「JAPANブランド育成支援等事業」とは。海外展開を支援する補助金制度がスタート
JAPANブランド育成支援等事業の補助内容、申請方法や前回募集との違いなどを詳しく解説
JAPANブランド育成支援等事業とは、販路拡大のため海外展開をめざす中小企業に対して、費用の一部を補助金で支援する制度です。
この記事では、JAPANブランド育成支援等事業の補助事業内容や手続きの流れ、前回募集との違い等について最新の情報にもとづき詳しく解説します。
中小企業が海外展開する際、経費サポートやモチベーションアップに役立つJAPANブランド育成支援等事業を知って、ぜひ経営にご活用下さい。
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この記事の目次
JAPANブランド育成支援等事業とは?
JAPANブランド育成支援等事業とは、中小企業の海外展開を支援する補助金のことです。
中小企業が海外展開やそれを見据えた国内販売の全国展開をするため、進出予定の国に対する調査、新商品・サービスの開発・改良、ブランディング、展示会出展等の取組を行なうとき、国がそれに係る経費の一部を補助して、海外であらたな市場を開拓することなどを支援します。
海外展開がなぜ必要なのか
中小企業の海外展開が必要な理由がいくつかあります。
ひとつは国内人口減少への対応です。
すでに日本は人口減少社会に入っており、中小企業が国内だけで頑張ってみても成長するには限りがあります。
中小企業といえども、成長するためには、積極的に海外に進出してその販売チャネルを拡大していく必要があるのです。
さらに国内だけで商売をしている企業と比べて、海外展開している企業は生産性が明らかに高いというデータがあります。
それだけにより高い生産性を上げるためにも海外展開は必要なのです。
日本には世界でも通用する中小企業の産品や技術が知られている以外にもまだまだたくさんあります。
それらをJAPANブランドとして確立し海外展開して成功すれば、さらに中小企業の発展が期待できるのです。
令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の前年度との主な変更点
令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の前年度事業と比較した主な変更点は以下の3つです。
支援パートナーの活用が必須になった
令和3年度JAPANブランド育成支援等事業は、中小企業者等が海外に向けて販路開拓をする際、中小企業庁が選定した「支援パートナー」を活用することで、支援が受けられる仕組みです。
また一部条件付きで、国内での販路開拓に係る利用も可能となっています。
前年度の募集では、支援パートナー制度はありませんでしたが、今回の募集では支援パートナーの活用が必須になりました。
この点が前年度までの募集との大きな違いです。
支援パートナーとは、経済産業省が定めた以下のような要件を満たした中小企業の支援業者のことをいいます。
支援パートナーの要件
- これまで海外展開・国内展開に成功した支援実績があること
- 具体的な支援ツール※を持っていること
- 財務基盤が安定していること
- 自社支援サービスの料金表があること(原則中小企業庁のHPで公開できること)
※具体的な支援ツールとは、特定の事業分野ですでに海外に店舗を持っていること、支援を受ける補助事業者が海外での販路開拓に使えるECサイト(プラットフォーム)を持っていること、海外(特定国)に関する売れ筋商材・サービス等の情報を提供できること、などです。
また支援パートナーの主な業務は以下の通りです。
支援パートナーの主な業務
- パートナーとなった中小企業者に対して、通常の対価で自社の強みを活かしたサービスを提供する(中小企業者が支援パートナーに対して支払う対価(経費)は本事業の補助対象にできます)
- パートナーとなった中小企業者に対して補助事業の実績報告書の作成等に協力する
- 支援パートナーは、各々支援できる中小企業者数の目安を示して、その上限まで支援する(複数業者支援OK)。また自社にとって中小企業者が新規事業者であっても支援を行なう
では誰が支援パートナーになれるかというと、海外に取引実績のある法人格をもつ企業・団体であり、大企業でも海外事業者でもなることができます。
ただし海外事業者の場合、支援する事業者に対して日本語対応ができることが必要です。
海外展開をめざすことが必須になった
JAPANブランド育成支援等事業では、前年度までは国内向けの活動でも補助金が使えましたが、今年度より「海外展開をめざすこと」が必須要件になりました。
本事業の目的で最初に「海外展開やそれを見据えた全国展開のために」と謳われており、海外展開に実力ある支援パートナーと海外展開を志す中小企業のマッチングをより重視する姿勢に変わりました。
