連続起業家(シリアルアントレプレナー)を目指すには?必要な資質や実例もご紹介
新規事業を次々に立ち上げるのが連続起業家(シリアルアントレプレナー)
新規事業を連続して立ち上げる起業家のことを、連続起業家(シリアルアントレプレナー)と呼びます。
連続起業家はアメリカで多く生まれており、日本国内では生まれにくいとされています。しかし、近年は連続起業家として活躍する日本人も増えました。
そこで今回は、連続起業家が日本よりアメリカに多い理由や、連続起業家に求められる資質、事業を始める方法をご紹介します。
また、日本や海外で有名な連続起業家についてもご紹介しているので、将来的に連続起業家を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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この記事の目次
連続起業家(シリアルアントレプレナー)とは?
連続起業家とは、生涯にわたって新規事業の立ち上げに携わる起業家のことを指します。
英語に訳すと「serial entrepreneur(シリアルアントレプレナー)」となり、serialは「連続的な」、entrepreneurは「起業家」という意味を持ちます。
連続起業家の特徴は、立ち上げた事業が失敗に陥ったとしても、その経験を活かして別の事業を立ち上げることです。
失敗した事業と同じ事業領域内で新事業にチャレンジする場合や、まったく別の事業領域でスタートする場合もあります。
また、連続起業家は創業者として利益を得られるようになったら事業を売却し、別の事業を新たに立ち上げるケースが多いです。
連続起業家(シリアルアントレプレナー)が日本よりアメリカに多い理由
アメリカにはシリコンバレーをはじめ、多くの連続起業家がいるといわれています。連続起業家が多い理由として考えられるのは、金銭的なリスクが低い点です。
アメリカは返済義務が発生しない資金をベンチャーキャピタルなどから調達します。
それを元手に起業するケースが多く、万が一事業に失敗しても返済せずに済むため、何度もチャレンジする人が多いのです。
また、事業を売却することに関しても、アメリカでは高値で買収されることが名誉であり、成功者として評価されます。
一方、日本の場合は事業を売却することに対して、ネガティブなイメージを持っている人も多いです。
こうしたネガティブなイメージから、連続起業家を目指す人は少ないと考えられます。
連続起業家(シリアルアントレプレナー)に求められる資質とは?
これまでは事業売却に対してネガティブなイメージが持たれてきましたが、現在は大手企業でもベンチャー企業の買収を積極的に行っており、連続起業家が活躍できる環境になってきています。
そのため、連続起業家を目指す方も増えています。連続起業家を目指すには、どのような資質が求められるのでしょうか。
ビジネスに夢中である
連続起業家に必要な資質は、そもそもビジネスが好きで、事業にも夢中で取り組んでいることです。
事業ではなくビジネスそのものが好きであれば、連続起業家の資質があるといえます。
また、連続起業家は仕事をしている時間だけでなく、プライベートでも「このアイディアで新しい事業を立ち上げられるかも」「こんなビジネスは面白そう」などとビジネスのことを考える傾向にあります。
説得能力が高い
連続起業家は他人の考えや行動を変えてしまうほどの説得能力が必要です。
例えば、投資家に対して事業の魅力や将来性について賛同を得れば、資金を調達できる可能性も高まります。
また、説得能力が高ければ、スタッフを採用して積極的に仕事に取り組んでもらいたい場合にも効果的でしょう。
説得能力は、話に物語性を追加したり、プレゼンターとして役になりきったりすることで伸ばせます。
想像力が豊か
想像力も連続起業家には欠かせない資質のひとつです。従来のビジネスや既存のアイディアなどを活用し、想像力を膨らませて新たな事業や価値観を生み出していきます。
想像力が豊かであれば、新たなビジネスのアイディアを生み出せるだけではありません。失敗につながるリスクについても考えられ、失敗を回避しやすくなります。
連続起業家は想像力によって失敗しやすい要素を早めに見つけておき、失敗を回避することで事業の早期成長を目指します。
コミュニケーション能力が高い
連続起業家にはコミュニケーションスキルも必要です。
事業を素早く立ち上げて成功に導いていくためには、自分ひとりだけの力だけでなくチーム内外の人と協力していかなくてはなりません。
また、商談や取引きの際にもプレゼン力や聞く力が求められます。信頼できる人や事業に協力してくれる人を増やすためにも、コミュニケーション能力は必須です。
人が好きで良好な対人関係を築ける
連続起業家は、良好な対人関係を築ける能力も求められます。そもそも連続起業家は人と接することが好きな傾向です。
自分と似ている考えを持っている人だけでなく、まったく異なる背景やスタイルを持つ人と確実にコミュニケーションをとり、ビジネスの目標達成を目指していきます。
良好な対人関係が築けると、意見やアドバイスももらいやすくなり、成功への近道となります。
連続起業家(シリアルアントレプレナー)として事業を始める方法とは?
