「起業支援金」とは?概要や地方で起業するメリットを解説
政府が地方創生に向けた起業を助成する起業支援金推進
内閣府は、地方の活性化に向けて地方への移住や起業を推進する取り組みとして「地方創生移住支援事業」を手掛けています。
地方創生移住支援事業では、地方で起業を計画している人にたいして、伴走支援と事業費への助成で「起業支援金」を交付しているのが特徴です。
この起業支援金とは、どのような人が対象となっているのでしょう。また、起業支援金を活用して地方で起業するメリットはあるのか気になる方も多いはずです。
そこで今回は、起業支援金の概要や地方で起業するメリット、実際の採択事例をご紹介します。
起業支援金以外に、地方での起業に活用できる補助金・融資制度もご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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この記事の目次
起業支援金とは?
起業支援金とは、各自治体が地域の課題を解決することを目的に、起業を計画する方に向けて伴走支援と事業費への助成を行う制度です。
この支援金制度を通じて効果的な起業を促し、地方創生の実現を目指しています。
交付される支援金は最大200万円までで、事業分野は子育て支援から地域の特産品を活用する飲食店、買い物弱者への支援、まちづくり推進など、幅広い分野が該当します。
起業支援金の対象者
起業支援金の対象者は新規で起業する場合と、事業承継または第二創業の場合でそれぞれ条件が異なります。
1.新規で起業する場合
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- 東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域で社会的事業に関する起業を行う
- 国の交付決定日から補助事業期間が完了するまでに、個人開業届または法人設立の手続きを行う
- 起業地の都道府県内に居住している、または居住する予定がある
2.事業承継または第二創業の場合
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- 東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域で、Society5.0関連の業種など付加価値の高い分野で、社会的事業を事業承継または第二創業で実施する
- 国の交付決定日から補助事業期間が完了するまでに、事業承継または第二創業をする
- 本事業を手掛ける都道府県内に居住している、または居住する予定がある
これら条件のすべてを満たすことで起業支援金の対象になります。
東京圏とは
対象者の条件にある「東京圏」とは、東京都だけでなく近隣の埼玉県、千葉県、神奈川県を含むエリアを指します。
東京圏は都心部に近いことから、地方とはみなされず、地方創生のための起業支援金の対象からは外れてしまいます。
上記の条件に当てはめると、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県でその地域に役立つ事業を始めたとしても、起業支援金は利用できないので注意が必要です。
ただし、例外の地域も存在します。
条件不利地域とは
条件不利地域とは、東京圏内にありながら以下の法律の対象地域を有する市区町村を指します。
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- 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法
- 山村振興法
- 離島振興法
- 半島振興法
- 小笠原諸島振興開発特別措置法
ただし、これらの法律の対象地域に含まれていたとしても、政令指定都市は対象外となります。
東京圏内にある条件不利地域の市町村は以下のとおりです。
東京圏内の都県 | 条件不利地域の市町村 |
---|---|
東京都 | 檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村 |
埼玉県 | 秩父市、反応し、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町 |
千葉県 | 館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、東庄町、九十九里町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町 |
神奈川県 | 山北町、真鶴町、清川町 |
起業支援金を交付するまでの流れ
起業支援金を申請するためには、まず公募が開始されてから執行団体に対して起業支援金の申請を提出します。
