60歳からの飲食店開業|「ひとりでできる」からはじめる生きがいビジネス
「小さな飲食店を持つ」夢が現実になる時代
人生100年時代となった現在、60歳は人生の終わりを考えたり、隠居したりするような年齢ではありません。
むしろ新たなスタート地点であると受け止め何をはじめるかを考え出すタイミングです。中でも飲食店をいずれはじめたいという夢は多くの人が持っています。
飲食店開業は地域の人々とつながり、感謝され喜びを得られる理想的な生きがい創出といえるかもしれません。
従来の大規模投資型開業と異なり、小資本でも実現可能な開業スタイルが確立されひとりでできる飲食店もはじめやすくなりました。
本記事では、60歳以降に飲食店をはじめたい方に向けて、現実的な開業方法や注意点を分かりやすくご紹介します。
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この記事の目次
60代からでも開業しやすい飲食業のスタイルとは?
60代から初めてのことをスタートするのは困難と感じるかもしれません。体力面では若い時より不安があるケースもあり、60代からの開業はスタイル選びが大切です。
ここでは、60代でも開業しやすい飲食業のスタイルをまとめました。
テイクアウト・お惣菜専門店
テイクアウト専門店は接客時間が短縮でき、ひとりでも効率的な店舗運営が実現できるビジネススタイルです。
お惣菜販売であれば、事前調理が可能なので注文時の調理負担を大幅に軽減できます。
お客様の回転が速いので短時間でも効率的に売上げられる点も魅力です。
加えてテイクアウト専門店であればイートインスペース不要のため、小さな店舗面積でも十分な営業がです。
人件費や物件費用を節約できて利益につながりやすい営業スタイルです。
キッチンカー・移動販売
イベント会場や商業施設で料理を提供してくれるキッチンカーもはじめやすい飲食店です。
キッチンカーは、イベントに合わせて週末のみ営業スタイルも選択でき、平日は体力回復に充てられます。
出店場所を自由に選択できるため、売上に応じて柔軟に営業戦略の調整可能です。固定店舗よりも自由にエリアやターゲットを変えられます。
また、店舗よりも初期投資が抑えられる点もメリットです。テナントを契約したが集客しにくい、ターゲット層に合わないといったリスクも避けられます。
間借り・シェアキッチン
間借りやシェアキッチンは、既存店舗の空き時間を借りて営業する飲食店をいいます。
既存店舗をレンタルするため、設備投資なしに飲食店開業を実現できる方法です。
営業許可取得済み施設を利用できるので、開業にかかる手続きが大幅に簡素化されます。
自分で調理場や店舗を用意しないため、光熱費や家賃負担が軽減される点もメリットです。売上が増えてきたら自分の店舗を用意するといった柔軟な収支管理もできます。
将来自分の店を持つために飲食業の経験を積みたい人にも適した方法です。
自宅カフェ・小規模店舗
自宅カフェや小規模店舗も60代からの飲食店スタートに適しています。自宅を一部改装してカフェや飲食店にすれば新しい家賃負担はありません。
営業規模を自在にコントロールでき、体調や都合に応じた柔軟な運営が可能で負担を減らして生活と仕事を両立が図りやすいスタイルです。
自宅カフェや小規模店舗は、近隣住民をターゲットにした地域密着型経営で、安定した顧客基盤を構築できる点が強みです。
開業に必要な準備とステップ
飲食店の開業は、小規模であっても必要な準備やステップが発生します。
ひとつずつ整理して取り組めばクリアできる者ばかりなので、どのような準備が必要か確認してください。
1. 開業資金の目安と調達方法
夢である飲食店開業をはじめたいと考えても、資金面の問題は避けて通れません。
日本政策金融公庫総合研究所の2024年度新規開業実態調査によると、開業費の中央値は580万円でした。長期的にみると開業費は少額化の傾向があります。
小規模の飲食店であれば、開業費用を抑えやすく、退職金の一部活用や金融機関からの融資を組み合わせることで資金調達できます。
また、創業に対して地方自治体の補助金などの支援が受けられるケースもあるので、該当する地方自治体でどのような支援が用意されているのか調べてみてください。
2. 物件選び(自宅・間借り・移動販売)
