ミクステンド 北野智大|インターンを経て飛躍!日程調整サービス「調整さん」でさらなる社会の効率化を目指す
あらゆるプロダクトをもっと便利に!ユーザーが求める理想の具現化への挑戦
「調整さん」とは、会議や歓送迎会などあらゆるイベントのスケジュール調整をスムーズに行うことができる、累計利用者数1200万人以上を誇るサービスです。
2018年創業のミクステンドは、日程調整サービスを軸に「はじまりをもっと近くに」を実現するプロダクトを展開しています。
代表取締役を務める北野さんは、学生時代にリクルートホールディングスのインターン生だった経歴の持ち主。調整さん開発チームの中心メンバーとして活躍した後、調整さんと関連事業を譲り受ける形でミクステンドを設立しました。
北野さんの起業までの経緯や、その後の人生に大きな影響をもたらしたというインターン経験とは?「インターンを経てキャリア形成」という共通点を持つタイガーモブ代表取締役の菊地さんとともに、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
ミクステンド株式会社 代表取締役
関西学院大学在学中にWeb制作事業を始める。2014年10月から株式会社リクルートホールディングスの新規事業開発室でシステム開発やユーザーグロースに従事。調整さん事業では、ABテストやアライアンスを推進し、4年間で260%のユーザーグロースを達成。2018年2月にミクステンド株式会社を創業し、同年3月に調整さん等を事業譲受。 2020年1月、調整さんで培ったノウハウをもとに、ビジネス版日程調整自動化SaaS「TimeRex」をリリース。2020年7月にはコロナ禍に伴うWeb会議需要の急拡大に対応するため国内日程調整サービスとして初めてZoom連携機能をリリース。必要なことに集中できる生産的な時間を生み出すべく、日程調整を軸とした社会の変革を目指しています。
タイガーモブ株式会社 代表取締役
関西学院大学総合政策学部、寿司アカデミー、Lee Kuan Yew School of Public Policy ”ASEAN地政学プログラム”卒。在学中は中国、蘇州大学へ半年間留学し、その後上海外資系5つ星ホテルにて通訳・翻訳・VIP対応として半年間インターンシップを経験。また、韓国~中国~東南アジアをバックパッカーとして、3ヶ月で8カ国を周る一人旅kikutripを実施。人材会社に入社し、1年目は採用コンサルタントとして営業を、2年目では海外事業部を起ち上げ、海外インターン事業「AJITORA」を始動。約600名の海外送り出し実績を経て、独立。タイガーモブ株式会社を立ち上げる。日本から世界、世界から日本の動きを活性化する為、海外バックパッカー営業等で世界中を飛び周っている。2017年全国商工会議所女性会連合会主催女性起業家大賞スタートアップ部門特別賞、EY Winning Women 2018ファイナリスト受賞。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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この記事の目次
リクルートホールディングスでのインターンを経て起業
大久保:まずは起業までの経緯についてお聞かせ願えますか。
北野:僕は兵庫県の関西学院大学出身なのですが、当時からWEBサイト制作を請け負う仕事をしていました。その過程で「チーム開発を学びたい」という意欲が出てきたんですね。「1人で制作を続けるのは限界があるな」と痛感したことが理由です。
なるべく事業規模が大きな企業のインターン生として経験を積みたいと考え、リクルートホールディングスにお世話になりました。現在ミクステンドでサービス提供している「調整さん」には、このときから関わっています。
大久保:調整さんは、もともとリクルートのサービスだったそうですね。ご自身で事業を受け継ごうと考えたのはいつですか?
北野:調整さんの事業売却の話があがったタイミングです。
当初は休学して携わっていたのですが、本腰を入れて関わりたいという気持ちが湧き、フリーランスに転向して開発を継続していたんですね。すでに4年ほど中心となって動いてきたプロジェクトでしたので、自分で手掛けたい思いが強くなりました。
そこであらゆる準備をして事業譲渡をお願いしたというのが、起業までの経緯です。
大久保:マネジメント・バイアウトですね。
北野:はい。僕はフリーランスでしたので厳密なマネジメント・バイアウトではありませんが、イメージとしてはかなり近いです。
大久保:フリーランス・バイアウト?(笑)
北野:そうですね、かなりめずらしいケースだと思います(笑)。
菊地:北野さんの能力の高さが前提としてあったとはいえ、インターンやフリーランスの方に事業譲渡というのは通常ではなかなか考えられないですよね。リクルートは柔軟な組織風土なのかな?と感じたのですか、そのあたりはいかがですか?
