TWOSTONE&Sons 高原克弥|「ITエンジニアの不条理な常識を壊したい」20代で上場を果たした学生起業家の挑戦

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年08月に行われた取材時点のものです。

ITエンジニアと企業のマッチング事業で躍進。ホールディングス化によってさらに事業拡大を目指す


IT人材不足が深刻化する中、ITエンジニアと企業のマッチング事業を手掛け急成長を遂げているのが、株式会社TWOSTONE&Sonsです。2013年創業の同社は、2020年に東証マザーズへ上場。2023年にはホールディングス化(持株会社が子会社を統括する組織形態)を行い、さらに事業を拡大させています。

同社の共同創業者のひとりである高原克弥さんは、中学生ですでにWebサービスを運営し、大学在学中に起業したという経歴の持ち主です。

今回は高原さんに起業までの経緯や事業への思い、今後の展開について創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

高原 克弥(たかはら かつや)
株式会社 TWOSTONE&Sons 代表取締役COO
1991年生まれ。長野県出身。小学生よりプログラミングに触れ、webサービスを複数運営。大学時代にスタートアップ3社でエンジニア・セールス・人事などを経験。大学在学中の2013年に、共同経営者の河端保志氏と共に株式会社Branding Engineerを創業(2023年に株式会社TWOSTONE&Sonsに社名変更)。代表取締役COOに就任。ITエンジニアファーストを掲げ、各種事業の立ち上げ等により成長を牽引。2020年には東証マザーズ(現在のグロース市場)への上場を達成する。2023年6月にホールディングス体制に移行し、株式会社TWOSTONE&Sonsに社名変更。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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子供時代に培ったプログラミングスキルを活かして学生起業


大久保:小学生の頃からプログラミングを手掛けていたそうですね。

高原:最初は親の手伝いがきっかけでした。父がカメラ関連の会社をしていて、子どもの頃からフォトショップでのレタッチを手伝っていたんです。その流れでMacを触るようになって、ウェブデザインやゲームに興味を持ち始めました。

中学生になってから、掲示板のようなWebサービスを作りました。僕の中ではゲームの延長という感じで、人が集まるような場所を作りたいなと思って始めたものです。

大久保:当時から起業したいという思いはあったのでしょうか?

高原中学生の時は遊び感覚でやっていたので、起業と結びつける感じはなかったですね。むしろ父親が起業した後に1度廃業していることもあって、起業は怖いというイメージがありました。

ただ中学生の頃、お小遣いがもらえなくなって働こうと思ったんです。でも中学生だったので、どこもアルバイトとして採用してくれませんでした。そこで掲示板サービスを使ってアフィリエイトのようなことを始め、コツコツと収益を上げていきました。

大久保:その後大学在学中に今の会社を作ったとお聞きしました。起業までの経緯を改めて教えていただけますか?

高原:大学在学中に3社ほどインターンで働いていたのですが全て倒産してしまい、そこから自分で何かやらなければと思うようになりましたね。実は当時インターンとあわせて個人事業主のエンジニアとして受託開発もやっていたので、その領域で起業しようと思いました。

ただ僕は営業の経験がなかったので、営業ができる人を探すことにしました。そんな時に河端(※共同創業者である現代表取締役CEO河端保志氏)に出会い、営業をやってほしいという話をしたところ「俺も起業しようと思っているんだよ」と言われたんです。それなら一緒にやろうということで、5万円ずつ出し合い、資本金10万円で今の会社を立ち上げました。

共同創業で出資が50%ずつというと後になって揉めるケースも多いので、周りの大人たちからはすごく反対されました。でも僕らの場合、結果的にはすごく良かったです。

大久保:実際に起業してみて、大変だったことはありましたか?

高原:正直、起業そのものがすごく大変でしたね。特に僕は学生で起業したので、給料の支払い方や契約のことなど、ビジネスの基本的なことを全く知らなかったんです。こんな感じだったので最初はとても苦労しました。

就職していれば1年で身につくことが、僕の場合2、3年かかってしまった感覚がありました。もちろん学生起業には若いうちに経験できるとか、タイミングを逃さず起業できるといったメリットがあります。ただ今になって思うと、大学を出て企業に就職してから起業した方が効率は良かったかなと感じています。

