起業を家族に反対されたら?説得のポイントと考え方

創業手帳

家族と向き合いながら信頼を得るのが大切


「起業したい」と話した途端、家族から猛反対、そのような経験を持つ人は、決して少なくありません。
しかし、家族の反対を無理に押し切って起業するのはあまりおすすめできない選択肢です。大切な人の理解を得ることは、起業を成功に導くまでの大きな支えにもなります。

本記事では、家族に反対された時の対処法と、説得に必要な考え方を紹介します。

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なぜ家族は起業に反対するのか?


家族が企業に反対していると感じた時に、どうして応援してくれないのかといらだちを感じる人もいるかもしれません。
しかし、反対の背景には心配や不安があります。家族を責める前に、まずは相手の視点に立つことが大切です。

ここからは、家族がなぜ企業に反対するのかその理由について深堀りしていきます。

金銭面の不安

起業に反対する理由として、まずはじめに出てくるのは金銭面での不安です。会社員は毎月決まった給与を受け取れますが、退職すれば収入は事業次第です。
売上げの変動によっては赤字が続くかもしれません。

今まで受け取ってきた給与が世帯収入の多くを占めている場合、起業した後の生活をどう安定させるかが課題となります。
さらに起業するために費用が発生する場合、どうやって資金を捻出するかも問題です。起業のために借金をしてしまえば、将来への不安も強まります。
起業する前に、このような金銭面での不安をどうやって解決するかを考えておかなければいけません。

生活面の不安

会社員の生活は、決まった時間で働くのが一般的です。一方で起業すれば労働基準法の対象外なり、働く時間の管理は自分でしなければいけません。

起業したては人手や資金不足を自分で補わなければならないため、労働時間や負担が増えてしまうことがあります。
家族は、働きっぱなしになり、休みがなくなってしまうのではないか、子どもと一緒に過ごす時間がなくなるのではないかと不安から起業を拒否するかもしれません。
家族像が変化して自分が描いていた生活から変化してしまうことに対して不安を感じてしまうのです。

社会的信用度への不安

一般論として、会社員は組織に属しているため社会的信用度が高い立場です。特に大企業の正社員であれば、ステータスに感じる人も多いでしょう。

しかし、起業すれば会社のブランドは使えなくなり社会的信用が変化します。
会社員と比較して、クレジットカードやローンの審査が通過しにくくなるといった影響があるかもしれません。

起業へのマイナスイメージがある

多くの人が、「起業はハイリスクで成功できるのはほんの一握り」といった思い込みを持っています。
起業のために借金したが失敗して返済できなくなった過去の失敗例を見聞きしたことがあれば、起業にマイナスイメージがあっても仕方がないことです。

また、上の年代は就職すれば終身雇用で一生安定した暮らしを送れるのが普通と思い込んでいるかもしれません。
そのため、なぜ安定した立場を捨てるのかと感じてしまうことがあります。

起業する理由に納得できない

起業を伝える時に大切なのは、なぜ起業したいのかをはっきりと説明することです。
「自由に働きたい」「組織に属するのは嫌だ」といった理由では、起業する理由として不十分だと受け取られてしまうかもしれません。
時間や手間をかけても、起業する理由をわかるように伝えるのは家族としての義務です。
家族の応援を得るためにも、あいまいな理由を伝えるのではなく前向きな起業したい理由を伝えてください。

ありがちな“説得の失敗例”とは?


起業へのモチベーションが向上している時には、家族への説明は軽視してしまうかもしれません。しかし、後から理解してもらえればいいと考えるのはおすすめできません。
説明を怠った結果、起業への熱意が空回りして家族との溝を深めるケースもあります。最悪の場合は、起業もうまくいかず家族との関係も修復できないリスクもあるのです。

+起業する時にありがちな失敗例として根拠のない「絶対うまくいく」発言があります。
勢いで「絶対成功するから!」「心配いらない!」といっても、熱意に反して相手はかえって不安になります。

まずは、具体的な数字・根拠・準備状況を伝えることが大切です。
起業について話す時には、ビジネスの内容が曖昧なまま話すのはNGです。「なんとなく独立する」「とりあえずやってみる」といった抽象的な話では信用されません。
最低限、具体的なビジネスモデル・見込み顧客・資金計画は整理して説明してください。
話をしている時に「大丈夫だから」「そのような心配しなくていい」と相手の不安を否定してしまうと、相手は「私の意見を聞いてくれない」と感じます。
不安は一度受け止め、冷静に説明してください。
話がうまくいかないからと逆ギレ・無断スタートのように強引な実行は絶対に避けたほうが良いでしょう。

家族の理解を得られないからと、強行突破してしまうと信頼関係は大きく損なわれます
起業は長期戦です。時間がかかっても最初の理解形成を丁寧に進めることが、後の支えになるはずです。

