給与明細とは?記載する項目から作り方まで紹介します!

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給与明細を正しく理解しておこう


給与明細は、従業員にどのように給与を計算しているのかを通知するために重要な意味を持ちます。
給与明細に記載されている項目には、交付や通知が義務付けられているものもあります。
従業員との信頼関係を築くためにも、適切なルール、計算で給与明細を作成、交付してください。
給与明細の内容を把握しておくとともに、従業員を雇用する時にはどのように給与明細を交付するのか事前に考えておきましょう。

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給与明細の扱いを知っておこう


アルバイトでも正社員でも、会社で働くと給与明細を受け取ります。
受け取っているだけの時は、給与明細の内容や記載されている言葉の意味についてそれほど深く考えていないかもしれません。
しかし、給与明細を発行する側、受け取る側双方が給与明細の意味や内容を理解しておく必要があります。
給与明細の扱いや意味を、基本的なところから紹介します。

給与明細の法律上の扱い

給与明細は、給与の支払い額や控除額を記載した用紙です。
記載されているのは、基本給のほかに各種の手当、天引きされている社会保険料や税金などです。
どのような計算をして、その給与になったのかが給与明細を見るとわかるようになっています。

しかし、実は労働基準法では、給与明細の発行は義務ではありません。
一方で、所得税法では、給与支払明細書の交付が義務付けられています。
さらに、健康保険法でも労働保険の保険料の徴収について、控除額を通知するように義務付けられています。

会社は賃金を支給すれば良いのではなく、根拠がある給与明細を作成して通知しなければいけません。
給与明細の項目は企業によっても違いますが、必要な項目が欠けることがないようにしてください。

給与明細に関わる情報には保管義務がある

給与明細は、会社で保管する義務はありません。
ただし、給与を計算するための根拠になった項目をまとめた書類、給与計算のもとになる書類は保管義務があります。

労働基準法第109条によって、3年保管が必要な書類は以下のものです。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿など
  • 解雇に関する書類
  • 雇入に関する書類
  • 災害補償に関する書類
  • タイムカードなどの記録

現在は経過措置で3年保管ですが、2020年4月1日の改正法施行により、保存期間は5年に延長されています。

国税通則法第70条~第73条によって、7年保管が必要な書類は以下のものが挙げられます。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
  • 源泉徴収簿(作成した場合)

給与に関わる保管しなければならない書類はたくさんあります
特に、従業員の入退社や手続きが多い会社にとっては、大きな負担になってしまうかもしれません。
データの紛失を防ぐためにも、専門のサービスやソフトの導入を検討してください。

給与明細に記載する項目


給与明細に記載する項目は、主に勤怠・支給・控除の3項目に大別されます。
支給項目で示した総支給額から控除項目の合計を差し引いて、従業員の手取り額が決まります。
それぞれ項目別にみていきましょう。

勤怠項目

勤怠項目は、給与を計算する根拠になる勤務実態を言います。
具体的には、出勤日数・欠勤日数・労働時間・残業時間・有給休暇取得日数・有休残日数が勤怠項目として記載されます。
勤怠項目を記載するには、企業は従業員の勤務状況を正確に把握しなければいけません。

労働基準法第24条では、賃金は、直接労働者にその全額を毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならないとしています。
タイムカードや出勤簿といった勤務実績は、最低でも月に一度集計するようにしてください。

支給項目

支給項目とは、従業員に支払う賃金の内訳を言います。
会社によって様々な項目があるので、今回はよく使われている支給項目をまとめています。

基本給

賃金体系のベースが基本給です。
雇用契約書や、給与規定をもとにした数字が給与明細に記載されます。
基本給には残業代や休日出勤などの時間外労働は含まれません。

各種手当

手当は、就業規則や雇用契約書に基づいて支給される賃金です
会社によって手当の規定は違い、さらに、同じ会社の中でも人によって受け取れる手当は違います。

例えば、家族手当や住宅手当のように条件に該当する従業員にだけ支給される手当もあります。
通勤手当・出張手当・単身赴任手当など、手当の種類によって法律上の扱いが違う点にも注意してください。

