脱サラして農業を始めるメリットやデメリットは?資金調達法や成功のポイントも解説
計画的に始めれば「脱サラ農業」はこわくない!
脱サラ農業に対して、体力面や金銭面で苦しいイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、脱サラ農業で享受できるメリットは多く、助成金やサポートもいろいろあります。
脱サラ農業は、資金面で苦しい時期をどのように乗り越えるかがポイントです。資金や移住なども考えて計画的にスタートしてください。
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この記事の目次
脱サラして農業を始める人が増えている
脱サラ農業は、会社員を辞めて農業を始めることです。身の回りに脱サラして農業を始めた人がいないとイメージしにくいかもしれません。
農林水産省によると、令和4年度の新規就農者は4万5,840人で、その中の49歳以下は1万6,870人だとされています。
新規就農者は、もともと農家出身ではなく新しく農業を始めた人のことです。
農業と聞くとシニアが行っているイメージもありますが、30代~40代も少なくありません。以下では、脱サラして農業を始める人たちの背景について紹介します。
働きがいを求める人の増加
脱サラ農業が注目される理由のひとつが、仕事に働きがいを求める人が増えていることが上げられます。
働きがいについて今まで考えたことはあるでしょうか。働きがいとは、働くことによって得られる結果や喜び、価値を指します。
新型コロナウイルスの影響でライフスタイルや働き方が変化して、家族との時間や憧れの実現を仕事に求める人が増えました。
農業は仕事の成果を実感しやすく、自然に触れられる仕事です。脱サラして農業を始めた結果、働きがいを感じている人は多いかもしれません。
脱サラして農業をするメリットとは
脱サラ農業には様々なメリットがあります。
脱サラして農業をすると聞いてもピンとこない人も、メリットを知って脱サラ農業をした自分をイメージしてみてください。
自分のペースで仕事ができる
脱サラして農業を始めるメリットとして、自分のペースで自由に働けることが挙げられます。
一般的な会社員は働く時間や場所が決まっています。一方で、農業であれば自分で仕事と休みのバランスを取りながら働くことが可能です。
会社員は自由に使える時間が圧迫されがちです。しかし、農業であれば農場の近くに住めば通勤時間を最低限に調整できます。
選ぶ作物や栽培手法によっては、農閑期に長期休暇を取って働くことも可能です。
自然の中で仕事ができる
美しい自然や雑踏を離れた平穏な環境は、人の心を穏やかにしてくれます。自然を存分に楽しみたい人にとって、脱サラ農業は魅力的にうつるでしょう。
自然の中で働くと、季節の移り変わりや植物の変化に気が付くようになり、日々の生活も満ち足ります。
自然がない環境にストレスを感じている人、ビルや人が多い環境で働くことに疲れている人にも脱サラ農業は適しています。
地域の人とつながりができる
農業は、自然に人とのつながりが生まれる仕事でもあります。ひとりが好きで農業を始める人も多いものの、農業はひとり作業だけではありません。
わからないことを教えてもらったり助けてもらったりすることで、人とのかかわりが生まれます。
脱サラ農業によって、人の温かさを知り人とのつながりをより強く感じられるようになります。
発見と経験が毎日ある
農業は、働きながら発見や経験を積み重ねられる仕事です。毎日同じことの繰り返しと思われがちですが、1年のサイクルで作物も周囲の環境も大きく変化します。
工夫しながら仕事に取り組めるため、自身の成長にもつながるのが農業です。
農業は、害虫や悪天候といったアクシデントに見舞われることもあります。自然相手の仕事は自分が思ったように進むとは限らず、柔軟性も必要です。
自分が想定しない事態に対して、どのように対処して利益を生むかを考えながら働かなければいけません。
自分で学び成長し続けたいと考えている人に、農業は最適な経験となるでしょう。
結果がわかりやすい
農業は、自分で作物を種や苗から育てて成長させ、収穫を行います。作物を育てて販売する仕事は利益の出し方がシンプルで、結果がわかりやすい点が魅力です。
農業は、自分で創意工夫して育てることによって、作物の品質が変わったり収穫量が増えたりするため、目に見える結果が出る仕事です。
農業は、自分の手で作物を大きくする充実感や自分が価値を生み出している実感を得られます。
脱サラして農業をするデメリット
脱サラして農業を始めてからメリットを実感する人は多くいます。しかし、決断する前にデメリットも把握してください。脱サラして農業をするデメリットをまとめました。
収入が安定しない
会社員であれば、働き始めた年でもある程度安定した収入が確保できます。しかし、農業はすぐに結果が出ないケースがほとんどです。
作物を育てて収穫するまではお金にならず、初年度は想定していた収穫量にならないかもしれません。
