勤怠管理はなぜ必要?管理する目的や生じやすい問題とは
勤怠管理で出勤状況などの把握は大事。必要な理由や把握するべき項目などを解説!
2019年に施行された「働き方改革関連法」をきっかけに、勤怠管理の重要性はより高まってきました。
しかし、重要性が高まった一方で、2020年以降に新型コロナウイルスの影響でリモートワークに移行する人が増加した結果、勤怠管理において様々な問題も生じるようになっています。
そこで今回は、勤怠管理の必要性を改めて解説し、管理する目的や生じやすい問題点について紹介します。勤怠管理の問題に直面している方は、参考にしてください。
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勤怠管理が重要な理由とは?
勤怠とは?
勤怠とは、仕事に勤める「出勤」と仕事を休む「欠勤」の双方を指す言葉です。そのため、勤怠管理というのは従業員の出勤・欠勤状況を把握し、管理することを指します。
勤怠管理は産業や規模に問わず、どの企業でも行う必要があります。
勤怠管理をする目的
勤怠管理をする目的は、「給与計算を適切に行うため」や「従業員のモチベーションや健康維持のため」、「コンプライアンスを遵守するため」の3つが挙げられます。
まず、勤怠管理で労働時間を正しく把握することで、必要な手当てを支払わなくてはいけません。
給与計算が正しく行われていないと従業員から多額の賠償金を請求されたり、従業員との紛争が発生したりする場合があります。
また、勤怠管理によって従業員はどれくらい働いたのか証明できるため、働くことに対するモチベーションも維持できるでしょう。
働き過ぎている場合は健康を害する可能性もあるため、長時間労働を改善するための対策を講じる必要があります。
さらに、勤怠管理を適切に行うことはコンプライアンスが遵守され、健全な経営であることをアピールできます。こういった目的で勤怠管理は行われているのです。
労働時間の把握は法律でも義務化されている
労働安全衛生法では、企業は従業員の勤怠情報を正しく把握することを義務化しています。
これまで勤怠管理は義務化していなかったものの、把握することが当然とされてきました。
しかし、企業側もしくは従業員側でも不正に労働時間を申告する問題が多数出てきたため、法律できちんと義務付けられるようになったのです。
また、労働安全衛生法の中で、勤怠管理は客観的な記録に基づいて適正に記録することを定めており、企業や本人だけでなく、第三者が見ても正しい勤怠状況を把握できるようにする必要があります。
具体的に把握しなければならないことは?
勤怠管理ではただ出勤時間・退勤時間が把握できていれば良いわけではありません。把握しなくてはいけないのは、主に以下の項目です。
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- 出勤時間・退勤時間
- 労働時間
- 時間外労働時間(深夜・休日も含む)
- 出勤日数
- 欠勤日数
- 休日出勤日
- 早退や遅刻の回数と時間
- 有給休暇の取得日数と残日数
また、勤務管理を行う上で勤務形態や雇用条件ごとに把握することも大切です。
例えばパートやアルバイトといった場合、一人ひとりでシフトや時給が異なり、給与計算も複雑になってきます。
扶養控除内で働きたいという人には、扶養控除内に収まるように調整する必要があり、勤怠管理でしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
労働基準法での労働時間や休憩時間などの定義とは?
労働基準法の中で、労働時間や休憩時間はどのように定義されているのでしょう。労働時間や休憩時間、休日の定義を紹介します。
労働基準法の違反は罰則になる
労働基準法では、労働時間や休憩時間などがすべて定義付けされています。万が一労働基準法を違反してしまうと、罰金や懲役といった罰則の対象となってしまいます。
また、違反した情報が拡散されてしまえば、企業のイメージが低下してしまい、社会的信用まで失ってしまうかもしれません。
信用を取り戻すにはかなりの時間を要するため、違反しないように改めてそれぞれの定義を理解しておきましょう。
労働時間の定義
労働基準法によると、労働時間は働いている時間から休憩時間分を差し引いたものとしています。
労働基準法第32条では、「法定労働時間」が定められており、原則1日につき8時間以内、1週間で40時間以内に収める必要があります。
休憩時間の定義
労働時間から差し引かれる休憩時間は、基本的に従業員が働いている最中に休息を目的として自由に使用できる時間を指します。
その休憩時間も労働時間に合わせて決まっており、労働基準法第34条では6時間以上8時間以下の労働であれば45分、8時間以上の労働には1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。
休日の定義
労働基準法によって休日の最低取得日数も決められています。第35条では、休日を1週間に1回以上、または4週間で4回以上です。
この労働基準法で定められている休日は「法定休日」であり、それ以外の休日は「法定外休日」となります。
時間外と休日労働の定義
労働時間や休日にはそれぞれ定義が示されているものの、実は例外が認められる場合もあります。
労働基準法第36条では、労使間で労働時間の延長・休日労働を可能にするための「36協定」を結び、労働基準監督署へ届け出を出して認められれば、労働時間の延長や休日労働も可能です。
この36協定はすべての場合に認められるわけではありません。
やむを得ない状況でないと適用されず、また2019年の働き方改革関連法によってこれまで延長時間は上限なしとされてきましたが、新たに制限が課されました。
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- 年間720時間まで
- 休日労働も合わせて2~6カ月の平均がすべて80時間以内であり、月の時間外労働+休日労働がどの月の平均を取っても、1カ月80時間を超えない
- 単月100時間未満
また、法定外労働の場合は通常の賃金よりも割増で支払うことも義務付けられています。割増賃金は時間外労働なら25%以上、法定休日労働なら35%以上の支払いが必要です。
労働時間と見なされる業務について
働いている中でどこまでが労働で、どこまでが労働ではないのか、これまでは曖昧な部分もありました。
しかし、厚生労働省が設定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、基本的に従業員が上司や経営者の指揮命令下に置かれていると判断できる時間は、労働時間に分類されると定義しています。
例えば、教育や研修訓練を受講している時間、業務が終わった後の片付けや清掃、指定された制服に着替えている時間などもすべて労働時間になるということです。
勤怠管理をする方法は?
