会社の贈与には税金がかかる?どの税金がどこにかかるかケース別に解説

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会社・個人問わず贈与には税金が課されることがある!


贈与は、親子などの親族間で行われるものというイメージを持つ方が多いです。
確かにそのようなパターンが多くみられますが、親族以外の個人や法人との間で行われる場合もあります。
どのようなパターンで贈与を行うかによって、課税関係が変わってくるため贈与をしたり、されたりする予定がある方は、税金に関する理解を深めておかなければいけません。

今回は、会社の贈与にかかる税金について解説していきます。

個人・法人問わず会社を経営していると、贈与税の他にも様々な税金の支払いが発生します。うっかり忘れてしまいがちな税金の支払日の把握については、是非「税金カレンダー」をご利用ください。個人・法人用にそれぞれにおける税金支払月をカレンダー形式で確認することができるアイテムになっています。無料でご利用いただけますので是非お役立てください。

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会社・個人の贈与にかかる税金のパターン


贈与は、財産を無償で譲り渡すことです。譲り渡す側を贈与者、受け取る側を受贈者と呼びます。
贈与を受ける場合、取得した財産の金額に応じて、贈与税がかかるのですが、贈与者と受贈者の関係によって課税関係が変化します。
贈与にかかる税金は、贈与税と呼ばれているものです。贈与税がかかるのは、個人間で行われた贈与です。

贈与パターン 贈与者 受贈者
1. 会社から個人 法人税がかかる 所得税がかかる
(給与または一時所得)
2. 個人から会社 時価で譲渡とみなす「みなし譲渡所得税」がかかる 法人税がかかる
(資金計上、受贈益)
3. 会社から会社 法人税がかかる 法人税がかかる
(資金計上、受贈益)
4. 個人から個人 課税なし 贈与税がかかる
(基礎控除と特例あり)

1.会社から個人へ贈与する場合にかかる税金

会社から個人へ贈与する場合にかかる税金は、受贈者が誰かによって変わります。具体的には以下のとおりです。

受贈者がその会社の従業員の場合

受贈者がその会社の従業員の場合は、賞与という扱いになります。
従業員が受けた贈与として手にした財産は、毎月の給与と同じように給与所得として扱われます。そのため、所得税と住民税の課税対象になるのです。

当然ですが、所得金額に応じて納めなければいけない税額を負担する必要があります。
そして会社側は、贈与した財産を賞与として計上します。税務上では、贈与財産をすべて損金に算入可能です。

受贈者がその会社の役員の場合

受贈者がその会社の役員の場合は、役員賞与という扱いになります。
役員が贈与として手にした財産は、従業員と同じように給与所得に該当します。そのため、役員給与を含めた所得税や住民税の課税対象になるのです。
会社側は贈与した財産を役員賞与として会計処理しますが、税務上は損金にはなりません。
なぜなら、役員賞与を損金として認めてしまうと、会社が好きなタイミングで賞与を出して税負担を減らすことができるためです。

また、会社から役員へ贈与した場合、法人税の負担が増えてしまう可能性があることも、把握しておくべきポイントです。

受贈者が第三者の個人の場合

受贈者が第三者の個人の場合は、寄付金という扱いになります。
会社側は寄付金として処理します。税務上は、損金算入限度額までであれば損金として算入可能です。
第三者に贈与した場合は、一般の寄付金に該当するため、資本金などの金額や所得金額をもとにして損金算入限度額を算出します。
第三者である個人が受け取った財産は、一時所得となります。そのため、所得税や住民税の課税対象になることを把握しておかなければいけません。

一時所得は、「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(限度は50万円)」という計算式で算出できます。

贈与者である会社側にも法人税がかかる

会社から個人へ贈与を行った場合、贈与者となる会社側にも法人税がかかります。これは、会社が財産を贈与した場合、財産を時価で譲渡したとみなされるためです。
贈与税ではなく法人税がかかる理由は、贈与税は相続税の補完税であり、納税義務者である受贈者は原則として個人に限ると相続税法や所得税基本通達で定められているからです。