割増賃金

割増手当は、雇用契約で定められた時間よりも働いたり、負担が大きい労働をしたりする場合に必要な賃金です。
割増賃金は、時間外・休日・深夜の3種類です。
どれかに該当する場合には、労働基準法で定められた割増率以上で計算しなければいけません

総支給額

総支給額は、基本給・割増賃金。各種手当をすべて合わせた金額を言います。
「額面金額」と呼ばれることもある金額です。
各種の税金が差し引かれる前の金額なので、手取りよりも多くなります。

年収の場合には、12カ月分の総支給額を合計した金額を意味し、源泉徴収票でいうと「支払金額」欄が該当します。

控除項目

控除項目は、社会保険料や税金のように賃金から差し引く金額を表す項目です。
企業が支払う総支給額から控除額を差し引いた金額が、手取り給与と呼ばれています。

雇用保険

雇用保険は、会社と従業員が一定の割合で負担する保険です。雇用の安定に対する給付や再就職の支援を目的としています。

会社の規模に関係なく、1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがある場合には、原則として雇用保険の対象です。

雇用保険の加入は事業主の義務です。
雇用保険料を毎月控除して会社が会社負担分と合わせて納付する仕組みになっています。

健康保険

健康保険は公的医療保険のひとつです。
健康保険は、被保険者だけでなく、扶養されている家族も給付が受けられます。

保険給付を行うだけでなく、病気やケガを未然に防止したり早期に発見したりするためのサービスも提供しています。
例えば、予防接種の費用補助や保養所の運営などもそのひとつです。

介護保険

介護保険は、40歳になると自動的に徴収が始まる保険です。
寝たきりなどの要介護状態になった時や、日常生活のサポートが必要になった時にサービスを受けることができます。

厚生年金保険

20歳から60歳までの全国民が加入する国民年金に対して、厚生年金は、企業などに勤務している人が対象になる年金です。
厚生年金は、20歳未満でも企業に勤めていれば加入します。

基本的な年金である国民年金に対して、上乗せとしてあるのが厚生年金と共済年金です。
障害が残った時や老後のほか、遺族の生活保障のために国民年金を受け取れます。

所得税

給与から天引きされる所得税は、会社が従業員の給与から天引きして国に納める税金です
所得税は収入から所得控除を差し引いて一定の税率を乗じて計算する累進課税の税金です。
企業が給与から差し引く源泉徴収では、概算で差し引いて12月の年末調整で正確な金額を算出します。

住民税

住民税は、住民票がある市町村や都道府県に納める税金です。
住民税は前の年の給与所得から計算され、12カ月で分割して支払います。
前年度の収入がなければ課税されませんが、働き始めた次の年からは課税される仕組みです。
住民税は、会社が給与から差し引いて納める特別徴収によって支払います。

組合費などその他

会社によっては、上記の控除以外にも差し引かれる項目があります。
例えば、組合費もそのひとつです。
さらに、積立金や財形貯蓄も差し引かれる項目です。
会社によっても制度が違うので、控除項目でわからないものがあれば企業の規定を調べてみてください。

給与はどうやって計算する?


給与計算は妥当な金額を渡すだけでなく、基本給をベースとした正しい算定で支払わなければいけません。
給与を支払う側として、給与の計算方法やルールを知っておきましょう。

1.労働時間を集計する

給与を計算するためには、基本給のデータのほか、タイムカードや勤務表などの勤怠データを収集してください。
給与の支払い対象となる期間における従業員の勤務日数や労働時間をまとめます。

時間外労働や深夜労働がある場合には、割増賃金を計算します。
反対に、働かない時間がある場合には就業規則に基づいて控除してください。

2.総支給額を計算する

企業が従業員に支払う総支給額は、基本給に割増賃金と、各種手当を足して計算します。

3.手当を計算する

企業から支給される手当は、従業員ごとに違います。
住んでいる場所や通勤環境、家族の数といった情報を正確に登録しておくようにしてください。
家族の数や引っ越しなどの情報が更新されていないと、手当を不正に受給してしまったり、受給できなくなってしまったりすることもあります。
ミスがないように変更があれば、早めに対応するようにしてください。

