NutmegLabs Japan 中口貴志|観光DXで業界を改革!オンラインでシームレスな旅を実現する予約サイト開設ツール「Nutmeg」で叶える世界観
アナログ主体の観光業界にデジタル化推進!ゲストも事業者も「旅の素晴らしさ」を実感できる新たな世界を構築する
観光業界やレジャー産業において注目される観光DX。業務をデジタル化することで効率化の実現をはじめ、デジタル化で収集されるデータの分析・利活用によるビジネス戦略の再検討や、新たなビジネスモデルの創出といった変革として位置付けられています。
この領域において、大きな期待がもたれているのがNutmegLabs Japanです。
同社は、現地体験向けの予約サイト開設ツール「Nutmeg」を運営。業界や産業に関わる方々を最新のITサービスを通じてサポートし、現地体験に係るカスタマーエクスペリエンスを素晴らしいものにすることを目指しています。
今回はCo-founder・CEOを務める中口さんの起業までの経緯や、観光業界の課題とその解決手法、さらに旅の魅力について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
NutmegLabs Japan株式会社 Co-founder・CEO
ベルトラ株式会社にて新規事業及び事業開発の執行役員。Eチケットプラットフォームに関する新規事業の立ち上げや、大手航空会社や鉄道会社等との大型提携の実現を経て、NutmegLabsを創業。それ以前は大手のIT会社やアパレル会社にて経営企画・事業企画として経営戦略やM&A、事業再生などを担当。公認会計士有資格。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
観光業界の課題に直面。「現場レベルの観光DXを推進したい」と決意して独立
大久保:まずは起業までの経緯からお伺いしたいのですが、中口さんは観光業界でキャリア形成されていらっしゃったんですよね。
中口:旅行における現地ツアーやアクティビティ予約サービスを提供するオンライン旅行会社のベルトラにて、新規事業および事業開発の執行役員を務めていました。大手航空会社や鉄道会社との大型提携の実現など、さまざまな事業を経験しています。
それ以前は、アパレル業界やIT業界で新規事業の立ち上げや既存事業の立て直しに関わっていました。
大久保:観光業界に参画されたのは、もともと旅行が大好きだったことが影響していると伺っています。
中口:これまで年に何回も旅行をしていまして、旅を通して得られる体験の素晴らしさを味わいながら人生を歩んできました。それで自然と「観光業界でいずれは起業したい」と考えるようになったんです。
大久保:独立のご意思があったんですね。起業に至った具体的なきっかけについてお聞かせください。
中口:ベルトラ社でEチケットプラットフォームを立ち上げた際に、観光業界やレジャー産業におけるデジタル化の遅れによるデメリットを痛感したことが大きなきっかけです。
オンライン旅行会社の強みは予約や決済で、WEB上で交通機関や宿泊施設などが手配できることです。ゲストにとって便利なため、一気に普及しました。
ところが、オンラインで予約を済ませても駅の窓口や現地のアトラクションに並ばないといけません。私自身、プライベートで頻繁に旅をしていましたので、長年不便さを感じていました。
「結局窓口に並ばなければならないのであれば、オンラインで予約した意味がない」とあらためて業界の課題を認識したことに加え、ベルトラ社に勤務していた当時に抱くようになった「現場の問題を解決できないだろうか」という想いから「現場レベルの観光DXを推進したい」と決意しました。
大久保:その想いとともに独立されたんですね。
中口:はい。このEチケットプラットフォームプロジェクトを通じて、弊社の共同創業者のAndrewと出会えたのも大きかったです。
彼はマイクロソフト本社で手腕を振るったシニアエンジニアで、非常に優れた才覚と実力の持ち主でした。その開発力に驚かされたことと、観光や遊びの現場をデジタル化すればもっと楽しくなる!と意気投合したことで「これなら行ける!」と決断できたんですね。
こうした経緯で2018年4月23日にNutmegLabs Japanを創業。同時に、サンフランシスコに親会社のNutmegLabsを設立しました。
