インフレで要注意!下請法違反の11の事例を紹介!下請法で禁止されている行為は何?

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そもそも下請法とは?下請法違反の事例とともにペナルティや罰則についても解説

インフレが止まりません。ロシアのウクライナ侵攻やコロナ禍などがきっかけとなり、世界的な原材料不足が起こりました。また、先進国のインフレなどもあり、日本にもその波がやってきた格好です。

さらに国内のインフレに追い打ちをかけているのが、円安です。4月29日には、34年ぶりに1ドル160円の安値をつけたほどです。海外から原材料を輸入しなければならない日本の製品も当然、それを受けて値上げしなければなりません。

そこで問題になるのが、下請法です。多くの事業者の方が値上げを検討する一方で、下請事業者からの値上げ交渉を受けた方もいるでしょう。気をつけなければ、下請法違反に該当する行為をしてしまう可能性があります。本記事では、下請法違反の事例などについてご紹介します。

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下請法とは?

下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)は、発注側である親事業者が、発注を受ける側の企業や個人事業主との取引に関して、不当な代金減額、返品、支払い遅延を禁止する法律です。

この法律の主な目的は、下請事業者の利益を保護し、下請け取引の公正を確保することにあります。また、中小企業の健全な発展と育成を促進することも意図されています。

このように下請法は、経済の基盤となる中小企業が公正な条件で事業を行えるように支援し、大企業との力の不均衡を是正するための重要な法的枠組みを提供します。これにより、全体の産業構造が健全に機能し、経済全体の均衡ある成長が図られることが期待されています。

下請取引とは?

下請取引は、事業者の資本金規模と取引の内容で定義されており、以下の2つが該当します。

下請法違反になるので禁止されている行為とは?11つの事例を紹介

下請法違反に該当するやってはいけないこと、禁止されていることをご紹介します。

1.受領拒否(第1項第1号)

下請法4条1項1号では、親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合、親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒むことはできないと定められています。

簡単に言えば、親事業者は、下請事業者が納品物を納期までに、品質にも問題なく納品してきたにもかかわらず、一方的に受け取りを拒否することは違法行為となるということです。

具体的な例
・親事業者が、発注時に決めた納期に受け取らない
・納品物に問題がないにもかかわらず、クレームをつけて受け取らない

2.下請代金の支払遅延(第1項第2号)

下請法第4条第1項第2号では、親事業者が下請事業者に対して委託した給付の代金を、受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わないことは違法行為と定められています。

例えば、親事業者が今支払えるお金が手元にないからといって、下請事業者に対して、契約書等で定めた支払期日から60日以降に代金を支払ってはいけない、ということです。

具体的な例
・受領後60日以内に定められた支払期日を過ぎても支払わない
・分割払いの場合、分割払い期日を過ぎても支払わない
・支払期日を一方的に変更する
・不当な理由で支払いを控える

3.下請代金の減額(第1項第3号)

下請法第4条第1項第3号では、親事業者が下請事業者に対して委託した給付の代金について、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、発注時に決定した額から減額することは違法行為と定められています。

例えば、親事業者に資金的な余裕がなかったり、水準以上であるにも関わらず品質に満足がいかなかったからといって、下請事業者に責任がないのに、一方的に下請代金を減らすことはできないということです。

具体的な例
・発注された要件を満たした上で納期内に商品を納品したのにも関わらず、発注時に決定した代金よりも低い金額で支払う
・後になって、値引きや協賛金等の名目で代金を減額する

4.返品(第1項第4号)

下請法第4条第1項第4号では、親事業者が下請事業者から納入された物品等について、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに返品することは違法行為と定められています。

例えば、品質に問題がないのにも関わらず、親事業者が「思っていたものとは違うから受け取らない」などとして返品することはできない、ということです。

具体的な例
・納品後に、注文内容と異なることを理由に返品する
・納品後に、検査を行い、不良品を理由に返品する
・納品後に、販売不振を理由に返品する
・発注時に返品特約を設け、一方的に返品する

