未成年者でも起業はできる!取締役になる方法や注意点を徹底解説
未成年者が起業するための条件や具体的な手続きに加え、学業との両立や資金調達などの問題について解説します
Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏や旧ライブドアの堀江貴文氏など、大学在学中に起業する人は珍しくありません。では未成年者である中学生は起業できるのでしょうか?小学生は?
今回は未成年者が起業するための条件やその具体的な方法、注意点などについて詳しくお伝えしてまいります。起業を考えている未成年者の方はもちろん、親権者であるご両親にも役に立つ内容です。未成年者の法律行為という観点からも御覧ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
未成年者でも起業はできる!
結論からいいますと、未成年者であっても起業することは可能です。
ただし未成年者が一人で、単独で起業することはできません。
未成年者は法律行為をおこなうことができず、法律行為をおこなうには必ず法定代理人(通常は親権者)の同意が必要になるからです。
【大前提】未成年者は一人で法律行為(契約など)ができない!
起業をするには法人を設立するにせよ、個人事業主であるにせよ、法律行為とは無縁ではいられません。
例えば商品を売買したり、事務所を借りるために不動産の契約をすることもすべて法律行為ですし、
もちろん法人を設立するための定款認証や会社登記も法律行為です。
未成年者はこの法律行為を単独で行うことができないのです。
つまり未成年者だけでは起業をすることはできません。
未成年者の起業には親権者の同意が必須
民法は第5条1項で「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」としています。
未成年者が起業をするためには法定代理人=親権者の同意が必須なのです。
また民法第5条2項では法定代理人の同意なくしておこなった法律行為は、これを取り消すことができるとしています。
これらは未だ判断能力に乏しい未成年者を保護するという意味もありますが、同時に未成年者と取引をした第三者の安全を担保するという意味もあります。
なお同様の未成年者保護、未成年者と取引をした第三者の保護は、商法にも規定があり、商法第5条では「未成年者が前条の営業(商人としての商行為)を為すときは、登記を為すことを要す」つまり、「未成年者が起業をして営業行為をする場合は『登記』をしてみんなに分かるようにしておきなさい」としています。
未成年者が起業をする方法
起業は個人事業主でもできます。
その場合は民法第6条1項で「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。」としているため、法定代理人の許可があれば、通常の営業をおこなうことができます。
ただ起業において会社を設立し、法人として営業をおこなっていくとなると話は別です。
そこには
- 未成年者は会社の発起人になれるのか?
- 未成年者は会社の取締役になれるのか?
といった問題が関係してくるからです。
未成年者が起業した会社の発起人となる方法
まずは未成年者が会社設立の際の発起人に就任することができるのかという問題を考えてみます。
発起人とは?
発起人とは会社設立手続きをおこなう者のことです。
設立時の取締役の選任や定款の作成、出資株式等資本金の払込、開業準備などをおこないます。
未成年者が会社の発起人になれるのか
会社の設立を規定する会社法には発起人の年齢や資格などの制限はありません。
そのため未成年者が会社の発起人になることは可能です。
ただ発起人がおこなう「定款認証」や「法人登記」は法律行為にあたります。
そのため前述したとおり、法定代理人の同意が必要です。
また定款認証の際に公証役場に提出する書類には実印を押す必要がありますが、15歳未満の場合は印鑑登録ができないため実印を持つことができません。
この場合は事前に公証役場に問い合わせの上、両親の印鑑証明で代用することになります。
未成年者が発起人となり定款認証する際の添付書類
発起人が15歳以上の場合
- 本人の印鑑登録証明書
- 親権者双方による実印を押印した同意書
- 親権者双方の印鑑登録証明書
- 戸籍謄本
発起人が15歳未満の場合
- 親権者双方による実印を押印した同意書
- 親権者双方の印鑑登録証明書
- 戸籍謄本
未成年者が起業した会社の取締役となる方法
次に未成年者が会社の取締役に就任できるのかという問題を考えてみます。
取締役とは
発起人が会社に出資し、取締役などを選任、会社を設立するのが役割なのに対し、取締役は実際に会社を経営、運営していくのが役割です。
未成年者が会社の取締役になれるのか
会社には取締役会を設置しない会社と取締役会を設置する会社があります。