現地体験事業者のビジネスを成功させるためのプラットフォーム「Nutmeg」
大久保:御社の事業についてお教えください。
中口:弊社では「現地体験をもっと楽しく、もっと豊かに、もっと身近に」をテーマに、業界や産業に関わる方々を最新のITサービスを通じてサポートし、現地体験に係るカスタマーエクスペリエンスを素晴らしいものにすることを目指しています。
弊社のサービスの軸として運営しているのが、観光業界やレジャー産業で現地体験を提供している事業者をサポートする現地体験向け予約サイト開設ツール「Nutmeg」です。
大久保:御社では、現地体験事業者に携わる方々が「楽で幸せになる」ことを第一義的なミッションとして掲げていらっしゃるそうですね。
中口:はい。現地体験事業者の手間を省きながら、ビジネスの成功に直接寄与することが「Nutmeg」の本当の価値だと考えているからです。
私たちが各事業者の体験サービスを支えるプラットフォームを提供することで、事業者自身がゲストに対してより良い体験を提供し、結果として参加したゲストが幸せになるという構図が成り立ちます。
SaaSビジネスの性質としてはBtoBですが、実際にはプラットフォームを通じたゲスト向けの顧客体験を提供しているため、BtoBtoCの要素を持つ独自のサービスとして展開していることも弊社の強みです。
おかげさまで大手企業から現地の家族経営店舗まで、現在300社以上の企業に導入いただいています。
「タビナカ」の課題は世界共通。現地体験領域に特化したサービス展開の理由とは
大久保:御社の事業は、現地体験の領域に特化したサービスを展開されていることも特長ですよね。先ほどもお話しいただきましたが、この領域における課題についてさらに詳しくお聞かせください。
中口:業界用語で「タビナカ」と呼んでいるのですが、このタビナカの課題は世界共通で存在することも観光業界の大きな問題となっています。
たとえばイタリアのバチカン美術館もオンラインで予約可能なのですが、現地でチケット引き換えのために長蛇の列に並ぶ必要があるんですね。
私は昔から、旅の面白みは「旅がスタートしてからが本番だ」との想いで楽しんできました。だからこそ、その過程で並んだり大量の書類にサインをするなど、タビナカで発生する煩わしさを解消することが旅をより有意義で豊かにすると考え、現在も事業を続けています。
ゲストにはもっとシームレスに気持ちよく参加し、旅をさらに充実したものにしていただきたい。こうした理念が、弊社の事業を推進する原動力のひとつです。
大久保:タビナカの課題は世界共通なんですね。デジタル化が進んでいないことで、現場の業務フローが煩雑になるだけでなく、顧客データが取得できないために大きな機会損失を招いているともいえそうです。
中口:おっしゃる通りです。長年アナログが主体となっているのが観光業界やレジャー産業で、現在デジタルチケットを導入しているテーマパークもごくわずかなんですね。
弊社ではこうした現場に対し、観光DXを推進してデジタル管理が行えるよう促し、顧客情報を整理できるように尽力しています。
弊社のサービスを導入いただければ、ゲストのチケット購入から入場がシームレスになるだけでなく、そのゲストが現地でなにを食べたのか?どんなグッズを購入したのか?どのアトラクションに乗ったのか?といった行動履歴まで把握することが可能です。
このように一人ひとりのゲストに紐づいた顧客単価をはじめとするデータが取得できますので、マーケティング戦略や新規アトラクションの建設計画などが立てやすくなります。
一般的に旅行をする際、目的地を決めてから「現地でなにをするか?」を探すという方がほとんどではないでしょうか。ただ、旅行先がどこであったかよりも「なにを体験したか?」のほうが旅の楽しさに直結するんですね。
そこで私たちはゲストの嗜好性をもとにデータ収集を行うことで、本来の世界観を叶える新たなプラットフォームの提供、およびその結果として旅の在り方を変革しながらより豊かな未来の実現を目指しています。
起業家こそ旅をしよう。旅のプロフェッショナルが提唱する旅行の魅力と重要性
大久保:公私ともに旅の醍醐味を熟知する“旅のプロフェッショナル”の中口さんの視点で見た、旅の魅力についてお聞かせいただけますか。
