インバウンド再開に向けて事前の対策を検討しておこう!

創業手帳

外国人観光客受け入れ再開が表明された今、インバウンド対策を成功させるための5つのポイントを紹介します


観光目的の訪日旅行(インバウンド)の受け入れについて、岸田総理大臣は6月10日から再開することを表明しました。

また再開に向けて観光庁は、日本の旅行会社による少人数のパッケージツアー形式で、感染防止対策の遵守や陽性者の発生状況、陽性者が出た場合の対応などを検証する実証事業を行っています。

今回の表明により訪日外国人観光客の受け入れが再開され、大きな経済効果がもたらされる可能性があるため、それに備えて企業は適切な準備をしておく必要があります。

そこで今回は訪日観光客受け入れ再開に向けたインバウンド対策のポイントについて、成功事例も交えて解説します。

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インバウンドとは


インバウンドとは、外国人の訪日観光旅行のことです。英語の「Inbound(インバウンド)」には「内向きの」「外から中に入ってくる」といった意味があり、転じて「外国人が日本へ観光にくる」という意味で使われるようになりました。

20世紀の日本ではインバンドはそれほど多くありませんでしたが、21世紀になって目まぐるしく伸長しました。2007年の観光立国推進基本法の施行、翌2008年の観光庁の設置など、国の振興策も幸いして、2015年には訪日外国人旅行者数1,973万人を記録。1970年から45年ぶりに訪日外国人旅行者数が日本人海外旅行者数を上回り、「爆買い」が流行語大賞にノミネートされました。

観光庁の調査では、そのような2015年において、訪日外国人1人あたりの旅行支出額が176,168円、旅行消費額の総計が3兆4,771億円という推計が出ています。2022年5月現在、インバウンドは新型コロナウイルス感染症の影響で下火となっていますが、インバウンドは今後も日本経済や日系企業のビジネスに大きな影響を与えるでしょう。そのため、インバウンドの再開に備えて、インバウンド対策の準備を進めておくことは重要です。

インバウンドの需要


21世紀に入って、インバウンドの需要は堅調な拡大を続けていました。とくに2013年から2019年までは8年連続過去最高を更新し、インバウンド需要は非常に好調でした。


出典:日本政府観光局(JNTO) の訪日外客数データをもとに作成

ところが新型コロナウイルス感染症に対処するための水際対策の影響で訪日観光客数は激減、インバウンドに関連したビジネスは大打撃を受けました。コロナ禍になって以来、インバウンド需要は皆無に等しい状況でしたが、ここに来てようやく事態が好転し始めています。

冒頭でもお伝えした通り、2022年5月に観光庁はインバウンド再開に向けて実証事業を実施。この結果次第では、日本の水際対策が大幅に見直されて入国制限が緩和され、一気にインバウンドが増える可能性も考えられます。

とくに昨今は円安なので、インバウンドの受け入れが再開されれば、訪日外国人旅行者数の数字がある程度回復することは十分に現実的です。事実、「新型コロナウイルス感染症が収束したら日本に行きたいですか?」という質問に対し、中国・台湾・香港・韓国・タイでは「行きたい」が過半数を占めたアンケート結果もあり、アジア圏を中心にインバウンド需要が回復するシナリオが考えられます。

インバウンド対策の成功ポイント5つ


観光庁の実証事業や円安によって、今後はインバウンドの回復が予想されます。コロナ以前からインバウンドに目をつけてきた方もそうでない方も、これを機にインバウンド対策を見直してみましょう。

以下ではインバウンド対策を成功させるポイントを5つ紹介するのでぜひ参考にしてください。

インバウンド対策とは

インバウンド対策とは、訪日した外国人観光客が快適に観光を楽しめるようにさまざまな準備を行うことです。具体的には以下のような取り組みが挙げられます。

  • 海外ではすでに当たり前のキャッシュレス決済に対応する
  • わかりやすい英語の看板や標識を設ける
  • 訪日外国人向けの案内場を作る
  • 手軽に日本の文化や料理などを体験できるサービスを用意する

