個人事業主のレンタルオフィス利用は経費になる?知っておきたい節税のポイント

創業手帳

個人事業主はレンタルオフィスの経費計上を確実に実施しよう


個人事業主の収入は、売上から経費を差し引いて計算します。経費は個人事業主の収入を左右する大切なものなので、漏れがないように計上してください。

レンタルオフィスの利用料や入会料金はつい計上し忘れがちな支出です。
どのように会計処理するのか、経費として認められる範囲はどこまでなのかを確認しておきましょう。

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レンタルオフィスは経費計上ができる


ビジネスを始めるためにオフィスを用意する場合、必要な設備をすぐに揃えられるレンタルオフィスが便利です。
オフィスを自分で用意すると家賃の負担が大きくなるため、レンタルオフィスを活用する人も多いかもしれません。

オフィスの家賃は地代家賃として経費計上できますが、レンタルオフィスを使った場合にはどうなるのでしょうか。
レンタルオフィスの扱いについて説明します。

事業に関連する費用なら経費計上が可能

レンタルオフィスを事業に使っている場合は、その利用料を経費として計上できます
具体的には、レンタルオフィスを事務所として借りて業務をしたり、事業に関係するミーティングや打ち合わせ、ディスカッションを開いたりするケースです。
レンタルオフィスに関連する費用として計上できるのは、家賃だけではありません。交通費も、経費として経費計上できます。

事務所や仕事場は別にあるもののサブとしてレンタルオフィスを借りて仕事をするケースもあるでしょう。
メインではない形でレンタルオフィスを利用するケースであっても、利用料を経費に計上可能です。
交通費や領収書は必ず保管して計上漏れがないようにしてください。

経費計上できないケース

事業に関係するレンタルオフィス利用料は経費計上できます。
しかし、事業に関係しないことでレンタルオフィスを借りた時には、経費計上できません。
そもそも経費は事業所得を得るために必要なお金を指します。事業に関係ないプライベートでのレンタルオフィス費用は経費として認められません。

確定申告で納税額を算出する時には、所得税の対象になる課税所得を確定します。
事業所得は総収入額から必要経費を算出するため、経費を多く計上すればするほど課税所得が少なくなり、課せられる税金も少なくなる仕組みです。
しかし、経費でないものを経費として計上して事業所得を少なくみせる行為は脱税に該当します。
所得税法と法人税では、偽りや不正行為で所得税を免れたり、還付を受けたりする行為はペナルティが課せられます。
知らずに経費計上した場合も申告漏れとして過少申告加算税を支払うことになる場合があるので、注意してください。

【ケース別】レンタルオフィスを経費計上する場合の勘定科目


確定申告をおこなったり、会社の財政状態を把握したりするために、日々の取引きは分類して記録しなければいけません。この分類に使用されるのが、勘定科目です。
レンタルオフィスの利用料も費用として計上してください。
賃借料として計上するのが一般的ですが、月額契約の場合の月額利用料は地代家賃が使われることもあります。

以下ではレンタルオフィスをどのように仕訳するのかケース別に見ていきます。

バーチャルオフィスの場合

バーチャルオフィスは、住所や電話番号だけを借りるオフィスのことをいいます。
作業スペースを貸し出すレンタルオフィスとは違って、実際に場所として利用することはなく住所と電話番号だけを使います。
バーチャルオフィスは登記用の住所や郵便受け取り、受付窓口としてサービスを利用可能です。

バーチャルオフィスという名前ではありますが、あくまでサービスの利用料といえるため「支払手数料」として計上されることが多いようです。
しかし、名目はオフィスなので賃借料でも間違いではありません。後から確認した時にわかりやすい勘定科目を選択してください。

ドロップインの場合

ドロップインは、英語で「drop in」です。ふらりと立ち寄ることを意味する言葉で、レンタルオフィスのドロップインは一時利用を意味しています。

ドロップインのレンタルオフィスは固定費ではないため、地代家賃になりません。
雑費として処理できますが、コンスタントに利用するのであれば会議費としても処理できます。

ドロップイン利用のように、どちらでも計上できるような複数の性質がある費用は珍しくありません。その性質ごとに個別に判断してください。

その他のケース

レンタルオフィスの月額利用料金を地代家賃として計上していても、別に会議室を借りた場合には、その費用を会議費として計上します。
また、レンタルオフィスで使用するモニターやホワイトボードといった備品を借りた場合にも、会議費もしくは賃借料で計上可能です。

判断基準は事業に関係するのかどうかであり、会議室でなくても仕事に使っていれば経費計上可能です。
レンタルオフィスに限らず、カフェや貸会議室で仕事をした場合も会議費で処理することができます。
また、会議室を借りたとしても、商品の説明会やプロモーションをおこなった場合には、広告宣伝費や販売促進費を使用することがあります。
セミナーを開催した時には、「セミナー運営費」で処理することが可能です。

レンタルオフィスの多くは、プリンターや複合機が設置されていて料金を支払えば自由に利用できます。
プリンターを利用した場合の費用は、事務関係の備品に関わる「事務用品費」や「消耗品費」を使うのが一般的です。
ただし、この場合も商品説明やプロモーションの資料を印刷した場合には、広告宣伝費に含められます。

レンタルオフィスの印刷代は、別途レシートが出力されたり、料金請求書に別途記載があったりとそれぞれに違いがあります。
後から費用の内訳がわかるように請求書やレシートを整理して保管してください。

レンタルオフィスに関連する経費の会計処理・仕訳方法


レンタルオフィスを借りた場合には、その内容に応じた科目で会計処理しなければいけません。
どのように仕訳するのか具体例を紹介します。

レンタルオフィス利用料

レンタルオフィスの利用料は、オフィスの場所を借りたことに対する費用なので、賃借料を使って仕訳できます。
レンタルオフィスの中にはパソコンやルーターといった通信関連のサービスが利用できることもありますが、まとめて「賃借料」で処理します。

