NPO法人が利用できる補助金とは?種類や受ける際の注意点を解説
NPO法人にとって補助金は貴重な資金調達方法
補助金は企業にとって貴重な資金調達方法のひとつです。しかし、中にはNPO法人が利用できるものもあることをご存知でしょうか。
この記事では、NPO法人も対象になる補助金をご紹介するほか、NPO法人が補助金を利用する際に注意しなければならない点について解説します。
補助金はうまく活用すれば資金繰りを改善し、活動の幅を広げることが可能です。資金繰りに悩んでいるNPO法人は、ぜひ最後までチェックしてください。
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この記事の目次
NPO法人も対象になる補助金まとめ
実際にNPO法人も活用できる補助金にはどのようなものがあるのか。ここでは、NPO法人も対象になる補助金をご紹介します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、生産性向上に関わる革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセス改善のための設備投資の支援を目的とした中小企業向けの補助金です。
正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。
NPO法人の場合、提出書類や補助率の算出方法が通常の法人とは異なるほか、本補助金を申請するには、基本要件や申請枠ごとの要件を満たす必要があります。
しかし、補助金受取までの流れはほとんど同じで、採択されれば、補助金を活用した事業拡大や業務プロセスの改善などをすることが可能です。
要件
NPO法人がものづくり補助金を申請するには、申請者すべてが満たすべき要件に加え、NPO法人ならではの要件を満たす必要があります。
- 【申請者が満たすべき要件】
-
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
- 事業ない最低賃金を毎年、地域別最低賃金よりも+30円以上の水準にする
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
上記の要件すべてを満たす3~5年の事業計画を策定するほか、申請枠ごとの要件を満たす必要があります。
- 【NPO法人が満たすべき要件】
-
- 従業員数が300人以下
- 法人税上の収益事業を行っている
- 補助金の事業にかかる経営力向上計画の認定を受けている
- 認定特定非営利活動法人ではない
補助上限額
ものづくり補助金は、申請枠や従業員数によって補助上限が異なります。また、NPO法人の場合、補助率の算出方法も違います。
すでに申請締め切りは終了していますが、2024年に行われた18次では、従業員が20人以下のNPO法人の場合、ものづくり補助金一般枠の通常枠、グローバル市場開拓枠の補助金は、1/2から2/3へ増額しました。
経費の金額は同じでも、枠によっては補助金の交付額が増える可能性があります。
「事業に使用した経費×補助率」で計算し、枠ごとに定められた上限枠まで支給を受けられます。
最新の情報を知りたい方は、ものづくり補助金の公式ホームページをご確認ください。
申請の流れ
ものづくり補助金のスケジュールは、ものづくり補助金の公式ホームページから確認できます。
ものづくり補助金は通年で公募しており、2024年はすでに17次・18次の募集が終了しています。
現時点で19次についての詳細は発表されていないため、気になる方はこまめにチェックしてください。
申請時の流れは以下のとおりです。
1.提出書類を準備する
2.GビズIDを取得
3.申請受付
4.審査(書面審査と面接)
5.補助金交付候補者決定
6.交付申請・決定
7.補助事業の実施
8.確定検査を行い、交付額を決定
9.補助金の請求後、支払い
10.毎年4月に事業化状況報告
ものづくり補助金の申請は、すべて電子申請システムを通じて行うため、「GビズIDラインアカウント」を取得する必要があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の販路開拓や業務効率化の取組みを支援するための補助金です。
本補助金は商工会議所が行っているものであり、中小企業をはじめ、個人事業主、一部のNPO法人が利用することが可能です。
なお、小規模事業者持続者補助金には複数の申請枠があり、通常枠以外は特別枠と呼ばれています。
特別枠は、通常枠の取組みに加え、それぞれ独自に定められた要件を満たすと、上限額が増額します。
要件
小規模事業者持続化補助金は、NPO法人でも利用することが可能です。ただし、すべてのNPOが申請できるわけでなく、以下の要件を満たしている必要があります。
- 【NPO法人が満たすべき要件】
-
- NPO法人である
- 法人税法上の収益事業を行っている
- 認定特定非営利活動法人ではない
- 従業員数が20名以下である
- 【申請者が満たすべき要件】
-
- 資本金が5億円以上の法人に100%の株式を保有されていない
