KOMPEITO 渡邉 瞬|食の福利厚生でオフィスを「行きたくなる場所」に

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年02月に行われた取材時点のものです。

日本の農業を応援しながらオフィスの人々を健康にする「オフィスで野菜」が人気

オフィス設置型の健康社食「OFFICE DE YASAI (オフィスで野菜)」。社員は1個100円ほどで、新鮮な野菜や健康的な惣菜を食べることができます。

一次産業の販路を拡大し、農業界を変えたいと起業した渡邉さんは、最初はシェアオフィスに入居して、麻布十番で八百屋を経営していたものの、思うように野菜が売れず、売れ残った野菜を自転車で知り合いに買ってもらう日々だったそう。

そこからなぜ今のようなサービスが生まれたのか、などについて、創業手帳代表の大久保がお聞きしました。

渡邉 瞬(わたなべ しゅん)
株式会社KOMPEITO 代表取締役CEO

1983年、神奈川県生まれ。横浜市立大学商学部卒業後、日系コンサルティングファームに入社。製造業の製造・物流部門へのコンサルティングに従事する。そこで農作物の販路の少なさに課題を感じ、2012年に株式会社KOMPEITOを創業。2014年から、”置き型の健康社食”サービス「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」を開始する。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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会社の同期と共同創業


大久保:「オフィスで野菜」というサービスが好調と聞いていますが、どのようなサービスなのですか。

渡邉オフィスに冷蔵庫を置いていただき、そこにサラダやスムージー、フルーツ、惣菜などをお届けしています。従業員の方は1つ100円〜で利用していただくことができ、月額利用料を企業側に負担していただきます。”食の福利厚生”というイメージですね。

その他、冷凍で惣菜などをお届けする「オフィスでごはん」というプランもあります。

大久保:起業に至るまでの経緯を教えていただけますか。

渡邉:大学卒業後、日系のコンサルティングファームに就職して、物流の効率化などメーカーのコンサルティングを担当していました。

3年目に農業分野のコンサルを担当したのが農業と出会うきっかけでした。生まれも育ちも横浜で、それまで農業とは縁がなかったので、農業について必死に勉強しました。

すると生産者さんが売る先に困っているといったような、さまざまな課題が見えてきたんです。自分が手をかけて、売り方を変えることで、業界に変化をもたらすような取り組みができないかという思いが生まれました。食べることは毎日に欠かせない行動ですし、市場規模も大きいのでチャンスがあると感じました。

同じ会社の同期だった仲間と手を組んで、2012年9月に起業しました。

大久保:社会人経験を積んでから起業してよかった点はありますか。

渡邉コンサルティングという仕事を通して、現状分析や物の見方、考え方などのテクニックを叩き込まれたことは今のビジネスに役立っていると思います。「会社員としての当たり前」を学んでいるかどうかというのは大事だと感じますね。

大久保:気心知れた人と起業するメリットはどんなところにありましたか。

渡邉:やはり起業直後は混沌としていたので、意思決定に悩んだときに話し合えることが何よりもよかったですね。同様の思いを抱いて共同創業したので、同じようなパワーを持って一緒に頑張って来られたことは素直によかったと思います。

大久保:経営者がトラブルを乗り越えるためには何が必要なのでしょう。

渡邉:誰しも何らかの要因で精神的に揺れ動くときはあります。自分で適切な意思決定ができない、行動がなかなかできないなと感じたら、なるべく意識をそこに向けず、やるべきことを淡々と行うようにしてきました。

麻布十番の八百屋時代に伊藤羊一さんが太鼓判!で深めた自信。伊藤羊一さんの「オフィスで野菜」創業裏話コメント付き

大久保:「オフィスで野菜」はどのように生まれたのですか。

渡邉:「農業を変えよう!」という思いで起業し、シェアオフィスに入って八百屋を始めたんです。でも売上げはよくなく、売れ残った野菜を夕方知り合いの会社に持って行って買ってもらう日々でした。そんなある日、前職の先輩の紹介でビースタイルの三原社長にお会いする機会があり、「野菜を電車で持って帰るのは大変だから、その場で食べられるようにしたほうがいいよ」というアドバイスをいただきました。

Zアカデミアの学長、伊藤羊一さんにもご紹介いただき、シェアオフィスでお会いする機会もあって、三原さんと伊藤さんのオフィスでテスト販売させていただいたことで、価格なども決まってきました。その時はまだ野菜のカット技術もなく、ミニトマトをパック詰めしたものを持って行ったんです。

当時はまだ模索が続いている時期でしたが、伊藤さんは「これいいじゃん!」と激励してくださって、事業に自信が持てたという経緯がありました。

伊藤羊一

ちょうど、オフィスdeグリコを食いまくって太ってた時「おお!オフィス de YASAIだったら絶対健康にいいよな」と、自らのニーズもあったので推しまくったのです!