その後団体での審査が行われ、問題がなければ交付が決定します。
交付が決定してから、開業届や法人の立ち上げを行い、完了したら伴走支援でサポートを受けつつ実績を定期的に報告していきます。ここでようやく支援金が支払われるのです。
起業支援金の執行団体は都道府県が選定しており、事業計画の審査から事業立ち上げをサポートする伴走支援なども提供しています。
起業支援金を活用して地方で起業するメリット
起業支援金を活用して地方で起業した場合、都市部での起業と比べてどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、地方で起業するメリットを解説していきます。
都市部よりも費用を抑えて起業できる
まず大きなメリットとして、都市部よりも費用を抑えて起業できる点が挙げられます。
地方での起業では都市部と同様に、オフィスの賃料や人件費などのコストが発生しやすいです。
しかし、地方だと都市部に比べてオフィスの賃料や人件費(各都道府県の最低賃金)などを抑えられます。
そのため、起業するにあたって初期費用・ランニングコストをなるべく抑えたい方には、起業支援金を活用した地方での起業がおすすめです。
小規模でも地域のトップシェアを目指せる
ビジネスで成功を収めるには、いかに競合の少ない市場を見つけるかが重要になってきます。
また、自分のお店をオープンさせる際に利用者層に合った立地を選ぶことも大切です。
都市部の場合、すでにどの業種でも多くの企業が参入しており、好立地の不動産を見つけたとしても高額な賃料で諦めざるを得ない場合もあります。
しかし、地方であれば競合自体が少なく、大手企業が参入していない地域もみられます。
場合によっては土地代・オフィス代など不動産にかかる料金も低いので、小規模でもコストを抑えつつ地域のトップシェアを目指すことも可能です。
地域ならではのネットワークを活用できる
地方では起業家同士のつながりも活発に行われており、地域ならではのネットワークを活かして新たなビジネスチャンスをつかむこともできます。
それぞれの強みを活かしたり、弱みをカバーしたりすることで、地域全体を活性化しながら起業への成功にもつながるでしょう。
商工会の動きも活発で、積極的に支援してもらえることが期待できます。
都市部ではあまり見られないネットワークを活用できるのは、地方で起業するメリットの1つと言えます。
地方自治体とも連携しやすい
地方によって異なりますが、都市部に比べて自治体との連携も図りやすくなっています。
地方自治体と民間企業が官民連携を図り、良好な関係性を構築することで、これまでは一企業だけで進めていくのは困難だったビジネスモデルの支援が受けられます。
ただし、地方のやり方をすべて無視した上で連携を取ろうとしても難しいため、良好な関係性を構築するためにも地域に根差す形を目指すことが大切です。
起業支援金の採択事例
起業支援金の申請を行い、実際に採択した事例も紹介されています。ここでは3つの採択事例について詳しく解説します。
産地直送サービスで地域の飲食店と農家をつなぐ
岡山県津山市の採択事例では、都市部の飲食店が求める野菜を岡山県北の農家に対して生産依頼を行い、ECサイトから飲食店へ野菜を直送する事業への起業支援金交付が決定しました。
岡山県津山市では農業が盛んではあるものの、農業自体は重労働であるにもかかわらず収益の確保が難しいという問題点があります。
また、少子高齢化が進んでいながら若年層の農業への関心が低いということもあり、生産量の維持も難しい状態が続いていました。
こうした課題を解決するために、起業支援金を活用して新たなビジネスモデルを計画し、都市部の飲食店と野菜の生産者を結ぶECサイトを誕生させました。
宅配便で新鮮な野菜が直送されていくため、飲食店側は提供する料理のクオリティも高まります。
また、農家も手数料分は差し引かれてしまうものの、付加価値の高い野菜を生産することで収益を安定して確保できるようになります。
地域に新たな子育てサービスを展開
京都府の一例では、起業支援金を活用して24時間・土日祝・他地域派遣なども可能なオーダーメイド出張保育のサービスが提供されるようになりました。
この保育サービスは、0歳~15歳までの子どもを対象に、多種多様なニーズに合わせて保育士を派遣できるサービスです。
保育園などでも預かり保育は行っていますが、審査や時間の制約があるなど、緊急時だと対応してもらえない場合もあります。
しかし、オーダーメイド出張保育なら審査や時間の制約もないため、安心して活用できます。
また、オーダーメイド出張保育サービス以外にも24時間対応の託児所を展開し、1時間から託児所を利用できるようになっています。
地方の就職率安定にも寄与する動画制作会社
