YZ 安田 裕介|「mycsess」で事業者のLTVと新規獲得アップにつなげる!

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年04月に行われた取材時点のものです。

価値観の合う顧客同士を結びつけ、小規模事業者の円滑なビジネスを支援


現代の日本では中小企業が増えてきており、スモールビジネスが主流となってきています。こんな時代だからこそ、企業同士の結びつきが重要となってきています。

しかし、中には顧客同士の価値観が合わなかったり、一方が高圧的だったりと気持ち良くビジネスができていない企業もあるのが現状です。

そんな課題を解決するべく登場したのが、YZが手がける「mycsess」です。

今回は代表取締役CEOの安田さんの起業までの経緯やリクルート時代に学んだこと、現在取り組んでいる事業について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

安田 裕介(やすだ ゆうすけ)
株式会社YZ 代表取締役
リクルートに入社し、一貫してHR領域に従事。営業、営業マネジャー、事業企画マネジャーを歴任し、そこで起案した新規事業を立ち上げ、2015年4月から事業開発部の部長(メンバー120名)としてHR-Tech領域の新規事業開発を担当。10プロダクト50億までグロース。2017年より兼業で株式会社YZを創業。新規事業開発支援を中心にコンサルティング活動をスタート。小規模事業者の課題を痛感し、2020年に成長支援プラットフォームのmycsess(ミクセス)をローンチ。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大学卒業後はリクルートに入社!営業・事業企画・事業開発のスキルを磨く

大久保:まずはご経歴を伺いたく思います。

安田:大学卒業後にリクルートへ就職しまして、初めは関西でリクナビを売る仕事をしていました。

それから営業マネージャーも経験し、事業企画や事業開発の運営を担当しました。

今はAirシフト、Airワークに名称が変わっていますが、2014年くらいにはIndeedからの協業の話が舞い込んできたりして、そこでジョブオプ、シフオプの開発に携わってきてきました。その中で事業開発を学んできた形です。

コード入力以外なら概ね網羅できたのが、スキルにおいてすごく強みになったなと思います。

大久保:リクルート時代には事業企画に務めてこられたとのことですが、当たる新事業とそうでない新事業の違いについて感じたことはありますか?

安田:新事業をどれぐらいの規模でやるかにもよるんですけど、少なくともある程度黒字化してから立ち上げる新事業であれば、いかにお客さまの声を聞いてピポットできるかが大事だと思っています。

特に大手企業の場合は、お客さまの声をもとに新事業を展開するのが苦手な場合が多いです。

お客さまの声を聞いて「これはニーズないな」と感じたらしっかりチューニングをし、お客さまが商品を買ってくれたときにはどのニーズに惹かれて買ったのかを調べる。

これが新事業が成功するかどうかに大きく結びつくと感じました。

規模を大きくしようとして最初にとにかくお客さまを多く呼ぶことをしがちですが、最初からお客さまの数だけを求めると大体失敗すると思ってます。

お客さまが求めているものを作り、ニーズに共感してくれているお客さまをいかに呼ぶかが新事業成功には大事ですね。

「中小企業の社長を増やしたい」思いが起業のキッカケに!

大久保:起業を決意したキッカケを教えてください。

安田:リクルートに入ったきっかけに戻りますが、僕の出身校である帝塚山中学校・高校は裕福な家庭の子が多く通う学校でして、中小企業の社長である家庭が多く、親がサラリーマンでも比較的裕福な人が多い学校でした。

中小企業の社長の家庭では、ご飯をみんなで一緒に食べる時間が多く、家族と一緒に過ごす時間が多い印象をうけていました。

対してサラリーマンの場合は、家族みんなで食べるよりもそれぞれ自分のタイミングでご飯を食べる印象でしたので「中小企業の社長が増えることで幸せになる人が多くなるのでは」と、感じるようになりました。

リクルートに入社したのもHR部門で勤めれば中小企業の社長に多く会えると思ったのがキッカケの一つです。

ただ、入社後は中小企業の社長の大半は仕事がものすごく大変なのを目の当たりにして、「自分が見てきた中小企業の社長はエリートばかりだったんだな」と気づかされました。

リクルートは大企業に成長して優秀な社員も多かったんですが、アクセンチュアやBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)からのコンサルを社内につけていたんですよ。