5.買いたたき(第1項第5号)

下請法第4条第1項第5号では、親事業者が下請事業者に対して、発注する商品・役務等に通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることを「買いたたき」として禁止しています。

簡単に言えば、親事業者が、下請事業者に対して、適正な価格よりも著しく低い価格で取引することを強要することは違法行為となるということです。

例えば、ある商品の取引相場が10万円であれば、それより著しく低い金額である1万円での取引を親事業者から下請事業者に提示することは違法に該当する可能性が高いです。

また、商品対価の決め方について、十分に協議することなく決定している場合についても、違法に該当する可能性があり要注意です。例えば、昨今のインフレ環境において商品を制作するコストが上がっている現状を鑑みれば、下請事業者から納品される商品の対価は値上げして然るべきです。下請事業者からそうしたコスト部分の値上げについて議論された上で対価の交渉があった場合、十分な理由があるのであれば、親事業者は値上げを受け入れ、販売価格を検討していかなければならないでしょう。

以下で、他にも具体的な例をご紹介します。

具体的な例
・下請事業者の見積価格よりも低い価格を一方的に提示する
・納期を短縮する代わりに、低い価格を提示する
・大量発注を条件に、低い価格を提示する

6.購入・利用強制(第1項第6号)

下請法第4条第1項第6号では、親事業者が下請事業者に対して、必要としていない物品・役務の購入や利用を強制することは違法行為と定められています。

例えば、親事業者の商品が現状売れていないからといって、下請事業者に対して、それらの商品を購入させ、在庫処分をする、などといったことはできない、ということです。

具体的な例
・下請事業者に対して、自社の製品やサービスを購入することを強要する
・下請事業者に対して、特定のリース会社や金融機関を利用することを強要する
・下請事業者に対して、親事業者が指定する広告や宣伝活動に参加することを強要する
・下請事業者に対して、親事業者が指定するイベントや研修に参加することを強要する

7.報復措置(第1項第7号)

下請法第4条第1項第7号では、親事業者が下請事業者に対して、下請事業者が下請法違反行為を公正取引委員会等に知らせたことを理由として、取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすることを禁止しています。

例えば、下請事業者が下請法違反を公表したことを理由に、下請事業者との取引を取りやめたり、対価を減額したりすることはできない、ということです。

具体的な例
・下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公正取引委員会に知らせたことを理由に、発注量を減らす
・下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公表したことを理由に、取引を打ち切る
・下請事業者が親事業者の下請法違反行為を告発したことを理由に、不当な値引きを要求する
・下請事業者が親事業者の下請法違反行為を公表したことを理由に、嫌がらせをする

8.有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号)

下請法第4条第2項第1号では、親事業者が下請事業者に有償で支給した原材料等について、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日よりも早い時期に支払わせたり、下請代金から控除(相殺)したりすることを禁止しています。

具体的な例
・下請事業者が製造加工して納品するまでの期間を考慮せずに、有償支給した原材料の代金を下請代金から控除していた。

9.割引困難な手形の交付(第2項第2号)

下請法第4条第2項第2号では、親事業者が下請事業者に対して下請代金を手形で支払う場合、一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することを禁止しています。

そこまで難しく考えず、親事業者は下請事業者に対して現金で支払いましょう。現金で支払えば、問題ありません。

具体的な例
・繊維業においては、90日を超える長期の手形は、一般的に割引困難な手形とされています。
・繊維業以外の業種においては、120日を超える長期の手形は、一般的に割引困難な手形とされています。

10.不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号)

下請法第4条第2項第3号では、親事業者が下請事業者に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害すると下請法違反となります。

具体的な例
・下請事業者に対して、親事業者の商品を購入することを強要する
・下請事業者に対して、親事業者の指定する金融機関を利用することを強要する
・下請事業者に対して、親事業者のゴルフコンペや接待に協賛金を支払うことを強要する
・下請事業者に対して、親事業者の関連会社に人材を派遣することを強要する