まずは不安の正体を“見える化”しよう


家族に起業を反対された時には、不安を受け止めてその正体を“見える化”する必要があります。
まず相手の反対理由を「否定」ではなく「確認」することがスタートです。家族で不安を共有することで、一緒に考える姿勢が伝わります。
家族の不安を聞くには、単刀直入に何が一番不安か聞いてみてください。

例えば「収入減少が不安」「失敗した時、家族はどうなるの?」など、相手が心配している本音を引き出します。
会話の中で出てきた不安は、必ず紙やメモアプリに書き出してください。
目に見える形にすることで、漠然とした不安が整理され、「何から手をつければいいか」が見えてきます。

不安は、付箋にひとつずつ記載すると後の分類がやりやすくなります。不安を書き出した時にはお金・健康・時間・家族への影響に分類して考えてください。
例えば、収入減や貯金の目減りはお金の不安、働きすぎ、体調管理は健康、家族と過ごす時間の減少は時間の不安や家族への影響です。
このように分類すると、具体的な対策も立てやすくなります。不安はあいまいにするよりも区分してひとつずつ対処していきましょう。

伝えるべき“5つのポイント”を整理しよう


相手を説得する時、「感情」で押し切るのではなく「情報」で納得してもらうことが重要です。感情はいずれ冷めてしまって、不満や不信感につながります。
ここでは、家族に伝えておくべき5つのポイントをまとめました。

なぜ起業したいのか(動機)

家族を説得するには、なぜ起業したいのか動機を伝えるようにします。
ただ「自由に働きたい」「会社が嫌だから」といった理由は単純な逃避と受け取られる可能性があり、説得力がありません。
家族に伝えるポイントは前向きな動機を強調して、逃げではないことを見せることです。

具体的には、市場にまだないサービスを生み出したい、人生の限られた時間を、自分の価値観に沿った働き方に使いたいといったものです。
今の職場への不満を伝える時にも、自分の強みやスキルが活かしきれないといった将来につながる内容にしてください。

ビジネスとして何をやるのか

家族にはなす時には、事業計画書をベースに「何を売るのか」「誰に売るのか」「なぜそれに需要があるのか」を話してください。
事業計画書には、ビジネスの概要や資金の運用計画をまとめます。
より現実的に話すためには、想定する客単価や客数、売上げといった数字を入れてください。

例えば、ネイルサロン経営であれば、どれだけの設備が必要で1日何名が来店すればいいのか、講師やコンサルタント業であれば、どれだけの相談や有料添削の申し込みがあれば利益が出るのか計算します。
事業計画書は、家族を説得する時だけでなく、資金調達のステップでも必ず求められます。事業の将来性や実現可能性を判断するためにも必ず作成してください。

どのような準備をしているか

家族に起業なんてすぐ失敗しそうと思われないためには、準備内容を具体的に話します。
どこまで準備しているのか進行状況や小さな実績を示して、企業に対する意思を伝えてください。

近年の起業は、起業するためににかかる費用も少なくスモールステップではじめられます。
例えば、副業としてすでに月数万円の売上げを立てていたり、SNSやホームページ、サービスの内容を整備したり準備も低コストでできるでしょう。
宅建・FP・キャリアコンサルタントのように資格を活用したビジネスであれば試験に合格しておくことも実績といえます。

また、商工会議所では起業者向けに専門家や実業家に相談できる窓口が用意されているので、ビジネスプランについて意見をもらうことも検討してください。

初期の生活資金はどうするか

家族にとって、「家計が破綻しないか」が最大の心配ポイントです。家族の応援を獲得するには、現実的な資金管理の姿勢を見せてください。
具体的には、固定費の資産も示して数カ月分の生活費準備をしておいたり、副業やパートで生活費の一部を稼いだりする方法あります。

起業に反対する家族の中には、開業には大きな費用が必要と思い込んでいる人もいるかもしれません。
自宅や保有している土地を使って小規模スタートする計画も検討してください。
事業用の口座を分け、家計と事業の支出を混同しないように管理して、家計への影響を最低限にすることも重要です。

ダメだった時の“出口”を用意しているか

家族が起業について考える時に、気になるのが失敗したらどうするのかです。
絶対に失敗しないと根拠なく断言するよりも、失敗した時の対応に答えられるようにすると信頼を獲得しやすくなります。
最悪のシナリオになるのであまり考えたくないかもしれません。しかし、ビジネスにおいて現実的な対策を考えておくことはリスクマネジメントとして重要です。

例えば、一定期間(例:半年間、1年)で目標未達なら撤退を決めておく、事業で得たスキルを活かして再就職すると決めるといった出口が現実的です。
ビジネスは、投下資金が大きくなり、手がける時間が長くなれば、それだけ撤退しにくくなります。
資金が尽きる前に撤退ラインを設定し、貯金の一部は絶対に手をつけないと決めておいたほうが良いでしょう。

