投資ラウンドとは? スタートアップの資金調達で知っておきたいこと!

資金調達手帳

会社の成長段階に応じた、賢い資金調達を

スタートアップ企業にとって、どのように資金調達するかは大きな課題ではないでしょうか。資金調達にはいくつもの方法がありますが、その会社の状況によって適している方法が異なります。

起業直後の会社は、事業展開の状況によっていくつかの「会社ステージ」(=創業期・成長期・安定期などといった、企業の成長段階)や「投資ラウンド」(ベンチャー企業に投資をする段階のことで、会社のステージに応じて変わったり繰り返されたりする)に分かれています。これらの言葉は聞いたことがあっても、細かい違いや、自社が今どこに位置しているのかなどの知識や判断が曖昧な方もいるかもしれません。

そこで今回は、スタートアップ企業の経営に欠かせない「投資ラウンド」の考え方について分かりやすく解説します。また、この記事の最後では、スタートアップ企業に適した資金調達方法の1つ「ベンチャーキャピタルからの出資」についても詳しく紹介します。

「投資ラウンド」について正しく理解し、資金調達に役立ててください。

創業手帳は、専門家のアドバイスを受けながら、資金調達など、起業に役立つ記事を書いています。また、100万部を突破した、冊子版の創業手帳(無料)では、日本政策金融公庫からの融資や、補助金・助成金などの資金調達の方法のノウハウについて詳しく解説しています。また、資金調達の関する情報だけをまとめた資金調達手帳(無料)では、クラウドファンディングのノウハウについても解説していますので、こちらも参考にしてみてください。

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投資ラウンドとは

そもそも、「投資ラウンド」とはどういうものなのか、概要を解説します。

投資ラウンドとは「投資家が企業に対して投資をする段階」を指す言葉です。スタートアップ企業に投資する代表的な存在がベンチャーキャピタルですが、ベンチャーキャピタルは利益を最大化するため、「自分の投資目的を果たしやすい時期」の会社に投資を行うという特徴があります。

自分の投資の目的とは、例えば投資時よりも値上がりした株価を売却することによって発生する資金が目的だったり、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などのように、自社の領域で、高いシナジー効果が狙いで出資を決める場合もあります。

企業側は「資金調達ラウンド」という言葉を使いますが、投資側からしたらピンとくる言葉ではありません。そこで、投資家に向けてスタートアップ企業がどのような段階あるかを分かりやすく示すために生まれたのが、「投資ラウンド」という考え方です。「投資ラウンド」と表現を置き換えることにより、投資側も段階ごとの内容に感心を持つことができます。「投資ラウンド」というワードは主に、IT企業がひしめくアメリカのシリコンバレーで使われている用語ですが、起業意識の高まりも後押しして、日本でもよく耳にするようになりました。

投資側によって、名称に多少の誤差はありますが、一般的に次の5つのステージに分けて説明されることが多いです。

投資ラウンド名 会社ステージ
シード 起業前の段階
アーリー 起業直後の段階。いわゆる「スタートアップ」
シリーズA
(エクスパンション)
事業を本格開始する段階
シリーズB
(グロース)
事業がやや軌道に乗り始めた段階
シリーズC
(レイター)
黒字になり、経営が安定しつつある段階

それぞれのラウンドのことを「フェーズ」とも言います(例:現在の投資フェーズは、シードである)。

資金調達ラウンドと投資ラウンドの段階ごとの内容はほぼ同じであり、見方だけが異なると言えます。

スタートアップ企業にとって資金調達は非常に重要な意味を持ちます。どれだけ素晴らしいビジネスアイデアがあっても、資金が無ければスタートアップ企業は立ち行かなくなってしまうでしょう。スタートアップ企業で成功を掴みたいのであれば、段階別に効率のよい資金調達について考えなければいけません。

ラウンドごとの資金調達のポイント

どのステージに属しているかにより、会社の成長段階がまったく違うということは理解いただけたと思います。会社の経営状況や規模、ビジネスの進捗が違えば、投資家にアピールするポイントも異なります。

