兼業でも農業はできる?兼業農家の始め方決定版やメリット・デメリットを紹介
副業として農業を始めるための方法を解説。
近年、副業として農家を始める兼業農家が認知されています。
兼業農家であれば、利益が安定しなくても本業があるので、すぐに生活に困ることはありません。
また、農業に興味がある人が小規模からスタートする時にも兼業が適しています。
兼業農家のメリット・デメリットや、どのように農業を始めればいいかについてまとめました。
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この記事の目次
兼業でも農業はできる?
農業を営むと聞いて、多くの人は本業としての農家をイメージするでしょう。しかし、農業は、本業としてだけでなく副業や兼業としても取り組むことが可能です。
ここでは、兼業で農家を営む人の実態を紹介しています。
兼業農家とは
農林水産省の定義では、「農業を営む」とは、営利もしくは自家消費のために耕種や養畜もしくは自己生産の農産物を原料とした加工を行うことです。
農家とは経営耕地面積が10a以上の農業を営む世帯または、耕地面積が10a未満であっても、調査期日前1年間において農産物販売金額が15万円以上あった世帯のことです。
農家の中でも区分があり、経営耕地面積が30a以上、または調査期日前1年間における農産物販売金額が50万円以上の農家が販売農家と呼ばれます。
一方、経営耕地面積が30a未満、かつ調査期日前1年間における農産物販売金額が50万円未満の農家を自給的農家と呼びます。
農林水産業の定義では、兼業農家は販売農家に該当し、主業農家と準主業農家、副業的農家や兼業農家などは販売農家です。
副業的農家は、調査期日前1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいない農家を指し、兼業農家は世帯員の中に兼業従事者が1人以上いる農家です。
兼業従事者とは、1年間で30日以上他に雇用されて仕事に従事した者、もしくは農業以外に自営業に従事した者のことをいいます。
第1種兼業農家は、農業所得を主にする兼業農家、第2種兼業農家は農業所得を従とする兼業農家を指します。
それぞれ所得や規模、呼び方に違いはあるものの、本業とは別に農家をする人は、一般に兼業農家と考えてください。
兼業農家の年収はいくら?
農家になるにあたって、まず気になるのは年収かもしれません。2020年の農林業センサスの統計によると、副業的経営体で最も多かったのが販売50万円未満の農家と出ています。
農家の大部分は50万円未満~300万円の販売額です。経費を7割として計算するとおおよそ15万円未満~90万円ほどと考えられます。
農業を始めるためにどれだけの費用がかかるのか、黒字にするためには売上がどれだけ必要なのかを計算してみてください。
兼業農家はどのように働いている?
兼業で農家をしている人の働き方は多くの形があります。
例えば、週末や休日を農業に充てる働き方や家庭菜園のように自宅で農作物を育てる働き方のほか、アルバイトやパートとして農家を始める人もいます。
2020年の農業センサスによると、準主業的経営体、副業的経営体の農業従事日数で最も多かったのは年間に1~29日という回答でした。
従事日数にばらつきはありますが、月に数日兼業農家として働くことを多くの人が選択していることがわかります。
農業従事日数は選択する作物によっても変わるため、作物を決める際にはどのように働きたいかもイメージしておくことをおすすめします。
兼業農家を始める方法
どの程度の規模でスタートしたいのか、自己資金がどれだけあるかによって適した兼業農家の始め方は異なります。
以下では始め方を紹介しているので、適した方法を探してみてください。
自分の農地でスタートする
すでに自分で農地を保有している場合であれば、すぐにでも農業を始められます。親から相続していたり、農地を購入したりするなど、入手経路は様々です。
ただし、ただ農地だけを受け継いだのか、または農地とともに農業機器や設備、販売ルートまで引き継いだのかによって始めるための準備がまったく異なります。
放置された農地だけの場合には、農地を耕すところから始めて環境を整えなければいけません。
農業の技術やノウハウがまったくのゼロからスタートするのは大変なことです。
国や自治体で農業のスキルを教える研修や学校も用意されているので、利用を検討してみてください。
農業機械や設備を準備する資金が必要であれば、国や地方自治体の補助金制度も調べてみることも必要です。
シェア畑や市民農園から始める
自分で農地を用意するためには、土地探しや資金準備も必要です。
