スキマバイトで従業員を採用するメリットとリスクとは?上手な活用方法を知ろう

創業手帳

自社の信頼を損なう悪質な「タイミー営業」が問題に

人手不足

スポット的に従業員を雇用できる「スポットワーク」「スキマバイト」を活用している事業主の方もいるのではないでしょうか。

人手不足をカバーするうえで有用なサービスですが、最近は自社の信頼を損なう悪質な「タイミー営業」が問題になっています。​「タイミー営業」とは、スキマバイトアプリの「タイミー」で雇い入れた従業員が、本来の業務とは関係のない自社サービスや商品を売り込む行為です。

「タイミー営業」をされてしまうと、自社の信頼を損なってしまったり逸失利益が生じてしまったり、経営者側からするとよいことは何もありません。また、本来やってほしい業務をやってもらえず、業務の生産性が落ちてしまうリスクもあります。

今回は、悪質なスポットワーカーを雇うリスクや、「スポットワーク」「スキマバイト」を有効活用する方法などを解説します。

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そもそもスポットワークとは

スポットワーカー
「スポットワーク」とは、必要なときに必要な時間だけ働く方法です。経営者からすると繁忙期や人手不足のときに必要な人材を確保でき、従業員側からすると都合がよいタイミングでスポット的に働けるメリットがあります。

製造業の作業員や小売店の販売員、引っ越しの手伝いなど、さまざまな業種でスポットワークが有効活用されています。従来の雇用形態に縛られず、柔軟に多様な働き手を確保できるため、人手不足が深刻な企業にとって有用なサービスです。

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問題になっている「タイミー営業」とは

経営者の悩み
スポットワーカーや、スキマバイトを探している方に利用されているサービスの一つが「タイミー」です。1,000万人以上の利用者がおり、求人者・求職者の双方にとって便利なサービスを提供しています。

しかし、最近は悪質なスポットワーカーが、自社サービスや商品を他の従業員や企業に売り込む「タイミー営業」が問題となっています。

「やってほしい仕事」をやらず、勝手に自分のビジネスの営業活動を行っているため、生産性が停滞しています。また、自社の信頼低下や損害の発生につながるリスクもあり、看過できない問題に発展する可能性も考えられるでしょう。

タイミーなどでのスポットワーカーを雇う際には、ワーカーの質を見極めなければなりません。

悪質なスポットワーカーを雇うリスク

スポットワーカーに悩む経営者
「タイミー営業」に代表されるように、悪質なスポットワーカーを雇ってしまうと、どのようなリスクをもたらすのかを解説します。

企業の信用リスク

スポットワーカーが、就業時間中に自分のビジネスの営業活動を行うと、自社の信用に悪影響が出ます。取引先や顧客からすると、働いている従業員がスポットワーカーなのかアルバイトなのか、あるいは正社員なのか判断できません。

もしスポットワーカーが営業を行うと、取引先から「おたくの社員からよくわからない営業を受けた」というクレームにつながりかねません。このように、単発で雇っているスポットワーカーの不適切な行動により、企業のイメージが損なわれてしまうリスクがあるのです。

また、情報漏洩が発生するとコンプライアンス体制を疑問視されます。このように、モラルの低いスポットワーカーを雇うと、既存顧客の離反や取引機会の喪失などの損失につながるリスクがあります。

業務品質の低下リスク

スポットワーカーを活用しようと考えている事業主は、「この日のこの時間だけ、この作業をしてほしい」と考えているはずです。もし雇い入れたスポットワーカーが期待している作業を行わないと、業務が停滞します。

スポットワーカーが本来の業務をこなさないと、他の従業員が穴埋めをしなければならず、業務品質が低下してしまうでしょう。

また、スポットワーカーの能力が著しく低かったり、コミュニケーション能力に難があったりすると、職場全体の業務効率に悪影響が出ます。スポットワーカーの質は「実際に来てもらわないとわからない」というリスクがある点には、注意が必要です。

