会社の移転はどうすればいい。手続きや準備を解説

創業手帳

会社の移転をスムーズに完了させるために、必要な事前準備・手続きの確認を

会社の移転は、個人の住居の引っ越しと比較してさまざまな手続きや準備が必要です。スムーズに会社の移転を済ませて、新天地でビジネスをおこなっていくためには、前もって計画的に準備を進めておくことが大切です。

この記事では、会社の移転前・移転後に分けて、進めておくべき手続きや準備を紹介します。移転を控えている会社の担当の方は、手続き不備や準備不足によるビジネスへの悪影響がないよう、この記事を参考にしてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

会社の移転にはさまざまな手続きや準備が必要

会社の移転においては、移転に関する情報発信や関係省庁への申請、ビジネス上関係のある会社などへの挨拶など、さまざまなステップがあります。

その中には移転前におこなうものと、移転後に速やかにおこなう必要があるものとに分かれます。

会社の移転前に進めておく手続き・準備

  • 移転に関する取引先や関係会社などへの連絡・挨拶
  • 会社の書類・ホームページなどの住所変更の準備
  • 会社内への移転に関する情報発信や説明会の実施

会社の移転に速やかに進めるべき手続き・準備

  • 各種行政関連の手続き(数が多いため後半で具体的に紹介)
  • 会社の移転に関するビジネス関連の手続き
    • 郵便局:転居届
    • 銀行:住所変更手続き
    • 会社の移転に関するホームページなどでの情報発信
    • 会社の移転に関する取引先や関係会社などへの連絡・挨拶

それでは、ここからはそれぞれの手続き・準備や対応を順番に解説していきます。

会社の移転前に進めておくべき準備

会社の移転におけるいくつかの準備は移転実施前におこなう必要があります。いずれも怠ったからといってただちに法令違反になるものではありませんが、移転したのちにスムーズにビジネスを継続するうえでは欠かせないステップです。

移転に関する取引先や関係会社などへの連絡・挨拶

会社を移転する場合、主要な取引先に対しては事前に書面やメール、口頭での挨拶などで伝えておくのが一般的です。

頻繁に連絡する相手の場合、移転日当日からやりとりが発生する可能性もあるため、事前に移転日や移転先を伝えておかなければトラブルの元になります。

また、取引先と比較して軽視されがちですが、そのほかの関係会社についても、ビジネス上重要な相手には事前に伝えておいた方が良いでしょう。例えば備品を毎日納入してもらっている業者は、事前に連絡をしなければ移転日にも備品が納品されます。移転の連絡とともに、納品場所や時間の調整が必要になるでしょう。

取引先・関係会社について、特に事前連絡が必須の先をあらかじめリストアップしたうえで、もれなく対応していくことが大切です。

会社の書類・ホームページなどの住所変更の準備

会社が発行する書類において、住所が記載されているものは移転後の住所に変更する必要があります。

移転後に使用する契約書のテンプレートや発行しているパンフレットなど、住所が記載されている書類は多岐に渡るため、事前に修正が必要な書類をリストアップしておき、適宜印刷会社などとも連携しながら準備を進めておくと良いでしょう。

また、会社のホームページには「企業概要」などのページに住所が記載されているのが一般的です。ホームページを見て会社の立地を調べる人も少なくないことから、移転当日から新住所が記載された状態で表示されるのが望ましいです。

ただし「企業概要」については移転直後にページを変更するのが良いため、この時点では住所変更されたページのドラフトなどを準備しておくだけにとどめます。

加えて、ホームページ上でも会社の移転のお知らせを事前に掲載しておくと、会社の移転に関する幅広い情報発信が可能です。

会社内への移転に関する情報発信や説明会の実施

移転の前にはつい社外の関係者に意識がいってしまいがちですが、会社内で働く社員のことも忘れてはいけません。

オフィスの構造や階層、席、設備など移転によって多くの労働環境の変化が生じます。移転による環境変化が社員にとってストレスにならないよう、簡単な説明会の実施や、社内のイントラネットによる周知などを事前におこなっておくと良いでしょう。