長野県の起業支援金を活用し、地域企業の魅力を発信する動画や社内教育用の動画制作、また地域企業の採用プラットフォーム運営を手掛ける企業が設立されました。
当初の事業計画では企業の動画制作のみでしたが、起業支援金を活用したことで採用プラットフォームの作成・運営も開始できています。
これは支援員によるアドバイスを受けた結果であり、動画制作だけでなくさらに地域の課題解決を掘り下げたことで採用プラットフォームの作成・運営につながりました。
このプラットフォームは若者が希望する企業の動画をすぐに閲覧できる仕組みになっており、地方の就職率安定にも寄与することが期待されています。
起業支援金は移住支援金と組み合わせることも可能
内閣府の地方創生に関する支援事業には、起業支援金のほかに「移住支援金」もあります。この2つはどちらか1つではなく、両方組み合わせて利用することが可能です。
そこで、ここからは移住支援金がどのような制度であり、どれくらいの支援金を受け取れるのか解説していきます。
移住支援金の概要
移住支援金とは、東京都23区に在住または通勤している方が、東京圏外(東京圏の条件不利地域も含む)に移住し、起業・就職などを行う人に対して交付金を支給する事業です。
移住先では、以下を行うことが条件となります。
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- 都道府県が実施するマッチングサイトやマッチング拠点を活用して地域の中小企業に就業する
- テレワークで移住前の業務を継続する
- 地域で社会的起業を行う
地方へ移住し、就業も決まったら移住先の市町村に移住支援金を申請します。
なお、この事業は地方公共団体が主体となって実施されるものなので、事業を実施する都道府県・市区町村によって制度の詳細が若干異なります。
利用を検討する際は、移住先の候補となる都道府県・市区町村の移住支援金の概要を確認してください。
起業支援金と移住支援金で最大支給額300万円
移住支援金は、単身世帯だと最大60万円、世帯の場合は最大100万円が支給されます。
特に18歳未満の世帯員が帯同して移住してくる場合は、18歳未満1人につき最大30万円が加算されます。起業支援金と組み合わせれば、最大支給額は300万円です。
どれくらいの支給額になるかは企業に要した経費や、移住する家族の世帯人数などで異なるため、事前に確認してみてください。
起業支援金だけじゃない!地方起業に利用できる補助金・融資制度
地方で起業するのに役立つ支援金は起業支援金だけではありません。その他にも地方起業に役立つ補助金・融資制度があります。
日本政策金融公庫「新規開業資金」
日本政策金融公庫の国民生活事業では、多くの方の創業・スタートアップを支援するために「新規開業資金」を提供しています。
新規開業資金を利用できるのは、新規で事業を立ち上げる方または事業開始からおおむね7年以内の方です。
融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金4,800万円となっています。
返済期間は設備資金と運転資金で異なり、設備資金だと20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(うち据置期間5年以内)としています。
新規開業資金は特別利率に該当すると、低利で融資を受けられるため、創業時の金銭的な負担も軽減されるでしょう。
各自治体が実施する支援金・補助金制度
各自治体では地方での起業を促進させるために、独自で支援金・補助金制度を用意しているケースがあります。
例えば長野県小諸市では、小諸市中心市街地にある空き店舗などを活用し、事業を開始しようと計画する方や店舗の増設を考えている方を対象に、改修費の一部を支援する「空き店舗等活用事業補助金」があります。
補助対象の経費は空き店舗等の回収または新・改築費や、附帯施設の設置に必要な経費、空き店舗などの購入費などに利用可能です。
すべての合計額3分の1以内(最大100万円を限度に3年間の分割交付)の金額が支給されます。
また、兵庫県には県内での起業を目指す人のうち、審査会で有望なビジネスプランだと認定された人に、経費の一部を補助する「起業家支援事業(一般事業枠)」があります。
補助金額の上限は100万円(補助率2分の1以内)となっており、空き家を活用する際には改修費に対して別途100万円を上限に加算もされます。
まとめ・起業支援金の活用で地域を盛り上げる事業をスタートさせよう!
地方で起業すると都市部に比べてコストは抑えられるものの、少なからず費用は発生します。
そのため、起業支援金や補助金を利用するのがおすすめです。
少しでも金銭的な負担やリスクを軽減させるためにも、起業支援金を活用して地域の活性化につながる事業を始めてみましょう。
(編集:創業手帳編集部)