自転車操業に陥るとどうなる?原因や抜け出す方法まで詳しく解説

資金調達手帳

自転車操業が長引くと抜け出しにくくなる


自転車操業は、借金を返済するために別の金融機関から借り入れを行い、その借金を返済するためにまた別の金融機関から借り入れを行うなど、借金と返済を繰り返している状態を指します。
借り入れをやめてしまうと返済できなくなることを、一度走り出したら漕ぎ続けない限り倒れてしまう自転車に例え、自転車操業と表現されています。
返済ができているから大丈夫だと考える人もいますが、借金の額が増えてしまったり借り入れができなくなったりなど、様々なリスクがあるので注意が必要です。

今回は、自転車操業から抜け出す方法や陥ってしまう原因、放置するリスクなどを紹介していきます。
自転車操業で悩んでいる人や借金が減らずに悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。

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自転車操業から抜け出す方法


自転車操業になり、借金の返済ができずに苦しい状況が続いている時の対策方法を紹介していきます。

収支の現状を正確に把握する

経理業務は担当者に任せっきりであったり、税理士事務所に帳簿作成を委託しているなど、自分で記録をしていないのであれば、収支の現状について理解していない場合も多いです。
そのため、まずは会社の収支の現状を正確に把握することから始めることが大切です。

経費を見直す

収支の現状を正確に把握するためにも、自社の経費の見直しを行ってください。

  • 家賃
  • 仕入費
  • 従業員の給与
  • クレジットカードの支払い
  • 税金 など

上記をすべて正確に把握します。
その支払いの中で毎月かかる固定費を出せば、毎月最低限必要になる経費を求めることができます。

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利益が得られているか確認する

次に利益が得られているか確認してみてください。
毎月の売上から経費や生活費を差し引いてマイナスになれば利益が出ていない状況なので、今後も負債が増えていく可能性があります。
返済が難しいのであれば、廃業も視野に入れたほうがリスクを減らせるかもしれません。

しかし、利益が出ているのであれば借金返済に充てられるので、負債を減らせる可能性があります。

資金繰り改善に取り組む

売上が伸びて利益があるにも関わらず資金が不足してしまう要因は様々です。資金不足を解消できるよう、以下の改善方法を試してみてください。

売掛債権は素早く回収する

商品の販売やサービスを提供した企業が顧客や取引先から代金の支払いを受ける権利を売掛債権といいます。
既定の期日に支払いがされない、回収が遅れるとなればキャッシュフローに影響を与えてしまいます。
貸し倒れのリスクもあるので、取引先の情報収集を怠らないようにしてください。

  • 従業員の離職が目立っている
  • 支払期日の先延ばしや分割払いに変更といった条件変更の申し出
  • 取引先銀行の変更

上記のような変化は未回収になりやすい兆候です。
経営状況が思わしくない情報があれば、販売の停止や商品の引き上げなどを検討してみてください。
売掛債権を早期回収するための方法としては、手形割引の活用や長期売掛債権のファクタリングの活用、現金決済に条件を変更するといった方法が挙げられます。

不要な在庫は処分する

不要な在庫を放置していると、在庫全体に占める割合が高くなり様々な問題が生まれてしまいます。
在庫スペースが必要になれば、保管のための維持費が発生するので、不要在庫を抱えないためにも徹底した在庫管理が必要です。

単品管理を徹底して売れない商品の基準を作って短期サイクルで排除するほか、長期間滞留してしまう不要在庫を年度末に損失計上して処分するなど、在庫削減のための対処法を検討してください。

買掛金の支払期日や回収期限について交渉する

「売掛金の回収は早く、買掛金の支払いは遅く」が資金繰り改善の鉄則です。取引条件を変えることになるので、交渉は難しい場合も多いです。
仕入れを行った商品が何日間で販売できるのかを考慮して、仕入先に対してはできる限り支払いを延ばす支払条件の交渉を行うと資金繰りが楽になります。

既存の取引先の条件が変更できない場合は、新規取引先の条件から変えていくようにしてください。

投資は営業キャッシュフロー内に収める

営業活動では投資は欠かせません。その際には、営業キャッシュフロー内に収めることが理想です。
フリーキャッシュフローがマイナスになれば、投資のために手持ち資金を減らすか、借り入れを行うなど、資金繰りに影響を与えてしまいます。

