個人事業主もiDeCoで年金を増やそう!上限額や併用できる制度も解説

資金調達手帳

iDeCoの活用で老後資金の確保や節税につながる


個人事業主や自営業は、厚生年金に加入している会社員・公務員とは異なり、国民年金のみへの加入となります。
国民年金のみとなると、将来の老後資金が心もとないと感じる人もいるでしょう。そのような時に役立つのが、iDeCoを含む私的年金制度です。

今回は、個人事業主におすすめしたいiDeCoの概要とiDeCoを活用するメリット、iDeCoの上限額や併用できる制度について解説します。
iDeCoに興味があるものの、具体的にどのようなメリットや注意点があるのか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

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iDeCo(個人型確定拠出年金)の概要


iDeCoとは、自分で拠出した掛金を自ら運用して資産形成を行う年金制度を指します。
自分で設定した掛金を毎月拠出し、定期預金や投資信託などの運用を行います。最終的に、掛金の積み立て分と運用益を年金資産として受け取ることが可能です。

iDeCoは確定拠出年金法に基づいた私的年金制度ということもあり、加入自体は任意です。
なお、iDeCoはあくまで老後の資産形成が目的の年金制度であるため、原則60歳以上でなければ管理資産を引き出すことはできません。
家や車などを購入するのにお金が少し足りなかったとしても、iDeCoで得た運用益を引き出せるわけではないので注意してください。

iDeCoの加入資格

iDeCoはすべての人が加入できるわけではありません。iDeCoの加入資格を持っているのは、以下に該当する人です。

国民年金第1号被保険者(第1号加入者) 20歳以上60歳未満の自営業と家族、学生、フリーランス
※農業者年金の被保険者や国民年金保険料の納付を免除されている人は加入できない
国民年金第2号被保険者(第2号加入者) 会社員・公務員などの厚生年金被保険者
※お勤め先で企業型確定拠出年金に加入している人で、事業主掛金を年単位で拠出、または事業主掛金に上乗せしてマッチング拠出している人は加入できない
国民年金第3号被保険者(第3号加入者) 国民年金第2号被保険者に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者
国民年金の任意加入被保険者(第4号加入者) 国民年金に任意で加入した人
※60歳以上65歳未満、または20歳以上65歳未満の海外居住者で、国民年金保険料の納付済み期間が480月に達していない人が対象

ただし、上記の条件に該当していたとしても、以下のいずれかに当てはまる人は加入できません。

  • iDeCoの老齢給付金を受給している、または受給したことがある
  • 老齢基礎年金または特別支給の老齢厚生年金を繰り上げ受給している

個人事業主がiDeCoを活用するメリット


ここからは、個人事業主がiDeCoを活用するメリットについて解説します。

老後に備えた資産形成ができる

個人事業主が加入できる公的年金は国民年金のみであり、会社員や公務員のように厚生年金に加入できません。
厚生労働省年金局が公開している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、受給権者の平均年金月額は57,584円であることがわかっています。
一方、厚生年金保険(第1号)の平均年金月額は147,360円でした。
厚生年金に加入している会社員は、個人事業主よりも約9万円も多く受給しています。

個人事業主は厚生年金に加入できないことから、老後に備えた資産形成を行うならiDeCoを含む私的年金制度の活用がおすすめです。

節税効果が高い

iDeCoで毎月積み立てる掛金は、全額所得控除になります。
所得控除を受けられれば、その分を所得金額から差し引いて課税所得を少なくできるため、所得税・住民税を少なくすることも可能です。

株式投資や投資信託などの金融商品は、通常運用益に対して20.315%の税率が課されます。投資で利益が出た分に対する約20%は税金として納める必要があります。
一方、iDeCoで運用した場合、運用益が出たとしても非課税の状態で再投資することも可能です。

また、iDeCoは原則60歳から受け取りができます、
しかし、老齢給付金として受け取る場合は、年金として分割で受け取る、一時金としてまとめて受け取る、年金と一時金を併用して受け取るかを選ぶことができます。
年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取れば退職所得控除の対象になり、一定額まで税金がかからない仕様です。
このように、iDeCoを活用することで様々な節税効果が期待できます。