さらに本事業の取組自体も、一過性の取組で終わらせず、補助事業が終わった後も継続して海外展開ができる事業者を集中的に支援していく方向に変わりました。
受付はネットを利用した「電子申請(Jグランツ)」のみ
令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の応募申込みは、インターネットを利用した「電子申請(Jグランツ)」のみとなっています。
他の応募方法は用意されてないのでご注意下さい。
また応募書類の提出先は、主たる事業の実施場所を所管する経済産業局となります。
さらに「電子申請(Jグランツ)」の利用には、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
アカウントの取得には2~3週間程度かかりますので、公募締め切りに間に合うよう余裕を持って早めに取得しておいて下さい。
JAPANブランド育成支援等事業の応募条件
JAPANブランド育成支援等事業で補助を受けようとする事業者が最低満たすべき応募条件は以下の5つです。
これら5つの条件を満たした上で応募しないと、失格案件として本審査の前に落とされてしまうので注意して下さい。
- 補助事業者は、中小企業庁の定める各要件の全てに該当する日本国内に所在する中小企業であること
- 地域の中小企業の商品や技術を基本とした応募であること
- 補助事業者は、補助事業を行なうために必要な能力を有していること
- 補助の条件のうち、応募額が補助金額の下限額(200万円)に達していること
- 支援パートナーを活用していること
- 本事業の応募は、必ず中小企業庁が選定・公表した支援パートナーを活用した応募であること(支援パートナーと必ず相談の上で作成した事業計画を提出すること)
- 補助対象者に以前から付き合いのある支援業者がいても、本事業を応募する前に、必ず支援業者に支援パートナー公募に応募してもらい、その業者が正式に支援パートナーとして選定を受けてから応募すること
JAPANブランド育成支援等事業の補助上限額・補助率
JAPANブランド育成支援等事業にかかる補助金の上限額・補助率等は以下の通りです。
補助金額 | 500万円以内(下限200万円) ※複数者による連携事業の場合、最大2,000万円以内 ※共同で応募の場合、1社ごとに500万円上限額をかさ上げして、4社で最大2,000万円、5社以上でも上限額は2,000万円まで、下限額も200万円まで |
補助率 | 1年目及び2年目:2/3以内 3年目:1/2以内 ただし、3年以内に海外展開を行なうことを明確に示した案件は、国内販売に係る部分について補助率1/2以内で補助対象経費とする |
補助事業期間 | 交付決定日~令和4年3月末日まで |
※応募時、対象事業の経費額が補助金額の下限(200万円)に達していないと、応募条件を満たしていないと判断され審査対象になりません。
JAPANブランド育成支援等事業のスケジュール
JAPANブランド育成支援等事業の応募スケジュールは以下の通りです。
補助事業者のスケジュールに支援パートナーのスケジュールが一部重なってくるので、うまくマッチングさせて応募のタイミングを失わないようにして下さい。
応募スケジュール
➀JAPANブランド育成支援等事業の公募期間
令和3年4月15日(木)~令和3年7月15日(月)17:00まで
※ただし、実際の応募受付開始は、中小企業庁による審査を経て「支援パートナー」の公表後(5月下旬以降を予定)となります。
➁支援パートナー公募期間
令和3年4月15日(木)~令和3年5月17日(月)17:00まで
補助事業者のスケジュール
補助事業者の全般的スケジュール(応募から事業実施、請求・支払までの流れ)は以下の通りです。
支援パートナーのスケジュール
支援パートナーの公募期間は前記の通り、4月15日~5月17日17:00まで(期限厳守)です。
公募締め切り後、中小企業庁が審査して、5月下旬頃までに支援パートナーを決定・公表します。
したがって補助事業者は、本事業の公募開始は4月15日となっているものの、中小企業庁が5月下旬頃までに支援パートナーを決定・公表するので、自社の支援パートナーが具体的に決まってから応募する流れになります。
なお支援パートナーの公募に関する詳細は以下の中小企業庁のHPをご参照下さい。
「令和3年度JAPANブランド育成支援等事業」における支援パートナーの公募
JAPANブランド育成支援等事業の応募手順
JAPANブランド育成支援等事業の応募にあたり、補助事業者にすでに支援者があるケースとないケース、また支援者が支援パートナー公募に応募したけど選定されなかったケースなど、色々なケースが予想されます。
この章では各ケースの応募手順について解説します。