借り入れとなれば借金を返済するために新たに借り入れを行う必要も出てくるため、自転車操業が終わらない可能性もあります。
投資が本当に必要なものであるかを検討し、どうしても借入れが必要であれば返済原資を確保できるのか見定めてから行うようにしてください。

補助金や融資を活用する

自転車操業を抜け出す方法として、公的支援制度を活用することも挙げられます。
しかし、補助金に関しては申請した内容が実行できるほど、資金に余裕がないと申請できないケースもあるでしょう。
また、下記のような場合は申請が認められない可能性もあります。

  • 事業計画が不明瞭/根拠が弱い
  • 資金繰り表が曖昧で、返済計画が見えない
  • 補助金に過度に依存している印象がある

要件をよく確認して申請可能か判断してから活用を検討してみてください。

IT導入補助金

中小企業や小規模事業者の労働生産性アップを目的に、ITツールの導入を支援するための補助金がIT導入補助金です。
以下の5つの申請枠が用意されています。

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

申請は、Webページから行います。GビズIDプライムのアカウント取得やSECURITY ACTION宣言の実施が要件に含まれているので、事前に理解してから実施してください。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路拡大や生産性向上を目的とした補助金です。
事業計画書を作成した上で、商工会議所や商工会による指導を受けられ、事業支援計画を策定してもらえる特徴があります。
計画に基づいて目的達成のために取り組みを行うことが、補助金を受ける要件です。

補助金を受けて事業に取組み、売上アップを図れなかった場合でもペナルティはありません。
商工会議所や商工会の会員でないと申請できないと考えている人もいますが、非会員であっても申請可能です。

ものづくり補助金

生産性向上を目的に、革新的なサービスの開発や試作品の開発、生産プロセス改善のための設備投資支援などを行うのが、ものづくり補助金です。
「ものづくり」という言葉が含まれているので製造業のみ対象だと考えている人もいますが、業種に関係なく生産性アップにつながる設備導入に関する内容であれば補助の対象になります。

ただし、要件に当てはまっている必要があるので、「ものづくり補助金総合サイト」をよく確認してから申請を行ってください。

企業再建資金

経営難に陥った企業が企業再建のために取引金融機関からの支援や中小企業活性化協議会などの関与によって設備資金や運転資金を調達できるよう、資金を融資する日本政策金融金庫による制度を企業再建資金といいます。
国民生活事業と中小企業事業の2種類があり、それぞれで融資限度額に違いがあります。

  • 国民生活事業:7,200万円
  • 中小企業事業:20億円

利用するには細かい条件があるので、あらかじめ確認しておいてください。

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債務整理を検討する

収支の現状を把握し、資金繰り改善のための取組みを行っても返済が難しいのであれば、債務整理が選択肢として挙げられます。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産といった種類があるので、それぞれ解説していきます。

任意整理

利息や手数料といった元金以外の借金を減額するための手続きを任意整理といいます。
裁判所を通さずに債権者と直接交渉して進めていくので、財産を守ったまま手続きを進められるほか、任意整理をするための借入先を選べる特徴があります。

ただし、裁判所を通さないので交渉力が問われる手続きです。自力での交渉は難しいので、専門家に依頼をして交渉するようにしてください。
また、元金が減るわけではないので、借入額が大きい場合にはメリットが少ないです。その場合は別の方法を考える必要があります。

個人再生

借金の元金を大幅に減額する手続きが個人再生です。借金額を80~90%程度減額できるので、元金額が大きい場合に有効な方法だといえます。
ただし、裁判所を通して手続きを行うため長い期間を要する点がデメリットです。
専門的な知識も必要になるので専門家と一緒に手続きを進める必要もあります。また、3年間での完済が原則です。

自己破産

借金の支払い義務を免除してもらう方法が自己破産です。自己破産が認められれば借金返済の必要がなくなるので負担が大きく抑えられます。
しかし、生活に必要な最低限の財産以外のすべてを失うデメリットに注意が必要です。家や車といった財産を失うほか、連帯保証人に迷惑をかける可能性もあります。

支払い能力があると判断されれば自己破産できない可能性もあるので、専門家とよく相談をしてから手続きを行ってください。

自転車操業に陥ってしまう原因


ここからは、自転車操業に陥ってしまう原因を解説していきます。

突発的・無駄な出費が多い

突発的な出費が要因で自転車操業に陥るケースが多いです。
毎月厳しい状態ながらも経営を続けている場合、急な出費や無駄な出費を続けていれば支払いに追われてしまうので他社からの借り入れを余儀なくされるケースがあります。
その結果、借り入れに借り入れを重ねてしまうので返済に苦しむことになるでしょう。