北野:リクルートの社風や理念が大きく影響していたのは間違いないですね。インターンやフリーランスでも積極的に仕事を任せてくれました。
在籍していた新規事業部が、世の中のスタートアップに近い部署だったことも関係しています。「重要な戦力として入ってもらう」というのが会社側の考えでしたので、裁量権を持って働くことができました。成長したいインターンにとって非常に良い環境でしたね。
それから僕自身、調整さんの開発チーム内での存在感を高めることに注力していたのもあります。今どきの考え方ではないかもしれませんが、朝から晩まで仕事をして「いつ見ても北野がいる」と評判の働きぶりでした(笑)。
大久保:経験値でいうと社員のほうが高かったりしますが、自分が携わっているプロジェクトに特化する一点突破の強みを持ったんですね。
北野:はい。業務外のチームビルディングも率先して行い、チームメンバーがより良い仕事をするためにはどうしたらいいか?といったことまで考えながら働いていましたね。おかげさまで、「調整さんと調整さんプロジェクトチームのことは、とりあえず北野に聞けばわかる」との信頼をいただいていました。
インターン生は、ひとつ突出した部分を持つほうがいいと思います。柔軟な対応を心がけることも重要です。
インターンで得られたのはチームとして働く醍醐味
大久保:菊地さんも同じようにインターンからキャリアを積んでいますが、関西学院大学出身ということも北野さんと共通しているそうですね。
菊地:はい。しかも同時期に神戸三田キャンパスに通っていたんですよ。
北野:先ほど教えていただいて驚きました。奇遇ですよね。
菊地:だからなおさらと言いますか、学生時代から情熱をもって開発にのめり込んだのはなぜなのか?をお聞かせいただきたいです。
北野:僕は高校時代からITやWEB系に興味があり、勉強を続けていたんですね。当時は高校生が自宅で受託開発というとハードルが高かったため、「大学に入ってから仕事としてやっていこう」と決めていました。
菊地:プログラミングは独学で身につけたんですか?
北野:はい。書籍などを活用しながら学びました。
大久保:学生の方に向けて、インターンシップで得られることについてお話いただいてもいいですか。
北野:インターンを経験してよかったなと実感しているのは、チームで作り上げていく面白さを味わえたことです。リクルートの社員や同じ開発者の方々と一緒に働く環境でしか得られない醍醐味がありました。
僕の場合は企業勤務がリクルートだけですので、今でも当時の経験が基礎として活きています。
大久保:学生起業だと内輪レベルになってしまうリスクがあるので、リクルートというきちんとした基盤を持つ企業の中で仕事をすると「ここが足りていないな」などの学びもあるでしょうね。
北野:学びだらけでした。企業勤務を経験せずに起業するより、まずはすでに成功している環境に入ってみたほうが勉強になると思います。
創業時の不安を解消した人材採用の重要性
大久保:インターン、フリーランスを経て起業されましたが、会社設立時に悩みを抱えた経験などがありましたらお聞かせください。
北野:リクルート所属で開発していたところから、独立してすべて背負うことになりましたので、最初は不安やストレスが大きかったです。
クライアントは取引を継続してくれるのか?ユーザーは運営会社がリクルートではなくなったことで離れていかないだろうか?そんなことばかり考えていました。
それからリクルート時代は優秀なエンジニアがバックアップに入ってくれるなど、あらゆるサポート体制が万全だったんですね。そうした環境を失うこともリスクに感じていました。
大久保:信用問題や環境の変化が不安だったわけですね。他にもありましたか?
北野:人材採用です。リクルートの場合は「リクルート」という看板で、ある程度優秀な人材が集まってきます。一方、創業したばかりの会社だとそうはいきません。
ミクステンドは僕1人で設立しましたので、最初の採用者は必然的に僕と1対1で働く社員になります。しかも1人目の採用で社風や文化、エンジニアの技術レベルなどが決まってきますので、非常に重要だと考えていました。
散々悩んだのですが、リクルート時代に同僚だったエンジニアを採用したいと決意したんですね。その同僚は転職を考えていなかったので、そこから説得しました。
大久保:どうやって口説いたんですか?