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個人事業主がiDeCoを利用する場合の上限額


ここからは、個人事業主のiDeCoの掛金上限額について解説します。

個人事業主の上限額は月額6.8万円

個人事業主や自営業者は第1号被保険者・任意加入被保険者に該当し、上限額は月額68,000円(年額816,000円)です。
ただし、掛金を必ず設定する必要はありません。
毎月5,000円から1,000円単位で金額を設定できます。無理のない範囲からコツコツと積み立てていきたいという人でも安心できるかもしれません。

なお、iDeCoと合わせて国民年金基金や付加年金を支払っている場合、それらと合わせた金額が月額68,000円、年額816,000円を超えないように調整する必要があります。

税制改正で引き上がる可能性も

2024年12月の税制改正では、いくつかの変更点がありました。会社員や公務員などに対して、iDeCoの掛金上限が最大2万円引き上げられることなどが挙げられます。
また、2024年12月に閣議決定した税制改正大綱の中に、iDeCoの掛金額が今後さらに増加するという内容も記載されていました。
個人事業主の上限額は月68,000円(年額816,000円)になりますが、改正案の中では月75,000円(年額900,000円)でした。

ただし、掛金の上限増加を含む改正は、年金改革関連法案の成立を前提としています。
年金改革関連法案には厚生年金への加入拡大が含まれており、選挙への影響も考えて法案提出は先延ばしにされてしまいました。
そのため、iDeCoの上限が引き上がる可能性はあるものの、少し先のことになると予想されます。

個人事業主がiDeCoを始めるには?申込の流れと手順


個人事業主がiDeCoを始めるために必要な書類や申込方法を解説します。

口座開設の手順

iDeCoを利用する際には、まず運営管理機関に該当する金融機関や証券会社、保険会社を選び、口座開設する必要があります。口座開設の主な手順は以下のとおりです。

1.運営管理機関に対して加入に必要な書類を請求する
2.制度の内容を今一度確認する
3.申込書類を作成して郵送する、またはオンラインで手続きを行う
4.加入確認通知書などを受け取る
5.口座番号とパスワードが届いたら運用を開始する

運営管理機関から加入確認通知書などが届いたとしても、実際に運用を開始できるのは1~2カ月以上先になります。
口座番号とパスワードが届いたら残高確認や運用ができるため、商品を選び、掛金の配分を決めてください。

必要書類と注意点

個人事業主がiDeCoに加入する際に必要な書類は以下のとおりです。

個人型年金加入申出書 加入する運営管理機関から入手する
本人確認書類のコピー 運転免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどが該当する
年金手帳または基礎年金番号通知書 個人型年金加入申出書に基礎年金番号を記載するため準備する
掛金の引き落としをする口座の情報 預金通帳やキャッシュカードなどを参考に、個人型年金加入申出書に口座情報を記載する
銀行届出印 書面で申し込む場合のみ銀行届出印が必要

個人型年金加入申出書などに不備があると、審査に通らない可能性があります。内容に不備がないか確認しながら記入することが大切です。

おすすめの金融機関

iDeCoに加入する場合、どの金融機関で口座を開設するべきか悩む人も多いかもしれません。そこで、おすすめの金融機関とその特徴を3つ紹介します。

・松井証券
松井証券は、創業100年以上の老舗証券会社でありながら、インターネット取引きをいち早く導入した証券会社です。
取り扱いの銘柄数は40本と、ほかの証券会社に比べて多く、また信託報酬はすべて1%以下に設定されています。
最大1%貯まる「投信残高ポイントサービス」の対象にiDeCoも含まれており、毎月エントリーすれば年間最大1%のポイントが還元されます。

・SBI証券
SBI証券は2024年9月末時点で100万件ものiDeCoの口座が開設されているほど、多くの人に選ばれている証券会社です。
運営管理手数料は無料で、インデックスファンドを17本も取り扱っているのが特徴といえます。

・楽天証券
楽天グループに入る楽天証券も、運営管理手数料0円でiDeCoを運用できます。
iDeCoに関するWebセミナーを随時開催していたり、iDeCoやNISAの利用者限定でマネー本・マネー雑誌を無料で読める特典が付いたりするなど、iDeCoをはじめ投資をするのが初めてで不安な人にもおすすめです。