無理な投資をしてしまう

無理な投資も自転車操業に陥る要因です。例えば、設備投資といった支出が収入を上回れば資金不足を補うために借り入れを行うため、自転車操業になりやすいです。
資金不足を招くような無理な投資は避けるようにしてください。

収入が不安定

収入の不安定さも自転車操業を招く要因です。収入が減れば返済に回せるお金も減ってしまいます。
毎月一定の利益を得ていて、返済に回せるお金も無理なく支払えれば問題ありません。
しかし、月によって売上げが異なる場合、支払いに回せる分の貯蓄があれば返済可能ですが、余裕がなければ返済できないでしょう。

安定した収入を確保できるよう経営の見直しを図る必要があります。

自転車操業を放置するリスク


自転車操業を続けてしまえば、以下のようなリスクがあります。

借金の総額が増え続ける

「借りている分をそのまま返済に充てれば借金は増えない」と考える人もいますが、借金には元金以外にも利息が含まれています。
新たに借り入れを行えば利息が増えていくので、借金の総額は増え続けていきます。

その中で突発的な出費があればさらに借入れが必要になるので、借金が増え続けてしまうでしょう。

借り入れができなくなる

金融機関では総量規制を設定しているため、借金が増えれば借入れができなくなります。貸金業者から借りられる総額の上限を規制する法律が総量規制です。
年収の1/3程度を目安に設定され、それ以上の額は他社の金融機関でも借入れを行えません。
借入れができなくなれば滞納を繰り返すことになるので注意が必要です。

信用情報に傷がついてしまう

借金の滞納を繰り返すと信用情報に傷がつくので注意してください。滞納が2~3カ月続くと信用情報機関に事故情報が登録されます。
その結果、新たな借入れができない、クレジットカードが使えない、ローンが組めないなど、生活にも支障をきたしてしまいます。

財産を差し押さえられる可能性がある

返済ができない状態が長く続けば、債権者から残高の一括返済を請求されます。
返済できない場合は、裁判所を通して訴訟を起こされるほか、支払督促の申し立てをされる恐れがあります。

対応しない場合には、給与や預金口座が差し押さえられるので生活ができなくなるかもしれません。
差し押さえになれば専門家でも対応できることが限られるので、差し押さえになる前に問題解決を目指すことが大切です。

やってはいけない自転車操業から抜け出すための行為


自転車操業から抜け出したいと思っても、やってはいけない行為があります。どのような行為をしてはいけないのか、紹介していきます。

夜逃げ

借金から逃れるために誰にも知らせずに逃げることを夜逃げといいます。
居場所がわからなければ債権の請求ができないので、最終的には時効となり支払い義務から逃れられるかもしれません。
しかし、住民票を移さずに住居を移転すれば、新しく仕事を始めたくても住民票の提出ができないので生活に支障を与えてしまいます。

住民票を移さずに長期間生活できたとしても、債権者が公示送達で裁判を起こせるため、事項の更新を請求すれば時効による債権の消滅を防げるので、夜逃げをしても意味がなくなってしまいます。

クレジットカードの現金化

クレジットカードのショッピング枠を活用して現金化を行う行為や、商品を購入してお金に替える換金行為によって現金を得られます。
返済に充てることもできますが、クレジットカード契約に違反する行為となるので、利用停止措置が取られる可能性があります。
自己破産する場合には、免責不許可事由に該当するので、絶対にしないようにしてください。

闇金融やソフト闇金からの借り入れ

借金を返済するために闇金融やソフト闇金からの借り入れを検討する人もいます。
しかし、利息制限法の20%を超える利率での貸付を行う業者も多いので、返済の負担が大きくなってしまいます。

返済できない場合には脅迫的な取り立て行為をされる危険性もあるので注意が必要です。お金に困ったとしても闇金融やソフト闇金には頼らないようにしてください。

まとめ・自転車操業から抜け出すには早期に対処すべき!

自転車操業を放置してしまえば借金の総額が増え続けてしまうだけではなく、借入れができなくなり、信用情報に傷がついてしまう可能性もあります。
財産を差し押さえられるリスクもあるので、早期に対処するようにしてください。

資金調達手帳では、資金調達方法や借金リスクを抑える方法など、自転車操業時の悩み解消に役立つ情報を豊富に発信しています。事業経営の参考になる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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