贈与者も個人に限るとされています。そのため、相続が行われない法人に関しては、相続税の課税原因が生じず、相続税の補完税としての贈与税の課税も行われません。

2.個人から会社へ贈与する場合にかかる税金

個人から会社に贈与を行う場合もあります。個人から会社へ贈与する場合にかかる税金は以下のとおりです。

贈与者である個人にも課税される可能性がある

個人から会社に贈与した場合は、財産を時価で譲渡したとみなす「みなし譲渡」に該当します。
贈与した財産の時価が取得価額を超えていると、その差額が譲渡所得となって所得税や住民税の課税対象になります。
つまり、購入した時よりも価値が値上がりしている土地など含み益がある財産を会社に贈与すると、個人にも税金がかかるということです。
現金で贈与する場合は、含み益が発生しないのでみなし譲渡には該当しません。
不動産を個人が譲渡したパターンだと、ほかの所得と区分した申告分離課税になることも把握しておくべきポイントです。

税率は、不動産を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える長期譲渡所得が所得税15%(住民税5%)、5年以下の短期譲渡所得が所得税30%(住民税9%)です。
また、復興特別所得税もあります。

公益法人に寄附する場合は非課税

個人が公益法人に寄付して国税庁長官の承認を受けた場合は、財産の値上がり益が非課税となります。
公益法人には、公益社団法人や公益財団法人、特定一般法人、公益目的の事業を行う法人(社会福祉法人・学校法人・宗教法人・NPO法人など)が含まれます。

ただし、非課税承認が取り消される場合もあるので注意が必要です。
取り消しとなるのは、寄附を受けた公益法人などの公益目的事業のように直接供されなくなった場合などです。
そのような状況になったら、国税庁長官は非課税承認を取り消すことができます。

個人から同族会社への贈与は法人税・贈与税・所得税がかかる可能性がある

個人から同族会社へ贈与した場合、法人税・贈与税・所得税がかかる可能性があることも把握しておかなければいけません。

例えば、資産を贈与することで一時的に株価が上昇する場合などが該当します。
その場合、株式を保有する同族会社の役員などは、株価上昇による収益が贈与されたとみなされるからです。
それ以外は、個人から会社への贈与と同じような扱いになります。したがって、財産を贈与した個人にはみなし譲渡所得税、財産を贈与された会社には法人税が課税されます。
このように、贈与税以外の税金がかかることも覚えておくことが重要です。

個人からの遺贈を会社が受け取る場合の課税関係

個人からの遺贈を会社が受け取る場合もあります。そのようなケースではどのような課税関係になるのかも確認しておくべきポイントです。
遺贈は、個人が残した遺言に従い、資産の一部またはすべてを譲ることを指します。

相続との大きな違いは、遺言を残さなければいけないこと、譲る相手は法定相続人以外の個人や会社でも問題ないことです。
会社が個人から遺贈を受け取った場合、無償で財産をもらうことになるため、課税関係は個人から贈与を受けた時と同じです。
現金や預金であればその金額、土地などの財産であれば時価の金額を受贈益として処理します。
しかし、遺贈を受けたのが同族会社で遺贈によって株価が上がった場合は、株主に贈与税がかかる可能性があることを念頭に置いておかなければいけません。

遺贈した個人の課税関係も、個人から贈与を受けた場合と同様です。ただし、贈与者は亡くなっているので、税金は相続人が支払うことになります。

3. 会社から会社へ贈与する場合にかかる税金

贈与は、会社から会社に対して行われる場合もあります。その場合も、税金がかかるのであらかじめ把握しておいてください。
会社から会社へ贈与する場合にかかる税金は、以下のとおりです。

贈与した会社にかかる税金

会社から会社へ贈与する場合、寄付金という扱いになります。寄付金が一定の金額を超える場合、超えた分は損金として扱うことができません。
寄付先によって算出できる金額が異なる点も把握しておくべきポイントです。

  • 国・地方公共団体公益を目的とする法人…全額
  • 特定公益増進法人・認定NPO法人…「(資本金等の額の0.375%+所得金額の6.25%)×1/2」が限度
  • その他の法人…「(資本金等の額の0.25%+所得金額の2.5%)×1/4」が限度

土地などを贈与した時は、財産を時価で渡したとみなされます。そして、取得価格と時価の差が、売却益などの収益という扱いになります。
損金にならない部分や売却益に関しては、法人税の課税対象です。

