ペーパーカンパニーってなに?ペーパーカンパニーの違法性やメリットデメリットを紹介

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ペーパーカンパニーを使った節税はハイリスク!


ペーパーカンパニーを設立する目的にはいろいろあります。犯罪行為以外に目的として多いのが、ペーパーカンパニーを節税スキームとして使う方法です。
しかし、ペーパーカンパニーを利用した節税は法的にグレーゾーンであり、やり方によっては脱税とみなされるリスクがあります。

節税は、日本の税務制度に則って合法的に税負担を減らすことです。しかし、国が定めたルールに逆らって税金を減らせば処罰の対象になります。

節税スキームを選ぶときには、その節税が違法にならないかどうかを考えましょう。

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ペーパーカンパニーってなに?


ニュースやドラマで耳にする機会も多いペーパーカンパニー。ペーパーカンパニーとは、登記上設立はされているものの、事業活動の実態がない会社を言います。

ペーパーカンパニーについて、法律や公文書で厳密な定義がされているわけではありません。
その実体によって、ダミー会社やゴースト会社といった名称で呼ばれることもあります。

ペーパーカンパニーを設立する目的には、いろいろなパターンが存在します。
課税を逃れるためにペーパーカンパニーを設立することもありますが、犯罪に利用されているペーパーカンパニーもあるため、注意しなければいけません。

自社がペーパーカンパニーを設立していなくても、新しい取引先がペーパーカンパニーである可能性もあります。
取引先の会社がどのような会社なのか、営業している実態があるのかどうか確認して取引するようにしましょう。

ペーパーカンパニーの類型

同じペーパーカンパニーであっても、ペーパーカンパニーごとに法的な根拠や設立の目的に違いがあります。
ペーパーカンパニーにどのような類型があるのかまとめました。

犯罪組織

まず、注意しなければいけないのがペーパーカンパニーが何らかの犯罪組織である場合です。
特に、海外法人だと日本国内から登記などの確認が難しく、本社を見に行くことも難しい場合があります。
トラブルに巻き込まれないためにも、慎重に調査してから取引するようにしてください。

ダミー会社

ダミー会社は、悪徳商法や詐欺があるほか、カルト宗教団体が行動しやすくするための隠れ蓑として、ペーパーカンパニーを作っている場合があります。
事実上、支配している会社や経営者が表になることがないようにペーパーカンパニーを利用します。

休眠会社・ゴースト会社

ペーパーカンパニーの中には、設立して登記上では存在しながらも事実上放置されている会社もあります。
所在地にオフィスがなかったり放置されていたりすることから、休眠会社と呼ばれるケースもあるようです。

問題がない場合もありますが、脱税や粉飾決算に悪用されることもあるため、注意しなければいけません。

虚偽の情報を記載した会社

ネットショッピングやスマホ用アプリで収益を上げる事業者は、特定商取引法によって社名や電話番号を表示しなければいけません。
しかし、ホームページに記載されている電話番号や住所が不正確で、内容証明などを送った時に届かない場合があります。

このような会社は悪質な業者かもしれません。
商品を買って代金を支払ったのに商品が届かない場合や取引に不安がある場合は、所在地や電話番号をチェックするようにしてください。

特別目的会社

特別目的会社とは、一定の取引、資産保有のためだけに設立する会社です。取締役のように法的に必要な役員は存在しますが、事業実態はありません。

日本よりも法人税が低いタックスヘイブンに金融取引目的に設立するものや、資産を保有する主体として設立するものがあります。

ペーパーカンパニーを作るメリット


ペーパーカンパニーに対して、あまり良くないイメージもある一方で、ペーパーカンパニーの設立で節税できるといった話も聞かれます。
資産を有効活用したい経営者にとっては、ペーパーカンパニーは魅力的に感じられるかもしれません。
ペーパーカンパニーを作るメリットをまとめました。

法人税の軽減化

法人税は、法人が出した利益に応じて課税される税金です。
法人税の負担は企業にとって大きいため、自分が保有する会社以外に会社を設立することで節税しようと考える事業者は珍しくありません。

日本では、資本金や出資金が1億円以下の中小法人で利益が800万円以下なら、税金の軽減措置が利用できます。
しかし、実体がある会社、ビジネスを実際にしている会社を一から設立しようとすれば大変な手間と時間がかかります。
そこで、多くの事業者が思いつくのがペーパーカンパニーの設立です。

ペーパーカンパニーを使えば、利益を分散させることで、理論上は法人税や事業税の税金を減額できます
ペーパーカンパニーであれば簡単に作れるため、手軽な節税方法と考える事業者もいます。

消費税を減らすことができる

法人の売上によって消費税の負担も変わり、売上が比較的に小さい事業者は消費税の納付義務が免除を受けられます。
そこで、可能になるのが商品の仕入れをペーパーカンパニーが実施、さらに、その商品を課税事業者の本社に通常よりも高く販売する方法です。

本社は通常価格でその商品を転売することで、支払った消費税のほうが預かった消費税よりも高くなります。
消費税の支払い額が預かり額よりも大きくなれば、差額が還付されます。

また、本社とペーパーカンパニーで売上を分散させれば消費税の免税も可能。課税売上高が1,000万円以下なら、免税事業者として消費税の納税が不要です。

加えて、課税売上高が5,000万円以下の中小事業者も、簡易課税制度の適用対象となります。事務負担が軽減されるほか、税負担が軽くなることもあります。

交際費を経費にできる

交際費は、ほかの経費と税法上扱いが別です。費用は損金として法人税法で定められた税金を計算するときに差し引きできますが、交際は原則として損金になりません。
つまり、交際費は経費として認められていません。これを損金不算入と呼びます。