11.不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号)

下請法第4条第2項第4号では、親事業者が下請事業者に対して、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、以下の行為を行うことを禁止しています。

・発注した内容を変更し、当初とは異なる作業を行わせること
・受領した給付について、追加的な作業を行わせること

具体的な例
・発注内容を変更し、当初とは異なる作業を行わせる(設計変更による作業量の増加、仕様変更による部品の交換納期変更による作業時間の延長)
・受領した給付について、追加的な作業を行わせること(検査基準の変更による検査のやり直し、顧客からのクレーム対応による追加工、納品後の不具合修正)

下請法違反の罰則・ペナルティは?企業名は公表される?

気づかないうちに違反していることもあるかもしれない下請法ですが、もちろん、違反すればペナルティを受けてしまいます。以下では、下請法違反の罰則・ペナルティをご紹介します。

50万円以下の罰金が科される

下請代金支払遅延等防止法(下請法)に違反した場合、公正取引委員会による勧告や、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
下請法第6条では、親事業者の遵守事項が定められており、これに違反した場合は同法第9条により50万円以下の罰金が科されます。

禁止行為が行われた場合でも、必ず罰金刑が科されるわけではありません。公正取引委員会による勧告や指導などの行政措置が取られることもあります。罰金刑は、違反行為の悪質性や影響の大きさなどを考慮して決定されます。

いずれにしても、下請法違反は下請け企業に深刻な不利益をもたらす可能性があるため、親事業者は下請法を十分に理解し、適切な取引を行うことが求められます。

民事裁判で訴えられ、損害賠償責任を負う可能性

下請法違反を行った親事業者は、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。

下請法第25条では、下請法に違反する行為を行った事業者に対して、下請事業者が損害賠償請求を行うことができると定められています。

ただし、損害賠償請求が認められるためには、下請事業者が実際に損害を被ったことを証明する必要があります。また、親事業者が下請法違反の行為を行ったことと、下請事業者が被った損害との間に因果関係があることも証明しなければなりません。

損害賠償請求の額は、下請事業者が被った損害の実態に応じて決定されます。たとえば、受領拒否や返品によって生じた在庫の処分費用や、支払遅延によって生じた資金繰りの悪化に伴う借入金利息などが、賠償額に含まれる可能性があります。

下請事業者にとって、民事上の損害賠償請求は、下請法違反によって被った不利益を回復するための重要な手段の一つといえます。親事業者は、下請法を遵守し、適正な取引を行うことで、損害賠償リスクを回避する必要があります。

下請法違反の企業名は公表される

公正取引委員会は、下請法違反に対して行政処分を行った場合、その内容を公表することができます。この公表は、下請法第6条に基づく勧告や、同法第7条に基づく指導を行った場合に、官報や公正取引委員会のウェブサイトで行われます。

公表される内容には、通常、以下のような情報が含まれます。

・違反行為を行った事業者の名称および所在地
・違反行為の概要
・公正取引委員会が行った措置の内容(勧告、指導など)

企業名の公表は、下請法違反を行った事業者にとって、社会的信用の低下やレピュテーションリスクにつながる可能性があります。取引先や消費者からの信頼を失うことで、事業活動に大きな影響が生じるおそれがあるのです。

また、公正取引委員会は、下請法違反の再発防止や他の事業者への注意喚起のために、違反事例を匿名で公表することもあります。この場合、企業名は明らかにされませんが、違反行為の内容や業界の特性などが示されます。

企業名の公表は、下請法違反に対する抑止力の一つとして機能しています。事業者は、社会的信用の毀損を避けるためにも、下請法を遵守し、適正な取引を行うことが求められます。

下請法違反の事例を参考に気をつけましょう

以上、下請法違反の事例などについてまとめてご紹介しました。

インフレ環境下で下請事業者との値上げ交渉も増えるでしょう。そんな中、下請法違反にならないよう十分気をつけてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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