補助事業者にすでに活用したい民間支援者がある場合
補助事業者にすでに活用したい民間支援者がある場合、これについては令和2年度事業でも同様なケースがあり応募可能でしたが、令和3年度の募集ではできなくなりました。
本事業の内容変更で必ず支援パートナーの活用が必須になったからです。
この場合には、支援者自身に支援パートナー公募に申請してもらい、支援パートナーとして正式に認定を受けてから補助事業者とともに応募する必要があります。
補助事業者に支援パートナーがない場合
補助事業者に支援パートナーがない場合、中小企業庁が選定した支援パートナーを5月下旬頃にHP等で公表予定なので、補助事業者は公表されたリストから任意のパートナーを選んで公募期間内に応募申込書を提出するようにして下さい。
民間支援者が支援パートナー公募に申請して落ちた場合
補助事業者の懇意の民間支援者が支援パートナー公募に申請して落ちた場合、このケースではその支援業者が支援パートナーになれないので、補助金が使えないことになります。
この場合の対応としては、補助事業者はあらためて中小企業庁が選定した支援パートナーリストの中から新規に支援パートナーを指定して、その業者とタイアップのもと、公募期間内に応募するようにして下さい。
JAPANブランド育成支援等事業に応募する際の注意点
最後にJAPANブランド育成支援等事業に応募する際の重要な注意点を3点解説します。
複数年応募の注意点
本事業は、同一の事業内容で最大3年間、補助を受けることができます。
その際、補助金の補助率は以下のフローチャートの通りです。
ただし令和3年度事業に採択されても、それがそのまま次年度以降の採択を確約するものではありません。
次年度も今年度同様、再度本事業に応募して、採択される必要があります。
また2年目、3年目の事業者は、応募に際して、これまでの補助事業の成果や反省を補助事業計画書に明記して提出する必要があります。
この箇所が不明瞭と審査で判断されると、これまでの事業に効果がなかったと判断されて採択されませんので注意して下さい。
一方本事業は、基本的に中小企業者の海外展開を前提とした補助事業であり、日本国内のみでの販路開拓をめざす案件は補助対象外です。
ただし、今後3年以内の海外展開を見据え、その前段階として国内販路開拓に取り組む案件に限り、採択されることがあります。
その際、国内販路開拓に係る経費については、補助率は1/2となります。
複数中小企業者が連帯して応募する際の注意点
複数中小企業者が連帯して応募する際(この場合の最大補助額2,000万円)、連携企業の全てが海外展開をめざす企業であることが必要なので、該当する方は必須要件として記憶しておいて下さい。
また連携相手が海外展開を行なわない事業者(コンサルタントや旅行会社等)との連携は認められていないので注意が必要です。
過去の例でもあるように(今治タオル、特殊銅合金、広島日本酒等)、海外展開でJAPANブランドを確立することが本事業の目的のひとつでもあるので、連携企業で1社でも海外展開を行なわない事業者がいれば審査で落ちてしまいます。
代金の支払等に係る注意点
代金の支払等に係る項目でも注意が必要な点があります。
本事業において補助の対象となる経費は、「本事業に必要な経費として公募要領に基づき承認を得たもので、補助金交付決定日以降に発注し、かつ、補助事業期間内に支払が完了した経費」のみです。
交付決定日前に発注した経費、あるいは補助事業期間より後に支払が行なわれた経費は補助対象経費としては本事業の対象外ですので注意して下さい。
さらに経費の支払は、銀行振込の実績で確認されます。
他の支払方法、たとえば、手形小切手支払、他取引との相殺払い、ファクタリング(債権譲渡)払い等の支払は、事情のいかんに関わらず、全て認められないので注意が必要です。
経費の支払が銀行振込でなされたことを証明できるのは銀行が発行した証憑のみです。
事業を実績報告して確定検査を受けるまで、きちんと証憑類は自社で保管しておくようにしましょう。
海外展開を考えている中小企業は積極活用を!
国内を中心に事業展開している地域の中小企業も、たとえ今が好調でも、特段強い市場競争力のある商品・サービス等を持たない限り、そのままでは国内市場の衰退とともにじり貧になっていきます。
しかし自社の持つ商品・サービス等を海外展開して、同時にJAPANブランドとして育成していくことで、さらに会社の発展が期待できます。
令和3年度JAPANブランド育成支援等事業は、特にその分野に注力して支援していくことを表明しているので、これから海外展開をめざす中小企業にはこの補助金制度は絶好の活用機会といえます。
これから海外展開を考えている中小企業は、ぜひ令和3年度JAPANブランド育成支援等事業の積極利用を検討して下さい。