その後、その当時働いていたオフィスで、プロトタイプに一緒にチャレンジし続けて、今のサービスの原型が作られていきました。
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2014年にサービスをローンチして、はじめは飛び込み営業や知人の紹介などで50社ほどに導入していただき、PRを続けていたら、いろいろなメディアに取り上げられたことがステップアップの要因になりました。

あまりにも小ロットだとカット工場も利用できないのですが、現在は株主でもあるキユーピー社さんに協力していただくなど、少しずつ体制を整えていきました。

大久保:えっ、創業手帳の記事でも人気の、今はヤフーの伊藤羊一さんですね。色々な所で縁がつながっていますね。

起業家や、起業家が出なくてもビジネスをたくさん見てきた人の直観は重要ですよね。初期の頃に事業に確信が持てない時に、後押ししてくれるのは自信がついて起業も加速しますよね。

その後も伸び続けているサービスだと思いますが、どの時点で大きく伸びたのでしょうか。

渡邉:大きく2回ほどありまして、1回目は2017年に資金調達をして、WEBマーケティングに力を入れるようにしたタイミングです。それまでは紹介や問い合わせがメインでしたが、戦略を立てて広告を出すようにしました。

2回目は2020年のコロナ禍ですね。3月から5月の緊急事態宣言のときは需要が落ち込みましたが、地方の企業は「なかなか完全にリモートワークに移行できない、でも外に食べに行くのは感染リスクがある」という声が多くありました。そこで地方マーケティングを強化したのが効果的でした。

大久保:広告に投資するのも、成長には有効なんですね。コロナ禍でリモートワークが増えたことで、オフィスのあり方が変わってきていると思うのですが、そのあたりはいかがですか。

渡邉:そうですね。経営者の価値観が変わってきていると思います。コロナ以前は週に5日、1日8時間オフィスにいることが当たり前でしたし、働くとオフィスにいるということはイコールに捉えられていたかもしれません。今はそうではなく、オフィスに来たら”いいことが待っている”状況にしたいという価値観の経営者が増えていると思います。

そういった価値観に対して、「オフィスで野菜」が食の部分でお力になれると思っています。人口が減っている中で人材確保が今後より重要になってくる中で、オフィスでの働きやすさを整え、社員の方々が健康的に働くために役立ちたいというのが我々の思いです。

先輩経営者のアドバイスを聞きながら、素直で謙虚に進んでいこう

大久保:農家の方々に対しても、今までとは違う販路を提供していますよね。

渡邉:はい。昔は農産物を作ったら農協にしか売ることができなかった時代がありましたが、今は流通も多様化し、新しいルートも増えました。

生産者さんと直接やりとりをしていますが、我々はカット野菜を扱っていますので、品質に問題はないのに形が整っていないなど、従来なら規格外になるような商品も使用することができます。そういった意味で、フードロスにも貢献できていると思っています。

農業を変えたいという思いで起業をして、まだまだ課題もありますが、生産者さんを応援したいという気持ちでやっています。

大久保:起業する方や経営者の方にメッセージをお願いします。

渡邉先輩経営者の言うことはだいたい当たっているので、そういったアドバイスを聞きながら、素直に謙虚にやっていくことが大事だと思います。

また、自分のやりたいことは曲げないほうがいいですね。シェアオフィス時代、農業なんて絶対うまくいかないだろうと言われていたんです。自分にも家族がいたので、ここでうまくいかなければ会社員に戻ろうと思っていましたが、きっとうまくいくだろうという謎の自信がありました。

素直さと情熱を持って進み続け、ある日降ってくる少しの幸運をつかめば、きっと成功が待っていると信じています。

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(取材協力: 株式会社KOMPEITO 代表取締役CEO 渡邉 瞬
(編集: 創業手帳編集部)



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