贈与された会社にかかる税金

贈与された会社は、受け取った財産を受贈益(特別利益)として処理する必要があります。
贈与財産が建物や土地だった場合は時価、現金や預金の場合は受取金額で計上することが原則です。
受贈益を計上すると利益が増加するため、法人税の負担が増えます。

4. 個人から個人へ間での贈与する場合ににかかる税金

個人から個人への贈与する場合、贈与者には税金がかかりませんが、受贈者には原則として贈与税がかかります。
課税方法は、暦年贈与や親子間の贈与で要件を満たすと選択できる相続時精算課税があります。

暦年贈与は、1年ごとに110万円までは基礎控除の対象になるので、贈与税が発生しません。
また、父母や祖父母などの直系尊属からその年の1月1日で20歳以上の子・孫などへの贈与があった場合は特例税率が適用となります。

相続時精算課税は、贈与を受けた時に累積で2,500万円までの特別控除額と一定の税率(20%)で贈与税を算出します。
そして、贈与者が亡くなった時に相続税で精算する制度です。

贈与契約書を作成するメリットと注意点


贈与契約書は、財産を贈与したり、されたりする時に作成する書類です。作成する目的は、契約の内容を記録し、贈与が行われたことを客観的に証明するためです。
口約束だけでも贈与契約は成立しますが、書面で契約を交わさないと「いった」「いわない」でトラブルになる可能性があるので、作成すべきでしょう。
贈与契約書を作成しておけば、贈与が履行されたことの証拠になり、贈与税や相続税の税務調査対策にもなります。
贈与契約書がないと、借入れ金や立替え金とみなされ、追徴課税される可能性もないとは言い切れません。

また、名義変更をする際もスムーズに手続きができるため、作成しておくメリットは大きいです。不動産の所有移転登記を行う際にも、贈与契約書が必要です。

贈与契約で気を付けておきたいこと

贈与契約を結ぶ際、いくつか気を付けるべきポイントもあります。最後に、贈与契約を結ぶ際の注意点を4つご紹介します。

1.契約内容をお互いが把握する

贈与契約の内容は、贈与する側もされる側もきちんと確認する必要があります。
贈与する財産は何か(不動産や現金、株式など)、贈与されるのはどのくらいの価額なのか、どのようにして贈与を行うのか、といった点は双方が把握しておかなければいけません。

また、贈与する財産の内容や価額によって、課税される税金が異なることも確認すべきポイントです。
さらに、贈与税の各種特例が適用できるのか、適用要件を満たしているのか、といった点も、合わせて確認しておきたいポイントになります。

2.贈与の日付も含めて合意する

贈与を行う場合は、その日付も含めて贈与者と受贈者で合意する必要があります。
贈与契約の内容はもちろんですが、贈与契約書を交わす日付や贈与を行う日付などについても、再確認しておくのが望ましいでしょう。
お互いの認識をすり合わせておかないと、トラブルの原因になりかねません。そのため、双方で合意することは非常に重要だということを忘れないようにしてください。

3.贈与契約書を作成する

お互いに合意した内容に関しては、贈与契約書で明確にします。合意した内容をもとに、2通の贈与契約書を作成してください。
そして、それぞれが署名捺印します。また、2通の贈与契約書が「対」になっていることを証明するための割印も必要です。

また、印紙の貼付が必要になる場合もあります。現金や預貯金、自動車などの贈与契約書の場合は印紙を貼る必要がありません。
しかし、不動産や船舶などの贈与は、200円の印紙を貼ってください。

4.双方で贈与契約書を保管する

作成した贈与契約書は、双方で保管します。贈与した側とされた側の双方で保管しなければいけないので、大切に保管するようにしてください。
もし紛失してしまうことが不安な場合は、公正証書にするのもおすすめです。

公正証書は公証人がその権限に基づいて作成する公文書です。
公証人が作成した公正証書は、極めて強力な証拠になり、何らかのトラブルがあった場合は強制執行も可能となります。

会社の贈与は相手によってかかる税金が違うことを覚えておこう!

会社の贈与は、受贈者が誰になるかによってかかる税金に違いがあります。
それを把握しておかないと、スムーズなやり取りが難しくなってしまう可能性があるので、正しい知識を知っておくことは必要不可欠です。
また、贈与を行う場合は贈与契約書を作成しておくことも重要です。贈与契約書を公正証書にしておくと、より安心感が大きくなります。


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(編集:創業手帳編集部)

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