NPO法人に課せられる税金とは?課税・非課税の対象について徹底解説

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NPO法人を運営するなら税金の知識を身につけよう


法人の運営では、様々な税金が発生します。それは、社会貢献活動に取り組むNPO法人も例外ではありません。
NPO法人を運営するのであれば、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておく必要があります。

この記事では、NPO法人にかかる税金や免税処置についてわかりやすく解説します。
NPO法人の立ち上げにあたり税金に関する基本知識を身につけたい方は、ぜひ参考にしてください。

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NPO法人とは?


まずはNPO法人とはどのような法人を意味するのか、基本的な知識からご紹介します。

NPO法人が行う活動

NPOとは「Non-Profit Organization」の略で、1998年12月に社会貢献活動の発展を目的に施行された「特定非営利活動法」により確立された法人です。
NPO法人で行われる活動は、約20種類の特定非営利活動に限られています。また、特定非営利活動は、不特定多数の利益につながる分野に定められています。
以下は代表的な活動内容です。

  • 街づくり・村おこしの推進
  • 観光の推進
  • 芸術、学術、スポーツなど文化活動の復興
  • 環境保全
  • 災害支援
  • 人権擁護・平和活動
  • 職業訓練・雇用機会の拡充 など

NPO法人は特定非営利活動を行うことが原則ですが、主事業に支障を及ぼさない程度であれば、運営費や資金の確保を目的にほかの事業も行えます。

NPO法人の種類

NPO法人は、以下の4種類に分けられます。

  • 任意団体のNPO
  • NPO法人
  • 認定NPO法人
  • 特例認定NPO法人

任意団体は、法人格を持たない社団・財団のことです。団体として意思決定を行ったもとで活動を行っています。
任意団体の場合、主体となるNPO活動はボランティアに限られます。

名称に「認定」や「特例認定」が付いている場合は、国の審査を受けて税制上の優遇処置を受けているNPO法人です。
逆に名称に認定が付いていない場合は、国からの認定を受けていないNPO法人になります。
任意団体を除くNPO法人は法人格を持ち、非営利活動での収益事業が認められています。

認定と特例認定の主な違いは、申請できる対象です。
認定は設立から1年以上のすべてのNPO法人、特例認定は設立から1年以上かつ法人設立日から5年以内のNPO法人が申請できます。
ほかにも、認定を受けるための要件や有効期限、税制優遇、更新の有無などに細かい違いがあります。

特例認定は一度きりの申請となり、税制控除に加えてPST(パブリックサポートテスト)が免除される特徴があります。
有効期限は3年間となり更新はできないので、認定NPO法人としての申請が必要です。

NOP法人の主な資金源

NPO法人が活動するための資金源は、大きく4つに分けられます。

  • 会費や寄付金など事業への期待に対する資金
  • 助成金・補助金・給付金など返済不要の資金
  • 委託された事業の報酬(事業収入)
  • 借入れ・投資・預金などの資産運用

NPO法人では、非営利活動の中で資金を得ることになります。事業を通して得た余剰収益は、次回の事業資金に充てることが可能です。
さらに、寄付金制度や減税措置の法整備が行われています。

助成金・補助金など公的機関や民間団体から援助金を受ける場合は、注意が必要です。
援助金を受けるにあたり用途の報告義務や厳しい申請要件・審査が用意されており、会計検査が行われることもあります。

NPO法人にかかる税金とは?


非営利活動を行うNPO法人でも、活動状況によっては税金の納税が必要です。どのような税金が発生するのかご紹介します。

収益事業には法人税が課税される

NPO法人が非営利で行う事業に関しては、法人税や事業税などは発生しません。ただし、収益事業を行っている場合は、法人税が課せられます。
収益事業による課税所得の税率は、利益追求型の中小法人と同様、年間800万円まで15%です。

収益事業の課税所得が赤字となった場合、法人税は発生しませんが申告をする必要があります。
収益事業をはじめた際には、税務署に「収益事業開始届出」を提出し、さらに都税事務所や市町村にも届け出てください。