また、ただ移転先のオフィスの注意点を伝えるのではなく、移転先の魅力や現行オフィスとの改善点などを工夫して紹介すれば、移転作業を社員のモチベーション向上に役立てることも可能です。

会社の移転後に進めるべき手続き・対応


会社の移転に関する手続き・対応はむしろ移転後に多く発生します。特に行政関連への手続きについては、多くの書類申請が必要なため、提出遅延や失念がないようにしなければなりません。

他方、ビジネスを円滑に進める上で必要な対応もあります。取引先との信頼関係の悪化などビジネス上の影響が生じないように、丁寧に対応することが大切です。

会社の移転に関する行政関連の手続き

会社の移転後には多数の行政関連の手続きが必要になります。多数ある割には期限が短いため、あらかじめ必要な手続きを認識しておき、漏れのないように手続きを進めていきましょう。

法務局:本店移転登記申請

法務省には本店移転登記申請をします。転居後2週間以内(支店の移転は3週間以内)での申請が必要で、違反した場合には会社に対して100万円の過料が課されるため、特に遅延しないよう注意が必要です。

申請に際して登録免許税が発生します。移転前後で法務局の管轄が変わらない場合は3万円、法務局の管轄が変わる場合は6万円です。

移転登録の際には以下の書類が必要になります。

  • 登記簿謄本
  • 定款
  • 印鑑証明書
  • 株主総会議事録または取締役会議事録

なお、移転前の管轄法務局にて申請をおこなう必要があるため、遠方に移転する場合等には留意しておきましょう。

税務署:給与・税務関連の各種書類の提出

法務局での手続きが完了したら、会社の移転に伴う給与支払いと税務に関する手続きを税務署にておこないます。提出期限は会社の移転後1ヶ月以内ですが、移転後の住所にて登記が完了した状態の登記事項証明書を合わせて提出しなければなりません。

記入して提出する書類

  • 異動届
  • 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
合わせて添付する書類

  • 登記事項証明書(法務局にて発行)

いずれも移転前の管轄税務署に提出します。

労働基準監督署:労働保険名称・所在地等変更届

労働基準監督署には労働保険名称・所在地等変更届にて移転先の会社の住所を記入して提出します。期限は移転後10日以内です。

提出自体は郵送でも可能ですが、記入用紙は複写式でパソコンでの印刷などでは対応できないため、あらかじめ労働基準監督署に取りに行かなければなりません。

なお、都道府県をまたぐ会社の移転の場合は手続きに必要な書類が増えるため注意しましょう。

会社の移転時の手続きで必ず必要な書類

  • 労働保険名称・所在地等変更届
都道府県をまたがる移転の場合追加で必要な書類

  • 労働保険関係成立届
  • 労働保険慨算保険申告書
  • 労働保険確定保険申告

いずれの場合も移転先を管轄する労働基準監督署に提出します。

ハローワーク(公共職業安定所):雇用保険事業主事業所各種変更届

ハローワークでの申請は先に紹介した法務局・労働基準監督署の申請完了後におこなう必要があります。期限は移転後10日以内です。

雇用保険事業主事業所各種変更届は電子上で印刷・提出ともに完遂できます。

提出書類

  • 雇用保険事業主事業所各種変更届
合わせて添付する書類

  • 労働保険名称・所在地等変更届の控え

こちらの書類は移転後の住所を管轄するハローワークに提出します。

警察署:自動車保管場所証明申請書

会社が自動車を所有している場合に必要な手続きで、会社の移転先の車庫証明の交付手続きをおこなうために必要なものです。

厳格な申請期限はありませんが、車庫証明書が交付されたのちは、証明書の効力がある1ヶ月位以内に運輸局に提出しましょう。

その他、会社の移転に必要な行政手続き

そのほかにも以下のような書類を書く公共機関に提出する必要があります。

年金事務所:
適用事業所名称 / 所在地変更(訂正)届を提出します。移転後5日以内と期限が短いので注意が必要です。

市町村への届け出:
登記事項証明書を添付して法人等異動届を提出します。様式や期限は市町村によって異なるので注意が必要。また会社の移転前・移転後双方の市町村で手続きが必要です。市町村により期限などは異なりますので、移転前後の市町村への届け出のルールを確認しましょう。