北野:何度も食事に誘って、事業のプレゼンをしながら「こんなふうに伸びていくよ」と必死で訴えかけました。エンジニアの挑戦心に火をつけるように、技術的なチャレンジができることもアピールしましたね。
当時を振り返ってみても、やはり彼を採用できたから今があると実感しています。2人目以降の採用になったとき、彼のレベルの高さを見て入社を決めてくれる人もいましたし、事業としてもエンジニアが優秀なのでボトルネックを抱えずに伸ばしていけるんですね。
結果的に、創業時の不安を解消することもできました。乗り越えてよかったなと思っています。
ユーザーの声からビジネス向けのTimeRexが誕生
大久保:調整さんからスタートしましたが、現在では「TimeRex(タイムレックス)」も提供していますね。
北野:調整さんはプライベートユースが多いのですが、「ビジネス版も作ってほしい」というユーザーの声に応えてリリースしたのがTimeRexです。カレンダーと連携させ、日程調整などを円滑にする仕様になっています。
大久保:サービス価格を教えてください。
北野:プランを3つ用意しています。フリープランが0円、基本的な日程調整をすべて行えるベーシックプランが750円、前後の業務まで効率化したい方向けのプレミアムプランが1250円です。
大久保:市場には類似サービスが出回っていますが、TimeRexの優位性をお聞かせください。
北野:基本的な概念はどのサービスも近いとは思うのですが、TimeRexは日程調整前後の業務まで自動化してサポートするという点が大きな違いです。
他社サービスの場合、相手に日程調整依頼のURLを送るまではスムーズにできるものの、受け取った側は自分のカレンダーと見比べて予定を決める必要があります。TimeRexなら受け取った相手がログインさえしてくれればスケジュールがひと目で把握できるので、双方がストレスなく日程調整できるんですね。
他にも、会員基盤を持つWEBサイトへの機能埋め込みサービスなども用意しています。日程調整をトータルですべて効率化するのがミクステンドのプロダクトです。
ミッションは「はじまりをもっと近くに」
大久保:今後の事業展開についてお聞かせください。
北野:ミクステンドでは「はじまりをもっと近くに」をミッションとして掲げています。日程調整サービスで事業化した会社ですので、まずは多くの方の日程調整をさらに簡単かつ便利にしたいです。
スケジュール調整がスムーズになれば、もっと予定を組みやすくすることができます。この方向性を突き詰めながら、様々なきっかけ作りをサポートしていきたいですね。
大久保:上場を目指すというお考えはありますか?
北野:ミクステンドは現在、投資家の出資を受けていません。そのため、「今は僕たちのゴールを決める必要がない」という考えのもと、目の前のユーザーの日程調整や業務の円滑化に注力してサービス提供を行っています。
ただし今後については、外部からの資金調達を経て上場を目指す、あるいはバイアウトの可能性がないとはいえません。
将来的に上場やバイアウトも考えられますが、あくまでも現段階では「外部からの資金調達やバイアウトも、自分たちのゴール設定もしていない」というのが結論です。
菊地:「はじまりをもっと近くに」というミッションは、どんな着想から生まれたのでしょうか?
北野:世の中に実装されていない業界最先端のプログラムより、一般的にサービス実装されているプロダクトをもっと使いやすくしたいという僕の考えから生まれました。
その世界の実現をイメージする過程で、「はじまりをもっと近くに」だなと。「こんなにすごい技術を使っています!」ということを感じさせず、多くの方にとって便利なサービスを提供していきたいです。
菊地:あらゆる方向に広げられそうですね。
北野:はい。ミクステンドは創業時から、ユーザーが求める理想の具現化を重視しています。先ほどお話しした「自分たちのゴールを決めないほうがいい」と考えるようになった根源でもありますね。
困難を乗り切るために大切なのはポジティブ思考
大久保:起業家と、インターンや学生の方に向けてのメッセージをいただけますか。
北野:僕はインターン生のときから「いかに事業を伸ばすか?」に注力してきました。
ただし、そこに熱を入れすぎてしまうとメンタルを崩してしまうんですね。事業どころではないという状況に陥ってしまう起業家の方も少なくありません。特に創業時は金銭面をはじめ、非常に不安定な状況が続きます。
だからこそ僕がお伝えしたいのは、「上手にポジティブな考え方を持つようにしてほしい」ということです。
競合他社が出てきた際のストレスの対処なら、「事業の方向性が正しいからだな」「市場ニーズがあるんだな」と視点を変えてみる。社内でうまくいかないことがあっても、「今後の改善でこうしていけばいいんだな」と前向きに考えてみる。
裏から発想してみるだけで違います。常に意識の転換をはかりながら、うまく乗り切っていただきたいですね。
大久保:菊地さんも、コロナ禍で海外インターンができなくなるという窮地から、逆転の発想で事業を伸ばしましたよね。
菊地:はい。抗えない変化に巻き込まれるのではなく、作り手側になろう!と考えて、積極的に事業を作りました。
北野:プラスの発想ですよね。やはり重要だなとあらためて思います。
(編集:創業手帳編集部)
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