決算期(月)は変更できる!メリット・デメリットや手続きのステップも解説
決算期は後から変更できる!
会社は自由に決算期を決められ、変更も認められています。決算期をいつにするかは、経営にかかわる重要事項のひとつです。
決算期がいつであるかによっては取引先とのやり取りにも影響を与えるので、慎重に決定してください。
ここでは決算期を決める時のポイントや、決算期を変更するために必要な手続きをまとめました。
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この記事の目次
決算期を変更するメリット
事業年度の締めとなる決算期は、1年の中でも特別な月です。個人事業主の決算期は12月と決まっていますが、法人の事業年度は1年以内であれば決算期の設定は自由です。
また、決算期は年に2回事業年度を設定することもできます。一般的には、年に1回の決算期と決算日を設定します。
法人は決算期を自由に設定できる上、会社を設立した後で決算期を変えることも可能です。会社設立後に決算期を変更するメリットについて紹介します。
利益を持ち越して節税できる
決算期を変更する最大のメリットは節税です。決算期に大きな利益が出て、納める税金が大幅に増えるケースは少なくありません。
予期せず利益が上がってしまうと、法人税が増えて納税する資金が不足するようなケースも起こります。
そのため、決算期をずらして大きな利益が出る月を来期に持ち越す方法が利用されています。
利益を来期に持ち越すことで、余裕をもって納税資金の準備をしたり、経費を計上して利益を圧縮したりするなど、様々な対策が可能です。
消費税の免税期間を延長できるケースがある
節税の手段として決算期を変更するのであれば、消費税の免税事業者であるかそうでないかも重要です。
基準期間の課税売上高などが1,000万円以下の事業者などは、消費税の納税が免除されます。
また、新しく開業した個人事業主や資本金1,000万円未満の新規設立法人も免除の対象です。
1事業年度での売上げが1,000万円を超えると、超えた事業年度の翌々事業年度から消費税の課税が始まります。
ただし、事業年度を通じて1,000万円を超える売上げが見込めるような場合には、決算期をずらして消費税の免税期間を延長できるケースがあります。
資金繰りを調整できる
事業によっては、特定の時期に売上げが集中していたり、資金繰りの変動が大きくなっていたりすることがあります。
そのような場合には、決算期を変更することで資金繰りを調整しやすくなるかもしれません。
資金に余裕がある時期を事業年度の初めに変更することで、資金繰りの計画を立てやすくなります。
なお、納税は事業年度終了日の翌日から2カ月以内です。
売掛金の回収で資金に余裕がありる時期を納税時期に合わせたり、期末に現預金を多くして資産を購入したりするなど、様々な税金対策が選択できます。
役員報酬の変更タイミングを変えられる
決算期は役員報酬の変更タイミングにも関係しています。
役員報酬の変更はすぐにできるものではありません。同じ決算期内で役員報酬を増減させた時には、その差額を経費として計上できません。
これは企業の恣意的な利益操作を防ぐ目的です。役員報酬を変更するためには、決算期末日から3カ月以内に株主総会を開催して決議を行います。
ただし、決算期を変更すれば役員報酬を変更可能です。すぐに役員報酬を変更したい時には、決算期の変更を利用してください。
事務負担を平準化できる
決算期は、決算書類や申告書の作成のほか、決算予測や節税対策と、業務負担が集中しがちです。
事業での繁忙期と決算期が重なっている場合は、負荷が大きくなるかもしれません。
中小企業では余裕な人員を確保していないことが多く、繁忙期と決算期が重なると負荷が大きくなって人的ミスや過重労働の原因になることがあります。
決算期を変更することによって、事務負担を平準化できれば業務に余裕が生まれます。
事務担当者が働きやすいよう労働を平準化するために、も決算期の変更は有効な手段です。
決算期を変更するデメリット
決算期を変更するメリットを利用できるケースは多くあります。しかし、決算期を変更するデメリットは無視できません。
どのようなデメリットがあるのか確認していきましょう。
次の納税までの期間が短くなる
前述したように、事業年度は1年を超えることはできません。決算期を変更する場合には、次の決算期までの期間が通常の事業年度よりも短い、12カ月未満となります。
決算期を変更することで、短期間で決算処理や納税の準備をしなければいけません。
決算業務が前倒しになるため、経理部門やバックオフィスでの仕事が多くなってしまうことや、税理士など専門家に支払う費用が発生する点に注意してください。
過去の財務や経理データと比較しにくくなる
通常の1年間の事業年度より短い事業年度が生まれることで、今までの財務データとの比較が難しくなってしまいます。会社の財務や業績の変化を確認するためには、損益計算書を比較する方法が一般的です。
しかし、決算期を変更することで期間が変わるため、売上げなど損益計算書のデータの比較が難しくなってしまいます。
季節や月によって売上げや費用の変動が大きい業種の場合には、経営判断をする時に困るかもしれません。
事業年度を変えた時に、データをどのように扱うかは事前に考えておかなければならない事項です。
税金を調整する手間がかかる
事業年度が短くなれば、支払う税金の調整も必要です。事業年度を1年間として計算する減価償却資産の償却限度額は、月数で計算して計上額を調整しなければなりません。
また、中小法人などは年間800万円までの所得に対しては軽減税率が適用されますが、事業年度が短くなることで月割計算することになります。
消費税についても、決算期を変更した年度だけでなく、次年度以降も注意が必要です。
消費税を決める基準期間は前々事業年度ですが、事業年度が1年未満の場合は基準期間になりません。
この場合は、変更した事業年度の開始日である2年前の前日から、1年を経過する日までの間に開始したそれぞれの事業年度を合算した期間が基準期間です。
基準期間がいつになるのか確認してから決算期を変更することをおすすめします。
決算期を変更するための手続きや提出期限
