注目のスタートアップ

株式会社ignArt 下簗一博|感情や状態が色や動きで共有できるコミュニケーションアプリ開発が注目の企業

感情や状態が色や動きで把握できるコミュニケーションアプリの開発事業展開で注目なのが、下簗一博さんが2020年に創業した株式会社ignArtです。

コロナ禍によってリモートワークが増え、「チームメンバーとの一体感が感じられない」という悩みを持つ方は少なくありません。また、新卒入社、転職、人事異動など、新しい環境へ適応できるか不安を感じるシーンは多くあります。社内のコミュニケーションが円滑に行われ、所属するメンバーの多様性を互いに尊重する企業風土を醸成できれば、メンバーの心理的安全性が確保でき、意見を言いやすくなることによって、生産性の向上や企業イメージの向上につながります。良質なコミュニケーションのもたらす効果は、企業に限らず、社会全体でもその重要性に注目が集まっています。

株式会社ignArtのコミュニケーションアプリ『GOOD MORNING COLOR』の特徴は、個人の状態や感情を色とポップな動きでありのまま素直に表現することによって、毎朝わずか1分程度の時間で ‶自己表現” が習慣化でき、気軽に楽しくチーム内のコミュニケーションを引き出すことが出来る、という点です。
株式会社ignArtの下簗一博さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクト開発するに至った経緯について教えてください。

私たちの会社設立の経緯からお話しすることになりますが、私たちは愛知県に本社を構える日本特殊陶業株式会社の社内発ベンチャーです。

日本特殊陶業は自動車のエンジン用部品が売上の大半を占めるBtoBのメーカーです。ポートフォリオの転換をはかる目的で、新規事業創出プロジェクトを社内公募した際に、複数の応募の中から採用されたのが、今私たちが開発を進めている『GOOD MORNING COLOR』です。

『GOOD MORNING COLOR』は、個人の自己表現を促して、「セルフマネジメント力」と「チーム内のコミュニケーション環境」を向上させるウェブアプリケーションです。開発の動機は、社内で「自分らしさ」を発揮できなかったり、むしろ「自分らしさ」を封じ込めようとしている同僚を見て、自己表現を促すプロダクトを何か作れないかと課題意識を持ったことがきっかけです。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

自己表現を日々習慣化してもらうためには「手軽さ」が重要ですので、入力はシンプルな4ステップにしている、という点です。

毎朝アプリを開き、まず「今日の気分」の状態を、バーの上でスライドして示すのが、1ステップ目です。

2ステップ目では、今日の気持ちに近い「色」を21色の中から選びます。「明るい色=気分が良い」とか「暗い色=落ち込んでいる」という固定のイメージにとらわれる必要はなく、インスピレーションで選んでいただいてかまいません。

3ステップ目では、自分が選んだ色について、自動でフィードバックメッセージが送られるので、メッセージを読んで気づきがあればメモします。この機能では「潜在的な意識を言い当てられることもあり、思考の整理になる」との評価もいただいています。

最後の4ステップ目で「お腹が痛い…」「いい天気で気分が上々!」などの「今日のひと言」を書いて終了です。ここまでかかる時間は、わずか1分程度です。
入力が終了すると、チームメンバーが思い思いに選んだ色の玉が並んで、色とりどりに弾む様子が見られます。弾む高さが高いほど気分が良いというメーターになっていて、メンバーの「今日のひと言」を読むことにより、チームメンバーの気持ちを察したり、状況を共有できるツールになっています。

手軽に楽しく続けられるので主体的な入力につながっていきますし、入力が終了した人だけチームメンバーの気持ちを見られるため、積極的な自己開示が促され、上下関係があっても心が通じやすくなるというメリットがあります。
メンバーの気になるひと言にはメッセージ交換もできますが、あえて1日1往復までに制限しているので、気にかけているという想いがシンプルに伝わるようになっています。
また、自分の気持ちの推移はグラフで見て振り返りができるので、自分の傾向などを知ることによって、セルフマネジメントに役立てていただけるのも特長です。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