上記でも紹介してきたように、勤怠管理は第三者が確認できるようしっかりと記録する必要があります。
勤怠管理には現在どのような方法が用いられているのか、紹介します。
紙やタイムカードを使って管理する
紙やタイムカードを使って管理する方法は、以前から利用されている勤怠管理方法です。
紙を使った方法では、会社に来たら出勤簿に手書きで出勤時間を記していきます。
誰でも簡単にできるものの、基本的には手書きとなるため改ざんまで簡単にできてしまうという点がデメリットです。
また、タイムカードを使った方法はタイムレコーダーにカードを差し込むと時間を打刻できるもので、紙よりも記録にかかる時間を削減することができます。
しかし、この方法を用いるには専用のカードとレコーダーが必要です。
例えば社外で勤務している人やテレワークをしている人は打刻できません。
さらに、始業時間や就業時間は記録できるものの、その他の休憩時間などは記録できない点がデメリットと言えます。
Excelを使って管理する
Excelを使った勤怠管理では、事前に数式を組み込み、出勤・退勤時間を入力することで管理できるようになります。現在はネット上にも無料の勤怠管理用テンプレートが見つかるため、コストを掛けずに勤怠管理の導入が行えるでしょう。
ただし、こちらも従業員が自己申告する形となるため、簡単に改ざんできてしまいます。また、もしもExcelでエラーが発生した場合、何が原因なのかを突き止めることは難しいです。
システムを使って管理する
現在、多くの企業でシステムを使った勤怠管理が採用されています。
システムは有料となるため購入する必要がありますが、打刻方法は多岐にわたり、改ざんしにくい指紋や顔認証で出勤・退勤を打刻するシステムもあるため改ざんリスクは抑えられるでしょう。
勤怠管理で生じやすい問題と解決手段
企業は適切な勤怠管理を行う必要がありますが、場合によっては問題が生じてしまうこともあります。
万が一問題が発生した場合には、どのように解決・対策する必要があるのでしょう。そこで、勤怠管理で生じやすい問題とその解決手段をご紹介していきます。
代理打刻や改ざんによる不正
紙やタイムカードを使うといった、アナログ形式での勤怠管理で起こりやすいのが代理打刻・改ざんといった不正問題です。
紙なら従業員や上司が勝手に書き換えることも可能ですし、タイムカードも押す時間を変えてしまえば適切な勤怠管理ができているとは言えません。
また、例えば業務とは一切関係ないお喋りをしていて、退勤する際に打刻していればその分会社側は不利益を被っていることになります。
従業員が増えると管理ミスが起きやすい
従業員が多い企業の場合、勤怠管理のデータ量が増え、管理ミスが増えやすい点もリスクにつながります。
もし従業員が多い企業の勤怠管理がタイムカードなどのアナログ形式だった場合、給与計算を行う際にはかなりの手間と時間がかかってしまいます。
しかも作業効率も低く、人的ミスが発生しやすいでしょう。
勤怠管理は給与にも影響してくるため、正確に管理することが非常に重要です。
テレワークの勤怠管理は課題が多い
テレワークは従業員の多様な働き方も実現できますが、勤怠管理において多くの課題を残しています。
例えば、テレワーク時の勤怠管理はシステムを使わない限り自己申告となってしまいます。
他の従業員や上司の目が届きづらく、サボっていても分からない可能性があるでしょう。
従業員の働く姿が見えないことで、評価しづらいのも特徴です。
仕事の中でプロセスの部分が見えなくなってしまうため、評価する際には業務の成果に頼らざるを得ません。
また、労災と認めるかどうかの判断が難しい点もテレワークの課題と言えます。
例えばテレワーク中に足を滑らせて転んでしまい、全治2週間のケガを負ってしまったとします。
仕事中に発生したケガなので労災が認められる可能性もありますが、もしも転んだ原因は部屋が散らかっていたせいだった場合は労災とは認められません。
つまり、テレワーク中に発生した病気やケガはプライベートの部分と重なる要素も出てきてしまうため、判断が難しくなってしまうのです。
勤怠管理はシステムを活用すると便利で安心
テレワーク中の勤怠管理は多くの課題が残っていますが、これらを解決する手段として勤怠管理システムの活用がおすすめです。
システムはネット環境とPCやスマホ、タブレットなどの端末があれば、どこからでも打刻やデータ管理が行えます。
しかも集計や保管まで自動で手掛けてくれるので、勤怠管理に時間を割く必要もありません。
さらに、勤怠管理システムの多くは不正打刻が行われないように対策されています。
テレワーク中に不正な自己申告をされてしまい、会社側が不利益を被っている場合はシステムの導入を検討してみてください。システムを導入する際には、
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- 打刻機能の有無
- 実労働時間の記録
- 在席・離席が把握できる
- 使いやすさ
- 様々な勤務体系にも合わせやすいか
- 休暇申請や残業申請も行えるか
などをチェックしながら比較すると、自社に合った勤怠管理システムが見つかるでしょう。
まとめ
従業員への給与支払いや健康管理を企業側が正しく実施するためにも勤怠管理は必要不可欠です。
働き方改革関連法や労働基準法などの内容を理解した上で、適切な管理を行ってください。
勤怠管理の方法はいくつか種類があり、それぞれで特徴も異なります。まずは自社に適した勤怠管理方法を選ぶことも大切です。
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(編集:創業手帳編集部)