こうしたインバウンド対策を成功させるには、以下で紹介する5つのポイントを意識するのがおすすめです。

成功ポイント1:ターゲットを明確にしよう

効果的なインバウンド対策を行うには、第一にターゲットを明確にすることが重要です。ターゲットを具体的に定めることで、対策の目的や方向性がはっきりとし、より良い準備がしやすくなります。

インバウンド対策のターゲットはもちろん外国人観光客ですが、中国人向けなのかアメリカ人向けなのか、若者の旅行者を狙うのかファミリー層を狙うのかなどによって、対策の内容は大きく変わってきます。そのため、まずはどのような外国人観光客に向けて準備を行うのかを十分に検討するのがおすすめです。

成功ポイント2:外国人観光客の目線で魅力やウケるポイントを考えよう

インバウンド対策は外国人観光客の目線で行うことが肝心です。日本人にとって良いものが、外国人にとっても良いものかどうかはわからないので注意しましょう。反対に日本人にとっては取るに足らないものでも、外国人にとっては大変魅力的なものに映る場合もあります。

そのため、インバウンド対策を行う際は、外国人にとって魅力的か、外国人にウケるかという観点から検討を重ねるのがおすすめです。外国人の価値観や感覚がわからない場合は、インターネットで口コミを調べたり、何らかの仕方で外国人にアンケートを取ったりして、偏りや先入観のない「外国人目線」を理解するのが良いでしょう。

成功ポイント3:Webコンテンツで魅力や安心・安全を正確に伝えよう

訪日する外国人観光客の多くは、インターネットを活用して情報収集を行うので、商品やサービスを見つけてもらうためにWebコンテンツは必須です。サイトやブログを立ち上げ、外国人に向けて魅力を存分に発信しましょう

Webコンテンツは、多言語対応をはじめ、外国人が活用しやすいような設計にするのがおすすめです。またアフターコロナのインバウンド対策では、感染症対策について明記するなど、安全・安心に関する情報を正確に伝えることも重要になると考えられます。

成功ポイント4:SNSで能動的な情報発信を行おう

サイトやブログなどのWebコンテンツは、外国人が自ら検索をしてはじめて見つけてもらえる受動的な媒体なので、TwitterやInstagram、YouTubeといったSNSで能動的な情報発信を行うことも大切です。WebコンテンツとSNSの両方を十分に駆使することで、より多くの外国人に自社の商品・サービスの魅力や安全性を伝えられます。

なお、インバウンド対策にどのSNSを活用すべきかは、ターゲットとする外国人観光客の性質によって異なります。例えば、アメリカ人に対してはTwitterやInstagramを使った情報発信は有効ですが、中国のネット回線ではそれらにアクセスできないため、中国人には効果的でない可能性も考えられます。

成功ポイント5:国の補助金も積極的に活用しよう

インバウンド対策にはお金がかかるというデメリットがありますが、国の補助金を上手に活用することで資金面の問題は解消される可能性があります。インバウンド対策に使える国の補助金は、例えば、観光庁の「宿泊施設バリアフリー化促進事業」、「宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業」、東京都の「インバウンド対応力強化支援補助金」などです。

ほかにもさまざまな補助金があるので、インバウンド対策にかかる費用が心配な方や、国の補助を受けて大掛かりな準備がしたいとお考えの方などは、使える補助金がないかをリサーチしてみてください。

インバウンド対策をして成功した事例


以下では、インバウンド対策の成功事例を3つ紹介します。これらの成功事例を見て、これから行うインバウンド再開に向けた準備のイメージを深めてみてください。

多言語対応や多様な支払い方法で成功:ドン・キホーテ

訪日外国人観光客から絶大な人気を誇る総合ディスカウントデパート「ドン・キホーテ」は、例えば、多言語対応によって成功を収めています。ドン・キホーテ各店では、店内案内やPOP、店内放送はもちろん、観光マップやWebページに至るまで、英語・中国語・韓国語・タイ語などの多言語対応になっています。

