起業して初めてのオフィス選び -賃貸オフィス編・照明の巻-

創業手帳

賃貸オフィスの「照明」は業務効率にも大きな影響

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オフィスビルに不可欠でありながら、設置されていることが当たり前すぎてかえって見落としがちなのが照明だ。しかし照明は、ビルの印象はもちろん、オフィス内においては業務効率さえも左右する重要な設備なのである。


照明でガラリと変わるエントランス・共用部の雰囲気

いわゆる良いビルへの入居は、入居する企業の信用力にもつながる。起業から日が浅いベンチャー企業は、自社の評価を高めるためにあらゆる配慮が必要だが、照明はその一手でもあるのだ。

オフィスビルのエントランスや共用部の重要性は別項で述べたとおりだが、その評価ポイントの一つにデザイン性や雰囲気づくりがある。オフィス全体のデザインや質感が重要なのはいうまでもないが、照明でガラリと雰囲気が変わるということも覚えておきたい。

例えば、無機質な蛍光灯で照らされた空間よりも、暖かい色合いの光源を用いた間接照明の方が落ち着いた印象を与える。ビルの性格や入居企業の特性によって適した空間は異なるが、オフィスへのおもてなしは、ビルのエントランスを入った瞬間からはじまるという意識を忘れてはならない。良いオフィスビルに入居しているという評価は、ベンチャー企業にとって大きなプラスになるのである。

賃貸オフィスビル「照明」のチェックリスト1
  • 照明の種類がエントランスの雰囲気とマッチしているか?
  • 照明が切れている箇所はないか?


日本のオフィスは明るすぎる?

日本工業規格による基準(JIS規格)では、事務室の明るさは750ルクス〜1500ルクス程度を推奨している。一般的なオフィスであれば750ルクスもあれば充分な明るさといえ、それ以上の明るさはまず必要ないといっていい。明るすぎるオフィスはかえって目を疲れさせ、集中力を削いで生産性を落とすこともあるのである。

しかし、震災後の省エネ・節電機運から500ルクス程度に抑えているというオフィスでも、暗すぎて実務に支障がでたという話はあまり耳にしない。というのも、国が定めた労働安全衛生規則では、「精密な作業」に必要とされている明るさは300ルクス以上。「普通の作業」に必要な明るさは150ルクス以上とされており、「粗な作業」に至っては70ルクス以上であれば充分とされている。

もっとも300ルクスでは暗く感じる人もいるため、実際には500ルクス程度が目安となるだろう。従来のオフィスは、明るすぎるといって過言ではないのである。

オフィスビルの内見は時間を変えて数回行おう

とはいえ、500ルクスといわれて実際の明るさを想像できる人は少ないだろう。

賃貸オフィス内の照明は基本的に備え付けのため、入居したオフィスが暗いからといって照明器具を勝手に改修することはできない。そこで事前にしっかりと明るさを確認しておきたいが、そのためにも内見は昼間だけでなく、できれば夕方や夜間も行いたい。

夜間の内見に対応していない不動産業者もいるが、昼間はともかく夜は思いのほか暗かったという場合も考えられる。夜間作業の多い創業期のベンチャー企業であれば、特に留意して不動産業者にしっかり依頼したいところだ。

また忘れがちだが、オフィスの光源は室内照明だけではない。西日の差し込み方は夕方でなければわからないし、夜間、窓からオフィス室内に漏れるネオンサインの光に気づけるのは夜間の内見時だけである。窓からの光も一種の照明ということも頭に入れて、オフィスの窓の外もチェックしておこう。

さらにいえば、時間を変えて内見を行うことで意外な発見があることもある。時間帯によってオフィスビルの他の入居者の動きや周辺環境も変化するし、騒がしさに気づくこともある。時間帯を変えた内見は、照明のみならず後悔しない賃貸オフィス選びのための有効な手段なのである。

賃貸オフィスビル「照明」のチェックリスト2
  • 室内の明るさは十分か?
  • 照明器具の数は適切か?
  • 照明器具の位置関係とデスクの配置にギャップはないか?


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照明の省エネはオフィスの省エネ

オフィス内が明るすぎる必要はないのは前述のとおりだが、明るさが同じであれば節電できるほうがメリットは大きい。一般的なオフィス内で使用される電力のうち、照明によるものとされているのは2割強で、仮に照明だけで50%節電できれば全体では1割カットとなる。一般的なビルでは家賃とは別に電気料金を支払うため、その効果はかなりのものだ。

現在では、オフィスの家賃に電気料金が含まれているビルも少なくない。しかしこうしたビルであっても、省エネ対策がされていれば入居する意義は大きい。企業の社会貢献や、いわゆるCSRという観点からも「省エネ」は無意味なことではないし、なにより対外的な評価も期待できるだろう。

具体的には、高効率な照明器具・ライトが使用されているか。照明のエリアが細かく分けられているか、といったポイントに注意して見てみよう。

賃貸オフィスビル「照明」のチェックリスト3
  • LEDなどの高効率照明が設置されているか?
  • 明るさが細かく調節できるか?


省エネに優れたLED

さて高効率の照明器具・ライトといえば、昨今その筆頭に来るのがLEDだろう。最近では価格も下がり、機種にもよるがLEDの寿命は蛍光灯の数十倍、電気料金は白熱電球の数分の一であり、多くのビルでLEDへの交換が進んでいる。しかしLEDが出回りはじめたころはその特性が理解されていなかったこともあり、「以前の蛍光灯と同じ『明るさ』のはずなのに暗くなった」といった声が聞かれることがあった。

実はLEDの「明るさ」は、実蛍光灯や白熱電球のような「ワット(W)」ではなく「ルーメン(lm)」という単位であらわされる。一般的な白熱電球の20ワットは、LEDでは170ルーメンに相当するのだが、ルーメンの値が大きいからといって「明るい」とは限らないのがLEDの難しいところだ。

LEDの「明るさ」は拡散性で判断を

LEDの光はその特性上、直進する性質がある。いわばスポットライトのような光で、そのままではオフィス全体を照らすことができない。要するにルーメンの値が大きいからといっても、照明やライトの形状によっては部屋全体を明るくできるとは限らないのである。

昨今の製品では設計や素材に工夫を加え、光が部屋全体に行き渡るようにした製品がほとんどだが、初期のものは光が拡散されなかったり、LEDの光が直接目に入るつくりになっているものもある。

覆いによって拡散された光であれば問題ないが、LEDの光は強く、直接見ると目を痛めることもある。また製品によっては「ちらつき」があり、これも目の疲れの原因となる。照明やライトをつけてみて、目を刺すような感覚やちらつきを感じたら要注意だ。

内見時に綿密なシミュレーションを

一口に照明といっても、快適なオフィスづくりに応用できる点はまだまだある。例えばオフィス選びの際は、実際にデスクを置く場所や椅子に座った際の目の高さから照明器具を見てみよう。光のあたり具合やまぶしさなど、立った状態で見るのとはまた違った点に気づくはずだ。

照明に関してはこのように、あらゆる角度から細かく見ることが肝心だ。照明の善し悪しは生産性にさえ影響を与えることも考慮にいれて、適切な照明をもったビルを選びたい。

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(監修:オフィス経営コンサルタント 久保純一
(創業手帳編集部)

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