ISO認証とは?メリットや取得する際の注意点をわかりやすく解説

創業手帳

ISO認証とは何か種類や取得手順などを理解しよう!


事業や企業の成長には、社会からの信頼が必要不可欠です。
高品質な製品・サービスの提供や健全な経営の証明など、社会からの信頼を高めるためにISO認証を取得する企業は多く存在します。
ビジネスにおいてよく目にする言葉ですが、そもそもISO認証とは何なのか詳しく理解できていない方もいるかもしれません。

そこで今回は、ISO認証の概要から取得するメリットや注意点、取得手順まで解説します。ISO認証について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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ISO認証とは?


まず、ISOとは「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称で、スイス・ジュネーブに本部を構える非政府機関を指します。
そしてISO認証とは、ISOが策定する国際的な規格を満たしているか証明する制度です。
ISO認証を取得した組織には利害関係のない第三者機関から登録書が発行され、それを社会に向けて公開できます。

ISO規格の狙いは、世界中で同等の品質を持つ製品・サービスを提供し、国際的な取引きを円滑なものにすることです。
また、ものだけではなく、組織の活動を管理するため仕組みに対しても国際規格が策定されています。
規格の策定・訂正は、ISOに加盟する世界中の標準化団体の投票で決められるのが特徴です。
すでに160カ国以上が参加しています。1カ国につき1機関が参加でき、日本ではJISC(日本工業標準調査会)が加盟しています。

ISO認証は2種類の規格に分けられる


ISO認証は、「モノ規格」と「マネジメントシステム規格」の2種類に分けられます。

モノ規格

モノ規格は、製品に対して策定される国際規格です。長さ・質量・時間の単位・案内標識など様々なものに対して世界共通の基準が設けられています。

代表的な規格には、非常口マーク(ISO7010)やネジ(ISO68)、カードのサイズ(ISO/IEC7810)などが挙げられます。
国ごとに製品のサイズや品質、安全性などがバラバラだと「輸出先で使えない」「すぐに壊れた」など、国際的な取引きで問題が生じる可能性が高いです。
しかし、特定の製品に対して共通の基準があれば、リスクや不安を省いて国際取引きを実行できます。

マネジメントシステム規格

マネジメントシステム規格は、品質や環境など組織の活動を管理するための仕組みに対して策定される国際規格です。
組織がひとつの目標に向かって活動に取り組むにあたって、共通のルールややり方などを定めなければなりません。
ルールや体制が整っていない状態では、全員が好き勝手に活動してしまうことになります。

そこで、活動を管理する仕組みに対して一定の基準を設けることで、国を問わず同等なレベルでの運用体制を構築できるようになります。明確な基準が存在するので、ルールの策定や運用がしやすくなるのも利点です。
マネジメントシステム規格の数は5万以上あるとされているので、今回は代表的なISO認証を5つご紹介します。

ISO9001:品質マネジメントシステム

ISO9001とは、製品やサービスの品質向上を目指す仕組みである品質マネジメントシステムに対する規格です。
継続的に高品質な製品・サービスを提供できる仕組みを構築し、運用することで顧客満足度を高めることができます。
ISO9001では単純に品質管理だけではなく、価格や納期など顧客が求める事項も満たさなければなりません。
一定の品質を保ちつつ、手に入りやすいことも重視して製品・サービスの提供ができる仕組みを構築する必要があります。

ISO27001:情報セキュリティマネジメントシステム

ISO27001は、情報資産を適切に管理や保護することを目的にした情報セキュリティマネジメントシステムに対する規格)です。
組織では顧客情報や売上情報など多数の情報資産を有しています。こうした情報は事業活動を行う上で欠かせない資産のひとつです。

そのため、社外に情報が洩れることがないように、取り扱う際のルールや管理には徹底しなければなりません。
ISO27001では機密性・完全性・可用性の3つの要素を維持しながら、情報資産に対するセキュリティ管理の体制構築と強化が求められます。

ISO14001:環境マネジメントシステム

ISO14001は、組織が自主的に環境保全に取り組むための仕組みを示す環境マネジメントシステムに対する規格です。
企業活動を行う中で、環境に悪い影響を与える場合があります。そのリスクを抑えるためには、環境への負担を軽減するためのルールや仕組みが必要です。

ISO14001を取得しているということは、環境に配慮した企業活動に取り組める体制が整っている証拠です。
利益の追求だけではなく、環境保全を通じて社会に貢献できる企業は社会から高い信頼を得られやすい傾向にあります。