- 直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていない
- 一般枠において「卒業枠」で採択を受け、補助事業を実施した事業者ではない
補助上限額
小規模事業者持続化補助金には、5つの枠があり、それぞれ補助率・補助額が異なるほか、申請できるのはひとつの枠のみです。
類型 | 補助率 | 補助上限 | |
通常枠 | 2/3 | 50万円 | |
特別枠 | 賃金引上げ枠 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 200万円 |
卒業枠 | 2/3 | 200万円 | |
後継者支援枠 | 2/3 | 200万円 | |
創業枠 | 2/3 | 200万円 |
インボイス特例の要件を満たした場合、補助上限率に50万円の上乗せを受けられます。
申請の流れ
小規模事業者持続化補助金を申請するには、「GビズIDプライムアカウント」の登録が必要です。申請時の流れは以下のとおりです。
1.提出書類を準備する
2.GビズIDを取得
3.電子または郵送で申請
4.審査
5.採択・交付者決定
6.補助事業の実施
7.実績報告書を提出する
8.確定検査を行い、補助金額の確定
9.補助金の請求後、入金
10.事業結果報告
小規模事業者持続化補助金は電子または郵送で申請することが可能です。
ただし、郵送で申請した場合、減点調整の対象となってしまうため、できるだけ電子申請を行うことをおすすめします。
また、申請時に必要な書類は、事業者の申請内容によって異なります。
商工会・商工会議所が発行する書類も必要となるため、スケジュールに余裕を持って準備することが大切です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するべく、中小企業等の事業再構築の支援を目的に行われる補助金です。
本補助金は、補助上限額も大きく、建物費や機械装置・システム構築費、専門家経費や広告宣伝・販売促進費などの幅広い経費に活用することが可能です。
なお、成長分野進出枠、コロナ回復加速化枠、サプライチェーン強靭化枠の3つの枠があり、それぞれ対象や補助上限額、補助率が異なります。
要件
事業再構築補助金では、事業類型ごとの補助対象要件に加え、申請者すべてが満たさなければならない全枠共通の必須要件を定めています。
- 【申請者が満たすべき要件】
-
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当している
- 事業計画を金融機関等や認定革新等支援機関と策定し、確認を受けている
- 補助事業終了後3~5年の付加価値額の年平均成長率3~5%以上増加、あるいは従業員ひとりあたりの付加価値額の年平均成長率3~5%以上増加
- 【各応募枠に定められた要件】
-
- 成長枠:新規事業が拡大市場に属している
- グリーン枠:グリーン成長戦略の課題解決に資する取組みを行っている
- 産業構造転換枠:既存事業が縮小市場に属している
- 物価高騰対策・回復再生応援枠:原油価格や物価高騰の影響により売上高が大幅に減少している
補助上限額
事業再構築補助金では、中小企業と中堅企業で補助上限額や補助率が変わります。なお、中小企業と中堅企業の範囲は以下のとおりです。
-
- 中小企業:中小企業基本法と同様
- 中堅企業:資本金10億円未満の企業
類型 | 補助上限額 | 補助率 | |
成長分野進出枠 | 通常類型 | 3,000万円 | 中小:1/2 中堅:1/3 |
GX進出類型 | 中小:5,000万円 中堅:1億円 |
中小:1/2 中堅:1/3 |
|
コロナ回復加速化枠 | 通常類型 | 2,000万円 | 中小:2/3 中堅:1/2 |
最低賃金類型 | 1,500万円 | 中小:3/4 中堅:2/3 |
|
サプライチェーン強靭化枠 | 3億円(※5億円) ※建物費を含む場合 |
中小:1/2 中堅:1/3 |
短期に大幅な賃上げを行う場合、補助率や補助上限額はさらに増額されます。
申請の流れ
NPO法人が事業再構築補助金を受け取るための流れを解説します。
1.事業再構築支援機関に相談
2.提出書類を準備
3.申請書を提出する
4.審査・決定
5.補助金を活用した成果や課題を報告
NPO法人が事業再構築補助金を申請する場合、事前にNPO法人の所在する都道府県にある事業再構築支援機関に相談し、補助金の申請資格や申請手続きについて確認する必要があります。
その際、補助金額や支給条件なども確認しておくと安心です。
提出する申請書類は、申請書のほか事業計画書や財務諸表などが必要です。必要な書類を揃えたら、事業再構築支援機関に提出してください。
申請書を提出すると、事業再構築支援機関による審査が行われ、合格した場合、補助金が支給されます。
なお、支給後は、何に活用したのか、活用した成果や課題などを報告書にまとめ、事務局に提出する必要があります。
地域ごとにNPO法人が受けられる補助金もある