個人事業主がiDeCo加入時に注意すべきこと


ここからは、個人事業主がiDeCo加入時に注意すべきことを、資金面・リスク面・確定申告の3つに分けて解説します。

資金面の注意点

iDeCoに加入する際には掛金が毎月引き落とされます。資金面で注意すべきポイントは以下の2つです。

毎月の掛金が大きな負担になる

iDeCoに加入した場合、掛金は自分で設定できるものの、最低でも5,000円以上は支払う必要があります。
例えば、経済的に厳しい状況に追い込まれている人がiDeCoを始めようとすると、毎月の掛け金が大きな負担となってしまう場合もあるかもしれません。
個人事業主は仕事が不安定になることもあり、最初に大きな金額を設定しすぎてしまうと、後々大きな負担になってしまう可能性があるため注意が必要です。

原則60歳まで引き出せない

iDeCoは、積み立ててきた掛金や運用益などは原則60歳になるまで引き出せません。
iDeCoの目的は老後の資産形成であるため、途中で解約したり60歳になる前に資産を引き出したりできないのです。
病気やケガ、仕事の不安定さが原因で収入が大幅に下がってしまった場合でも、iDeCoの口座から資産を引き出せないことに注意してください。

また、iDeCoの場合、通算加入者等期間によって受給年齢も変動します。例えば60歳の時点で通算加入者等期間が10年以下の場合、受給年齢は最大65歳まで繰り下がります。
つまり、資産を受け取るまでに時間がかかることに注意が必要です。

リスク面の注意点

iDeCoには節税効果などのメリットがある一方で、リスクも存在します。iDeCoにおける主なリスクは以下の2つです。

元本割れになる可能性

iDeCoは、掛金を使って金融商品を購入し運用する年金制度です。金融商品を運用するため、場合によっては元本割れになる可能性もあります。
運用成績次第で受け取れる金額が変わることから、想定していたよりも給付額が少ないと感じるかもしれません。

元本割れのリスクを最小限に抑えるなら、定期的に運用状況をチェックする必要があります。
また、万が一元本割れを起こしている商品があれば、別の金融商品に切り替えるなどの対策が必要です。
なお、iDeCoには定期預金や保険商品などの「元本確保商品」が用意されており、元本を確保しつつ掛金に利息が上乗せされます。
元本が確保されている分リターンは少ないため、自分のリスク許容度を測りながら適切な金融商品を選んでください。

手数料負けのリスク

iDeCoに加入した場合、新規加入や移管時にかかる手数料や掛金納付の手数料、金融機関の管理手数料など、様々な手数料が発生します。
新規加入や移管時にかかる手数料は口座を開設した時だけ支払う必要がありますが、掛金納付の手数料や管理手数料などは都度支払わなくてはなりません。
運用成績によっては少ししか利益が出ず、毎月支払う手数料のほうが上回ってしまい、手数料負けをするリスクもあります。

手数料負けを防ぐためには、手数料に負けないくらいのリターンが期待できる商品を運用し、手数料そのものを抑えることも大切です。
なるべく運用管理手数料が安い金融機関を選んでください。

確定申告での注意点

iDeCoのメリットでもある税制優遇を受けるためには、確定申告が必須です。ここからは、確定申告における注意点を解説します。

「小規模企業共済等掛金控除」の申告が必要

iDeCoで所得控除を受けるためには、「小規模企業共済等掛金控除」の申告が必要です。
小規模企業共済等掛金控除とは、所得控除のひとつで年間に支払った掛金の全額を所得控除の対象にします。
小規模企業共済等掛金控除は、確定申告書に掛金の額を記入する欄があり、掛金払込証明書などを添付する必要があります。

掛金払込証明書などは金融機関から11月頃に送付されてくるため、10月以降にiDeCoへ加入した場合には、加入時期に応じて証明書の送付が遅れてしまうことに注意してください。

個人事業主におすすめ!iDeCoと併用できる制度


iDeCo以外にも、個人事業主が老後資産を形成するために役立てられる制度はいくつもあります。
中にはiDeCoと併用して活用できる制度もあり、将来に向けてより豊かな資産を形成していくことも可能です。
具体的にどのような制度と併用できるのか、iDeCoとの違いと合わせて解説します。

