フードロスを減らすために飲食店オーナーができることとは

創業手帳

フードロス削減は社会的な責務となり、これからの飲食店業界にも不可欠なテーマ


フードロスは今後、世界共通の課題となり、フードロスを減らすための取組みが国家主導で進むと予想されます。飲食店にとってもフードロスが増えることで、経費の上昇、利益の圧迫が想定されています。

フードロスを削減できれば、他の飲食店と差別化して利益率の向上も期待できるでしょう。競争が激しい飲食業界でフードロス削減をすることで、利益向上を目指してください。

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日本が抱えるフードロス問題

令和元年5月31日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」(略称 食品ロス削減推進法)が公布され、令和元年10月1日に施行されました。これはフードロス削減を推進するために作られた法律です。

日本のフードロス量は平成27年度推計で646万トン。これは国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量(約320万トン)のほぼ2倍です。毎日10トントラック1770台分の食品を廃棄していることとなり、年間一人当たりの食品ロス量は51kgといわれています。

食料を生産するためには多くの資源を消費します。これからの世界人口は増加が予想され、それに伴い栄養不足の人も増加する可能性があります。フードロスは世界規模で対応しなければならない課題です。

持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals:SDGs)では目標12として 持続可能な生産消費形態を確保することが挙げられています。国際的にも求められているのが、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させて、生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させることです。

日本でも消費者向け啓発用リーフレットの配布や、フードロス削減レシピの発信がおこなわれました。また生産者側、事業者側も今までの食品に関する商慣習の見直しやフードロス削減につながる容器包装の導入といった取組みを実施しています。

横浜市では小盛りメニューの提供やお持ち帰りの対応のように食べ残しを減らす取組みをしている飲食店等を「食べきり協力店」として登録する試みを実施。政府と企業、消費者がそれぞれフードロス削減に向けた活動をスタートしています。

フードロスがおこる原因って?

フードロスの言葉から、食材を無駄に捨てているような印象を持つかもしれません。しかし、実際にはフードロスはもっと身近に、日常的に起こっています。フードロスが起こる原因についてまとめました。

食べ残し

フードロスが起こる原因として、飲食店でも多いのが食べ残しです。食べ残しは、損益計算として飲食店の売上げに影響するものではありませんが、地球環境の観点から食べ残しはできるだけ減らすべきでしょう。フードロスの啓蒙活動を実施している飲食店もありますが、それだけでは問題解決が困難です。

仕入れや管理のミス

飲食店で起こりやすいフードロスの原因が、商品である食品の仕込み過ぎ、仕入れ過ぎです。1日の来客数が予測できないと用意する食品に無駄が出てしまいます。さらに、仕入れた食品を管理できずに無駄になってしまうこともあるでしょう。

仕入れすぎて廃棄となった食品は飲食店にとっても費用であり、売上げに影響します。1日の来店数に影響を与える天候やイベントの情報をチェックすることが対策として考えられます。

企業がフードロス削減のためにできること


飲食店では恒常的にフードロスが出るため、なくすことは困難と考えるかもしれません。しかし、様々な工夫によって多くの企業がフードロスを削減しています。企業としてフードロス削減のためにできることをまとめました。

商慣習「3分の1ルール」を緩和

日本ではコンビニやスーパーのように様々なお店で食品を購入することができます。これらの商品を扱うお店で商慣習として行われているのが、「3分の1ルール」です。どこの販売店でも賞味期限や消費期限の手前に販売期限が設定されています。賞味期限、消費期限が残っていても返品や廃棄処理されてしまうのは、この販売期限をベースにして商品を棚から撤去しているためです。

この販売期限は製造日から賞味期限までの期間をおおむね3等分して、賞味期限手前3分の1で設定される場合が多いことから「3分の1ルール」と呼ばれるようになりました。あるスーパーではこの「3分の1ルール」を使わずに賞味期限ギリギリまで販売することでフードロスが10%減少したとする結果が残されています。全国的に「3分の1ルール」をなくすためにはフードチェーン全体の取組みが求められますが、徐々に条件を緩和していくことでフードロス削減への寄与が期待できるでしょう。

気象データの活用

フードロス削減のために広く効果が期待できるのがIoTの活用です。経済産業省は日本気象協会と連携し、気象情報等使って食品ロス等のサプライチェーンのムダを削減する「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」を実施。

平成27年には年間の豆腐需要をメーカーに導入することで、フードロス削減につながりました。次の年にはより高度な予測を立て、メーカーと小売が豆腐の需要予測を共有することで、「見込み生産」を「受注生産」に転換して欠品も食品ロスもほぼなしの結果を出しています。

需要予測を活用すれば、季節商品の売れ残りも減らすことが可能です。食品によって季節に応じて売れやすいもの、売れにくいものが存在します。年間のフードロスを削減し、売れ残り、在庫を減らすことができるため、企業の利益率向上にも貢献しています。

販売数や時間を制限する

フードロス削減の難しさの一つには機会損失の捉え方があります。ほとんどの食品小売業は「欠品=悪いもの」として、商品を余らせることにより、売上げの機会損失を失うことを嫌う傾向があります。しかし、需要とピッタリ合う数の商品を用意するのは想定以上に困難です。機会損失を嫌がった結果として、多くの在庫、売れ残りがでてしまうケースが想定されます。

加えてチェーン系のスーパーやコンビニでは、対前年度○○%増のような形で売上げ目標が設定されることが多いです。しかし、日本の人口は減り、イベント商品の売上げが右肩上がりの時代は終わりました。そこであるスーパーが採用したのは増やすことを目指すのではなく、前年実績と同じ数で商品を製造する方法です。前年実績に沿うことで売れ残りをなくし、適正数だけを用意できます。

