スモールM&Aとは?事業承継を語るのに欠かせない「スモールM&A」の可能性

事業承継手帳

M&Aは大手企業だけのものではない。身近なところで起こっているスモールM&Aの事例紹介

企業や事業の買収や合併などを意味するM&Aですが、経済ニュースをにぎわせる大企業同士の話ばかりがM&Aではありません。スモールM&Aと言われる、小規模な企業買収、合併も最近では注目されています。

担い手不在に悩むお店が、事業承継のかたちとしてスモールM&Aを選択する。皆さんの身近でも実際にあることかもしれません。

中小企業を財務の面から支援する専門家の萩原氏に、近年のスモールM&A事情をお聞きしました。

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萩原洋(はぎわらひろし)
特定行政書士。平成10年に経営コンサル・出版・編集を主要業務とする有限会社銀河企画を設立。その後、経済産業省認定経営革新等支援機関に認定され、中小企業等の経営を財務中心に支援している。(公財)東京都中小企業振興公社専門家派遣事業支援専門家、(一社)全国第三者承継推進協会認定総合M&Aアドバイザー、経済産業省後援起業支援ドリームゲートアドバイザーなど資格多数。

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M&Aのイメージは良くない?

M&A(Mergers And Acquisitions)というと、「敵対的買収」、「買い叩き」、あるいは「ハゲタカ」などネガティブなイメージを持つ方も少なくないかもしれません。実際、一昔前まではM&Aがらみの経済事件がマスコミを賑わせたこともありました。

しかし、現在はM&Aの業界関係者による啓蒙活動もあり、そのイメージはかなり改善されています。結果、現在行われているM&Aは、そのほとんどが「友好的なM&A」です。

M&Aは「合併・買収」を意味し、一般的には会社や事業を再編・拡大するための手段として利用されます。さらに、最近では事業承継など中小企業の出口戦略の有効な手段としても、盛んに活用されるようになってきました。

そして現在では、M&Aの主役は大企業から中小企業、そして個人事業へとその軸足が大きくシフトしています。こうしたことからM&Aは、「スモールM&A」などとも呼ばれるようになり、中小企業の事業承継や起業・創業などスタートアップ時の有効なツールになっています。

ここでは、この「スモールM&A」とは、またその有効活用法はといった面から、もっとも身近な飲食店などを例に解説してみたいと思います。

「スモールM&A」とは

M&Aは、先にも述べた通り日本語で「合併・買収」と呼ばれます。一言でいえば会社、あるいは事業の再編や拡大を図る行為です。

「合併」は複数の会社が統合してひとつになるもので、合併する側の会社は存続し、合併された側の会社(被合併会社)は消滅します。

これに対し「買収」は、買収側の会社が買収される側(被買収会社)の経営権を買い取ってその支配下に置きますが、被買収会社は消滅することなく、買収する側の子会社やグループ会社のひとつとして存続します。

通常、M&Aでの売買価額は少なくても数千万円、大企業同士になると数兆円になることもあります。

一方で、小規模な会社や個人店舗などを対象にした、数百万円から数億円クラスのものも増えてきました。この小規模なM&Aを「スモールM&A」などと呼びます。

多額の売買コストがかからず、合併のような複雑な手法(スキーム)ではなく、「事業譲渡」や「株式譲渡」といった簡単な買収手法のため、売り手と買い手の相性が良ければ、短期間で成約に至ります。そのため、現在では我が国のM&Aの主流となりつつあります。

スモールM&Aが増えている背景

近年、「スモールM&A」が増えている大きな理由としては、経営者の高齢化と少子化により、深刻な後継者難に直面している中小企業等が増えていること。そしてそのような中小企業の事業承継の切り札として、「スモールM&A」が注目されているためです。

かつての小規模事業や個人事業の事業承継では、早い段階から自分の子供に「技術」、「技能」、「経営手法」、そして「帝王学」などを教え込み、経営者が高齢になると子供に事業を任せることが普通でした。

ところが、近年急速に進む少子化によって跡を継ぐ子供がいないため、経営者の高齢化とともに、小規模事業や個人事業が廃業へと追い込まれています。

こうした後継者難の解決策として、「スモールM&A」が有効活用されるようになってきたのです。

さらに、M&Aの業界関係者による啓蒙活動、国や自治体による中小企業等のM&Aに対する後押しもあり、小規模事業や個人事業の「スモールM&A」が増えたというわけです。

大手M&A仲介会社などでも、従来のM&Aとは別に、小規模事業や個人事業を対象にしたものを「スモールM&A」と銘打って、本格的に力を入れるようになってきました。

スモールM&Aの有効活用法

「スモールM&A」は、従来からのM&A同様、再編行為による既存の会社や事業の拡大にも使われますが、その取引規模から零細企業や個人事業の「事業承継」、「事業再生」、「創業」などにより多く活用されています。

ここで、中小企業や個人事業の「スモールM&A」による事業承継の事例をいくつか紹介しましょう。

【スモールM&Aの事例①】

とある地方にあるラーメン店の話です。

この店は昭和の時代から60年近く夫婦でやっていて、80歳を過ぎる老夫婦が2人で営んでいたのですが、ある時、20代の男性が忙しく働いていました。最初は孫かと思ったのですが、この店自慢のラーメン、タンメンと餃子の味に感動し、わざわざ東京から修行に来て、近い将来跡を継ぐというのです。

これを、老夫婦の側から見ると「スモールM&Aによる事業承継」そのものです。結果、廃業することなく安心して引退できます。

一方、従業員の側からみると、仮に技術を取得するため数年の間無償で働いたとしても、その間の労働を買収代金と見なした「スモールM&Aによる創業」と捉えることができ、店舗と顧客をそのまま手にすることができます。