補助金は、国や大規模な団体が行っている全国規模のものばかりではなく、地方公共団体や公益社団法人が実施している地域が限定されているものも数多くあります。
以下は、地域ごとに受けられる補助金のご紹介です。
ホームページ作成費補助金交付事業(葛飾区)
葛飾区内にある中小企業が業績向上を目指し、製品や技術等のPR手段としてホームページを作成する場合、かかる経費の一部を助成する補助金です。
葛飾区が実施しており、補助額は補助対象経費に1/2を乗じて得た額、補助上限は最大10万円です。
個人事業主や中小企業のほか、NPO法人も対象です。葛飾区に所在がある方は、ぜひホームページをチェックしてください。
ICT等導入支援事業(江東区)
業務効率化や合理化のため、ITツールなどを導入する江東区内の中小企業に対し、導入の相談支援や導入経費の一部を補助する制度です。
本補助金では、クラウドサービスやサブスクリプション型を含むソフトウェアをはじめ、IoT機器やキャッシュレス端末機器、テレワーク関連機器の導入の導入をサポートします。
ただし、すでに導入されているものの改修や増設は、補助対象外となります。
本制度はNPO法人も申請でき、補助率及び上限額は対象経費の1/2、上限50万円です。
江東区内に主たる事業所がある方は、ぜひ江東区のホームページをチェックしてみてください。
2024 年度障がい者支援団体への助成(タチバナ財団)
障害者支援を行うNPO法人や公益法人、社会福祉法人への助成金交付事業です。
本制度では、3年以上の活動実績があり、1都10県(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・山梨県・長野県・静岡県)にある団体に対し、上限30万円の補助を行っています。
障害者支援を行っており、該当地域に活動を実施する施設、または拠点のある団体は、タチバナ財団のホームページをチェックしてみてください。
NPO法人が資金調達で補助金を利用する際の注意点
補助金は、NPO法人にとっても有効な資金調達方法のひとつですが、利用する際は注意しなければならない点があるのでご紹介します。
必ず受給できるとは限らない
補助金は申請したからといって必ず受給できるわけではありません。
補助金を申請するには、対象や募集要項などの条件を満たしていることに加え、実施団体による審査に通過することが必要です。
審査の内容は各補助金制度によって異なりますが、中には書面審査のほか、口頭審査が行われることもあります。
また、審査基準も各補助金制度によって違うため、「Aの補助金は通ったのに、Bの補助金は通らなかった」ということも起こり得ます。
事務作業の負担が増える
補助金を申請する場合、事業計画書や財務諸表など、法人の経営に関する書類の提出を求められることがほとんどです。
また、補助金によっては電子申請用のアカウントを作成したり、経営力向上計画の認定を受けたりする必要があります。
これらは、補助金の要件に該当していることを証明するためにも必要な作業ですが、申請するには膨大な書類を用意しなければならないため、事務作業の負担は大幅に増えてしまいます。
税制上の取り扱いに気を付ける
補助金は事業収入ではないため、税金はかからないと考えるのは間違いです。
すべてが課税対象ではないものの、税金がかかるものもあります。以下では、各種税金の取扱いについてご紹介します。
法人税
補助金は、事業活動によって得た収入ではないとの考えから、原則として収益事業には該当せず、法人税も課税されません。
しかし、補助金の中には、特定の事業を行うために、経費の一定割合を支給するものがあります。
このような場合、行う事業が収益事業に該当するのであれば、法人税の課税対象となります。
反対に、収益事業に該当しないのであれば、課税対象にならないため、補助金を受け取っても法人税を支払う必要はありません。
消費税
補助金は、消費税が課されることはありません。これは、補助金は消費税法上、課税対象外となるからです。
しかし、NPO法人は、一般的な企業とは違い、税法上は「公益法人等」に該当します。そのため、消費税は特定収入を加味した上で納税額を計算しなくてはいけません。
特定収入とは、補助金や助成金のほか、会費や寄付金などの収入のことです。
割合が5%を超える場合、仕入額控除に制限が生じるため、消費税の計算に影響を与えることがあります。
NPO法人でも利用できる補助金で資金調達をしよう
NPO法人にとって、補助金は貴重な資金調達方法のひとつです。
しかし、NPO法人は一般的な企業とは異なるため、中には上限額や補助率が違ったり、そもそも補助金の対象外だったりすることもあります。
補助金の利用を検討している方は、NPO法人も対象かどうかはもちろん、要件をすべて満たしているか、しっかり確認することが大切です。
創業手帳(冊子版)では、NPO法人にとって役立つ情報をはじめ、補助金や助成金に関する情報も幅広く取り扱っています。資金調達に関連する情報も充実しているので、興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
(編集:創業手帳編集部)