欠品を恐れない考えから、初めから販売数や販売時間を限定するビジネスモデルも生まれています。例えば「1日○○食限定」の食堂や食品店です。商品を販売する時、販売にかかるコストとして、廃棄される食品のコストも計上されます。

廃棄をなくすことが出来ればコストを削減でき、より安い価格で商品を提供できます。数をあらかじめ決めておけば、必要な仕入れ量も安定するため、食材も管理しやすくなるでしょう。

IoTによる効率的な在庫管理

フードロス削減のためにできる新しい施策として、回転寿司大手スシローはビッグデータの活用をおこないました。店舗に「回転すし総合管理システム」を導入し、1分後と15分後に必要な握りネタと数を常に予測。また、寿司をのせる皿にはICチップが付けられ、単品管理され鮮度が落ちると自動的に廃棄される仕組みです。

今までは回転すしで流れる握りネタと数は店長や店員の勘と経験頼みでした。そこに「回転すし総合管理システム」を加えることで、食べたい握りネタを貯度良いタイミングで提供できることができるようにしています。スシローではこのシステムを導入することで、廃棄量が4分の1ほどに減少。

競合他社は、注文を受けてからお客様にレーンで商品を届ける、つまり回っている寿司から好きなものを取る仕組みから離れることによって、フードロスに取組んでいます。しかし、スシローではレーンを流れる寿司を見て気に入ったものを取る喜びを味わって欲しいと考えて、正確な需要予測と適正数の寿司の提供にこだわりました。

スシローの優秀な店長は、顧客の体格や構成、食べた量、受付待ちの状況を踏まえて、どれだけ寿司を用意しておくべきかを判断することが可能です。それをIT活用して標準化したのが「回転すし総合管理システム」となっています。

フードシェアリングサービスでフードロスを減らそう


フードロスを減らすために注目され始めた取組みが、フードシェアリングサービスです。飲食店でおこなわれるフードロス対策と併せて活用すれば大きな効果も期待できます。
フードシェアリングサービスとは、どのようなものか紹介します。

フードシェアリングサービスとは

フードシェアリングサービスとは、文字からわかるように食材をシェアするためのサービスです。例えばロスになりそうな食品を一般消費者に通常より安価で販売するサービスのほか、フードロスを起こさないために複数店舗で食材を共有するサービスがあります。

「TABETE(タベテ)」は株式会社コークッキングによるフードシェアリングサービス。杉並区では食品ロス削減に取組むお店を「食べのこし0(ゼロ)応援店」として登録する事業を開始し、「TABETE(タベテ)」を運営する株式会社コークッキングと4月22日に協定を締結しました。

「TABETE(タベテ)」には飲食店で余ってしまいそうなメニュー、まだ食べられるのに廃棄されてしまうメニューが出品されています。アプリで気になるメニューや商品を見つけたら、そのまま購入してクレジットカード決済することが可能です。引き取り時間を入力してお店で商品を受け取ります。

「tabekifu -タベキフ-」も食品ロス解消、社会貢献型グルメアプリとして注目を集めています。「tabekifu -タベキフ-」はフードロスになる可能性がある料理や食材を消費者とマッチングするアプリです。「tabekifu -タベキフ-」を利用すると割引やポイントを使ってリーズナブルな価格で商品を注文できます。お客様がSNSで拡散することで『もったいないジャパン』をはじめとした社会貢献団体に寄付することも可能です。

飲食店側も「tabekifu -タベキフ-」に登録するだけでプロモーションができるほか、空席が多い時間に「tabekifu -タベキフ-」で集客することができます。通常商品も掲載可能で定価販売することもできるため、お店のイメージやブランディングを保ちつつ売上げアップを狙うことができます。

日本でのフードシェアリングサービスの認知度は低く、欧米と比較すると発展途上です。利用者が拡大しないと、お店と消費者のマッチングもなかなか上手くいかないことが想定されます。これからフードシェアリングサービスの認知度が高まり、市場の拡大が期待されています。

企業がフードシェアリングサービスを利用するメリット

フードシェアリングサービスを活用することで、消費者はお得に食事を楽しめたり、社会貢献ができたりというメリットがあります。また、フードシェアリングサービスを使うメリットは消費者だけではありません。企業や飲食店がフードシェアリングサービスを使うことで、フードロスの削減が可能。フードロスがなくなれば材料費や廃棄にかかる費用を減らすことができます。

さらにフードシェアリングサービスを使うことで、企業はお店や企業のプロモーション、認知度の向上が期待できます。フードシェアリングサービスで、新規客とマッチングできるため今までお店を知らなかった層に対して新しい顧客開拓が期待できる点も大きなメリットです。

社会貢献に取組むことは飲食店、企業のイメージアップにも貢献します。社会的価値が向上し、他社との差別化、ブランディングにも効果的な方法です。フードシェアリングサービスでコストを削減し、顧客を獲得するサイクルを繰り返せば売上げ、利益の向上にもつながります。

まとめ

フードロス削減は、小売店や飲食店、企業といった食品に関わる企業にとって避けることが出来ない課題です。フードロス削減に積極的に関わり、上手に活用すれば、認知度の向上やブランディングにつながります。

飲食店はテイクアウト需要が拡大し、大人数での会食が難しくなるため今後の動向も読みにくくなっています。フードロス削減のための技術の活用や新しいサービスの導入で、これからのビジネスチャンスにつなげてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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