しかし、例外として法人と個人事業主には、一定の範囲内であれば交際費を損金にできると決められています。
例えば、資本金1億円以下の法人は年間800万円までの交際費、もしくは接待飲食費の50%までは損金に算入可能です。
資本金1億円以下か、それより上かによって経費にできるかどうかが決まります。

ペーパーカンパニーの設立によって、より多くの交際費を経費にできます。交際費を経費として計上しやすく、節税もできるでしょう。

土地売却損で利益を減額できる

法人にとって利益が出るのは嬉しいことばかりではありません。利益が出過ぎてしまえば税負担が大きくなり、企業経営を圧迫する場合もあります。
そこで、ペーパーカンパニーを使って利益を減額する方法があります。

それは、価値が下がってしまった不動産をペーパーカンパニーに売却する方法です。売却して出た不動産売却損を計上して、利益を減らして節税します。

例えば、購入価格500万円だった土地の価値が下がった場合、土地を300万円でペーパーカンパニーに売却する方法を考えてみましょう。
購入時500万円だったため、不動産売却損が200万円です。

決算で利益が300万円出ていたとしたら、不動産売却損を計上することによって利益を300万円から100万円まで減らせます。

タックスヘイブンで租税回避する

ペーパーカンパニーを使った節税法には、タックスヘイブンを活用したものもあります。タックスヘイブンとは、一定の課税が軽減、もしくは免除される国や地域を言います。
租税回避地や低課税地域といった呼び方もされている地域です。

タックスヘイブンとして有名なのは、スイスやシンガポール、バハマです。日本から見て法人税が安い国に法人を設立することで、日本の租税を回避する方法があります。

ただし、タックスヘイブン対策税制が改正されることで、実態のない海外子会社を利用した租税回避、給与や配当の受け取りの規制が厳しくなりました。
タックスヘイブン税制とは、外国子会社合算税制とも呼ばれ、外国子会社を利用した租税回避を抑制するための制度です。

タックスヘイブン対策税制は、実質的活動がない事業から得られる外国子会社の所得については、日本の親会社の所得とみなして合算する制度です。
日本の親会社の所得とみなして、日本国内で課税します。

合算課税となるかどうかの判定は、その外国子会社の経済活動です。真に実体がある経済活動をしていれば、租税回避行動ではないと判断します。
判断基準は、事業基準・実体基準・管理支配基準・非関連者基準および所在地国基準の4つです。

ただし、海外子会社にビジネスの実態があれば問題はありません。
実際に現地でビジネス活動していれば、タックスヘイブン対策税制に関係なく税率の低い国で課税を受けられます。

ペーパーカンパニーを作るデメリット


ペーパーカンパニーの設立によって、節税ができる点が大きなメリットです。しかし、メリットだけではありません。
ペーパーカンパニーを作るデメリットを紹介します。

法人住民税が必要

ペーパーカンパニーであっても法人です。法人に課せられる法人税は、事業活動で得られた利益にかかるものです。
加えて、事業活動がないペーパーカンパニーであっても、課税されるのが法人住民税です

法人住民税は地方自治体に納める地方税のことで、法人住民税は法人税割と均等割から構成されます。
法人税割は、法人税額に規模に応じた税率を乗じて計算するため、利益がなければ課税されません。

一方で、均等割は所得があってもなくても発生する税金です。
そのため、ペーパーカンパニーであっても年間で数万円は均等割として費用がかかることを想定しなければいけません。

決算をしなければいけない

ペーパーカンパニーであっても、事務的な負担は発生します。
事業活動がなくても法人として登記されているため、事業年度が終われば決算と確定申告をしなければいけません

手間はそこまで大きくななりませんが、事務処理の手間がかかってしまうことは理解しておきましょう。

ペーパーカンパニーは脱税とみなされることも


ペーパーカンパニーは、それ自体が違法なものではありません。法律の抜け穴、グレーゾーンに当たるものです。
しかし、場合によっては脱税とみなされて違法となる場合もあります

例えば、タックスヘイブンを使ったペーパーカンパニーによる節税は、多くの資産家や企業が採用して実行してきました。

しかし、前述したタックスヘイブン対策税制では、ペーパーカンパニーである海外子会社の利益は日本親会社の利益と合算するように定められています。

加えて、タックスヘイブン対策税制は改正が進んでいます。令和元年度税制改正でペーパーカンパニー判定の管理支配基準が変わりました。
ペーパーカンパニーを設立した当初は、タックスヘイブンを使った節税が可能であっても、その後改正によって節税できなくなる可能性も考えなければいけません。

2016年には租税回避行為に関する一連の機密文書であるパナマ文書の情報が漏洩しました。日本でも多くの企業や個人の資産家の租税回避が明らかになっています。
当時の財務大臣は、課税の公平性を損なうことになるので問題であると懸念を示し、国税も課税が適正かどうか税務調査を行うと述べたと報道されました。

2017年6月の新聞社の報道によると、パナマ文書を契機とした税務調査により日本で発覚した申告漏れは総額31億円で、自主的な修正申告を含めると40億円弱でした。

今後も、タックスヘイブンについては取り締まり強化が予想されます。ペーパーカンパニーを使った節税もリスクが高いため、設立はおすすめできません。

まとめ

ペーパーカンパニーの多くは、節税メリットを得るために設立されています。
法人は規模や売上げに応じて、税制の優遇措置があるため、ペーパーカンパニーを活用することによって理論上は節税が可能です。
法的にも、ペーパーカンパニーを設立すること自体は違法ではありません。

しかし、ペーパーカンパニーを活用した脱税は違法です。ペーパーカンパニーの活用は、基本的にリスクが高いものと考えましょう。

ペーパーカンパニーを使わなくても節税のテクニックはいろいろあります。
税負担が重くなったときには、健全な節税方法を専門家に相談してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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