決算期を変更するためには、所定の手続きを行わなければいけません。思い付きで変更できるものではないため、事前に手続きや提出期限を確認してください。
決算期を変更するための手続き
決算期の変更は主に以下のステップで行います。それぞれが重要な手続きが必要になるため、スケジュールを立て計画的に進めてください。
1. 株主総会を開催する
決算期は、会社の定款における事業年度で定められます。つまり、決算期を変更するためには、定款変更のための株主総会決議(特別決議)が必要です。
株主総会を経て事業年度変更が承認されると、原則定款を変更できます。
株主総会で定款変更の特別決議がなされたら、速やかにその内容を記載した株主総会議事録を作成してください。
規模が小さい会社であれば、株主総会を開催せず議事録を作成するケースもあります。
2. 定款を変更する
株主総会の特別決議後に、定款の事業年度を変更することになります。
定款の事業年度の記載は任意ではありますが、一般的には記載されています。そのため、決算期の変更に合わせて定款の変更もしなければなりません。
定款を変更するための費用は発生しませんが、司法書士や行政書士に手続きを依頼すれば依頼料が発生します。
事業年度は登記事項ではないため、変更しても法務局での変更登記は不要です。
3. 税務署に異動届と議事録を提出する
所轄の税務署や都道府県事務所、市区町村役場には異動届出書を提出します。提出時には、決算期変更を決議した株主総会議事録のコピーを添付してください。
以上で公的機関への届け出は完了します。
4. 決算期の変更を関係者に通知する
決算期の変更は自社だけの問題ではありません。必要に応じて取引銀行や得意先、仕入れ先などに対して決算期の変更を連絡してください。
また、許可や認可が必要な許認可事業を行っている場合には、管轄の省庁への届け出が必要になる場合もあります。
どのような届け出が必要か事前に調べておくようにしてください。
決算期を変更する届け出の提出期限は?
決算期の変更は、明確に提出期限が定められているものではありません。
届け出の提出期限については、変更後速やかに提出すると規定されているものの、明確な期限ではありません。
ただし、遅くても決算期変更後の納税月の末日までには提出しておく必要があります。
事業年度の変更に必要な株主総会の特別決議は、変更した決算期の末日までに実施します。
具体的には、3月決算を1月決算にしたい場合には株主総会の特別決議を1月31日までにお行い、変更の届け出を2カ月後の納税月である3月31日までには行わなければなりません。
決算期を変更する時のよくある質問
決算期の変更は、会社の経営自体にかかわる重要な問題です。ここでは、決算期を変更する時によくある質問に対する回答をまとめています。
決算期を変更すると事業年度はどうなる?
決算期の変更について多くの人が気にするのが、事業年度の変更です。決算期を変更することで、1事業年度が12カ月にならない年度が発生します。
会社法と法人税法では事業年度の最長期間が定められていて、原則1年間を超えることは認められていません。
そのため、3月決算の会社が6月決算にする場合、4月から6月までの3カ月を1事業年度として決算、申告を行います。
それ以降は7月から翌年の6月までを1事業年度として、決算、申告することになります。
変更後に最初に迎える決算までの期間が今までよりも短くなるため、納税や決算の準備が忙しくなるかもしれません。
決算期の変更手続きだけでなく、その後の手続き類のスケジュールまで計画しておくようにしましょう。
決算期はいつに変更したらいい?
決算期の変更を考えている会社の中には、どのようなタイミングが良いか決まらないケースがあるかもしれません。
ここでは、決算期を考える時に考えておきたいポイントやタイミングを紹介します。
自社に当てはめてみて、決算期候補を絞ってください。
売上げが上がりきる直前
会社の業種によっては、シーズンによって売上変動が決まっているため、売上げが大きくなる時期を事前に予測できるかもしれません。
そのような場合には、売上げが増える直前を決算期にして、売上げのピークが期首になるように事業年度を設定してみてください。
売上げがピークになる月を決算期にすると、入金が2カ月後の納税に消えてしまう上、節税対策が難しくなります。
一方で、売上げがピークを迎える時期を期初にすれば、年間損益の対策も立てやすくなります。
決算まで時間があるため、経費の計上や節税対策といった工夫も可能です。
繁忙期を避けた時期
自社の繁忙期と閑散期を予測できるのであれば、繁忙期を避けて決算期を設定することも検討してみてください。
法人の決算は用意する書類も多く、株式会社であれば株主総会の手続きも発生します。
また、決算で忙しいのは経理や会計部門だけではありません。
生産や販売では棚卸が忙しく、営業では経営計画や売上げ目標に向けた追い込みの時期です。
本業で忙しくなる繁忙期に煩雑な事務作業が発生すると、現場にかかる負荷が大きくなりすぎてしまいます。
社内の各部門の業務量を考慮して、決算期は繁忙期を避けることをおすすめします。
会社の設立時に合わせる
1年を通じて売上げの変動が少ない場合には、会社の設立や記念日に合わせる方法も使われます。思い入れがある月を決算期にする方法です。
また、事業ごとに許認可や免許の更新が必要な業種の場合には、更新時期に合わせる方法もあります。会社の業務に必要な手続きや提出書を事前に確認しておいてください。
まとめ・決算期を変更して節税に活用しよう!
法人は決算期を自由に設定できる上、手続きを踏めば変更も可能です。
決算業務は多大な時間や労力が発生するため、決算期を変更することによって仕事がしやすくなるケースもあります。
また、売上げに合わせて決算期を変更すれば、節税の計画も立てやすくなります。決算期は、単純な機関の区切りではなく、企業が自社の戦略に合わせて設定するものです。
どの月を決算期にすれば自社に有利になるかをシミュレーションして、変更の手続きを進めてください。
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(編集:創業手帳編集部)