自己表現ができない方々は多くいらっしゃって、そのことが企業における「離職」や「休職」につながったり、学校では「不登校」につながったりします。最も悲しいこととして、生きづらさから命を断たれる方もいらっしゃいます。私たちは日本人の奥ゆかしさという文化の良さも認めつつ、一方で自己表現がもっと尊重され、自己表現できる社会を『GOOD MORNING COLOR』の提供を通して実現し、これらの課題解決に貢献していきたいと思っています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

私たちは社内発ベンチャーのため、社内で認められなければ起業できないという大変さがありました。具体的には、日本特殊陶業の新規事業として、なぜ『GOOD MORNING COLOR』を立ち上げるのか、意義を明確にする必要がありました。

社内で議論に議論を重ね、フィードバックをもらうことを通じて、新事業の意義と自分たちの提供したいサービスの軸を明確にし、プロダクトを改善させることができました。その結果、経営層の承認を得ることができ、プロジェクトの開始から約2年をかけて会社の設立までこぎつけました。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

『GOOD MORNING COLOR』をセルフマネジメントツールとしても使っていただきたいので、機能をよりグレードアップしていきたいと考えています。
自分が入力すればするほど、アプリが自分のことをより深く理解してくれて、その時々の自分の状態に応じて有益なリコメンドをしてくれるような機能を持たせたいと構想しています。

また、2022年4月から、企業だけでなく教育分野にも提供を開始し、小中学生に利用していただくことが決まっています。現時点で自治体での導入が決まっているのは9校の小・中学校で、1,500人に利用していただきます。小・中学校では、ほぼ1人に1台タブレットが配布されているので、これから利用者を増やしやすい環境です。提供する学年に合わせて内容を変えており、高校生や大学生へとさらに対象を広げていきたいと思います。

また、新たなプロダクトを開発することによって、それぞれの方に最適なサービスが選べるように選択肢も増やしていきたいと考えています。

・今の課題はなんですか?

『GOOD MORNING COLOR』は、幅広い層にフィットするポテンシャルはありますが、私たちが提供する価値が最大化する層はどのような方々なのかについて、まだまだ絞りこめていません。そのため、現在はさまざまな方にヒアリングをして、その見極めに注力しています。

・読者にメッセージをお願いします。

私たちは、「自己表現力」と「自己理解力」を高めることで「他者理解」ができるようになり、ひいては「コミュニケーションしやすい社会」が実現していくと考え、日々開発を進めています。

まだまだ創業したてで、創業された方々も私たちと同じように大変なこともたくさんあるかと思います。
私たちはオープンな会社でありたいと思っており、協業や情報共有などを通じ、新しいチャレンジがより共有される社会になることを願っています。
チャレンジする方々が増えていくのは喜ばしいことですので、いずれどこかでご一緒できる機会があればうれしく思います。

会社名 ignArt(イグナート)
代表者名 下簗 一博(シモヤナ カズヒロ)
創業年 2020年 12月
資本金 500万円
社員数 3名
事業内容 「アート(自己表現)の力で世界に喜びを与える」をビジョンに掲げ、働く人のセルフマネジメントとコミュニケーション向上を目的とするWebアプリ「GOOD MORNINGCOLOR(グッドモーニングカラー)」の提供を行っております。
2022年4月~教育分野にも範囲を広げ、今後はさらに介護・医療分野への範囲拡大を目指しながら、自己表現と他社理解を促すサービスを提供してまいります。
サービス名 「GOOD MORNING COLOR」
所在地 〒461-0005 名古屋市東区東桜一丁目1番1号 17階」(2022年4月1日に住所変更致します)
代表者プロフィール 1985年9月2日生まれ、36歳。
九州共立大学経済学部を卒業後、日本特殊陶業株式会社へ入社。
主に工場の生産管理部門を担当していたが、自動車業界が変革期を迎える中、社内の新規事業創出プロジェクトに応募。
多くの人が積極的に自己を表現できる社会にしたいという思いから20~30代の仲間2人と共に社内選考を突破し、
株式会社ignArtを2020年に設立し、代表を務める。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ ignArt コミュニケーション テレワーク リモートワーク 下簗一博 在宅勤務 心理的安全性
創業手帳
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