良い土地が見つからない場合や、資金を準備できない場合には、土地を借りて農業を始めてみてください。
月額料金や年額料金を支払って農地をレンタルできる市民農園は、手始めに作物を育ててみたい人にも適しています。
市民農園の中には農機具を貸してくれるところもあり、必要最低限の準備で農業を始められます。
シェア畑は農地を共同利用する畑で、高齢化などで使われなくなった畑の有効利用を目的に考案されました。月額料金を支払って農地を借りるシステムです。
農業についてのサポート設けられるので、農業の技術を学びたい場合にも適しています。
地主から借りる
自分で農地を用意できない場合には、土地を地主から借りる方法があります。
ただし、農地を借りるためには、一定の条件を満たして農業委員会から許可を得なければいけません。
条件は以下のものです。
①農地のすべてを効率的に利用して農業経営を行う
②農作業に常時従事する(年間150日以上)
③周辺の農地利用に悪影響を与えない
上記の条件をすべて満たした上で農業委員会に許可を得ます。しかし、兼業農家や副業の農家では上記の条件をクリアするのは困難でしょう。
兼業から本業にステップアップする時には、地主から借りることも検討してください。
農家アルバイトから始める
農業を始めるための農機具や土地、知識や技術がない場合には、農業アルバイトからスタートしてみてください。
農業を本業としている人や農業関連の会社で働くことによって、お金を稼ぎながら農業の知識を実戦で身につけられます。
農業をどのように始めればいいかわからない人や、作物を決めていない人は、実際に農業を手伝って経験値を積み上げることが必要です。
いずれ農業を始めるための資金作りと知識習得の両方が叶います。
補助金を活用する
農業を始めるための資金が乏しい場合には、補助金制度の利用を検討してください。
就農準備資金・経営開始資金は次世代を担う農業者となることを目指す49歳以下の者に対して、就農準備段階、早期の経営確立を支援する資金を交付する制度です。
就農準備資金は、農業大学校や先進農家などで研修を受ける場合に、研修期間中月額12.5万円(年間最大150万円)で最長2年間支給されます。
経営開始資金は、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円(年間150万円)を交付する制度です。
要件の確認もあるので、申請書を作成する前に都道府県の担当窓口に問い合わせてみてください。
兼業農家の販売ルート
農業と聞くと作物を育てて収穫するまでを思い浮かべることが多いでしょう。しかし、作物を育ててお金にするためには販売しなければいけません。
どのように兼業農家が販売ルートを用意すればいいのか紹介します。
直売所
人通りがある場所や道の駅など、野菜の直売所は様々な場所にあります。
直売所は野菜を直接販売する場所で、少量から販売できる点がメリットです。兼業農家で大量生産が難しい場合には直売所が適しています。
直売所は、自分で作物に価格を設定して販売できます。販売する時期やかかった経費を考慮して自分で値付けを行う仕組みです。
ある程度野菜価格の相場を考えて売れる価格を設定する経験は、より大きな規模で野菜を販売する時にも役立ちます。
ただし、直売所の中には利用料として一定額もしくは販売価格の一部を支払うケースもあります。作物が売れず収益化できないリスクも考えておいてください。
JA(農協)
JA(農協)は育てた作物を一定価格で買い取ってくれます。すぐに作物が売れるため、収益化が早い点がメリット。安定した売上が欲しい人に適しています。
ただし、JA(農協)は形や大きさといった作物の規格に厳しいため、せっかく作った作物も買い取ってもらえないことがあります
また、買取価格を自由に決めることはできません。
JA(農協)は全国に支店があり、農業を始める人に向けて相談や支援を提供しています。作物の販売についても事前に話を聞いておくことをおすすめします。
インターネット販売
育てた作物を全国の人に届けるのであればインターネット販売が便利です。自分でネットショップを作成する方法や、フリマアプリを使って販売する方法があります。
ネットショップ作成サービスやフリマアプリによって販売にかかる手数料やシステムが異なるため、どこで売るのか比較して選ぶようにしてください。
インターネット販売であれば自分で値付けでき、SNSマーケティングも活用可能です。
SNSやホームページで作物の様子や美味しい調理法を紹介して販売につなげるといった方法があります。
webマーケティングのノウハウを身につけたい人にも適した方法です。
