補助金、わたしはこうやってゲットしました

創業手帳

専門家のアドバイスで応募書類の精度をぐっと高められた!

事業を軌道に載せる上で大きな助けとなる補助金ですが、どのようにすれば採択される可能性が高まるのでしょうか? ものづくり補助金に採択された起業家の方と、応募書類の作成にあたって実際にアドバイスをした税理士の方にお話を聞きました。

小松 由紀(こまつ よしのり)
株式会社ディーコネクト 代表取締役
リップル合同会社 代表社員
千葉県柏市出身。1987年に歯科技工士国家資格取得。30年にわたり歯科医院と歯科技工所の現場で従事。リップル合同会社を設立後、複数の補助金採択を受け生産性向上計画を推進。
歯科業界の現場で実感した課題の解決を目指し、2019年に株式会社ディーコネクトを設立。2020年ものづくり補助金の採択を受け賛同いただける専門家に力添えをもらいながら、システム開発事業を遂行中。

野口 仁(のぐち ひとし)
イーグル税理士法人代表(公認会計士、税理士、中小企業診断士)
1979年生まれ。プログラミングで生きていこうと学生時代から銀行、航空会社、学校やECなどのシステム開発に従事。25歳の時に年齢によるプログラミング能力の衰え始めを感じ会計業界にキャリアチェンジ。以後、ITがSEレベルでわかる会計士として監査法人、都市銀行、上場企業CFOを経て会計事務所を開業し現在に至る。

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小松氏が採択されたものづくり補助金とは?

ー本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、ものづくり補助金とはどういう補助金なのでしょうか。

野口:国による補助金施策のひとつです。一般名称が「ものづくり補助金」なので、何か「もの」を作らなくてはいけないと勘違いしがちですが、ECサイトのような「サービス」を作るときも対象になります。上限1,000万円で、500万円までの小規模型の場合は比較的採択されやすいといえます。

補助金としての予算額が多く、他の補助金に比べると採択されやすいです。スタートアップから老舗企業まで事業の規模に関係なく、きらりと光るものがあったら採択してもらえる可能性があるので、まず一番におすすめしたい補助金と言えますね。

ー実際に小松さまはこの補助金に採択されたということですね。おめでとうございます!事業内容を教えていただいてもいいですか。

小松:歯科医院から歯科技工所に製作物の委託をする際、「歯科技工指示書」を発行しこれを保管する義務が双方にありますが、この「歯科技工指示書」を電子的に発行してクラウドで共有管理するアプリケーションサービスです。

ーなるほど。「歯科技工指示書」というのは、あまり電子化されていないのですか。

小松:歯科の業界もデジタル化が進み、歯の型採りも口腔内スキャナーが普及し始め、技工物の製作もCAD/CAMでデータで加工できる時代になってきていますが、歯科医院と歯科技工所を唯一つなぐ「歯科技工指示書」はいまだに紙で発行されることが主流です。これによって、歯科医院と技工所でのやり取りや管理が煩雑になっているんです。

弊社が提供するサービスで、こういった手間のかかる管理業務が簡素化され、記録の残る確かなコミュニケーションツールとして歯科業界に貢献したいですね。

煩雑な業務が簡素化されることで、歯科医師・衛生士・技工士の皆さんが本来の業務により多くの時間を費やすことができ、歯科業界全体のサービス向上につながることを願っています。

ーありがとうございます。実際に採択された補助金の額を教えていただけますか?

小松:正式名称としては、「令和元年度・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金一般型(2次締切)」になります。金額は660万円になります。

応募書類の作成において気をつけなければいけないこと

ーありがとうございます。実際に小松さんはどのような経緯でものづくり補助金に申し込まれたのでしょうか?

野口:事業計画や数値計画、マネタイズの部分を相談に来られて、何回か相談に乗っているうちに、そういえばこういう補助金の申し込みが始まったので申し込んでみてはどうですか、とこちらからアドバイスしました。

ーそれで申し込み、スムーズに採択されたのですね。素晴らしいです。税理士の方に応募書類を見ていただいて、どんな点が良かったですか?

小松:補助金申請に必要な事業計画書を作成するにあたり、必要な項目について考えていることを再確認しながら、まとめていくためのヒアリングシートをいただき、自身が改めて事業内容について向き合うことができました

なぜこの事業が必要なのか、何が課題なのか、課題をどのように解決するのか、またこの事業が誰にとって有益でどのような効果があるのかなど、ヒアリングシートにまとめたことで、スムーズに事業計画書作成に着手することができました。作成中には、何度もご覧いただき、過不足についてご指摘をいただいて大変感謝しております。

補助金申請の事業計画書は、事業内容についての専門知識が無い方が読むことを前提に、出来るだけわかりやすい言葉で、裏付けとなる資料やデータを効果的に使用する必要性や、自社の強み弱み、事業の新規性について明確にする必要性があるとのアドバイスをいただきました。