このように、スモールM&Aは、売手側では外部の第三者への事業の引き継ぎであり、買手側では新規の創業といった有効な事業活動となることが多く、双方がwin-winとなる効果が期待できます。

【スモールM&Aの事例②】

私が以前よく利用していた郷土料理の居酒屋チェーンがありました。

オーナーは飲食業以外に本業を持ち代表を務めていましたが、居酒屋も複数チェーン展開していました。そのなかで、やや業績の落ちてきた店舗を、知り合いのサラリーマン夫妻に安く譲り、本業に集中するといった、いわゆる「事業の選択と集中」を行ったそうです。

これは、オーナー側からは「スモールM&Aによる事業再生や再編」です。また、サラリーマン夫妻側では「スモールM&Aによる創業」ということになります。

調理経験のない人や脱サラで飲食店を開業するのに、「スモールM&A」を利用した例です。

こうして見ると、「スモールM&A」は以前から身近で行われてきた開業方法のひとつであるということに気づかされます。

スモールM&Aのメリットやデメリット

「スモールM&A」を行うにあたって、売手側・買手側にメリットもありますが、デメリットもあります。それを十分理解した上で行うことが重要です。

そのメリット・デメリットを、売手側・買手側に分けて見てみます。

【売手側のメリット・デメリット】

メリットとしては、何と言っても時間とコストが節約できるということです。そして廃業することなく事業を承継でき、従業員の雇用も守られるという点もあげられます。

その上、廃業コストがかからず、ある程度まとまった売却代金が入るため、その後の生活設計がしやすくなることです。

一方デメリットとしては、M&Aを行う場合には仲介業者に依頼することが一般的なので、手数料・成功報酬などのコストがかかります。

また、今まで現役で働いてきた会社を手放すことで、喪失感を味わうことも少なくありません。

【買手側のメリット・デメリット】

大きなメリットは、売手側とのマッチングがうまくいけば、少ない時間と予算ですでに確立された技術やノウハウがあり、顧客も持っている事業や店舗が、そのまま手に入るということです。そのため、失敗するリスクもゼロから始めるよりも低いといえます。

一方でデメリットとしては、売却案件を探すのは簡単ではないこと。自分が営みたいジャンルの案件となると、さらに難易度が上がります。

仮に欲しい案件が手に入っても、引き継いだあとで従業員の対応を誤ると辞められるなど、その後の経営がうまくいかなくなるといった注意すべき点もあります。

スモールM&A成功のための意識付け

廃業は、経営者だけの問題ではなく、従業員の失業など地域社会にも大きな影響を及ぼします。失業者を増やさないためにも、また地域経済を疲弊させないためにも、小規模事業や個人事業の経営者は、この「スモールM&A」の流れに乗り遅れないようにしたいものです。

ただし、以下の点には十分留意すべきです。

事業承継や経営再建に悩む小規模事業、個人事業の経営者は、「うちの会社や店舗など売れるはずが無い」とか「この規模ではM&Aの対象にならない」と考えるべきではありません。

また、廃業するよりはと、二束三文で売ってしまうような安易なこともすべきではありません。日々の経営の中で、自会や自店舗のブラッシュアップを図り、適正な価額で売却できないかと努力することが大切です。

また、買手側経営者も、最近「スモールM&A」が流行っているからと安易な気持ちで会社や店舗を買うようなことはすべきではありません。

買収後の本格的な事業統合の際、買収した会社や店舗従業員の反感だけでなく、自社や自店舗従業員からも不信感を持たれ、退職されてしまうかもしれません。

その結果、事業統合による経済効果はまったく期待できず、何のためにお金を払って買収したのか途方にくれることになってしまいます。

【コラム】スモールM&Aは自分でできるのか

ースモールM&Aは、規模が小さいこともあり当事者同士で完結できそうな気がします。その辺りも萩原氏に教えていただきます。

「マッチングサイトを利用し、売手側・買手側の当事者のみで行うことも可能ですが、M&Aを成功させるには、M&A仲介会社に依頼するほうが良いというのが私の考えです。

当事者のみでM&A交渉を進めると、売手側は少しでも高く売りたい、買手側では安く買いたいといった双方の利害が対立し、交渉がブレイク(破綻)することも少なくありません。

そこで、経験豊富なM&Aアドバイザー等の仲介事業者が間に入り、それぞれ納得いく「落とし所」を見出し利害を調整します。その結果、双方がwin-winの関係で契約が成立します。

ただ、M&A仲介会社といっても、個人レベルから大手のM&A専門会社までさまざまな事業者がいます。特に、昨今のM&AやスモールM&Aブームとも言える状況の下、異業種からの参入もあり玉石混交状態です。

実績の無い事業者に依頼したところ、高い着手金などを請求された挙句、途中で面談・交渉がブレイクした、あるいは、双方が納得できない条件で強引に契約を締結させられたなどという事例が多いのも事実です。

今後、ますます増えるM&A、特にスモールM&Aと呼ばれる小規模なものについては、M&A実績のある大手仲介会社が運営しているマッチングサイトの利用が増えてくると思います。

サイト上で案件を探し、専門家の支援を得ながら面談・交渉を進め、短期間で成約させるといったスタンスが主流になっていくでしょう」

まとめ

中小企業経営者等のM&Aに対する意識の変化や、少子高齢化による大廃業時代到来の懸念から、国や自治体の後押しもあり今後はかなりのペースで「スモールM&A」の増加が見込まれます。

また、大規模なM&A案件が増えない中で、大手のM&A仲介会社も「スモールM&A」事業に本格的に参入しており、中堅クラスの事業者との間で、案件探しが激しくなることが予想されます。

ー近年注目されているスモールM&Aについて理解が深まったでしょうか。

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(執筆: 有限会社銀河企画 萩原洋
(編集: 創業手帳編集部)

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