未成年者が会社の取締役になれるのか否かは、この取締役会の設置によって異なります。
取締役会を設置しない会社の場合
取締役となるためには登記が必要です。
そして取締役会を設置しない会社では、取締役として登記するためには就任承諾書に実印を押印しなければなりません。
そのため印鑑登録ができず、実印を持つことができない15歳未満の未成年者は取締役に就任できないことになります。
一方印鑑登録が可能な15歳以上の未成年者は、取締役に就任することが可能です。
取締役会を設置する会社の場合
取締役会を設置する会社の場合、登記に際して実印の押印が必要となるのは代表取締役のみです。
そのため代表取締役以外の取締役であれば、印鑑登録ができない15歳未満の未成年者でも就任することができます。
代表取締役になるには15歳以上であることが必要
上記したとおり、代表取締役になるためには実印が必須です。
つまり取締役会の設置有無にかかわらず、代表取締役になるには印鑑登録が可能な15歳以上にならないと就任することはできません。
12歳(10歳)未満の未成年者の取締役就任は厳しい
取締役会を設置する会社であれば15歳未満の未成年者でも取締役に就任することは可能です。
ただだからといって何歳であっても取締役になることができるかといえば、そこには限界があります。
一つは「意思能力」の有無です。
意思能力とは、法律行為の結果、義務や権利がどうなるのかきちんと理解することができる能力のことをいいます。
判例などでは10歳未満の未成年者は意思能力を欠くとされており、取締役としての登記を受け付けてもらえないことがほとんどです。
また「責任能力」も問題となります。
責任能力とは自分がおこなったことに対して責任が生じることを認識している能力をいいます。
判例などでは12歳未満の未成年者は責任能力を欠くとされており、こちらも取締役としての登記を受け付けてもらえないことが多くなっています。
未成年者が起業する時の資金調達方法
個人事業主として起業するにしてもPCなどの購入を始めとする設備資金や、当座の運転資金が必要です。
また会社を設立するのであれば、最低30万円程度の設立資金が必要となります。
では未成年者が起業する場合、資金調達にはどのような方法があるのでしょうか。
銀行からの融資
未成年者が銀行からお金を借りるというのは事実上不可能です。
そのため実際には親権者などに代わりに融資を受けてもらい、その資金を利用するということになります。
投資家からの投資
銀行などの金融機関とはことなり、ベンチャーキャピタルなどの投資家から出資を受けるということであれば、未成年者であっても可能です。
ただし投資家が魅力を感じるだけの事業の実現性、将来性を的確にプレゼンテーションする能力は必須となります。
クラウドファンディング
インターネット上で支援者を募集し、出資の見返りとしてリターンを約束するクラウドファンディングは未成年者にとって魅力的な資金調達方法です。
ただし投資家の場合と同様にプレゼン能力は問われますし、一般の支援者を対象とするだけに、よりキャッチーで分かりやすいアイデアが必要となります。
国や地方公共団体を利用する
高校生であれば、日本政策金融公庫が実施する「高校生ビジネスプラン・クランプリ」にチャレンジすることが可能です。
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、政府の方針で積極的に未成年者の起業の後押しをしており、ここでグランプリや準グランプリに入賞すれば、奨励金を受け取ることができます。
また入賞を逃してもキラリと光るアイデアであれば、ビジネスプランに賛同した投資家から出資を受けられる可能性もあります。
未成年者が起業する時の注意点
未成年者の場合、成人が起業するのとは異なる問題が起こる可能性があります。
ここでは未成年者が起業する時の注意点をお伝えいたします。
事業に関しては成人と同じ扱いを受ける
民法は第6条1項で、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と定めています。
つまり業務において法定代理人の同意を受けた場合、その未成年者は成人とみなされるということです。
これは成人と同じ権利・能力を持つということではありますが、裏を返せば成人と同じ「責任」を持たされるということにもなります。
「子どもがやったことだから」という言い訳は通用しないこととなり、強い責任感を持って業務に当たる必要があるというわけです。
成人が起業する場合と比べて必要書類が多い
未成年者が起業時に会社を設立する場合、必要書類として法定代理人の同意書が必要になります。
各手続きにその都度必要となるため注意が必要です。
15歳以上の未成年者の場合、定款認証手続き時に同意書が必要となる