また、税務署に青色申告の承認申請を行っておくと、最大10年間は赤字の繰り越しが可能となります。
収益事業を行う際は、開始届出と一緒に青色申告の承認申請も行うと、手続きの手間を省けるのでおすすめです。

法人住民税には減免措置がある

法人住民税は、法人の事務所・事業所などがある都道府県や市町村に支払う地方税です。
法人を運営しているだけで課税義務が生じる税金であるため、収益事業を行っていない場合でも納税しなければなりません。

NPO法人も、設立時に都税事務所や市町村に法人の設立・設置の届け出を提出する必要があります。そのため、法人住民税の課税対象となります。

ただし、自治体の多くは収益事業を行わない場合は、法人住民税の減税措置を用意していることが多いです。
減税を受けるためには、減税申請書の提出が必要となる場合があります。減税措置の有無や手続きについては、事務所・事業所を置く自治体に確認してください。

課税取引があれば消費税・地方消費税の納税義務がある

消費税は、商品の購入やサービスを利用する消費者が負担する税金です。
販売価格に上乗せされており、事業者は預かった消費税と支払った消費税の差額を納税しなければなりません。

NPO法人の場合、消費税の課税取引が行われていれば消費税の納税が必要です。
ただし、消費税には免税措置があります。2年前の課税売上が1,000万円以下の場合は、消費税は免税されます。

課税売上が1,000万円を超える場合は税務署に各種届け出が必要となるので、税務署や税理士に必要な届け出を確認しておくと安心です。

印紙税や登録免許税は一部非課税になる

本来、金銭や有価証券の受け取りを証明する領収書には、収入印紙を貼り付けなければなりません。
しかし、NPO法人が発行する領収書は、印紙の貼り付けは不要です。収益事業に関する領収書の発行も同様となります。
ただし、NPO法人が締結する契約書に関しては、免除の規定がないので印紙の貼り付けが必要になります。

また、開設する際の法人登記では、登録免許税は課せられません。その一方で、NPO法人が取得する不動産の登記には登録免許税が課せられます。

相続税・贈与税は原則非課税だが例外あり

相続税や贈与税は、個人から個人に財産を譲る際、受け取った側が支払う税金です。
そのため、個人ではないNPO法人が遺贈や贈与を受けた場合、原則相続税・贈与税は発生しません。

ただし、例外もあります。
贈与を受けたNPO法人が財産を贈った人やその親族に足して経済的利益を与えたなど、特別な事情があれば贈った人の税負担を不当に減少させたとみなされます。
そのため、相続税・贈与税を課せられる可能性が高いです。

固定資産の購入を目的に補助金や助成金、寄付金を受けた場合は、相続税や贈与税は発生しません。

NPO法人で法人税が発生する収益事業と非収益事業の違い


NPO法人では一定の収益事業を行うことができ、その事業で得た所得に法人税が課せられます。
具体的にどのような事業が収益事業に該当するのか、非収益事業との違いについてご紹介します。

収益事業とは

収益事業は、以下3つの要件すべてに該当する事業を指します。

1.政令で定められている34業種
2.事業を継続的に行っている
3.事業場を設けている

それでは、各要件の詳細をご紹介します。

1.政令で定められている34業種

収益事業と認められる対象事業は、政令で下記の34業種に定められています。

1.物販販売業 10請負業 19.仲立行 28.遊覧所業
2.不動産販売業 11.印刷業 20.問屋業 29.医療保健業
3.金銭貸付業 12.出版業 21.鉱業 30.技芸教授業
4.物品貸付業 13.写真業 22.土石採取業 31.駐車場業
5.不動産貸付業 14.席貸業 23.浴場業 32.信用保証業
6.製造業 15.旅館業 24.理容業 33.無体財産権提供業
7.通信業 16.料理飲食業 25.美容業 34労働者派遣業
8.運送業 17.周旋業 26.興行業
9.倉庫業 18.代理業 27.遊技所業