中口:個人的な意見ですが、私は旅を通して「自分の人生観が変わった」と実感しています。
たとえばアメリカのシリコンバレーを旅行したとき、現地でAirbnbやUber Eatsの本社をまわらせてもらったのですが、出会った方々の雰囲気やオーラがまったく違うことに衝撃を受けたんです。
私がこれまで触れたことがない人生観で楽しそうに仕事をしていて、「私たちが世界を変えるんだ!」という意気込みで誰もがものすごく生き生きとしていました。こうした体験は日本にいるだけでは決して得ることができません。
一方、イタリアのフィレンツェを旅した際には、漫画や映画そのものの世界観に圧倒されて感動しました。「こういう土地で暮らしていたら、きっと違う人生だったのかな」と哀愁に浸る経験ができました(笑)。
その場に出かけて体感してみないと、わからないことや得られないものがある。だからこそ私の旅を通した原体験は「自分の人生観が変わる」であり、多くの人に旅をおすすめしている理由でもあります。
大久保:確かにZoomなどのオンラインツールが進化しても、実際に現地に行ってみないと味わえないことはたくさんありますよね。多彩な発想が必要とされる起業家こそ「旅をしよう」ということがいえそうです。
中口:おっしゃる通りです。ぜひ旅をしていただきたいですね。
起業すると、特にスタートアップは日本の起業村に閉じこもってしまう傾向があります。その村内では関係性が良く情報もまわりますが、ぜひ海外の起業家とも積極的に交流の機会を持つことをおすすめしたいです。
私もサンフランシスコ本社を設立した当時はインド人とのコミュニケーションが活発でした。彼らは誰もが非常に優秀かつ交流に対してオープンで、Google本社やアメリカ最大手のシェアオフィスであるWeWorkに勤務されている方も多かったですし、スタートアップ創業者もたくさんいたんですね。彼らのおかげで事業を広げるためのヒントを得ることができたと思っています。
大久保:言われてみると、「起業家はチャレンジしてなんぼ」と掲げながら、日本の村だけで完結している起業家が多いですよね。とはいえ「なかなか海外へ出向く時間が取れない」との悩みを抱える起業家も少なくありません。ぜひアドバイスをお願いします。
中口:海外で開催されているスタートアップイベントに参加してみてはいかがでしょうか。
先日もシンガポールのALL STAR SAAS FUNDがイベントを実施しましたが、こうしたスタートアップイベントには日本国内では決して出会えない方々が集まりますので、足を運んでみるだけでもご自身の事業に好影響を与えてくれる体験ができると思いますよ。
なにも海外駐在や海外ビジネス展開だけが「世界を体感する」というわけではありません。まずは「スタートアップイベントを楽しむ」という気持ちで参加してみることをおすすめします。
観光業界に伝えたい、グローバルで通用する日本の品質の素晴らしさと強み
大久保:最後に、起業家や観光業界に携わる方々に向けてメッセージをいただけますか。
中口:起業してから私が実感しているひとつが「もっと早くに起業しておけば良かった」ということです。それくらい、独立してから初めてわかる楽しさがありました。
試行錯誤しながら会社運営を続けていると、自分がローンチしたサービスが世の中に受け入れられ、広がっていく喜びを味わうことができます。ですから、もし独立を悩んでいるようであれば「まずは起業したほうがいい」とお伝えしたいです。
それから観光業界に携わる方々にお伝えしたいのは「日本の品質の素晴らしさにもっと気づいてほしい。世界中から求められているその強みに自信を持ってほしい」ということです。
日本はサービスレベルも高いですし、きちんとしたおもてなしの作法もあります。その魅力に心酔しているからこそ、外国人観光客がこぞって日本に訪れるんです。特にサービス業に関しては、これまで培ってきたものをそのまま実践し提供するだけでグローバルで通用します。
日本の素晴らしさをグローバルに伝えることができる最前線にいるのが、観光業界に携わる方々です。ぜひ今一度、自信を持って積極的に取り組んでいただきたいと願っています。皆さんが毎日心地よく働けるよう、弊社は今後も全力でバックアップしていきたいです。
(取材協力:
NutmegLabs Japan株式会社 Co-founder・CEO 中口 貴志)
(編集: 創業手帳編集部)