兼業で農家を始めるメリット
兼業で農業に携わることには、多くのメリットがあります。新鮮な農作物を食べたり、人とのつながりが生まれたりと生活にも恩恵をもたらします。
どういったメリットがあるのかまとめました。
自然に触れることでストレス発散になる
日ごろのデスクワークや、会社と自宅の行き来にうんざりしている人は多いかもしれません。農業を初めて自然に触れることで、ストレス発散や運動不足解消になります。
適度な負担の作業や散歩によって健康の維持、増進にも貢献します。さらに、作物を自分で育てて収穫するまでの過程で得られる達成感は大きなものです。
日常の仕事で始まりから終わりまでのプロセスをすべて自分でこなすケースはそう多くありません。作物は成長もわかりやすく、日々の作業の中で充足感を得られます。
自分のペースで小規模からスタートできる
兼業や副業の農家は、他に本業があって農業を営みます。兼業であれば、それだけで生活を成り立たせるわけではないので小規模から始められます。
本業として農家を始めると、それだけで生活を成り立たせる必要があり、利益を増やすためにある程度規模も大きくしなければいけません。
規模が大きくなればそれだけ初期費用尾大きくなり、失敗時のリスクも高まります。
兼業だからこそ稼がなければならないというプレッシャーを感じることなく、自分のペースで農業と向き合えます。
肉体的にも精神的にも余裕をもって農業を楽しめる点がメリットです。
農業ビジネスを確立できる可能性がある
農業を始めると聞くと、細々と作物を販売するようなイメージがあるかもしれません。
しかし、家庭菜園や趣味の範囲を超えて、農業をビジネスとして大きく成長させるケースは少なくありません。
例えば、農家レストランや収穫体験の経営や作物のブランド化、新商品の開発などが農業ビジネスとして挙げられます。
さらに、スマート農業を導入して効率的な農業を推進したり、地域振興したりと大きく飛躍する可能性があります。
農業ビジネスを確立させるためには、農業の技術や知識を学ぶだけでなく、経営や商品開発についても学ぶようにしてください。
兼業で農家を始めるデメリット
兼業でスタートする農家には多くのメリットがあるものの、デメリットも少なくありません。どういったデメリットがあるのかを知ってから農業を始めてください。
初期投資が必要
兼業農家を始めるには、土地を用意したり借りたりする費用や農機具の購入費用が必要です。初期費用が大きくなれば、それだけ赤字のリスクも高まります。
また、初期費用が用意できないために農業を始められない人もいるかもしれません。
国や地方自治体では、農業を営む人のために補助金や助成金を用意しています。どういった制度があるのか調べて、要件を満たすものがあれば申し込んでみてください。
不作の時もある
農業は自然を相手にする仕事です。台風の被害や気候変動が原因で不作になってしまうリスクからは逃れられません。
特に、夏場に育てる作物は、台風や高気温対策が必要になります。
どういった原因で不作になるのかを知り、事前に対策を講じてください。また、資金面でも不作の年があっても問題がないように資金管理しておくことが大切です。
利益になるまで時間がかかる
販売の仕事であれば、仕入れた商品を売ればすぐに利益が手元に入ります。
しかし、農業は、作物を育ててから収穫して売れるまでに長い時間がかかります。利益が出るまでに数カ月は必要です。
すぐに利益が出る仕事ではないので、キャッシュフローが安定するまでは資金難に陥る可能性もあります。
休みの取り方が難しい
本業の傍らで作業を行う兼業農家の場合、多くの人が休日や余暇を利用して農業に取り組んでいます。
空いている時間をうまく活用できているといえるものの、なかなか休みを取りにくいのが実情です。
作物によっては毎日手入れが必要なものもあります、兼業で農家をすることによって休みが取れなくなってしまうケースも少なくありません。
家族で協力して休みを設定するといった方法も検討してみてください。
兼業農家なら自分のペースで始められる
専業の農業を始める場合には、収入の心配や初期資金の用意などが課題となります。しかし、兼業農家であれば小規模からでもスタートしやすく、資金も比較的少なく済みます。
資金に不安がある場合には、補助金の利用も検討してください。
オンライン販売の普及や副業の推進といった社会の変化も、兼業農家にとっては有利です。新しい働き方のひとつとして兼業農家を検討してください。
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(編集:創業手帳編集部)