ノウハウ流出リスク

悪質なスポットワーカーは、複数の事業場の業務工程を参考にして、自分のビジネスに転用させるケースがあります。業務ノウハウが流出し、自社の優位性が損なわれてしまう可能性がある点に注意が必要です。

特にスポットワーカーは帰属意識が低いため、ノウハウの盗用や情報管理の漏洩などのリスクが高いといえるでしょう。場合によっては、競合他社が偵察の目的で自社のスポット案件に応募する可能性も考えられます。

製造・技術ノウハウや顧客情報データ、企画・マーケティング戦略などは、企業にとって貴重な無形資産です。貴重な資産を守るためにも、スポットワーカーの活用は慎重に考える必要があります。

法的リスク

単発のスポットワーカーといえども、労働契約を締結する必要があります。企業側としては、正式な労働契約が成立しているにもかかわらず雇用条件(労働時間・休憩・最低賃金など)を守らないと、労働基準法違反になってしまいます。

労働条件をめぐるトラブルを防ぐためにも、必ず「労働条件通知書」を交付しましょう。

また、スポットワーカーに対してもハラスメント対応に関する義務はあります。安心して働けるようにハラスメント防止措置をとる必要があるため、「スポットワーカーだから対策不要」と考えないようにしましょう。

スキマバイトで従業員を採用するメリット

採用
スポットワーカーやスキマバイト労働者の悪質な行為が問題になっているとはいえ、有効活用すれば貴重な労働力になってくれます。

以下で、スキマバイトで従業員を採用するメリットについて見ていきましょう。

固定人件費と採用コストを抑えられる

スキマバイトは、単発でその日だけ働いてもらう契約です。長期的に雇い入れる契約ではないため、企業からすると固定人件費と採用コストを削減できるメリットがあります。

新しくアルバイトを雇おうとすると、求人掲載や面接、シフト調整などの経済的・事務的コストが発生します。しかし、スキマバイトであれば「時給×その日の稼働時間」だけを支払えばよいため、発生する人件費が限定的です。

また、派遣労働者を雇い入れるケースと比較しても、スキマバイトのほうが採用コストを抑えられます。人材派遣会社との契約を締結する必要がなく、派遣料金のマージンが発生しない分、人件費を抑えられるのです。

採用までの流れがスムーズ

スキマバイトは、インターネット上で応募と採用が完結します。アルバイトを雇い入れるときのように、履歴書を読んだり面接したりする必要がありません。

採用に関する時間的なコストを軽減でき、採用までの流れがスムーズに進む点は、スキマバイトを活用するメリットといえます。また、応募する労働者側からしても、応募のハードルが低い点はメリットと捉えられています。

さらに、スキマバイトの場合は出退勤の管理や給与の支払いも簡潔です。人事・経理担当者の事務的負担が軽く、効率的に運用できます。

人手が欲しいときに必要な人手をピンポイントで用意できる

スキマバイトを活用すれば、人手が欲しいときに、必要な人手をピンポイントで用意できます。具体的に、有効活用できるケースは以下のとおりです。

業界 業務内容
小売業 ・週末やセール期間の店舗スタッフ増員
・在庫管理や棚卸し作業の集中期間
・季節商品の入れ替え時期
飲食業 ・ランチタイムやディナータイムのピーク時間帯
・週末や祝日の混雑時
・宴会シーズンや行楽シーズンの繁忙期
ホテル・観光業 ・チェックイン・チェックアウト時間帯の受付強化
・観光シーズンの臨時ガイド
・大型連休期間の客室清掃スタッフ
イベント・エンターテイメント業 ・音楽フェスや展示会などの期間限定イベント
・スポーツ大会などの運営スタッフ
・チケット販売のピーク時対応
物流・配送業 ・年末年始やお中元・お歳暮シーズンの配送増加期
・EC通販の繁忙期対応
・倉庫内のピッキング作業
教育関連 ・入試シーズンの試験監督
・夏期・冬期講習期間の事務対応
・学校行事時の臨時スタッフ
製造業 ・受注増加時の生産ライン増員
・製品検品や梱包作業の繁忙期
・季節商品の製造ピーク時