NISA

NISAは、安定した資産形成をサポートするための制度です。NISA口座を開設して金融商品を運用した場合に得られる配当や分配金、譲渡金などはすべて非課税になります。
iDeCoは所得控除を受けつつ年金を拠出できる制度であるのに対し、NISAは金融商品をいつでも売却できるため世帯の状況に合わせて自由に使える制度です。

また、運用期間中の課税はどちらも非課税ではあるものの、掛金の所得控除や受取時の控除はNISAでは利用できません。
これらの特徴を踏まえた上で、iDeCoとNISAの併用を検討してみてください。

小規模企業共済

小規模企業共済とは、個人事業主や自営業者などが利用できる、積立による退職金制度です。
小規模企業共済はiDeCoと同様に毎月の掛金が全額所得控除になるため、高い節税効果に期待できます。
また、廃業などで共済金を受け取る際には、まとめて受け取ると退職所得として扱われます。
しかし、分割で受け取ると公的年金などの雑所得として扱われるため、税制優遇を受けることが可能です。

iDeCoは自分で金融商品を選び運用しますが、小規模企業共済は国の機関である中小機構が運用を行います。
共済金の種類によって異なるものの、3年以上加入していれば掛金の総額よりも多く受け取ることが可能であり、元本割れを起こすリスクは低いです。
ただし、240カ月(20年)未満で任意解約をすると解約手当金が発生するので注意してください。

国民年金基金

国民年金基金とは、個人事業主や自営業など国民年金の第1号被保険者が加入できる公的年金制度です。
国民年金に上乗せをする形で納めていれば、受け取れる年金額もその分増やすことが可能です。

iDeCoと国民年金基金はいずれも老後の資産形成に役立つ制度ではあるものの、いくつか違いもあります。
iDeCoの場合、運用結果によって将来の受給額も変動しますが、国民年金基金の場合は加入時の年齢やプランに合わせて掛金を支払っていれば受給額が確定します。
将来受け取れる受給額を確認できることは国民年金基金のメリットです。

なお、iDeCoと国民年金基金は併用が可能です。ただし、掛金の合計が月68,000円を超えないように設定する必要があります。

付加年金

付加年金は、国民年金の第1号被保険者や任意被保険者が加入できる年金制度です。毎月の年金保険料に月額400円を上乗せすると、将来受け取れる年金額が増えます。
月額400円になるため負担が小さく、年金受給から2年間で支払った保険料分を回収できるため、2年で元が取れるお得さも魅力です。

ただし、年金を受給する前に亡くなってしまうと、納付した付加年金は返金されないことに注意が必要です。
また、iDeCoとの併用は可能ですが、国民年金基金と同様に掛金の上限を超えないようにしなくてはなりません。
付加年金は月額400円と決まっているため、iDeCoの上限額は68,000円-400円=67,600円です。
しかし、制度上1,000円単位で切り捨てとなるため、67,000円を超えないように掛金を設定する必要があります。

個人年金保険

個人年金保険とは、公的年金制度に上乗せをする形で利用できる年金保険です。
保険料を払い込み、契約時に定めた年齢に達すると、一定期間または一生涯にわたって年金を受け取れます。
個人年金保険を利用すると、生命保険料控除の対象になるため、所得税・住民税の軽減にも期待できます。

ただし、中途解約すると、払い込んだ保険料よりも解約返戻金が下回ってしまうかもしれません。
iDeCoとの併用を考えた際に、個人年金保険なら途中で解約することは可能ですが、損をすることになるので注意してください。

まとめ・毎月の負担も考慮しつつiDeCoで老後資金を積み立てよう

iDeCoは老後資金を確保しつつ、節税効果も期待できる年金制度です。
iDeCoは老後資金の確保や節税効果などのメリットがある一方で、原則60歳まで引き出せなかったり、元本割れを起こすリスクがあったりするなど注意すべきポイントもあります。
今回紹介した内容を参考にしつつ、iDeCoを活用して今から老後資金を積み立てておいてください。

創業手帳(冊子版)は、個人事業主に役立つ様々な情報をお届けしています。iDeCoやNISAなど、資産形成に役立つ情報もお伝えしているので、ぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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