NPO法人の場合、本来の目的のために取り組む事業と、その活動に使う資金を得るためのその他事業に分けられます。
法人税法で定義される収益事業は、NPO法人の目的とは無関係です。
公益事業であっても、上記の事業を行っていている上でほかの要件に当てはまっていれば法人税の課税対象となります。

2.事業を継続的に行っている

収益事業は、上記の34業種を継続的に行っていることも要件のひとつです。「継続的に事業を行っている」という状況は、各事業年度の全期間で行われていることを指します。

その他に事業の性質上、全体的に継続性があると認められた場合も要件を満たしたことになります。
準備時間が長期にわたる事業、定期的・不定期的に反復して実施される事業に関しては、継続的に行われている事業とみなされるでしょう。

例えば、バザーは政令が定める事業では物品販売業に該当します。
年に数回実施されている程度であれば、継続的に行われている事業とは認められない可能性が高いです。
しかし、毎週や毎月など事業年度内で長期かつ多数回実施されている場合は、継続的に行われている事業と認められます。

3.事業場を設けている

収益事業を行う事業場があることも要件です。事業場とは常設の店舗や事務所のことです。臨時で設置されるもの、既存設備を利用した事業活動も事業場に該当します。

事業場は、一般的に事業を行うための物的施設を指しますが、移動式の店舗・事務所も事業場があるとみなされる可能性があります。

非収益事業に該当するケース

現在は新しい形のビジネスが次々誕生し多様化していることから、収益・非収益の区別が曖昧になっています。
34業種に該当していても、一部の事業は収益事業から外れる可能性があるので注意してください。

例えば、障害者や高齢者などが事業に従事する者の半分以上を占め、同時にその事業が生活の保護に寄与していると認められた場合は、収益事業から外されます。
ほかにも、特定の目的を達成するためにクラウドファンディングを実施する場合、出資者にサービスや物品をリターンする購入型であれば、対価性があるので収益事業です。
しかし、リターンがほぼない寄付型の場合、NPO法人の目的に合うクラウドファンディングなら非収益事業となります。

収益・非収益の基準は税務署によって異なる場合もあるため、税務署や税理士に相談して、どこまで収益事業となるのか確認をとることをおすすめします。

NPO法人の経理を適切に行うには


NPO法人にも様々な税金が発生する可能性があるので、経理は適切に行い忘れず申告や納税する必要があります。
ここからは、NPO法人で経理を適切に行うためのアドバイスをご紹介します。

NPO法人向けの会計ソフトを活用する

NPO法人の会計では、収益事業とそれ以外を区分した損益計算を行う必要があります。
また、株式会社の決算レポートでは賃借対照表と損益清算書が中心となりますが、NPO法人では毎年活動計算書や財産目録といった書類提出が求められます。
決算報告書の形式も、営利活動を行う法人とは違うので注意が必要です。

このような会計処理は、一般企業向けの会計ソフトで対応するのは困難で、別途に提出書類を作成しなければならない手間が生じます。
そのため、NPO法人専門の会計ソフトの導入がおすすめです。

NPO法人の税金や会計に詳しい税理士に依頼する

税金や会計に関する知識や技術がほとんどない、事業に専念したい場合は税理士に事務業務を依頼するのがおすすめです。
公益性の高いNPO法人では、透明性の高い会計を行わなければなりません。しかし、透明性の高い会計を知識・技術がない素人が行うのは難しいものです。

一方、税金や会計に詳しい税理士であれば、安心して税務・会計業務を任せられます。
煩わしい事務業務を任せられれば、社会貢献のために事業に集中できることもメリットです。また、資金調達や節税に関するアドバイスを受けられる可能性もあります。

税理士によって得意分野や実績が異なります。そのため、NPO法人の会計に詳しく、依頼の実績が多い税理士に相談・依頼することも大切です。

まとめ

非営利活動を行うNPO法人でも、法人を設立した時点で法人住民税が発生します。また、収益事業を行っている場合と所得次第では法人税や消費税もかかります。
NPO法人の設立・運営では、どのような税金がかかるのか理解し、正しく会計を行うことが大切です。
税務・会計業務を行うのが難しい時は、税理士に相談することをおすすめします。

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