連続起業家として活動する場合、新規事業の立ち上げから売却まで、どのような流れで行われているのか気になる方もいるかもしれません。
ここからは、連続起業家として事業を始める方法について解説します。
新しい事業を考案する
まずは新たなビジネスのアイディアを見つけ出し、そこから新しい事業を考案していきます。
いきなりビジネスのアイディアを見つけようとしても難しいので、まずは国内外における既存ビジネスについて調べ上げてください。
また、市場のトレンドや自社の専門性も理解しておくことで、ほかでは見られない事業につながる可能性もあります。
新しいアイディアが生まれたら、5W1Hに当てはめて新規事業としてやっていけるかどうかも考えていきます。
「買いたい」と感じる会社に成長させる
アイディアを膨らませ、資金も準備できたら会社を立ち上げます。
会社を立ち上げたら実際に販売する商品・サービスの開発や、売り込むためのマーケティング活動、そして一連の事業実績を検証し、ビジネスプランの改善に努めていきます。
これを繰り返していくことで、消費者だけでなく企業側にも「買いたい」と思わせることが可能です。
「買いたい」と思える会社へと成長できれば、連続起業家は次のフェーズへ移行します。
会社を売却する
連続起業家はある程度事業が成長することで、別の企業に事業の売却を検討するようになります。会社を売却するためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
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- 引き継ぎも考えて属人性を排除すること
- 自分がやりたいという気持ちよりトレンドに乗ったビジネスにすること
- 自社の価値を理解し、明確に表現すること
事業を売却できたら、その資金を元手に新たなビジネスの立ち上げに携わります。ただし、すべての事業が売却できるわけではありません。
場合によっては売却までに至らず、失敗する可能性もあります。
日本の有名著名な連続起業家(シリアルアントレプレナー)
アメリカと比較して、日本にはまだまだ連続起業家の数は少ないものの、まったくいないわけではありません。以前から連続起業家として活躍する人物もいます。
続いては、日本の有名な連続起業家をご紹介します。
山田進太郎氏:メルカリの現代表取締役社長
山田進太郎氏はメルカリの代表取締役社長を務める人物です。
早稲田大学に在学中の時から連続起業家としての頭角を現していて、当時まだ立ち上がったばかりの楽天にインターンとして入り、楽天オークションの立ち上げにも携わりました。
大学を卒業してからはソーシャルゲーム会社の株式会社ウノムを設立し、その後アメリカのZyngaという企業に数十億円での事業売却を果たしています。
望月佑紀氏:大学3年生から事業をスタート
連続起業家として知られる望月佑紀氏は、慶應義塾大学に入学後、3年生の時に株式会社リジョブを創業しました。
株式会社リジョブでは求人サイトをリリースし、その後株式会社じげんにリジョブを約20億円で売却しています。
リジョブの代表取締役社長を退任してからは、その資金を元手にアメリカでXVOLVE GROUPを創業しています。
XVOLVE GROUPでは、動画コミュニケーションアプリのBe Heardや外国人が住まいを探すためのプラットフォーム「GOTEN」や、ユーザー同士がサービスやモノを物々交換し合えるGivettなどを手掛けてきました。
諸藤 周平氏:介護領域を中心にビジネスを展開
諸藤周平氏は九州大学を卒業後、株式会社キーエンスや株式会社ゴールドクレストなどを経て、2002年に合資会社エス・エム・エス、2003年には介護に特化した人材紹介事業を手掛ける株式会社エス・エム・エスを創業しました。
創業から4年目には売上15億円に達し、2008年にはマザーズ上場、2011年には東証一部へ市場を変更しています。
諸藤周平氏は創業者が長く続けるのは良くないと考え、10年目には代表取締役を降りることを決めました。
実際に2014年4月には代表取締役から退任し、シンガポールへと渡っています。