社内に優秀な人材がいるのになぜコンサルに任せるのかと当時は疑問に思っていました。

一方、中小企業の社長が当時入社1年目の僕に対して「売上を上げるのにどうしたら良いのか」と聞いてくる。それくらい中小企業の社長に対してしっかりアドバイスができる人材は少ないんだなと感じていました。

採用に課題があっても、売上がないと採用活動すら難しいことから「とにかく売上を上げたい」との声も多くありました。しかし、これを解決できる人材はほとんどいなかったんですよ。

また、先ほどのAirの話の通り、役割がひと段落すんだなと感じていたので、「このままリクルートで勤めるよりかは自分がやりたかったことを叶えたい」と思ったのが起業を決意したキッカケです。

リクルート社員との兼業起業から独立へ


大久保:起業するパターンとして会社員と兼業で起業するか会社を退職されてから起業するパターンがあります。安田さんはどのような形で起業されましたか?

安田:起業といってもステップ踏む形で、2017年くらいに兼業起業からスタートしました。

最初は僕1人だけのフリーランス社長だったんですけど、ある程度売上の目途がついてきて、兼業ということもあり最悪起業に失敗しても食べていける状態にはなっていました。

中小企業の多くは「営業代行」に頼りますが、営業代行会社の中にはぼったくるところも多く、売上増加につながらなくなる懸念も強くありました。

これをプロダクトで解決できればもっと役に立てるパワーがつくんじゃないかと思い、2020年くらいにmyscessの開発に踏み切りました。

同時にリクルートを退職して独立し、本格的にmycsess運営に絞った形です。

大久保:リクルートと兼業で起業されたんですね。兼業起業を考えている方向けにもなりますが、起業する上で大変だったことやそれをどのように乗り越えてきましたか教えていただけますか?

安田:事業での観点とプライベートの観点の2つあります。

事業の観点で言うと「人」「お金」に尽きるかなと思っています。採用や組織活性化、お金の調達に関してはどこまでも頭を悩まされ続けています。

組織がいろいろ多様性に満ちてくるので、組織内のコミュニ―ケーションのズレをいかに防ぐか、お互いに働きやすい環境をどう作っていくかなどの組織を作っていく大変さもありますし、そこにどんどん新しい人が入ってくると雰囲気も変わってくるのです。

組織や人を常に良い状態にし続ける部分でも苦労しましたね。

基本リモートなのでどうしてもコミニケーションを取りづらいですし、お金の調達もうまくいかないくてギリギリのラインで常に走ってきました。そこはもう必死になって乗り越えていくしかなかった。

ですが、振り返れば仲間に恵まれてるのと資金調達の部分でも結果的になんとかなったなと笑

プライベートでも起業してから2人子供が生まれ、睡眠時間が削られてこれもこれで正直大変です(笑)。

なので、いかに仕事とプライベートのバランスを取るかに注力しました。

20代であれば時間を起業でフルに使うのが大半だと思いますが、僕の場合は仕事で使う時間を明確に決めて、それ以外は仕事に一切使わないと決めてなんとか乗り越えてきた形です。

事業とプライベートの掛け合わせが大変でしたね。

YZが展開するビジネスマッチングシステム「mycsess」とは

大久保:YZが展開する「mycsess」について紹介していただけますか?

安田:mycsessは小規模事業者の成長を積極的にアシストすることを目的として開発したGMP(グロースマネジメントプラットフォーム※)です。

小規模事業者に特化した2万社以上の自社データベースを活用した「AIマッチングやダイレクトマッチング機能」や「商談後アクションのナビゲーション機能」、またチャット機能を活用して、顧客とのやり取りやYZからのコンサルティングを受けたりと、受注までの営業プロセスを一気通貫で、より簡単にサポートを受けれます。

営業リソースが不足しがちな小規模事業者においても、最小限のコストで売上拡大を目指せるプラットフォームです。

大久保:mycsessのプロダクトは今までの事業開発経験が凝縮されていると感じます。このプロダクトはどのように開発を進めていきましたか?