それぞれのラウンドごとの資金調達ポイントと、各ラウンドが、どのような規模の会社を対象としているかなど、以下にまとめましたので、参考にしてください。

シード

資金調達ラウンドで最初のラウンドが「シード」。スタートアップ企業にとってこの段階で資金調達に成功すれば、今後のビジネス展開をスムーズに行えるでしょう。

事業段階

ビジネスモデルだけは決まっていて、法人設立前、もしくは商品を開発中の段階が該当します。

ビジネスが実際にスタートしているわけではないので調達すべき金額はそこまで必要ではありませんが、法人設立の際の費用や、ビジネスに関する調査・研究費用、人件費が発生してくる可能性があるため、最低限の資金調達は必須となります。

調達金額

資金調達ラウンドの最初にあたる「シード」では、前述の通りそこまで投資金額を必要としません。投資元はエンジェル投資家、もしくはベンチャーが多く、投資金額は数百万円程度となります。

エンジェル投資家は、起業家の人柄を見て投資するか否かを決定します。では、どのような人に投資をするのでしょうか? 資金調達手帳では、エンジェル税制の仕掛け人である北城恪太郎氏にインタビューをした記事を掲載しています。エンジェル投資家の心をつかむ秘策など、生の声を知ることができます。

アーリー

シードの次に当たる資金調達ラウンドが「アーリー(スタートアップ)」です。一つ前の資金調達ラウンドであるシードで計画されたビジネスを実際にスタートした状態です。

事業段階

実際にビジネスをスタートさせたものの、まだ軌道に乗っていない状態です。「アーリー(スタートアップ)」期では、シード期と比べるとビジネスにかかる費用が増えるため、赤字になりやすい傾向があります。

調達金額

前述の通り、「アーリー(スタートアップ)」期では実際にビジネスをスタートさせるため、ある程度の運転資金が必要になります。なかなか事業が軌道に乗らない内は赤字が続くことになるので、シード期と比べると多くの投資を募らなければいけません。

シード期の調達金額が数百万円に対し、二千万円前後の調達を視野に入れましょう。ただし、既に起業しているため各団体からの補助金などを活用することも頭に入れておくといいでしょう。

シリーズA(エクスパンション)

アーリー(スタートアップ)ラウンドの次は「シリーズA(エクスパンション)」期です。企業運営のコアとなる商品やサービスの提供を具体的に開始します。

事業段階

実際にサービスや商品を展開しているため、ベンチャーキャピタルなどから積極的に出資してもらいやすいのがシリーズA(エクスパンション)という資金調達ラウンドの特徴です。また、ベンチャーキャピタルなどからは資金以外にも社会的信用・経営に関するアドバイスも受けられます。

会社を成長させるためにシリーズA(エクスパンション)という資金調達ラウンドは重要な役割を持ちますが、会社に適したベンチャーキャピタルを見つけることが何より重要です。

調達金額

具体的にサービスの内容が明示されるため、ベンチャーキャピタルからの出資を受けやすく、その金額は数千万円から2億円に至ります。

シリーズB(グロース)

提供しているサービスや商品が評価され、会社の経営が軌道に乗った資金調達ラウンドが「シリーズB(グロース)」となります。

事業段階

自社のサービスや商品の開発をさらに推し進めていくべき状況で、そのために多額の資金が必要となる投資ラウンドです。会社によっては株式上場、もしくは会社の売却を行うこともあり、どの方法がベストなのか見極めることが重要です。

調達資金

ベンチャーキャピタルは出資してきた資金を回収しなければいけないため、黒字化を実現するビジネスプランを明示する必要があります。それに成功すれば数億円程度の出資が見込まれます。ただし、出資金額が大きくなる場合は、複数のベンチャーキャピタルから出資を募ることも検討するべきです。