一例として定款認証時に発起人が「15歳以上」だった場合、法定代理人が発起行為に同意している旨を記載した「発起行為同意書」が必要となります。
(15歳未満の場合は法定代理人が発起人として連なるため、同意書は不要です)
資金調達が難しい
会社を設立し業務を続けていくためには資金が必須となりますが、その調達は成人であっても難航することがあります。
ましてや未成年者の場合は前述したとおり、支援者でもいない限りはかなり難しいと考えるべきです。
学業との両立が難しい
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏はハーバード大学を、旧ライブドアを創業した堀江貴文氏は東京大学をそれぞれ中退しています。
つまりそれほどまでに学業と起業の両立は難しいというわけです。
これが出席日数などの面で更に厳しい高校生であればなおさら難しくなります。
しかも起業だけでも成功すればまだ良いですが、学業も起業もどちらも中途半端になってしまうケースも考えられます。
未成年者が起業する場合は、学業との両立を必ずやり抜くといった強い決意が必要でしょう。
未成年者の起業を成功させるにはビジネスパートナーを作るのがおすすめ
未成年者には成人が思いつかないような柔軟な発想という武器があります。
しかし反面人生経験に乏しく、社会常識などに疎いという弱点も持ち合わせています。
そこでおすすめしたいのがビジネスパートナーを作るという方法です。
ビジネスパートナーを作るメリット
役割分担ができる
自分とはタイプの異なる人をビジネスパートナーにすれば、自分とパートナーとで役割分担をすることができます。
同年代のパートナーであっても自分には思いつかないようなアイデアを出してくれたり、自分の不得意分野をカバーしてくれるというメリットがありますし、成人のパートナーであれば経験や資金調達といった未成年者の弱点を補完してもらえます。
人脈が広がる
学生同士のパートナーの場合は友人などが重なってしまうため効果が薄くなる場合がありますが、年代の違うパートナーを選べば人脈が飛躍的に広がります。
資金面で余裕ができる
一人で準備できる資金には限界があります。
ビジネスパートナーがいればその人数分だけ資金が増えることになるため、メリットは大きいといえます。
責任を分け合うことができる
起業して会社を運営するのは大きな責任が伴います。
それを一人で背負うことは精神的にも肉体的にも大きな負担です。
ビジネスパートナーがいれば、その負担を分け合うことができます。
孤独を緩和できる
経営者は常に孤独です。
重要な経営判断を下す時、最終的に相談できる人はいません。
しかし自分と対等なパートナーがいれば、同じ立場、同じ視線で物事が考えられるため、孤独を緩和することが可能です。
ビジネスパートナーを作るデメリット
人数分の収益が必要になる
収益が上がった時、一人で起業したのであればその収益を独り占めできますが、多人数で起業した場合は全員で分け合わなくてはなりません。
全員が一人起業の時と同じだけの収益を得るのであれば、人数分稼ぐ必要があります。
出資比率が問題となるケース
株式会社では出資比率=持株比率によって決定権が決まります。
取締役の選任や役員報酬などの決定といった一般的な決議の場合は、株式の過半数を持っている必要があります。
1対1のパートナーの場合は50%ずつの株式を持つことが多くなりますが、この場合はどちらも過半数の株式を持っていることにはならないため、どちらにも決定権が無いということになってしまいます。
そうなると意見が別れてしまった場合、会社を解散するという手段を取るしかありません。
起業する際は出資比率について慎重に話し合いをしておく必要があります。
責任の所在が曖昧になる
成功が続いているときは問題ないのですが、失敗が続くと誰かが責任を取らなければなりません。
一人で起業した場合は全部自分で責任を取ればよいのですが、ビジネスパートナーがいる場合は最悪責任のなすり合いになってしまうことも考えられます。
報酬のトラブル
利益が出るようになって起きるトラブルに報酬の分配があります。
会社への貢献度によって報酬を決めるのが一般的ですが、その貢献度の考え方が個人によって異なるために問題が起こるのです。
報酬については起業時に明確なルール作りをしておく必要があります。
未成年者の起業で困ったときは専門家に相談してみよう
会社設立のことであれば司法書士、経理のことであれば税理士、法律関係であれば弁護士と、起業して困ったときは専門家に相談してみるのも良いでしょう。
確かに費用は発生しますが、未成年者が一人で悩み、間違った判断を下して損失や失敗を重ねてしまうことを考えれば、十分に元を取れるともいえます。
起業する時にあらかじめ専門家を紹介してもらっておくと安心です。
(編集:創業手帳編集部)