ISO22000:食品安全マネジメントシステム

ISO22000は、食品の衛生を含む安全に管理するための仕組みである食品安全マネジメントシステムに対する規格です。
衛生管理手法に関する規格のHACCPと商品・サービスの品質向上を目的にしたISO9001の2つの規格から成り立っています。

食品は人が口にするものだからこそ、食品の生産から販売においては安全性を重視しなければなりません。
食中毒や異物混入、食品偽装といったトラブルを防ぐために、一定の衛生環境や品質管理に徹底するためのルールや体制の構築・運用が求められます。

ISO 45001:労働安全マネジメント

ISO45001は、労働者が安全に働くための仕組みを示す労働安全衛生マネジメントシステムに対する規格です。
企業は、労働契約を結ぶ従業員の安全を守る義務があります。労働中の負傷や疾病をはじめ、労働におけるリスクを排除するための仕組みが必要です。

ISO45001を取得している企業は、一定基準の安全性が保たれた環境・体制が整っていることを証明できます。
従業員の満足度が高まるだけではなく、業務の効率化や社会からの信頼度アップなど様々なメリットが期待できます。

ISO認証を取得する5つのメリット


ISO認証を取得することには、企業にとってたくさんのメリットがあります。
取得するISO認証によってメリットは若干異なりますが、多くの規格で共通するメリットをご紹介します。

1.製品や企業の価値・信頼性が高まる

ISO認証を取得する大きなメリットは、製品やサービス、企業に対する価値や信頼感が高まることです。
ISO認証を取得すれば一定の基準を満たして生産や管理、企業活動に取り組んでいることが証明されます。
取得後はWebサイトや広告などで登録証の一般公開や公言できるので、ISO認定の受けた事実を外部に認知させることが可能です。

登録証の提示によって良好な品質や管理体制があるという信憑性が高まり、社会から大きな信頼を得られることにつながります。
また、市場内での競争優位性がアップする効果も期待できます。

2.事業参入の機会やビジネスチャンスが増える

事業参入やビジネスチャンスが増えることにも期待できます。例えば、公的な建築事業に参入するためには、ISO認証の取得が条件になっていることが多いです。
そのため、ISO認証を取得しておけば、取得を条件として事業への参入機会が増えます。

また、国内外の企業の中には、ISO認証を取得している企業を中心に取引きをしているケースも少なくありません。
ISO認証の取得により商品・サービスの品質が確かなものと証明されれば、新規取引き先や顧客の開拓するチャンスが増える可能性があります。

3.組織の改善につながる

ISO認証の取得を通じて、組織の改善や活性化につながることもメリットです。
取得にあたって、目的・目標の設定や内部監査の実施、社内教育といった準備活動が行われます。

準備活動を行う中で業務や体制を見直せるので、組織や業務の活性化・効率化を促すことが可能です。
従業員の目標達成に向けた考え方や価値観が変わったり、規則・法令に遵守した企業活動を徹底できるようになったりする効果にも期待できます。
ISO認証取得後も継続的な改善が行われるので、より良い労働環境の構築や組織の活性化につながります。

4.業務や品質の安定化を図れる

ISO認証の取得を通じて、業務や品質の安定化を図ることが可能です。ルールや体制が整っていないと、生産や管理の質にバラつきが生じ、業務の効率も下がってしまいます。

反対に明確なルールや運用・管理体制が整っていれば、製品・サービスを一定の品質が確保された状態で生産・提供することが可能です。
無駄な工程を取り除けるので、効率を上げて質の良い作業ができるようになります。

5.役割・責任・権限が明確になる

従業員が担うべき役割・責任・権限を明らかにできることもメリットです。
ISO認証の取得に向けた準備を行う中で、これまで暗黙知で行われていた業務もルールが定められます。
「誰が何をするのか・何をして良いのか」というのを周知・認知していくことで、従業員は自分の役目や仕事の意義を深く理解できるようになります。

また、責任の所在が明らかになれば、トラブルが発生した時に迅速に対応することが可能です。
スムーズな対応ができるかどうかは、取引き先や顧客との信頼にも大きく関わってきます。