ベンチャー企業のエグジットというと、M&Aと上場が挙げられます。資金調達手帳では、M&Aと上場について解説しています。とくに上場については、上場までの流れや、上場に向けてチェックすべき6つのポイント、どの証券取引所がいいのかなど詳しく解説しています。

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エグジット:「EXIT(出口)」のことを指し、スタートアップの創業者やベンチャーキャピタルが投資した資金を回収する方法。

シリーズC(レイター)

資金調達ラウンドの最終段階が「シリーズC(レイター)」です。

事業段階

スタートアップの一つの目標であるエグジットを達成するため、それに向けて利益・売上の確保が強く求められる段階です。そのためには全国展開を始めとするアクションが必要となり、それに伴う資金も大きくなります。

調達資金

幅広く事業展開を行うために、多額の資金が必要となり、その金額は10億円程度に上ります。

ベンチャーキャピタルからの出資は有力な資金調達方法

ここまで、「投資ラウンド」ごとの資金調達方法についてまとめましたが、スタートアップ企業の資金調達方法として、有力な手段になり得るのが「ベンチャーキャピタルからの出資」です。アメリカでは一般的な方法ですが、日本でもようやく近年選択肢として広がってきました。

ベンチャーキャピタルとは、株式上場前の成長企業に投資する会社。資金と引き換えに株式などを受け取り、投資先が株式上場を行った際に株式を売却して投資を回収することを目指します。あるいは、投資先企業が他の企業に買収されることでも、投資金額を回収することができます。

スタートアップ企業の大きな課題が資金調達ですが、金融機関からの融資とは違い、ベンチャーキャピタルからの出資は返済する必要がありません。これはベンチャーキャピタルを活用する大きなメリットです。

ベンチャーキャピタルでの仕組みなど、より詳しいことについては以下の記事で解説しています。

ベンチャーキャピタルから出資を受けると、次のメリットが得られます。

  • 金融機関からの融資とは違い、出資金を返済する必要がない
  • 資金調達額が大きいので、短期間で会社の成長が見込める
  • 経営サポートが受けられる(シェアオフィス、顧客や提携先の紹介、イベントでの人脈づくりなど)
  • ベンチャーキャピタルからの出資で信用度が高まり、他の出資が得られやすくなる

一方、次のデメリットもあるので、理解した上で活用を検討してください。

  • ベンチャーキャピタルが経営について口出しをしてくる可能性がある
  • 確実に結果を出すことが求められる

ベンチャーキャピタルからの出資を得られると、会社の資本自体が増えるので、経営者としては非常に心強いです。しかし、出資金を回収するのがベンチャーキャピタルの目的でもあるので、出資に際しては厳しい審査が行われます。ベンチャーキャピタルごとの特徴を比較し、自社にあったところを見つけましょう。

まとめ

スタートアップ企業にとって、どうやって資金調達を行うかというのは大きな課題です。やみくもに金融機関に相談したり、投資を呼びかけたりするのではなく、会社のステージに合った方法を選ぶことで、資金調達がスムーズに進むかもしれません。あまり知識がないまま相談すると、丸め込まれて悪い方向へ進む場合もあるので注意が必要です。

事業計画と資金調達計画は常に平行してブラッシュアップしていくのがセオリーです。事業計画を作り込んでから資金調達しても、その都度見直して、必ずブラッシュアップをしていきましょう。

今回の記事で、投資ラウンドという考え方を理解していただき、資金調達に役立てていただければと思います。そして、シードから始まった会社が大きく成長し、レイターのフェーズに近づくことを願っています。

どこから資金調達を行うかを考えるにあたって、起業に融資や出資をする側の考えを知ることは無駄にはならないでしょう。資金調達手帳では、複数のベンチャーキャピタルや、クラウドファンディングサイトを立ち上げた起業家など、資金調達関係のインタビューを掲載しています。

また、創業手帳では、創業コンサルティングや、専門家の紹介を無料で行っています。冊子版の創業手帳や資金調達手帳などの資料請求と同時に会員登録も行えますので、まずは登録してみてはどうでしょう。

(執筆:創業手帳編集部)

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