一方で、レンタルオフィスの利用料を、区切られた空間を独占使用するための費用と考えれば地代家賃とすることも可能です。
また、建物賃貸借契約を締結していれば地代家賃とする考え方もあります。
ただし、地代家賃とした場合には、機器やサービス利用料は地代家賃には含められません。
それぞれ別個の勘定科目となるため、レンタルオフィスに関する費用をまとめたい場合には賃借料のほうが簡単です。

【例】
レンタルオフィスの利用料として50,000円とオフィス機器使用料として5,000円を支払った。
レンタルオフィスの利用料と機器使用料は賃借料として処理する。

借方 貸方
賃借料 55,000円 普通預金 55,000円

レンタルオフィスの入会費や事務手数料

多くのレンタルオフィスでは、初回利用時に入会金を支払います。
また、入会に際して事務手数料がかかる場合もあります。入会金は諸会費、事務手数料は支払手数料で処理するのが一般的です。

【例】
レンタルオフィス利用時に入会金10,000円と事務手数料3,000円を支払った。

借方 貸方
諸会費 10,000円 普通預金 13,000円
支払手数料 3,000円

ロッカー・フォンブースの利用料

レンタルオフィスでは、貸ロッカーやフォンブースを用意していることがあります。ロッカーやフォンブースの利用料は雑費か賃借料で処理できます。

【例】
レンタルオフィスにて貸ロッカー代として1,000円を支払った。

借方 貸方
雑費 1,000円 普通預金 1,000円

ドロップインの利用料

起業したてでオフィスが用意できていなかったり、外出先で仕事をしたりドロップインのレンタルオフィスを利用した時には、雑費や会議として処理します。
ただし、雑費としてしまうとほかの雑費と混乱しやすいかもしれません。摘要欄も利用して、後からわかるようにしてください。

【例】
打ち合わせをするために、レンタルオフィスを利用した。利用料金は2,000円である。

借方 貸方
会議費 2,000円 普通預金 2,000円

カフェの代金

カフェで会議やミーティングをした場合には、コーヒー代などを会議費として計上可能です。

【例】
打ち合わせにカフェを利用して、コーヒー代1,000円を支払った。

借方 貸方
会議費 1,000円 普通預金 1,000円

貸会議室の利用料

貸会議室を利用した場合にも会議費で計上できます。ただし、商品説明会などの場合には広告宣伝費や販売促進費として処理することもできます。

【例】
新商品の説明会のために貸会議室を利用して、10,000円を支払った。

借方 貸方
広告宣伝費 10,000円 普通預金 10,000円

コピー機の利用料

コピー機の使用料を支払った場合には、消耗品費や事務用品費で処理します。

【例】
レンタルオフィスでコピー機の使用料金として200円を支払った。

借方 貸方
消耗品費 200円 普通預金 200円

レンタルオフィスの利用料を経費にする方法・注意点


レンタルオフィスの会計処理は基本がわかれば難しい部分はありません。会計処理する時に注意してほしいポイントをまとめました。

レシートや領収書は保管しておく

レンタルオフィスに限らず、事業主は帳簿に取引きを記録しておくとともに、取引きで受け取った領収書やレシートを保管しなければいけません

個人事業主の領収書の保管期間は、その事業年度の確定申告書提出期限の翌日から青色申告で7年間、白色申告の場合には5年間です。
ただし、赤字になった事業年度は10年間保管します。
保管スペースに余裕がある場合や、電子データで保管スペースが必要ない場合には一律に10年間保管するルールも検討してください。

また、領収書やレシートは後から見てわかるようにしておきましょう。
会議で使ったカフェや出張先で利用したレンタルオフィスなど、整理しておかないと見返した時に何の費用かわからなくなるものもあるかもしれません。
会議費であれば、誰と何の目的だったのかまでメモしておくと後から混乱しにくくなります。

処理の都度同じ勘定科目を使う

レンタルオフィスに関わる費用の会計処理については前述しました。同じ支出であっても、支出の目的によって勘定科目が違うことがあります。

コピー機の使用料であれば消耗品費で計上するか、広告宣伝費とするかは担当者の判断に委ねられます。
経費の計上科目を選ぶポイントは、後から取引きを見返してわかるようにすることです。
一定のルールで会計処理しないと後から経費を集計した時に混乱する原因となります。

同じ目的の支出であれば、処理の都度同じ勘定科目を使うようにしてください。
レンタルオフィスの利用料金を前は賃借料としていたのに、今回は地代家賃とするといった一貫性がない処理は避けましょう。
同じ勘定科目として、いつ何にどれだけ使ったかを明確にしてください。

税務調査で説明できるようにしておく

確定申告は、売上げから経費を差し引いて事業所得を計算するため、経費を計上すればそれだけ納税額を少なくできます。
しかし、経費を計上したいからといって、事業と関係ない費用まで計上するのは避けてください。

プライベートで使用したレンタルオフィスやカフェ代は経費計上できません。事業との関連性が疑わしい場合には、税務調査で指摘されることもあります。
経費計上するのは事業に関係する経費だけにして、税務調査で説明できるように経費の内容は記録しておきましょう
日付と金額、勘定科目だけでなく、何の目的で誰と利用したのかを記載しておくと便利です。

まとめ・レンタルオフィスの会計処理を理解しよう

事業のためにレンタルオフィスを使った時には、入会金や利用料金を経費として計上できます。どのような理由で使ったのか、用途に応じて会計処理してください。
レンタルオフィスでは、利用料金以外にも様々な費用が発生します。支出の内容に応じて勘定科目を選んでください。

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(編集:創業手帳編集部)

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