そのため、初年度はほとんど収入を得られないことを覚悟しておく必要があります。
農業は、収入が安定するまで耐えられるかどうかや、どれだけのノウハウを活用できるかがポイントです。
助成金や自己資金をうまく活用しながら、収入が安定するまでを乗り切るか事前に計画してください。
長期休みを取りにくい
農業は、自分のペースで働ける半面、長期休みを取りにくい点がデメリットです。作物によっては毎日状態を見なければいけません。
農閑期はあるものの、収穫の前後から梱包まで作業が多く毎日働かなければならない時期もあります。
会社員のように土日祝日や夏休みといった休暇が確保できず、辛く感じる人も多いかもしれません。
農業は自由に休暇を取れるものの、作物や環境に合わせて自己責任で取得しなければならない点には留意してください。
地主や周囲の農家と付き合いが難しい
脱サラ農業によって、周囲の人間関係も大きく変化します。
会社員であれば、仕事さえしていれば周囲との関わりが最低限で済むことが多いものの、農業ではそのようなことはありません。
土地の地主や周囲の農家と情報交換したり、農機具を貸し借りしたりするなど、助け合いが重要になることもあります。
都会に住んでいた人が、田舎の狭いコミュニティに窮屈さを感じるケースは少なくありません。スポーツや楽器などの趣味で気分転換できるようにしてください。
超過需要と超過供給でバランスが取りにくい
農業は、需要と供給のバランスが重要です。
大量に収穫できると売り先がなく余ってしまい、反対に、天候で収穫が少ないと需要があっても販売できません。
JAで買い取ってもらう方法もありますが、自分で売り先を見つける場合には、需給のバランスは自分でよく見極めなければいけません。
農業の需要と生産のバランスは経験を積まないとわからない部分もあるので、必ずデータを残して分析してください。
脱サラ農業に活用できる資金調達法や補助金・助成金、支援
脱サラ農業で安定した収入を得るためには、資金計画が重要です。資金計画を立てる時に知っておきたいのが、補助金や助成金といった支援制度。
どのような制度があるのか紹介します。
農業次世代人材投資資金
農業次世代人材投資資金は、次世代を担う農業者を目指す人に対して、就農前の研修を後押しする資金と、経営確立を支援する資金を交付する制度です。
次世代を担う農業者になるように志向する49歳以下の人が対象となります。以下では、受けられる資金について解説します。
就農準備資金
就農準備資金は、就農に向けて必要な技術等を習得する研修期間中の研修生に資金を交付するものです。
交付対象は、就農予定時に49歳以下の人で交付額は月に12.5万円を最長で2年間受け取れます。
交付要件は以下のとおりです。
1.独立・自営就農、雇用就農又は親元就農を目指す人
2.都道府県等が認めた研修機関などでおおむね1年以上、かつおおむね年間1,200時間以上研修を受けること
3.常勤の雇用形態を締結していないこと
4.原則として、前年の世帯所得が600万円以下であること
5.研修中のけがに備えて傷害保険に加入すること
経営開始資金
経営開始資金は、農業者を目指して新たに経営を開始する人に資金を交付する制度です。
交付対象者は、独立、自営就農時に49歳以下の人で交付額は月に12.5万円で最長3年間受け取れます。
経営開始資金の交付要件は以下のとおりです。
1.独立・自営就農する認定新規就農者であること
2.経営開始5年後までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画である
3.新規参入者と同等の経営リスクを負っていると市町村長に認められること
4.目標地図または人・農地プランに位置付けられている
5.原則、前年の世帯所得が600万円以下であること
青年等就農資金
青年等就農資金は、日本政策金融公庫農林水産事業が新しく農業経営を始める人を応援する目的で設けた融資制度です。
無利子で利用でき、最大3,700万円を借入れできる上、返済期間も17年以内と長い点がメリットとなります。
利用できるのは認定新規就農者のみで、資金の使用用途も定められています。
青年等就農資金はあくまで融資なので、農業経営をしながら期間内に返済しなければいけません。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業が制度改革や働き方改革に対応するための補助金です。
新しいシステムやサービスを導入した時に利用できる補助金で、農業に携わる人も条件を満たせば利用可能です。
農業から新商品や新しいサービスを開発する時の設備投資にも、ものづくり補助金を利用できます。
採択性なので、申請しても必ず交付されるわけではありません。農業分野で採択された事例も調べてから申し込むことをおすすめします。
就農支援機関
新規就農者に対する支援は資金面だけではありません。
農業経営、就農支援センターは、就農相談や農業経営の改善などの課題に対して巡回指導などの伴奏型支援を行う機関です。
