカウントを取得していない場合、申請期間中に間に合うように、早め早めの登録を進める必要があります。
申請に使う書類は4種類
ものづくり補助金の申請には、以下の4種類の書類を使います。
- 事業計画書
- 賃金引上げ計画の表明書
- 決算書等
- その他加点に必要な資料(任意)※
※経営革新計画承認書や、開業届など、提出すると加点対象になる書類です。
賃上げ計画の表明書とは
賃上げ計画の表明書は、直近の最低賃金と給与支給総額を明記し、それを引き上げる計画に従業員が合意していることがわかる書面のこと。具体的には、
- 事業者全体の付加価値額(営業利益、人件費、減価償却費を足したもの)を年率平均3%以上増加
- 給与支給総額※を年率平均1.5%以上増加
- 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
※全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(俸給、給料、賃金、歳費及び賞与等は含み、福利厚生費や退職金は除く)。
という3つの要件をすべて満たす、3~5年の事業計画を作り、従業員に表明していることが求められます。
新型コロナで影響を受けた事業者は、必要な事業計画の要件が緩和される
今回、新型コロナウイルスの影響を受けて、ものづくり補助金の要件に加点措置が取られます。
新型コロナで事業に影響を受けた企業については、補助事業実施年度の賃上げと付加価値額増加の目標を据え置きし、その翌年度から3~5年の間にこの目標値を達成する計画を立てればOKとなります。
対象となる経費
ものづくり補助金の対象となる経費の概要も見ていきましょう。
機械装置・システム構築費
- 機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費
- 専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
- 改良・修繕又は据付けに要する経費
と、大きく3種に分類されます。
運搬費
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
技術導入費
知的財産権等の導入に要する経費
知的財産権等関連経費
特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用など
外注費
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
専門家経費
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
クラウドサービス利用費
クラウドサービスの利用に関する経費
原材料費
試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
問い合わせ先
ものづくり補助金の詳細についての問い合わせ先は、以下のとおりです
受 付 時 間:10:00~17:00(土日祝日を除く)
電 話 番 号:050-8880-4053
税理士法人ヒダ 榊原聡氏のコメント
今回発表されたものづくり補助金について、税理士法人ヒダ所属の榊原聡氏よりコメントをいただきました。
2009年4月株式会社八千代銀行(現株式会社きらぼし銀行)に入社。主に中小零細企業向けの融資に携わり、支店内の創業融資の多くに関わる。2016年10月より融資係長(現課長代理)として支店内の融資案件、企業格付の審査に携わる。通算で創業融資は100件以上、融資案件や企業格付は数千件関与している。現在は税理士法人ヒダにて税務会計を担当する傍ら、融資や財務コンサルティングを通して経営に関するアドバイスを行っている。
榊原:今回ものづくり補助金は、計10のポイントで変化しました。中でも
- 通年での公募となった
- 事業実施期間が倍増した
- 必要書類が半減した
など、例年よりも事業者が申請しやすいよう変更がなされています。
また、現在猛威を振るっている、新型コロナウイルスに対応する「特別枠」も創設されています。仮に特別枠での審査に落ちた場合は、通常枠の案件と合わせて審査されますが、加点措置により、通常枠で申請するよりも採択されやすいと言われています。
榊原:補助金申請に向けてやるべきことはいくつもありますが、申請を考えている方はまずは電子申請の手続きを完了させましょう。最大で2週間の時間がかかりますし、今後の補助金申請についてはこのシステムへの登録は必須になることと予想されます。事業計画の作成についてはその手続きを終えてからにしましょう。
榊原:事業計画の作り方に関しては、最初に、頭の中にある計画を、一通りフォーマットに埋めていきましょう。その後、不足がないか、必要事項は網羅されているかを確認しながら、ブラッシュアップを繰り返していくとスムーズに進められます。
今回から認定支援機関の認定が必須ではなくなりましたが、それでも認定を受けることをおすすめします。他者に確認してもらうことで、論理の飛躍や矛盾など、自分では気づかなかった点がわかります。そして何より、ものづくり補助金では、「革新性」が求められます。
革新性は、
「自社になく、他社でも一般的でない、新たな役務を取り込んだ新サービス、新商品開発や新生産方式」
とされています。オンリーワンであることは必要ありませんが、一般的ではないことを求められますので、多くの企業を知っている税理士や金融機関などに確認してもらうことで、より良い事業計画が作れるのではないでしょうか。
榊原:
加点項目については4項目あります。創業間もない企業であれば加点される項目もあれば、計画の承認が必要な項目などもあります。中でも、賃上げによる加点については注意が必要です。賃金を定期的に上昇させることで、事業の利益が出づらくなってしまう面もあるので、シミュレーションしてみて、実現可能かどうかを判断した上で狙うようにしましょう。
また、補助金は入金される前に支払いが発生するため、一時的に自社での立替が発生します。資金繰り対策として金融機関等からの融資も検討しつつ、補助金申請を進めていきましょう。
(編集:創業手帳編集部)
(監修:
税理士法人ヒダ / 榊原聡)
(編集: 創業手帳編集部)