同年9月には産業創造の一般化をミッションとして掲げる「REAPRA」を設立し、CEOに就任しました。
渋沢栄一:約500社以上もの起業に携わった
渋沢栄一は、2024年から発行される新紙幣の1万円札の肖像として選ばれた、日本の資本主義の父とも称されている人物です。
大蔵省に入省してからは維新後の国づくりに貢献していきました。
1873年に大蔵省を辞めてからは第一国立銀行の総監役(後に頭取)を務め、数多くの株式会社の創設・育成に尽力してきました。
その結果、生涯にわたって約500社以上もの起業に携わったとされています。
海外の有名著名な連続起業家(シリアルアントレプレナー)
海外には日本と比べて多くの連続起業家がいますが、世界的に名前が知られている人物もいます。ここでは、海外の有名な連続起業家をご紹介します。
イーロン・マスク氏:アメリカを中心に活躍
イーロン・マスク氏は、1999年に電子決済サービスを運営するX.comの共同創設者となり、ネット決済の黎明期を支えた人物です。
X.comはその後PayPalと合併し、2002年にはeBayへ売却されています。
この売却で得た利益をもとに宇宙開発事業を手掛けるスペースXを起業、さらに電気自動車会社のテスラ・モーターズへ出資して代表取締役にも就任しました。
最近ではソーシャルメディアのTwitter(現在のX)を買収したことで話題を集めました。
ジャック・ドーシー氏:起業したビジネスで上場に成功
ジャック・ドーシー氏は2006年にTwitterの共同創業者として立ち上げ、2009年にはモバイル決済事業を手掛けるSquareを創業し、いずれも上場させることに成功しています。
一時はTwitter社のCEOを退任するよう追い込まれ、連続起業家としても順風満帆ではありませんでしたが、Squareの立ち上げを機にTwitter社からCEOへ呼び戻され、再度活躍を見せるようになりました。
アンディ・ベクトルシャイム氏:投資家としても活躍
アンディ・ベクトルシャイム氏は、コンピュータの製造やソフトウェア開発を手掛けるサン・マイクロシステムズを創業し、退職してからはデビッド・チェリトン氏と共同でグラナイトシステムを設立しました。
グラナイトシステムは、設立からわずか1年後にシスコシステムへ220億円で売却されました。
さらに、チェリトン氏とサーバーテクノロジーを手掛けるキーリアを立ち上げ、3年後には古巣のサン・マイクロシステムズへ売却しました。
アンディ・ベクトルシャイム氏は、テクノロジー領域において複数回もの事業売却に成功しています。
連続起業家としてはもちろん、投資家としても活躍しており、初期のGoogleにも投資していました。
リード・ヘイスティングス氏:先見の明を持ち、情報感度が高い起業家
リード・ヘイスティングス氏は、ピュア・ソフトウェアを立ち上げて株式公開まで実現させた人物です。その後、マーク・ランドルフ氏が率いるソフト受け合会社を買収し、ピュア・ソフトウェアを約600億円で売却しています。
この資金を元手に、マーク・ランドルフ氏と共にNetflixを立ち上げました。
CEOにはランドルフ氏が就任していましたが、その後経営が悪化したことを受け、ヘイスティングス氏がCEOを引き継ぎました。
当時まだ主流ではなかった動画のストリーミング配信事業に注力し、現在の地位を確立しています。まさに先見の明を持った連続起業家といえます。
まとめ・連続起業家(シリアルアントレプレナー)になるにはアクティブにチャレンジを続けよう!
世界と比較すると日本にはまだまだ連続起業家の数は少ないものの、近年は活躍できる環境が整いつつあり、連続起業家の数も増えてきています。
連続起業家になるには、新しいアイディアを生み出すための力が必要です。
しかし、それ以前に何事にもチャレンジしなければ、連続起業家としての成功は難しいかもしれません。
連続起業家を目指している方は、今回ご紹介した求められる資質なども参考にしつつ、何事にもチャレンジする精神を持つことが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)