顧客の表面的なニーズを満たすだけでは足りない。目指すのは松竹梅で言う「松」のソリューション

TWOSTONE&Sons社の事業内容

大久保:IT人材を扱う会社は今でこそ増えていますが、御社のサイトを拝見すると、エッジが効いていて他社と差別化されているなと感じました。

高原:ありがとうございます。サイトにも載せていますが、僕らのビジョンは「BREAK THE RULES」というもので、「不条理な常識を壊して新しい価値を作る」という意味です。

現在僕らは企業向けのBtoBとITエンジニア向けのBtoCの両方を手掛けていますが、どちらにおいても、このビジョンの実現を目指しています。

BtoBで言うと、一般的な人材会社は、目の前の人材ニーズや受託ニーズにフォーカスしがちです。でも実際はニーズの裏側にもっと大きな戦略があって、それに対しても松竹梅で言う「松プラン」や「梅プラン」みたいなものがあるはずです。僕らはその「松プラン」を実現するために向き合っていかなければ、バリューは出せないと考えているわけです。なのでいろいろなソリューションを持っておくことが、一番重要だと考えています。

IT領域で言うと、今はAIへのニーズが急拡大しています。でも従来の日本型の雇用スタイルでは、大企業の中でAIが得意な人材はなかなか育ちにくい。だからどうしても外資系の大手コンサルに高いお金を払って丸投げしてしまうケースが多いんです。

でも僕らは、プロの人材を社内に置いて内製化できるようにするのがあるべき姿だと思っていますので、そういう形での支援に取り組んでいます。

BtoCに対しても考え方は同じです。一般的な人材会社は、仕事が欲しい人を探すスタンスですよね。でも僕らが目指すのは、エンジニアの状況を変えることなんです。

急速にIT化が進んでも、結局日本の会社の多くがそれに対応できていません。そのため不遇なままのエンジニアがたくさんいます。実際、社内のエンジニアに報酬を払うより外部コンサルに高いお金を払っている企業も多いですよね。

そういうエンジニアは独立して、ITに対応できている企業から仕事を受けた方がお金も時間もメリットが高いのではないか、というのが僕らの考えです。この考えからエンジニアの独立のハードルを下げるとか、エンジニアが自分の状況をしっかり伝えられるよう情報を準備するとか、そういったところに注力しています。

大久保:「松竹梅」のお話はすごく新しいですね。業界の常識にこだわらず、もっと本質のところにアプローチするというのは、ありそうでない気がします。

高原:そうですね。そこを突き詰めた結果、最近ではITエンジニアだけでなく、マーケターやセールスといった分野の人材も紹介するようになりました。やはり松プランを実現するためには、僕たちもアップデートしていく必要がありますから。

現場感覚を持つ人へ任せることが大切。入社4年目の若手がグループ会社代表になることも


大久保:御社では社員の起業を推奨しているとお聞きしました。やる気のある人材が集まるメリットがある一方、経営者としては複雑な気持ちもあるのではないでしょうか?

高原:僕としては、事業をさらに広げていくにはもっとスピードを上げていかなければいけないと考えるようになりました。そのためには自分たちだけがオーナーシップを持つのではなく、みんなでオーナーシップ持ってやっていくべきだと考え、昨年ホールディングス化しました。

これによって、グループのアセットを使ってグループ会社の代表をやる人も出てきました。新卒として入社後4年目にもうグループ代表になった人もいるんですよ。

仕組み化まではいきませんが、この会社を土台にしてほしいという思いはあります。事業との向き合い方や起業家マインドを学べて、切磋琢磨できる環境があって、最終的な出口としてグループの中で代表をやる選択肢もありますよという感じです。

代表としては、確かに複雑な気持ちも多少はあります。とはいえ、全てのメンバーが起業志向というわけではありません。起業を目指す人はこの会社を使い倒してほしいですし、そうではない人はこの会社の経営や事業をもっと深掘りしてほしいなという気持ちです。

チャレンジしたい人の意志を尊重することは、すごく大切にしています。なのでチャレンジしたい人の意見をしっかり汲み取って、上層部で議論してすぐに意思決定できるスピード感も意識しています。経験年数や年齢にとらわれず、バッターボックスに立てる。そういう環境は用意しています。

大久保:ホールディングス化によって、高原さんご自身の動き方や考え方がどのように変わったのか伺えますか?