突発的に人手が必要になったときはもちろん、計画的に繁忙期に合わせてスキマバイトを活用する方法があります。時間帯・曜日・季節など、需要の波に合わせて人員配置を最適化できれば、業務体制を維持しつつ人件費を抑えられるでしょう。

また、正社員が本来の業務に集中できる環境を作ることにより、業務効率と従業員満足度が向上する可能性があります。企業全体の生産性を維持・向上させるうえで、スキマバイトは有効活用できます。

長期的な採用も可能

一度来てもらった労働者に気に入ってもらえれば、再度同じ求人を出したときに、再度応募してもらえる可能性があります。何度か経験するうちに業務に精通し、貴重な労働力となってくれる期待が持てるでしょう。

また、労使の双方で合意すれば、長期採用することも可能です。スキマバイトを通じて優れた人材に巡り合えた場合、自社で雇用し続けることも検討しましょう。

悪質なスポットワーカーへの対策

お金と人
スキマバイトやスポットワーカーを雇い入れる際には、悪質なワーカーを雇用するリスクを抑える必要があります。

自社の信用を失墜させる事態を防ぎ、業務生産性を損ねないためにも、以下で解説する内容を参考にワーカーを選定しましょう。

評価の低いワーカー・評価がないワーカーには依頼しない

スキマバイトのマッチングを行っているプラットフォームでは、労使の双方に評価が付いています。実際に働いたワーカーと雇い入れた企業がお互いを評価し、信頼が可視化される設計になっています。

悪質なワーカーを雇い入れるリスクを軽減するためには、評価の低いワーカー・評価がないワーカーの応募を断るのが無難です。評価がないワーカーに関しては、実績がないだけでなく「過去に問題を起こして再度登録したワーカー」である可能性が否定できないためです。

一方で、実績があり多くの企業から高評価を得ているワーカーであれば、安心して業務を任せられるでしょう。単発で働くワーカーを雇い入れる場合でも、きちんと信用できる人物かどうかは確認するべきです。

事前に禁止行為や損害賠償のルールを明確にする

スポットワーカーの悪質な行為を未然に防ぐ対策として、事前に禁止行為や損害賠償のルールを明確にすることが効果的です。ルールに同意できない人材の応募を防ぎ、問題を起こしやすい人材を事前にふるい落とせます。

また、損害賠償の可能性を認識させることで不正行為や禁止行為を防止でき、企業側がこなしてほしい業務に注力してもらえるでしょう。

可能な範囲で監視・モニタリングする

可能な範囲で、スキマバイトを監視・モニタリングすることで、問題行為を防げます。スキマバイトが「本来の業務に注力せざるを得ない」という状況を作りましょう。

ただし、スキマバイトやスポットワーカーを募集している以上、企業側も人手に余裕がない状況と考えられます。人の目による監視やモニタリングには限界があるため、監視カメラや作業記録システムなどを活用し、不正行為や問題行動がないか記録することも検討しましょう。

まとめ:スキマバイトを採用するときはリスクを認識しよう

スキマバイトやスポットワークは、必要なときだけ労働力を確保できる柔軟な雇用形態です。繁忙期の人手不足解消や固定人件費の削減、採用コスト抑制など、有効活用すれば企業にさまざまなメリットをもたらします。

しかし、「タイミー営業」をはじめとした悪質なワーカーを雇い入れてしまうと、自社の信用失墜やノウハウ流出などにつながります。本来やってほしい業務が停滞し、生産性が落ちてしまうリスクも見逃せません。

スキマバイトやスポットワーカーを活用する際は、人材の選定は慎重に行いましょう。評価の高いワーカーのみを選定し、禁止行為や損害賠償のルールを明確にすることにより、良質なワーカーを採用できます。

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(編集:創業手帳編集部)

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