社員が1人でも入れば就業規則は必要? 社労士が徹底解説します!
ルールが会社を守る!労務管理と助成金獲得につながる就業規則
(2016/05/16更新)
「就業規則」は、労働基準法により、社員数が10人以上となる企業に対して作成することが義務付けてられています。反対に、社員が10人未満の場合、就業規則がない企業も少なくありません。しかし、社員をひとりでも雇用している場合、就業規則を作成することは、会社を守る上でとても重要です。企業規模の大小に関わらず、健全な経営を継続するために、就業規則を作成すべき2つの理由をお伝えします。
客観的なルールで社員とのトラブルを回避
そもそも就業規則とは、ルールに基づいた客観性のある労務管理を可能にし、会社を守ることができる規則です。
例えば、社員が長期療養を必要とする場合、就業規則に「欠勤が30日以上継続する場合は休職とし、2か月休職後も復職不可能な場合は自然退職となる」と定めておけば、リスクなく社員との手続きを進めることができます。
その他、給与引き下げや懲戒処分をする様な場合にも、会社と社員で客観的に共有できるルールとして、就業規則は多くの労使間トラブルを回避してくれます。
客観的で、且つ社員も納得できる労務管理を実現することができるのです。
就業規則には社員同士の不公平感を防ぐ役割も
就業規則がない場合、社員から何か会社に対して要望があった場合は、その都度、事業主が対応の可否などを判断することになります。
事業主も人間ですから、いつでも客観的な判断ができるわけではありません。
そうすると、たとえば休暇の申請があった場合、「あの人はOKだったのに、私はだめだった」というような不公平が生じてしまう恐れがあるのです。
このような不公平が積み重なると、社員のモチベーションの低下や、会社に対する不信感にもつながりかねません。
ですから、就業規則という客観的なルールブックを作り、事業主も社員も就業規則に基づいて判断をしていくことで、社員同士の取扱いに違いが出ることを防ぎ、公平で公正な労務管理が可能となるのです。
助成金申請に欠かせない就業規則
実は、就業規則は、助成金を受給する上でも必須となってきます。
厚生労働省は、社員の雇用促進や職業能力の開発に取り組む企業に対し、様々な助成金を付与しています。
しかし、ほとんどの助成金申請では、受給要件のひとつとして「就業規則を作成していること」が求められています。
例えば、「正社員を対象に新たな手当や、研修制度、健康管理制度、メンター制度などの福利厚生制度を導入し、その結果離職率が低下したならば最大で100万円が受給できる」という、職場定着支援助成金があります。
しかしこれも、列挙した福利厚生制度が、就業規則に定められていることが条件です。
まとめ
- この記事のポイント!
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- 就業規則とは、客観性のある労務管理を可能にし、会社を守ることができる規則
- 就業規則は補助金受給要件の1つでもある
- 就業規則作成にかかるコストは補助金受給でカバーできることもある!
就業規則は、社会保険労務士事務所に作成を依頼すると、安くても数万円、平均すると約15万円〜20万円の費用がかかると言われています。
しかし、目の前のコストに捉われず、第1の理由のとおり、会社を守るための労務管理のルールを定めるという目的があることを覚えておいてください。
また、そのコストが助成金の受給で最終的にはカバーできる可能性もあるのです。
万が一、不当解雇等の理由で労使間トラブルが起きた場合、会社は何百万、何千万単位のコストを負担しなければならないケースも出てきます。
その場合、経営にとって大きな痛手であり、事業の継続自体が困難になる可能性も否定できません。
以上のように、会社を守るため、また助成金を積極的に活用できるようにするためにも、社員が1人でもいる企業に、就業規則を作ることをお勧めします。
(監修:特定社会保険労務士
あおいヒューマンリソースコンサルティング 榊裕葵(さかき ゆうき) )
(編集:創業手帳編集部)