物件選びは飲食店開業でも苦労する部分です。
初めての飲食店であれば、高額のテナント契約はリスクが高いので、間借りやキッチンカーなど、初期投資を抑える方法をおすすめします。
物件にかかる費用を節約するには自宅の一部改装も検討してください。家賃負担ゼロで、生活と仕事の両立がしやすい点がメリットです。
また、キッチンカーのような移動販売なら立地選択の自由度が高く、売上に応じた営業場所変更も可能です。まずはスモールビジネスからはじめるのが物件選びのコツです。
3. 許可・手続き・資格取得
飲食店開業には、複数の許可や手続き、資格が求められます。届け出先や提出期限がそれぞれ違うので混乱しないようにしてください。
業態によって必要な手続きも違いますが、以下では代表的な飲食店開業に必要な手続きを紹介しています。
届け出の種類 | 届け出先 | 対象 |
飲食店営業許可申請 | 保健所 | 全対象 |
防火対象設備使用開始届 | 消防署 | 全対象 |
火を使用する設備等の設置届 | 消防署 | 火を使う設備を設置する場合 |
それぞれ手続きの期限があるので事前に所轄の届け出先に確認してください。保健所への事前相談により、設備基準や手続き方法を詳細に確認できます。
また、飲食店営業許可申請をするには食品衛生責任者を設置しなければいけません。全国で食品衛生責任者の講習会があるので早めに準備しておいてください。
4. 集客・PRの工夫
飲食店は、開業するだけでなく知ってもらう、来店してもらうための取組みも必要です。
地域の回覧板や掲示板活用がある場合には近隣住民への認知拡大のために利用してみてください。
また、多くの人が口コミを参考にして飲食店を探します。
知人や友人への口コミ依頼も効果的な集客手段です。集客はオンラインだけではありません。
看板やのぼり、手書きのメニューボードに加え安らげるお店作りも集客に効果的な方法です。オンラインとオフラインをうまく使い分けて集客・PRをおこないます。
5. 収支計画と定期的な見直し
お店を開業してからは、収支の把握や分析が欠かせません。月単位での収支記録を残して経営状況を把握、分析を続けることで改善点が見つかります。
売上目標は収支記録から現実的に設定し、生活費確保を最優先とした無理のない計画を立てるようにしてください。
計画は定期的に見直しをおこなって、メニューや営業時間の調整を柔軟に実施したほうが良いです。
60代の飲食店開業にありがちな悩みと不安を解消するためには
60代の飲食店開業は、20代、30代とは違います。60代だからこそ直面する悩みを解決するためにどういった方法があるのでしょう。
1. 営業時間と営業日数を無理なく設定
60代の開業で問題になりやすいのが体力面です。週5日営業が大変な場合には、週3日営業や昼のみ営業を選択して体力的負担を軽減してください。
また、不定休にするよりも定休日を明確に設定することで、プライベート時間を確保しやすくなります。
売上を上げるには長時間営業したほうが良いと単純に考えるのはおすすめできません。
営業時間短縮は人件費削減効果もあり、低コストなひとり経営には最適な運営スタイルです。
2. メニューは絞って効率的に
飲食店のメニューは多くしすぎると仕入れや受注の手間が大きくなります。仕入れが増える分ロスも増えてしまうかもしれません。
あれこれいろいろな料理に手を出すよりも、得意料理に特化したメニュー構成により、差別化と作業負担軽減が図れます。
メニューが一皿で完結するようなシンプルメニューなら仕込み時間短縮と品質安定化が同時に実現できます。
メニューを絞れば食材管理や在庫ロスが最小限に抑えられ、経営効率も良くなるでしょう。
3. 「やめる時」も想定した設計を
初期投資を抑えることによって、撤退コストが最小となり心理的なプレッシャーが軽減されます。
大きな金額をかけて店舗を用意してしまうと、これだけ費用がかかっているのだからやめられないと感じて、辞め時を見失いながら赤字が拡大してしまうことがあります。
大型設備投資を避ければ、もしも健康状態が変わった時でもお休みにしたり撤退したりと柔軟な対応が可能です。
撤退しやすい仕組み作りが、かえって安心感を生み出す効果が期待できます。
家族や周囲の理解を得るには?