また外国語を話せる店舗スタッフを配置したり、多言語対応のコールセンターを設置したりといった取り組みも実施しており、日本語に明るくない外国人でも安心して利用することが可能です。

加えて、クレジットカードや日本円のほか、中国のデビットカード「銀聯カード」や中国元、台湾ドル、韓国ウォン、米国ドル、ユーロ、タイバーツなどでの多様な支払いに対応していることも、訪日外国人観光客にウケるポイントだといえます。そのほか、ドン・キホーテは以下のようなインバウンド対策を実施しています。

  • 全店舗で免税免許を取得、免税カウンターの設置
  • 取り置きができるウェルカム予約サイトの運用
  • フリーWiFiの導入

こうした準備が功を奏し、コロナ禍でなければ、パッケージツアーでフリータイムになることが多い20時〜24時の時間帯を中心に、ドン・キホーテには多数の外国人観光客が押しかけます。

口コミサイトやSNSの宣伝効果を高めて成功:飲食店「鍋ぞう」

東京・神奈川・埼玉に展開するしゃぶしゃぶ、すき焼き専門店「鍋ぞう」は、渋谷センター街店がトリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本のレストラン」第1位に選ばれるなど、外国人観光客から大人気の飲食店です。鍋ぞうが外国人観光客から絶大な支持を得る理由としては、トリップアドバイザーをはじめ、口コミサイトやSNSでの宣伝効果を高めるインバウンド対策をしたことが挙げられます。

鍋ぞうの各店舗では、スタッフが写真撮影を積極的に手伝う取り組みが行われており、フリーWiFiも設置されているため、訪日観光客が口コミサイトやSNSへ気軽に写真を投稿できる環境です。またトリップアドバイザーなどに投稿されたコメントへこまめに返信を行う対策も実施されているといいます。こうした環境づくりや対策の成果が、トリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本のレストラン」第1位なのです。

そのほか、鍋ぞうでは外国語が話せるスタッフの配置やWebサイト・販促物の多言語化といった多言語対応の取り組みも積極的に行われています。

シンガポール人向け動画で成功:長距離バスのアルピコホールディングス

長野県で長距離バスを運行するアルピコホールディングス株式会社は、シンガポール人の観光客をターゲットにしたPR動画をYouTube動画で公開し、4万回以上の再生回数を記録しています。国土が狭小なシンガポールでは、車や地下鉄での移動は最大1時間であり、シンガポール人は2時間以上の長距離移動を好まないといわれています。そのようなシンガポール人と長距離バス旅行のミスマッチを解消するために、アルピコホールディングスはPR動画を作成・公開しました。

動画では新宿から長野・上高地へ深夜バスで向かった2人のシンガポール人女性観光客を主人公に、長野の自然の美しさを伝えるとともに、シンガポール人が観光目的の第1位に選ぶ「食」の充実ぶりをアピールしています。この動画は、2022年5月時点で46,000回以上再生されているため、この動画を見てアルピコホールディングスの長距離バスを利用したシンガポール人観光客も一定数いるでしょう。

この成功事例は、上述の成功ポイントで言及したターゲットを明確にすることの重要性を示す好例です。「シンガポール人観光客」といったようにターゲットをピンポイントで設定することによって、適切なインバウンド対策の方向性が定めやすくなります。

まとめ

観光庁の実証事業や円安などによって、インバウンド再開が現実的になってきた今、インバウンドの恩恵を最大限受けるために適切な準備を進めておくのがおすすめです。インバウンド対策を考える際は、ターゲットを明確にすることや外国人目線を心がけること、Webコンテンツ・SNSを有効活用することなどを意識しましょう。

またインバウンド対策にかかるコストに不安がある場合は、国の補助金から資金を調達するという手もあります。今からでも遅くないので、この記事をご覧になったことを良い機会として、改めてインバウンド対策について見直してみてください

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(編集:創業手帳編集部)

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