ISOを取得する際のデメリット・注意点


ISO認証は取得までが大変であることが大きなデメリットです。途中で投げ出してしまわないためにも、取得する際のデメリット・注意点をご紹介します。

1.目的を明確にしてISO審査機関を選ぶ

ISO認証の取得には審査があり、その審査を実施しているのがISO審査機関です。この審査機関によって取得可能な規格や業種が異なるので注意してください。

ISO審査機関を選ぶにあたって、取得する目的や規格を決めなければなりません。
ISO認証の取得に向けてルールやマニュアルの整備・追加などが必要になり、取得だけが目的になると取得の準備や運用に負担が生じる恐れがあります。
「どうして取得したいのか」「取得後にどう活用したいのか」という目的を明確に持つことが大切です。そして、取りたい規格に合わせて審査機関を選んでください。
審査機関は複数あるので、比較して自社に合う機関を選ぶことも大切です。

2.書類やマニュアルの作成が必要になる

ISO認証を取得するためには、品質方針・目標、品質管理の組織図、手順書・仕様書など規格に応じて様々な書類・マニュアルの作成が必要です。
通常業務を行う中で審査に必要な書類の作成をしなければならず、担当者に大きな負担がかかってしまう恐れがあります。
新しく必要な書類を作成するだけではなく、もともと使用している書類も規格の要項を満たしていない場合は改善が必要です。

3.文書の保管や更新が必要になる

ISO認定の取得で作成した書類は、取得後も保管と定期的な更新が必要です。取得後も作成した書類内容に基づいてシステムの運用が必要となります。
そのため、作って終わりではなく、適切な運用を続けるためにも書類やマニュアルは保管し続けなければなりません。
各記録類が紙である時は、適切に保管できる場所と環境を整えるようにしてください。

また、システムの運用を継続する中で改善が必要となれば、その都度改善してバージョンアップしていかなければなりません。
品質や管理体制を向上するためには、運用と改善を繰り返すことが重要です。

4.取得後も定期的に審査がある

ISO認証の取得には審査がありますが、取得後も審査が実施されます。ISO認定では、年1~2回ほど行われる維持審査と3年に1回実施される更新審査があります。
ISOの要件を満たした業務やシステム運用を行っているか確認するために、定期的な審査が行われているのです。
審査結果から指摘された部分が改善されなければ、認証取消となる可能性があります。

要件は取得までの期間だけ満たしていれば良いというわけではありません。取得後も審査があることを理解し、要件に基づいた運用を心がけてください。

5.審査のたびに費用がかかる

ISO認証の審査では、審査費用がかかります。この費用は取得後の定期的な審査でも発生するので注意してください。
せっかくISO認証を取得できても、ランニングコストが負担になってしまうケースがあります。
審査費用は審査機関によっても異なるので、金銭的な負担の少ない期間を選ぶと安心です。

ISO認証を取得する手順


ISO認証はどのような流れで取得できるのか、ここで一般的な手順をご紹介します。

1.ISO認証取得に向けての準備

まずは、取得する目的やISO認証の種類、組織の中で適用させる範囲を決めます。そして、取得に向けて準備や手続きを行う担当者を選任し、事務局の立ち上げが必要です。
取得するISO認証や範囲などが決まれば、全従業員に向けて取得の宣言(キックオフ)を行い周知させなければなりません。
そのほかにも、ISO認証の取得に関わる必要事項やスケジュールを決めたり、従業員にISOの教育を行ったりする必要があります。

2.システムを構築・運用する

ISO認証の審査を受ける前に、要件を満たすためのシステムの構築が必要です。自社の現状や課題を洗い出し、その問題を解消できるシステムを構築します。
構築後は運用体制も整備しなければなりません。定めたルールに基づいて実際に運用を行います。
運用がスタートしたらその結果や内部監査を通じてシステムの評価を行い、問題点を改善していきます。このプロセスを繰り返し、継続してシステムを運用してください。

3.ISO審査機関で審査を受ける

取得したいISO規格を扱う審査機関で審査を受けます。審査は2段階実施です。

1段階目は書類やシステムの運用状況から、審査を受けるに値するか判断されます。問題点が見つかった場合は、次の審査までに改善が必要です。
2段階目の審査では、ISOの要件を満たした運用ができているか、現場を見て審査されます。問題なく運用できていれば、後日登録証が発行されます。
問題点が見つかった場合は、1~2カ月の間に改善を行い、担当者への報告が必要です。

まとめ・ISO認証とは何のために取得するのか理解してビジネスにいかそう

ISO認証には様々な種類があるので、取り扱っている製品・サービスや業種に合わせて、適切なものを選択してください。
取得には時間や手間がかかりますが、製品・サービスの品質向上や社会からの信頼度アップなど嬉しい効果に期待できます。
ISO認証の取得は複雑な部分もあるので、必要に応じて専門家に相談しながら準備や更新を進めていきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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