60代からの飲食店は周囲から反対されてしまう可能性もあります。家族や周囲からの理解を得るための方法を紹介します。
生活や家計への影響を丁寧に説明する
飲食店をはじめる時に家族がまず気になるのが生活や家計への影響です。開業には費用がかかり、生活も変わってしまうため家族が不安に感じるのは当然です。
家族の反応を受け止めてから開業資金や収支見通し、生活費の確保など、家計にどう影響するのかを具体的に示すようにしてください。
生活や家計への責任感を持っていることを伝えて協力を仰ぐことが信頼につながります。
生活スタイルも変化するのであらかじめ営業時間や休日も相談し、家族との時間を尊重ししてください。
家庭内のルールを明確にして安心感を持ってもらう
飲食店の開業で、どの程度家庭に影響するかも家族に事前に話しておくべきです。自宅開業の場合は、営業エリアと生活スペースを分けるなどの工夫が必要です。
今まで自宅として生活空間であった場所に多くの人が出入りするようになればストレスになります。
場所や営業日時を明確に区切り、家族との時間を侵害しない運営体制を構築しなければいけません。
生活リズムやプライバシーに配慮し、家族にとってもストレスの少ない環境を整えてください。
万が一の撤退条件を共有しておく
家族や周囲が気になるのが、失敗した場合の対応です。軌道に乗らない場合の「やめどき」は前もって決めておくようにしてください。
撤退する条件を共有しておくことで、家族は「無理に続けることはない」という安心感を持てます。
理解と納得を得るためにはリスクはどこまであるのか線引きしておくようにしてください。
地域や近隣への挨拶・説明で信頼を築く
飲食店の営業は周囲の環境にも影響を与えるため、騒音・駐車場・においなどについて近隣への配慮が欠かせません。
開業前のひと言挨拶や丁寧な説明が、周囲の協力を得る第一歩です。
また、イートインエリアやベンチ、ゴミ箱を設置するといった設備面でも周囲に迷惑を書けないような工夫が可能です。
長く営業し続けるためにも地域や近隣への気遣いは忘れないようにしてください。
補助金・支援制度も活用しよう
飲食店の開業資金は、決して少なくない額です。退職金や融資を使って集めるといった方法もありますが、利用できる補助金や支援制度がないか調べてみてください。
飲食店開業で使える補助金や支援制度についてまとめました。
国の補助金制度
開業する人に向けた国の支援制度はいろいろあります。具体的には、小規模事業者持続化補助金が利用可能です。
これは小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取組みを支援する制度となります。
ものづくり補助金は、革新的な製品、サービス開発や海外需要開拓を目的とした設備投資費用の一部を補助する制度です。
くわえて地域に密着した事業を立ち上げたい場合は、地域経済循環創造事業交付金で初期費用の支援を受けられます。利用する時には、各自治体の窓口に相談してください。
地方自治体の支援制度
開業に対する支援は、全国の地方自治体でも実施されています。
開業に対して、低金利融資が受けられたり、補助金を受け取れる自治体もあるので地方自治体のホームページで、利用できる補助金がないか検索してみてください。
また、空き店舗の活用で利用できる空き店舗活用支援制度がある自治体もあります。これは、地域の活性化や雇用機会増大を目的とした施策です。
空き店舗を利用した場合に、改装費補助や家賃減免措置が適用されることもあるのでチェックしてください。
相談・サポート窓口
開業するにあたって不安を感じている、専門家に相談したいと考える人は多いかもしれません。
商工会議所の創業相談窓口や信用金庫の創業支援担当者の相談窓口も利用してください。
また、国が設置する相談窓口としてよろず支援拠点があります。よろず支援拠点は、47都道府県に設置され経営の専門家による個別相談を無料で利用可能です。
電話やメール、FAXなどで相談予約を受け付けているのでまずは問い合わせてみてください。
まとめ|60歳からの飲食開業は「生きがい」を形にする選択
60代は、自由な時間をどのように使うかによって生き方が変わります。飲食店開業は、夢や理想の実現と人とのつながり創出を同時実現する選択肢です。
小さくはじめて自分のペースで継続する経営スタイルなら、無理なく長期運営が可能です。
生きがい重視の飲食店経営は、収益性だけでなく、持続可能性を優先した選択肢として飲食店開業を検討してください。
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(編集:創業手帳編集部)