4.控除額を計算する

総支給額が計算できたら、控除額を差し引きます。
控除されるのは、社会保険料と税金です。
社会保険料は、雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料です。

税金は、会社が従業員に代わって納める所得税と住民税で、所得税は毎年公表される「給与所得の源泉徴収税額表」を使って計算します。
住民税の額は、前年の所得に応じて毎年変更されます。
居住地の市町村から発行される控除金額の通知書によって、住民税の額を知ることが可能です。

5.給与明細を作成して支払いの手続きをする

総支給額と控除額がわかれば、差し引きの支給額も計算できます。
給与明細を作成して、従業員への支払い手続きを進めましょう。

また、賃金台帳も作成します。
賃金台帳は、従業員に渡す給与明細の内容を記録する帳簿です。
給与明細は従業員に交付する書類ですが、内容は会社側も把握しておかなければいけません。

賃金台帳として、賃金計算の根拠、根拠に関わる資料を保管しておきます。
給与明細の作成に必要な資料は、その種類によって保管期間が定められています。
3年(改正法施行により、2020年4月1日以降の保存期間は5年)もしくは、7年保管ですが、保管期限の間違いや管理ミスがないようにしてください。
書類を保管期間に応じて分類して、管理できるように社内ルールを作っておきましょう。

従業員の承諾があれば給与明細をWebで交付できる


給与明細の根拠となるのは、単純な数字だけではありません。
給与明細は、従業員の様々な情報を根拠として作成されています。
給与明細は、従業員ごとにその内容も違うため、従業員数が多い場合や人の出入りが増える場合には、計算や管理に手間がかかってしまいます。

そこで、普及が進んでいるのが給与明細のWeb交付です。
給与明細のWeb交付とは、給与支払いに関わる情報や給与明細をデータ化して、従業員に交付するシステムです。

給与明細の電子化は2006年度の税制改正によって認められ、2007年から施行されています。
ただし、所得税法では、従業員が給与明細の電子化に同意していなければならないとしています。

そのため、電子交付の書類の名称、メールやWebなどの具体的な交付方法、ファイル記録方法(PDFなど)などの情報を伝えて、従業員から同意を得なければいけません。
もしも、同意が得られない場合には、その従業員には紙で交付します。

給与明細の作成から交付まですべてWebで実施できれば、労力も時間も大幅にコストカット可能です。

Web給与明細のメリット

Web給与明細を導入する企業も増加しています。
いままで紙で交付した企業でも、もともとの業務フローを大きく変更せずに電子化が可能です。
Web給与明細のメリットを紹介します。

ペーパーレス化が可能

Web給与明細にすることによって、物理的にかかっていたコストを削減できます。
具体的には、印刷費用・紙代・封筒代です。
さらに、紙で渡す場合には、人的なコストもかかっていました。
電子化すれば、従業員がWebで給与明細を確認できるため、人的コストも不要です。

人的ミスを減らして業務効率化できる

給与明細の作成や交付を人が行っていると、人的なミスが起こることもあります。
しかし、Web給与明細であれば、法改正や手当の変更もシステムで自動的に対応可能です。
あらかじめルールや計算を登録しておけば、手計算したり、自分で変更したりする必要がありません。

税制が変わった時にも、自動で対応してくれます。
電子化することによって労力を減らすだけでなく、人的なミスも予防できます。

紛失を防ぎセキュリティ強化できる

紙による給与明細は、紛失のリスクもあります。
給与明細には、給与に関わるデータのほか、従業員個人や家族の情報などが記載されています。
紛失や情報漏洩があれば、セキュリティ面、個人情報保護の観点から大きな問題に発展します。

Web給与明細であれば、紙を手渡しすることもないため、紛失する心配もありません。
また、本人に安全に交付できるので、セキュリティ面のリスクを減らすためにも有効です。

給与明細のWeb化ツールについて詳しくはこちらの記事を
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まとめ

従業員を雇用する時には、どのように給与明細を交付するかも考えます。
給与明細だけでなく、年末調整や源泉徴収などの給与に関わる業務はルールも多いため、煩雑に感じるかもしれません。
Web給与明細のように便利なツールも活用しながら、経営と従業員の双方にメリットがあるやり方を探しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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