安田:最初は小規模事業者に向けてナビゲーションを中心としたCRMツールの開発を進めていきました。

ある程度需要はありましたが、このナビゲーションを使いこなせず、顧客とうまく関係性を築けない小規模事業者ほとんどで改善の余地がありました。

そこで「AIマッチング機能」を追加しまして、お客さまをそのままナビゲーションに流し込んで良好な顧客同士をマッチングさせたり、顧客との関係性構築や管理を支援できるようなシステム開発を進めていきました。

大久保:mycsessの運営におけるLTV(顧客生涯価値)に関して工夫したことや強みを教えてください。

安田:ナビゲーションに関してはLTVをベースにして、お客さまとの継続的なコミニケーションで信頼を獲得していく形を大切にしています。

また、マッチング機能においては、マッチング条件シートに沿った企業同士を自動でマッチングさせていく仕組みで運営しています。

週2回ほどおすすめの会社が紹介され、会ってみたいとなれば日程調整をするというようなマッチングアプリに近い形が特徴的です。

1to1で会ってすぐ商談のセットができ、マッチング管理上でZOOMをこちらで発行して、お客さまは当日ウェブ会議に参加するだけ。

それまでの操作は必要ないですし、気軽に相談できるのが特徴としてあるのかなと思います。

それが終わった後も次に何すればいいか自動でナビゲーションがきてフォローしやすい状態になっており、まさに営業代行みたいに安く使えるところがmycsessの特徴かつ、小規模事業者さまに特化している部分ですね。

※GMP(グロースマネジメントプラットフォーム):収益最大化を目的とした戦略立案から施策実施、改善提案までを一括でシステムが支援すること。

mycsessはマッチングアプリとイコール!上手く活用するには「人柄」と「情報提供」が重要!

大久保:ビジネスマッチングの中で「良いマッチング」とはどんなマッチングなのかお考えを教えていただきたいです。

安田:良いマッチングには大きく2つあります。1つ目は「人柄の良さ」です。

会話が横柄だったり、売り側のプッシュが強すぎるとどれだけ良い商品サービスであっても買われないですし、どれだけお金を持ってたとしても発注が決まらない。

特に小規模の会社によくある傾向です。mycsessではできる限り人柄の良い者同士がマッチングできるように工夫しているため、関係性が良好な顧客が多いです。

もう一つが売り手も買い手も情報提供をしっかり行っているかです。正直言うと、最初から買い手と売り手の双方の考えが一致して契約成立することはほとんどありません。

BtoBにおいては、お互いの情報提供で徐々に溝が埋まっていくような売買が良いのではないかと思っています。

マッチングアプリに例えると、イケメンとかわいい女の子が顔だけでマッチングしてハッピーってことはほとんどないです。実際はデートをしてコミニケーションを取る中でお互いの良さを知っていきます。

もちろんスペックの事前情報も重要なので、これは条件シートも同じでしっかりやっていくことが大事です。そこから先はお互いの情報を出し合ってゴールインするというのがあるべき姿です。

なので、いかにお互いが情報提供できるかがポイントで、売り手は売り手の情報提供、買い手は買い手の情報提供をしっかりできるのか。

もちろん人柄も大きく絡んできますので、情報提供してもいいと思える安全なネットワーキングをしっかり作っていくことが重要です。

売上を向上させるには“サービスに頼り過ぎず事業者自身でお客さまと接すること”が重要


大久保:日本では、売上向上に対する意識が低い中小企業もあると思いますが、売上の向上やものを売る観点で見解があれば教えてください。

安田:多くの中小企業はお客さまとしっかり向き合えていないと思っています。一番嬉しい瞬間って「お客さまに商品を買って喜んでもらう」ことだと思うんです。

なので小規模事業者さまに伝えているのは「お客さまへの商談は自分たちでやって欲しい」ということです。お客さまにしっかりフィードバックをもらいなら商品を磨いていき、売れていく喜びを知ってもらいたいですね。

小規模事業者の多くは「自分たちで営業して自分たちで商品を買ってもらう」という経験が足りていないと感じています。

BtoC企業の方が目の前のお客さまとしっかり接しているイメージがあり、BtoCが伸びていると言うのはそこにあるのではないかなと。BtoBもそうあるべきだと思っています。

大久保:最後に起業家へ向けて一言メッセージをお願いします。

安田:起業ってすごく楽しいですし、1つずつ階段を昇っていくのが起業の本来あるべき姿かなと思っています。いきなり起業に飛び込んでしまうのはなかなか難しいのではないでしょうか。

サラリーマンの知見は必ず起業に生きてくると思うので、段階を追ってでも良いのでやってほしいですし、起業されている方もあまり焦って先を狙っても良いことがないと思っています。

1個ずつステップを刻むと言うことを徹底して、目の前の課題を地道にクリアしながら起業を楽しんでいきましょう。

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(取材協力: 株式会社YZ 代表取締役 安田 裕介
(編集: 創業手帳編集部)



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