各都道府県で相談を受け付けているだけでなく、セミナーや見学会を実施しています。
脱サラして農業を始めたいと考える人は、まずどういった就農方法があるのかホームページでチェックしてみてください。
経営支援
経営体育成支援は、農業を始める時に必要となる農業用機械・施設の導入などの支援です。
農地利用に向けて経営改善に取り組む時に必要となる農業用機械、施設などの導入を支援する農地利用効率化等支援交付金や、経営発展を促進する農業用機械・施設の導入を支援する担い手確保・経営強化支援事業などがあります。
脱サラして農業を成功させるポイント
脱サラして農業をスタートするのは、人生の大きな決断です。脱サラして農業を成功させるために意識しておきたいポイントを紹介します。
農業の実態を知る
就農する前に、農業体験やボランティアで農作業を体感してください。自治体やJAでは、就農支援情報や体験イベントの情報が公開されています。
収穫などの生産作業だけでなく、加工や販売の工程が体験できるプログラムや、実際の農家から話を聞けるプログラムを公開していることもあります。
農業は季節によって作業量が変わるので、季節や作物を変えて複数回参加してください。
研修や大学で技術を学ぶ
農業を始めるために栽培技術を学ぶ方法は様々です。農業大学校や就農準備校といったの農業を学ぶ施設は全国に設置されています。
また、栽培したい作物が決まっている場合には地方自治体で農業研修を実施していないかチェックしてください。
座学よりも実際に働いて学びたいのであれば、野菜の成長するサイクルを調べてから実践者を訪れたり、弟子入りしたりする方法もあります。
何を栽培したいかのイメージを固めておく
脱サラする前に、何を栽培したいのかイメージを固めておいてください。作物によって適した土地の条件や、必要な農機具、設備、施設は異なります。
基本的には、その時の気候風土に合っているものや積極的に育てているものから選びましょう。
また、リスクを分散するなら作物を絞った単一経営よりも複数の作物を育てる複合経営がおすすめです。
どの形態で農業を始めるか決める
農業を始める方法には、副業として始めるほか、未経験から新規就農する方法や方業法人に就職する方法があります。また、誰かの農業後継者になることも可能です。
リスクを減らすのであれば、本業を維持して農業にチャレンジできる副業が適しています。農業法人であれば、給料を受け取りながら農業の知識や技術を習得可能です。
農地や住まいを準備する
農地の準備は、就農希望者の悩みの種です。
作物の栽培に適しているかどうか、費用はどの程度必要なのかなどクリアしなければならない多くの条件があります。
また、農地の近くに住むのであれば居住環境も考えなければいけません。
物件探しには空き家バンクが役立ちます。移住支援制度を実施していないか調べてみてください。
住まい探しの手伝いのほか、移住費やリノベーション費用補助、就農と合わせてサポートしてくれる制度もあります。
資金を確保する
ビジネスをスタートするには資金が必要であり、農業も例外ではありません。農業に必要なお金は、主に運転資金と設備資金に分けられます。
運転資金は、日々の農業に必要な種苗費や肥料費、農地の賃料などです。一方、設備資金は、長期的に使用するトラクターや軽トラ、ビニールハウスを購入する費用です。
農業をスタートする時には、運転資金と設備資金がどれだけ必要か計算してください。また、農業者の育成に対する取組みとして補助金や融資制度も提供されています。
どれだけの資金が必要で、どのような制度を利用できるかを調べてから脱サラ農業に踏み切ってください。
経営の知識を付けておく
経営の知識は、すべての事業で必要です。農業関連の学校でも勉強はしますが、経営セミナーに参加するなど積極的に知識を身に着けてください。
経理の基礎や販売戦略のほか、販売戦略やマーケティング手法も必要になります。
近年は農業でもブログやSNSを活用するプロモーションが増えています。
農家の生の声を伝えられるSNSは、情報発信と情報収集に役立つほか、販売戦略としても有効です。
農業保険をチェックする
農業は、天候や害虫といった外部要因に左右されやすい事業です。不作のリスクは常にあるため、農業を始める時には農業保険(農業共済・収入保険)へ加入することをおすすめします。
農業者の経営努力だけでは避けられない収入減少もあるので、あらかじめ備えておくようにしてください。
まとめ・脱サラして農業をするメリットは計画性があれば得られる!
脱サラして農業を始めたいと思うことは珍しくありません。
しかし、どの作物をどこで育てて、どうやって収入につなげるかまで計画を立てたことはあるでしょうか。
会社員時代に培った経験や知識は農業でも役立ちます。また、就農資金や移住資金をためる期間が確保できる点も魅力です。
これからどのように農業を始めるか計画を立ててみてください。
無料で配布している「ブルーベリー観光農園の始め方ガイド」もぜひあわせてお読みください
(編集:創業手帳編集部)