このようなアドバイスをもらったことで、計画書の完成イメージを持って進められたことが何よりも良かったですね。

野口:社長をされる方は、信念があり、熱心に自社のサービスやものづくりに日々取り組んでいらっしゃるので、商品についての想いやそれ自体の解説に熱が入りがちです。極端な例だと9割、ご自身の想いと商品のことを記載されてきた方もいらっしゃるくらいです。

補助金の申請書においては、熱量より、審査員の側の視点で見ていく必要があります。審査員はどのぐらい事業がうまくいく可能性があるか、という観点で見ているので、客観的に自社や事業内容を見て、どんな情報を入れると「ご自分の事業がうまくいくということを伝えられるか」を考えるように指摘して記載していただいています。

ご自分では難しい場合は、専門家の力を借りることもおすすめです。採点者と応募者の間のギャップを埋める、事業としての魅力を打ち合わせを通して高めるというように、記述に客観性を加えたり、バランスを取る意味でも、我々のような第三者の視点を入れることは非常に有効だと思います。

「採択されて終わり」ではない!もらった後こそ専門家の助けが必要?

ーなるほど。応募して、採択されたら手放しで喜べるのかと思いきや、意外と採択された後の手続きなども大変とうかがったのですが、そのあたりはいかがですか。

小松:実際には、補助金を受け取るのは補助事業を完了した後になります。弊社の場合、現在遂行中なのでまだ補助金は受け取っていません。

野口:流れとしては、補助金申請→審査→採択→正式交付申請→正式交付決定通知→事業開始→遂行状況報告→事業完了報告→完了検査→補助金交付、といった流れです。

採択されれば即補助金が交付されるというものではなく、上記工程を順に進める必要があります。

例えば、採択されても正式交付決定通知が届く前に開始してしまった事業経費は認められないとか、申請時の事業計画の内容や方法が変わったり、資金用途や支払先が変わるだけでも変更届けの提出と承認が必要になります。

申請の方法、どこに不備があるかなどは、採択後に事務局の担当者が並走してアドバイスしてくれますので、心配はないかと思いますが、例えば再提出の際、一文字が抜けたり間違ったりするだけで差し戻しとなります。

小松:私の場合、正式交付申請時に3回差し戻されました。同じ2次で採択された事業者でも2020年末時点で、正式交付に至ってない事業者もあると聞いています。

最初の申請内容と変更点が多い事業者は、正式交付決定に時間を要しているようですので、最初の事業計画をより正確に書くことが、採択後の進捗をスムーズにする秘訣かもしれません。

また、事業経費は完了後の交付となりますので、前もって繋ぎ資金の準備が必要になります。

私の場合は、補助金申請と同時進行で融資の申し込みを進めておりましたが、
補助金が採択されれば金融機関によっては簡単な審査で繋ぎ融資してくれるようです。

野口:補助金をもらうと、通常それに対して税金がかかってきてしまうんですよ。例えば1,000万円もらえて喜んでいたら、決算締めて税金300万円払ってくださいと来るわけです。

ーそんなに税金がかかってくるのですね…!

野口:そうなんですよ。いろいろ方法はありますが、例えば税金に対しては圧縮記帳という手法を取れば、税金を払うタイミングをある程度コントロールして資金繰りをうまくやる方法が用意されていたりもします。

採択後の資金計画は重要です。想定外でいきなり何百万の税金の請求がポンと来てしまいますので。我々は定期的にキャッシュフローを含む事業計画の見直しや、補助金の事務局担当からこう言われているけれど、この書類を提出すれば大丈夫ですよ、というアドバイスなどで対応させていただいています。

まとめ

ー手続きなどが煩雑なようですが、それでも補助金はおすすめしますか?

野口:もちろんです。きちんとした事業内容をお持ちであれば、2~3日かけて書類にまとめて応募するだけで、何百万円という補助金を受け取れる可能性があるので、社長としての時間の使い方として良いと思います。私の事務所だとサポートして補助金申し込まれた方は、過去平均すると5割くらいは合格しています。事業を軌道に乗せたいという方は検討してみてはいかがでしょうか。

小松:補助金申請は、ぜひおすすめします。申請作業を進める中で、事業性や課題を客観的に捉えることができるからです。もし採択されなくても、課題が浮き彫りになり、次にやるべきことが見えてくるのではないかと思っております。

私は、事業計画作成中に何度もそのことに直面しました。事業内容をブラッシュアップするつもりで取り組めば、補助金だけでなく得るものはたくさんあると思っております。

採択後の作業は私も初めての経験でしたが、事務局の担当者は基本的に協力対応してくださいますので、心配ないかと思います。

ー野口先生、小松さま、本日は貴重なお話をありがとうございました!
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(取材協力 : イーグル会計事務所代表 野口 仁
(編集: 創業手帳編集部)

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