高原自分で全てを見るのではなく「事業責任者に任せよう」という意識が出てきましたね。ひとりで見ることのできる事業は、2つが限界です。3つ目になると明らかに効率が悪くなります。

事業を見るにはマーケットや競合の動向、ユーザーの細かい感情の変化などをキャッチアップして、すぐにサービスを修正することが求められます。これを続けるには現場の感覚が欠かせません。ですから、事業ごとに現場の感覚を持つ人を責任者にして、任せることが大事です。

任せる側としては不安もありますが、中途半端に任せるのではなく信頼して事業オーナーに託す。これを本気でやらなければいけないと感じています。トップのやりたいことありきでは、任せたことにならないですよね。

大久保:任せる側にも勇気が必要ということですね。任せ方のコツみたいなものがあれば、教えていただけますか?

高原事業を構成する要素の5分の1くらいは、トップと事業オーナーがディスカッションをして決めるのが理想だと思います。例えば5分の1がウェブマーケティングであれば、そこには任せる側も意見するということです。

事業責任者って、自分が決めたことが本当に正しいのか心配になることも多いですよね。そういう時にディスカッションの相手になれるかは、お互いの信頼関係に大きく影響すると思うんですよ。

任せる側はマネジメントだけすればいいという考えは、僕にはありません。任せる側でもしっかりプレイヤーであり続け、プレイヤーとして話ができるようにしておくべきです。僕自身、任せる側として常にそうありたいと思っています。

当然ながら、任せる側が事業責任者と全く同じように現場の感覚を持つことはできません。でも一歩引いているからこそ、見える世界観があると思うんですよ。そういう視点でディスカッションすることで、新たな意思決定が生まれることもありますね。

ITエンジニアにも起業家にも重要なのは、成長を続けられるマーケットを見極めること


大久保:例えばかつて主流だったプログラミング言語が今はほとんど使われない、ということもありますよね。そういう変化の激しいIT業界で、これからエンジニアが学ぶべきもの、身につけておくべきものがあれば教えていただけますか?

高原:プログラミング言語で言えば、壁が高い業界とそうではない業界があります。例えばウェブ業界は言語の壁がほとんどなく、むしろ特定の言語にとらわれない思考性が求められます。「このプロジェクトにはこの言語でこの開発体制がいい」みたいなことが言えるかどうかですね。そういう意味では開発スキルだけではなく、上流工程の知識を取り入れていくことが大切だと思います。

一方で製造業や金融業などの歴史のある業界になると、「この言語を理解している人でなければ対応できない」というシステムがたくさんあります。こういう業界では何十年も同じ言語を扱ってきた人が多いため、新しい知識がちょっとあるだけでも重宝されるんですよ。

最近は、若い方を中心にウェブ業界を目指す人が多い状況があります。ただウェブ業界は常に新しい知識が求められますし、目指す人も多いので競争も激しい。一方で製造業など歴史ある業界では、目指す若手は少ないものの一定のマーケットがあります。

そういう意味では、ITエンジニアも状況を俯瞰して自分が活躍できる場所を見極めていくことが大事になってくるのではないでしょうか。新しいことを学ぶ姿勢はもちろん必要ですが、それを「どこで活かすか」を見誤らず判断することが大事だと思いますね。

大久保:なるほど。高原さん自身の今後の目標について伺えますか?

高原:これは社内でも社外でもお話ししているのですが、1兆円企業にしたいんですよ。日本にも孫さんのソフトバンクや三木谷さんの楽天など、一代で築いた巨大企業があります。こういった企業を見ると、年間成長率が30%ということを続けているんですよね。

つまり「いかに長く成長し続けられるか」が重要と言えると思います。僕らの場合はまだまだ道のりはかなり長いのですが、1兆円企業という目標に向けて成長を続けていきたいと思っています。

大久保:最後に、創業手帳の読者の方々へメッセージをお願いできますか?

高原:ITエンジニアにとって、どんな分野で活躍したいかを見極めることが重要とお話ししましたが、起業家も同じだと思うんです。事業を伸ばすには、長きにわたって成長し続ける必要があります。ですから、「この先10年、20年と続けられるかどうか」という視点を持ってマーケットを選定してほしいですね。僕自身、マーケットの選定がすごく重要だと感じています。

起業家としていろいろなことを頑張るのは当たり前です。その上で長期的な視点を持ってどんなマーケットで勝負するか。その見極めが起業家にとって最大のポイントだと思います。

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(取材協力: 株式会社 TWOSTONE&Sons 代表取締役COO 高原 克弥
(編集: 創業手帳編集部)



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