都道府県税事務所:
地方税にかかる異動届を提出します。こちらも登記事項証明書を添付。移転前後で管轄事務所が変わる場合は、双方で提出が必要です。

社会保険事務所:
管轄が変わらない移転の場合は、移転後5日以内に事業主・事業所各種変更届を提出します。

管轄が変わる移転の場合は、移転前の管轄事務所に移転の届と資格喪失届を提出します。また、移転先の管轄事務所では、会社の事業所開設と同様の手続きである被保険者資格取得届を提出します。いずれも様式が異なるため、移転前・移転後それぞれの管轄に事前に様式を確認すると良いでしょう。

会社の移転後のビジネス関連の手続き・対応

会社の移転後には行政手続きだけでなく、ビジネス関連の手続きや対応もあります。法令で定められているものではありませんが、手続きを怠ると移転後にビジネスが円滑におこなえなくなるため、早めに進めていきましょう。

郵便局:転居届

転居届を出して手続きをしておくと、1年間無料で会社の移転先の住所に郵送物を転送してもらえます。移転時点で既に発送済みだった郵送物や、発送者が移転に気づかず旧住所に送ってしまった場合も、未着のトラブルなどを防げます。

インターネットからも申請できますし、郵便局にて直接書類を提出することも可能です。

銀行・クレジットカード:住所変更手続き

銀行やクレジットカードにおける住所変更が必要です。直ちにサービスが停止されることは通常ありませんが、異なる住所を登録したまま利用し続けることは、多くの場合、銀行やクレジットカードの規約違反になります。会社の信頼を失わないためにも早めに対応した方がよいでしょう。

必要な書類は各銀行・カード会社によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです。

銀行での住所変更で必要なもの

  • 通帳
  • 口座の届印
  • 登記事項証明書
クレジットカードの住所変更で必要なもの

  • 登記事項証明書
  • 法人印鑑証明書

銀行は窓口で直接申請するケースが多いですが、インターネットバンキングや郵送を通じて完結できる場合もあります。クレジットカードについては郵送やオンライン上での手続きでおこなうのが一般的です。

会社の移転に関するホームページなどでの情報発信

事前の準備のところで紹介したホームページによる移転の情報発信をおこないます。もし移転前に既に情報発信していた場合は、移転が完了した旨の発信に差し替え。また、会社概要などに記載されている住所も速やかに、移転後の住所が記載された内容に変更しましょう。

会社の移転に関する取引先や関係会社などへの連絡・挨拶

重要な取引先や関係会社には移転前に連絡を済ませているですが、改めて移転が完了した旨は連絡を入れておいた方が、信頼構築の観点から安心です。メール発信や移転後に訪問した際の挨拶などで、移転先の情報を簡単に伝えておきましょう。

また、スケジュールが合わず事前に移転の連絡ができなかった関係会社には、このタイミングで確実に移転先を連絡しましょう。ここで連絡が遅れると、ビジネス運営上のトラブルにつながるリスクもあるため、もれのないよう留意が必要です。

会社の移転の手続き・準備をスムーズに済ませて新天地でのビジネスをはじめよう!

会社の移転は、個人の住宅の引っ越しと比較しても多くの行政手続きや対応などが必要です。

行政手続きについては提出書類も提出先もさまざまなため、つい手続きを失念してしまうケースも少なくありません。あらかじめ必要な手続きを整理した上で移転に臨むことが大切です。

また、ビジネスを円滑に継続するために必要な対応も複数あります。移転のせいでトラブルが増えてしまっては本末転倒なので、こちらも疎かにしてはいけません。

前もって会社の移転に関する準備や対応、手続きを認識しておき、それぞれが滞りなく完了できるようにスケジュールを組んで進めていくことをおすすめします。

創業手帳(冊子版)は、事業計画など起業前後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
関連記事
創業期に選ぶオフィス・事務所の形態別まとめ

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】