「信頼を得るステップ」を踏もう


家族に企業の相談をしてすぐに応援されるケースはまれです。いきなり説得ではなく、段階を踏んで安心感を積み重ねてください。

スモールステップで動きながら見せる

家族が起業に対してネガティブな場合、まずは副業で試す、1件だけ受注してみるといった、小さな一歩を見せることが効果的です。

業務委託として仕事を請け負って実績を作ったり、モニターを依頼してレビューをもらったりできることは多くあります。
実際に売上げを作っていくと、規模を大きくして起業することに現実味が生まれます。

事業計画書や収支予測を一緒に確認してもらう

自分が手掛けようとしている事業を知ってもらうには、事業計画書や収支予測を一緒に作成してみてください。
5年後、10年後のビジョンを見据えた計画がたてられれば、説得する十分な根拠になります。
事業計画書や収支予測に必要なのは固定費、変動費の情報と収入見込み、うまくいかなかった時の撤退プランです。

固定費には家賃やサーバー代などがあり、変動費には仕入れ費用があります。収入の見込みは最初は月〇万円、半年後に〇万円と、ある程度先を見通した計画を立ててください。

定期的に進捗報告をする

起業準備を進める間にも必ず進捗報告が必要です。何もいわずにいると家族に「ほったらかし感」を与えてしまいます。
毎月(または2週間ごと)に「今どこまで進んだか」を話すと決めておくほか、SNSやクラウドソーシングでの成果、勉強の進み具合を報告する方法もあります。

進捗報告では、うそやごまかしは厳禁です。課題や悩みも正直に共有し、相談する姿勢を見せるようにしてください。

家計・生活への影響を最小限にする努力を見せる

家族への説明で一番大事なのは、「家族が守られる」という安心感と与えることです。家計や生活への影響を最小限にするための努力を見せるようにします。

例えば、個人の貯金から初期費用を出す、副業・アルバイトを平行して行うなど生活に影響を与えない努力が必要です。
家計簿アプリなどを共有して、透明性を確保するのも効果的です。

起業する時には、リスクを最小限にするために高額な設備投資(例:事務所、専門機材)は段階的に導入するといった工夫も考えてください。

どうしても理解されない時は?


起業するために家族の理解は大事です。しかし、全面的に否定されたり、意見がすれ違ってしまうこともあります。
どうしても理解できない時にはどうすればいいのか考えてみます。

反対=敵ではなく、「慎重派」と捉える

自分の意見に反対されると人はどうしても相手が自分に対して敵対しているととらえがちです。しかし、家族の反対は挑戦を妨げる敵ではなく、ただの慎重派の意見です。
あなたのことを心配しているからこそ、不安を言葉にしているだけで敵ではありません。
相手を責めるのではなく、「ありがとう。リスクを考えるきっかけになった」と受け止める姿勢が、かえって信頼を積み上げる結果につながります。

相談と承認を分けて考える

家族に相談することは大切ですが、あまりに承認や許可を求めすぎると自立が遠のきます。
必ず一線を引いて、相談はするけれど最終決定は自分であるスタンスを維持してください。
相談はあくまで相談であり、相手にゆだねていいわけではありません。。相手の意見を聞き、感謝を伝えつつ、最終判断は自分が背負う覚悟を持ってください。

まずは副業・夜間起業などリスク分散も手

家族に生活や金銭の問題を理由に反対された時には、いきなり会社を辞めるのではなく、副業や週末起業からスタートしてみてください。
副業や休日企業、夜間企業であれば家族の生活を脅かさず、失敗のダメージも抑えられます
思っていた規模よりも小さな企業であっても、最初の実績を積んでから本業に育てたいと話せば、説得材料になります。

一時的に“成果で見せる”ことも有効

起業について話し合いだけでは納得が難しい場合は、まずは小さな成果を作ってください。

例えば「副業で月3万円稼いだ」「初めての取引先と実績を作った」といった具体的な成果は、言葉以上に説得力があります。
数字や体験談を提示して、将来の可能性を見せることが一番の武器になります。成果を見せた上で、どのように事業拡大するのかを伝えてください。

まとめ|反対を“壁”ではなく、“橋”に変えるために

家族に起業に反対されることは決して珍しくありません。大切なのは共感を得ることと、段階や準備を間違えないことです。
家族だけでなく自分自身も起業のリスクを不安に感じるかもしれません。しかし、知識を身につけたり、実際に動き出したりすることで視野が広がります。
家族の反対は拒絶する壁ではなく、世界を広げる架け橋になりえます。家族と向き合いながら、一歩ずつ信頼を重ねてください。それが、起業の成功にもつながるでしょう。

起業をするにはまず準備が大事です。きちんと準備をしていることを家族にアピールするためにも、ぜひ「創業手帳」をご活用ください。起業するために最低限必要なノウハウがこの一冊にまとまっています。

また、「何をどう準備したらよいかわからない」という方は「創業カレンダー」もあわせてご活用いただく事で、より準備が万全となります。起業予定日を入力すると、前後1年間のやることが明確になります。

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(編集:創業手帳編集部)

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